表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/165

第七十話 噂の二人組

こんばんわ昨日更新できなくて申し訳ありません。

では、本編をお楽しみください

ローレンス砦に到着してから数日間、ティア達は順番に巡回強化をしていた。巡回強化といっても、見回りを強化しただけなのだが、いつでも部隊を動かせるように見回りを行っている。


 今回引き連れてきた十三大隊のメンバーにはほぼ初期メンバーの兵士たちはいない。いたとしても半分以下だ。


 では二百人中百人はなぜ新しいメンバーなのかというとガリアント平原で失った兵力を補充するとともに、とある部隊編成を行った為だ。


 部隊編成といっても約百人程度の人間を編入させたのだが。


 その部隊というのがガリアント平原で戦果を挙げたエミル率いた土帝隊、リエル率いた水帝隊、ラン率いた偵察部隊の兵士たちだ。

 

 各部隊にはそれぞれ五十、五十、二百という兵士がいたがあの時は大戦という緊急事態。魔法が使えるものを集めたのであって、さすがに他の貴族が応援によこした兵士まで王都に配属することはできない。


 しかし、元々王族に配属されていた兵士ならば問題なくそのことを本人たちに言うと志願したいほどだということで、それぞれに所属していた兵士たちを吸収、試験運用の兼ねて今回来ているのだ。


 だから数百の襲撃があるという情報に対してたった二百にした理由は、水帝隊三十、土帝隊三十、偵察部隊四十と歩兵百、それに加え万が一不利になればリューミルの兵士を借りればいい。


 でもおそらくそうはならないと予想はしていた。リエル、ティア、ラッシュ、ランが数倍の敵に対して臆することもないというのもある。この半年ライを探しつつ己を研磨してきたのだ。負けるつもりはない。


 ただ予感はあった。おそらく例の二人組みが現れるであろうという予感が。


 そしてこの二日後に巡回中のフィルの元に連絡がやってくる。


 「え?アトインが襲われているのですか!」


 突如もたらされたアトインを監視している兵からの一報。それにフィルは詳しく聞くべくさらに情報を催促する。


 聞いた話ではアトインを約五十から百人で強襲されたらしい。常駐した数十人が防衛をしていたが持ちそうにないこと。アトインの人口二百人が武器を持ち戦うことになったこと。


 例の二人組みがまだ現れていないことだ。


 本来強襲されると予想されていたので近くに兵士を百ほど常駐させていたのになぜ数十しかいないのか。それはちょうど巡回の交代に入っていたため。


 フィルは聞いた状況を頭の中で整理させながら考えていく。フィルが現在率いているのは三十の兵士。内五名は偵察に優れた兵士で残り二十五名は純粋な騎馬兵。偵察兵も騎馬を用いているが戦闘能力は劣っている。


 本来ならローレンス砦に交代要員として引くはずが、彼らにはもう一働きしてもらうことになる。


 「……皆さん、これから私たちはアトインの防衛に向かいます。偵察兵の人、このことを後方にいる味方に伝達してください。内容は十三大隊に応援要請です。敵は数百と聞いており今回百人しか強襲していません。おそらく先鋒でしょう。ならば後ろに本隊が控えているはず。それも伝えてくださいね」


 伝令を兵に伝えると、その兵士はすぐに馬を走らせローレンス砦のほうに走っていく。


 それを見終えるとフィルはアトインの方を向き、伝えに来た兵士と後ろにいる兵士に指示を出す。


 「では全員全速でアトインまで向かいます!」


 そういってフィルはアトインへと急ぐのであった。


 そして一刻後、フィルはついに小さな村アトインに到着する。


 二百の村に数十の兵士がいたとしても、相手は百ほどいる。しかも村人二百がいたとしても訓練を受けていないであろう素人だ。アトインは悲惨なことになっているだろうとフィルは予想していた。


 しかし、今回フィルの予想はいい意味で裏切られることになる。


 フィルたちが到着したときに目にした光景は戦火などまるで見当たらず、平凡な田舎町という印象だ。


 ただ、少しだけ違うとすれば縄で巻かれている人間が村の中央に数十人おり、その者たちが服装と装備から襲ってきた山賊であると分かる。


 ただそんな中最もおかしいのは強襲されたというのに平和な村というよりも、山賊たちの周りを囲む兵士と村人の表情であった。


 先ほども考えたことだがここにいる村人は戦いについて素人のはず、戦時に徴兵される可能性も会ったとしