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第七十一話 戦いと再会

本編をお楽しみください。

 二つの戦力?がアトインに集まろうとしていたとき、アトインを強襲しようとする集団はアトインから一日はなれた場所にいた。現在の時刻は正午、今は食事の用意をしているところだ。


 集団の数は約五百人。これは先遣隊の百もあわせれば六百にものぼる。


 集団を率いている男は部下からの話を聴いて顔をしかめていた。


 「なに?先遣隊が全滅した?」


 服が所々破けて足にも土がついている状態。よほど急いで逃げ帰ってきたのだろう。ただそれならばそれでおかしい部分も発見することになる。


 「で?お前はなぜ無傷なんだ?」


 そう、目の前にいる兵士は汚れてはいるが返り血どころか斬り傷すら負っていない。となれば敵前逃亡すら考えられる。


 逃げ帰ってきた兵士は慌てて弁明をする。


 「ち、違うんです!俺らは確かに戦闘を結果的にしませんでした。でも、正確に言うと戦闘ができなかったんです!奴らなぜか罠を這ってまして」


 「罠か。なら裏切り者がいると?」


 「わかりやせん。しかし、事前に用意していないとできない罠に見えました」


 「なるほど、なら相手は正規兵が待機して罠を張っていたと」

 

 「そ、それが」


 「む。違うのか?」


 「いえ、確かに正規兵はいました。けど魔法を使ってたのはその、どうやら村の奴のようで」


 「なに?もしかしてお前らは村の奴らが仕掛ける罠程度に怯えておめおめと逃げ帰ってきたと?そういうことなのか!」



 「ち、ちげえます!村の奴らが作れる罠の規模じゃなかったんです!」


 集団のリーダーは考える。自分たちはある取引を受けて集められた集団だ。周りの奴らを見ればあのガリアント平原で見たことのある奴もちらほらいる。そんな中、長を任されたのは自分であった。理由は検討がつく、それは自分が他の奴らより頭が回るからだろう。


 リーダーはそう考えていたが取引相手もそう感じて任せていたため、的を射ていた。


 リーダーの男は目の前にいる兵士を見て嘘ではないような気がしてくる。そもそもここに集められた集団は食うに困り明日をも考える日々のものが多い。そんな中、突如使者が現れ取引をすればまず食うのに困らせないどころか成功させれば全員に報酬があるという。もし断ろうものならまたあのひもじい生活に戻る。村を強襲した時点で王国から手配はされるだろうが、少しでも暮らしを良くしようと決起したものばかり。


 そんな覚悟を決めた者らが戦わずして戻ってくるのは本当に罠が存在し非常事態が起きたと考えるほうが現実的。そしてもしそんなことを予期していた敵ならば、戦力は一人でも多いほうがいい。


 男は先ほどまで目の前の兵士を斬首するかとも考えていたが考えを改め


 「話はわかった。今から飯だ。それを食って休め。また戦うことになるのだからな」


 「へ、へい!」


 自分の命が助かったとわかった兵士は一度返事をするとすぐに男の前からいなくなる。

  

 一人になった男はこの先村に近づいたら厳重に警戒して、むやみに真正面から行くのではなく、反対側、または左右から制圧をしようかと考える。


 百の兵士を追い返す策があったとしても、五倍である五百の数を追い返すのは並大抵ではない。しかも、人というものは脅威に対して敏感でどうしても安全策をすぐに使おうとする。それが村人ならば尚更だろう。


 なら百人の兵士が来たときに大体の罠を作動させたはず。万が一もないように、少しでも自分たちの安全を高めるため。


 男の考えは正しくありライが用意していた罠はすべて村人は使ってしまっていた。本当ならば落とし穴だけでも戦意喪失には十分だったにもかかわらず脅威に敏感になってしまったために。


 そして、次に五倍にもなる襲撃者に村人とフィルが率いて生きた数十人がいたとして苦戦は免れなかったであろう。


 でもこの時から数刻後。集団のリーダーである男は自分の考えが浅はかであることを悔いることになる。村以外での戦闘を考えなかったばかりに。


 ついに目的地であるアトイン村に近いところで明日のために行軍をやめ休んでいた所、突如悲鳴があがり集団の男は飛び起きる。


 「何事だ!」


 時刻は明朝、辺りを朝露が包み視界が悪く状況は悪いができるだけ男は大声を出し、何が起きているのか情報を収集しようとした。


 すると近くの兵士がこちらに気づき報告をしてくる。


 「て、敵襲です!」


 「数は!」


 「そ、そ、それが!男女の二人がいきなり!」


 「二人だと!?」


 男は兵士の二人という言葉を聞いて耳を疑うがすぐに冷静になる。そういえば聞いたことがあるのだ。


 自分たちのように依頼を受けて他の村を襲撃している集団があったらしい。でもそうするとなぜか男女の二人組みが行く手を阻み集団は壊滅したと。


 おそらく噂の二人組みでありこの集団も例外はなく行く手を阻まれたのだろう。もしかしたら村に罠を張ったのもこの二人かもしれない。


 「全員落ち着くんだ!相手はたった二人数はこっちが上だ!全員近くにいる奴らと固まり一人で相手しようと思うな!」


 とりあえず男は戦況が見えない状況を考慮して無難な指示を出す。相手が二人ということと、数的優位を伝えれば混乱が収まると考えた。そしてそれは正しい。


 二人と伝えられた兵士たちは落ち着きを取り戻し近くにいる襲撃者に対して警戒をする。


 「へぇ、なかなか頭が切れる人が率いてるんだな」


 すると突如青年の声が陣地に響く。しかもあまり大声ではなくまるで耳元からささやかれたように。


 「だ、誰だ!」


 男は叫ぶと、返事に答えるように朝露が徐々に晴れていき陣地のアトイン方面にある場所に一人の青年と少女が立っているのを見つけた。


 青年は黒髪に黒い瞳。瞳には強くまた何もかも見通しているような理知的な光を宿しているようだ。両腕には鏡のように反射する二対のガントレッドを装備している。


 そしてその青年の隣には緑の髪を後ろに縛り馬の尻尾のようにしている少女がいた。瞳も緑で肌は白く歳は十代半ばぐらいだろうか。一目見た印象はのんびりしているのと、元気なのを二つで割ったような印象だ。

 

 露が晴れたと同時に緑髪の少女が言ってくる。


 「全員ここで行き止まりなの!大人しく帰るの!」


 何かしらの魔法を使ってるのか、また耳元から聞こえるがただ遠くまで声を届かせるものとわかりこちらもあまり声を出さなくても同じ原理で届くのか試すために喋ってみる。

 

 「大人しく帰ることはできない。こっちにも事情があるからな」


 決して届かない距離で出した声。しかし、それにまるで聞こえたように少女ではなく青年が答える。


 「こっちの魔法を分析してすぐに性質を探るために試すか。もし軍に所属すればいいところまでいけると思うんだけど。まあいいや。もしここで生き残れたら足を洗って出直してみたら?」


 青年はすでに誰が喋ったのか理解したように男に視線を送り喋ってくる。


 その瞳を見て男はゾクリッと寒気がした。なにやらあの青年には手を出してはいけない強大な何かだと勘が告げている。


 それを他の兵士も感じたのだろう恐怖を感じ怯えるものもいる。


 でもそれがいけなかった。恐怖を感じて人間がとる行動は大きく分けて三つ。足がすくみ動けなくなるか、その場から逃げてしまうか。そして


 「う、うあああああああああああぁぁぁぁぁぁ!」


 恐怖をぬぐうように対象に襲い掛かるか。


 「お前!待つんだ!」


 男は慌てて止めるがもう遅い。


 「ライに近づけさせないの!」


 緑髪の少女がそういうと手を襲ってきた男に向けて突き出した。


 「が、あ?」


 すると恐怖に負けて襲い掛かった兵士は変な声をあがったと思ったらその場で突如血を胴から噴出し前のめりに倒れる。


 それを見た近くの兵士たちは逃げればまだ助かった。でも覚悟を決めた男たちの意地なのか、人間の本能なのか数人が少女と青年に襲い掛かる。そのあとにまた続きついに戦闘は始まった。


 「この馬鹿やろうめが!」


 男はそう悪態をつきながらも自分の持つ武器を持ち指示を出し始める。すでに始まった戦いをとめるのはあきらめあの得体の知れない化け物と戦い勝つために。






 ライとレーシアは五百人もの敵を前に表情を崩さずに退治しており、ついに敵が襲い掛かってきて其の対応に掛かっていた。


 「レーシア、半分は任せるからこっちに来て」


 「わかったなの!」


 敵がやってきているにもかかわらずレーシアは意にも返さずライにまるで懐いた子犬のように傍にやってきてライの胸に寄りかかる。


 本当なら手の届く範囲ならばいいのだが、いつもレーシアはこうしたがりすでに諦めていたライ。なのでこの半年間のうちに新たに気がついた方法を実行するためにレーシアの方に手を置く。


 そして意識を集中させた。


 「お前ら見せ付けてんじゃねえよ!」


 目の前でいちゃついたと思ったのか頭に血を上らした敵が襲い掛かってくる。


 「おらぁ!」


 数人の剣が正面からライに振り下ろされるが


 キィン!


 甲高い金属音を響かせて剣を弾きライまでには届かない。


 なぜ届かないのか目を見開き驚く敵。そして、そんなたった少しの時間。それでレーシアとライのとある儀式は完了した。


 「……」


 ライはすでに手を離し、正面の敵を見据えている。


 手を置かれていたレーシアは名残惜しそうにライから離れるとライの隣に改めて手を腰に当てながら立ち、正面の敵に言い放った。


 「最後の忠告なの!もしこれ以上襲ってくるつもりなら手加減は無しなの!」


 それに呼応するようにレーシアの胸あたりから淡い光が漏れ出している。


 でも止まれといわれて止まる山賊ではない。


 「うるせぇ!すぐにその顔を苦痛に歪めさせてやるぜ!」


 ライに攻撃してもダメかと判断しレーシアならば倒せると勘違いした兵士。


 次の瞬間からだが真っ二つに斬れている事に気がついたのは瞬きを三回した後だった。


 「レーシア、いきなり飛ばしすぎじゃないか?」


 「むー、力加減が難しいの……」


 命のやり取りをしている場なのにそんなこと意にも返さず話し合う二人。


 「というかライも戦うの!職務怠慢なの!」


 「あはは、わかったよ」


 ライは了承して目の前から攻めて来た兵士に手を向けると一言呟いた。


 「さあ、戦争を始めようか」


 次の瞬間、突き出された手の延長線上に爆発したような音と共に紅蓮の炎が迸る。そして炎が通り過ぎた後には地面には黒い焦げ後が残り直線上にいた兵士だったと思われる死体は、血液から蒸発したのか炭と化し地面に崩れ落ちる。


 「ライも加減が強すぎると思うの」


 「そうかな?」


 人を殺したにもかかわらず普通に話す二人。だけど次々と話しながら敵を作業のように殺す二人。その異常性を見てしまったからか、それとも素直に見た感想か自分たちのことを棚にあげて一人の山賊が二人にこのように言ってきた。


 「この化け物達が!人を殺してそんなに楽しいかよ!殺戮者が!」


 その山賊は恐怖からいったのだ。他の兵士もそう感じたのだから責めることはできないかもしれない。


 でも相手が知能ある人間であることを考慮するべきだった。人というものには触れてはいけない逆鱗というものがあるのだから。


 山賊が言った言葉を聴いたととたんに二人の会話は止まる。緑髪の少女は震え、焦りをした表情に。そして、ライは表情をすべて消し氷のように詰めたい瞳をしながら山賊たちの振り向く。


 そこから一方的な殺戮が始まる。


 襲い掛かってくる兵士に炎が襲い掛かり、鎧を砕き、肉を抉り、骨を粉砕させるような水の塊が飛び、地面からは尖った岩が突き出す。


 恐怖に引き攣り逃げようとした山賊がいようものなら運悪い山賊は鋭い刃物に両断されたように首や胴が別れることになっていた。


 まさに地獄絵図である。


 後ろで見ていた集団の男は其の光景を見て恐怖を抱き、なぜかあの戦いガリアント平原のことを思い出していた。


 最初に強大な炎と水の塊、岩が飛んでいくさまを。魔法を。


 そしてそんな魔法を扱える人物に一人だけ心当たりがある。自分達が負けることになったもっともの原因、フェレス王国が誇るもっともの知恵者であり軍師。


 「ライ・ジュリアール!」


 武器を落としそうになり後ろに数歩後ろに下がろうとした。その時、


 サクッ


 後ろから衝撃と共に自分の胸から短剣が生えているのに気がつく。


 そして、後ろを見ようとし男だったが見ることはできず結果、ついになぜ自分が刺されたのか判らず絶命するのであった。


 周りの山賊たちは今だ気がつかず正面の惨劇を見ていたが突如味方が沢山いるはずの陣地から女の声が上がる。


 「敵将は討ち取った!このまま一気に攻勢にでるんだ!」


 敵将が討ち取られた。周りの兵士は嘘と思いつつ自分達の将がいると思われた場所を見るとそこには胸から血を流しすでに死んでいる男が横に倒れている。


 自分達がいたのになぜと考えている間に次は近くの兵士から再び悲鳴がある。そちらを向くとまるで影から剣が伸びるように背中に突き出していた。


 「て、敵襲だ!ここにも敵がいるぞ!」「大将がやられちまった!」「どうすればいいだよ!」「知るか!それよりも襲ってきた敵を倒すのが先決だろうが!」


 指揮系統がこの時完全に混乱し、前では地獄絵図、後方では姿が見えない攻撃に混乱しているところに止めとなる声が響く。


 「全員弓を放ってください!」

 

 「皆!後ろから突撃するよ!私についてきて!」


 「敵を殲滅する。全員突撃」


 「おらぁ!前に出てくる奴らは俺がたおしてやるぜえ!」


 後方から襲い掛かるフィル、ティア、リエル、ラッシュ。


 これがトドメとなり五百の集団は敗走を始めることになる。


 そしてその様子をライも感じとっていた。正面に攻撃してくる勢いもなくなり後ろでも戦闘していると思われる剣戟の音が聞こえてくるのだ。


 「なんだか別の集団が後ろを攻撃しているの」


 隣からそれに気がついたらしいレーシアがライに話しかけてくる。


 「だね」


 「……もう大丈夫なの?」


 レーシアは心配そうにライを見る。傷を負ったなどを気遣う心配ではなくもう怒っていないのかという意味の心配だ。


 それに対してライは笑みを浮かべて頷く。


 「ごめん、見苦しいところを見せたね」


 「ううん、ライが大丈夫なら私は安心なの!」


 二人が再び話しかけてもすでに襲い掛かってくる山賊が罵声を浴びせることはない。自分達は逆鱗に触れここで死ぬことが判ったのだから。


 約半刻後、戦闘は終了することになる。


 人数を考えれば早すぎる決着だ。


 戦闘が終わり、この場からさっさと去ろうとした瞬間身動きをライは封じられる。いきなり後ろから腕を羽交い絞めにされ拘束されたのだ。


 「ライ!?」


 レーシアがそれに気がついて手助けをしようとするがそれをライは首を横に振って制する。


 「大丈夫、俺の知り合いだから」

 

 そういうとレーシアは警戒しつつもライを羽交い絞めにしている相手に殺気を送っていた。


 ライは後ろにいる人物に話しかける。


 「久しぶり……かな。ラン。やっぱりその魔法は厄介だ」


 ライを羽交い絞めにしている人物、ランは強く拘束し、力を強める。はたから見れば逃げられないようにするために見えるかもしれない。でも拘束する腕が震えているのを見れば、それはまるで存在があることを確かめるように、手から手放さないようにするように見えたかもしれないだろう。


 ランは表情を見られないように背中に顔を押し付けながらライに返事を返す。


 「貴方が……言ったんですよ。光がなければ使えないと。でも今は早朝、光はできます」


 声が震えているがそう答える。


 ランが言うようにライの正面に位置する空には太陽が昇り、ライを照らすようにして後ろに人影を作っていた。


 「だったね。でだ、相談なんだけど拘束をといてもらえないか」


 「……どうしてですか?そうしたらまた私達をおいていなくなるのですか?」


 「……」


 それに対してライは沈黙する。まさにそうだからだ。否定はできない。


 無言になったライにランは言う。


 「絶対に逃がしません。私はエミル様に言われただけではなく、個人として逃がしません。……それに私が仮に話しても他の人がライ様を逃がさないでしょう」


 ランがそういった頃にはライの目の前にはその『他の人』が立っていた。


 ティア、リエル、ラッシュ、フィル。


 あの日、あの夜。別れることになった仲間達。エミルとユレイヌさんはさすがにいないがおそらくいたら、どのような顔をしていたのかと思う。


 ティアは怒ったような嬉しいような泣きそうな顔を、リエルは厳しい顔を、フィルは瞳を潤ませ、ラッシュは怒った顔を。


 その表情を見てライは観念した。無理やり振りほどくことはできる。しかし、仮にそうなったら意地でも連れ帰ろうと襲い掛かってくるだろう。そうなるとレーシアも手伝い怪我を負うことになるかもしれない。そんなのはライは嫌だった。今更かもしれないが。


 そして、半年の月日が流れついにライは仲間達と再会を果たすのであった。


 

 

こんばんわ!何とかかけました!

今回の話は次回予告どおり戦いとライがティアたちと再会するお話でした。どうだったでしょうか?なんだかライがものすごく強い主人公になってきたんですけど……。

あと、新キャラクターのレーシア!呼んでもらっている知り合いに聞いた感じでは、インパクトが大きいといわれこの路線でいこうと思った今日この頃でした!

詳しい話はまた活動報告で。

次回予告としては、再会したメンバーで話し合いって感じですね。もしかしたらある人と決闘をするとかなるかもですが……

では今日はこの辺で、明日もお楽しみに!

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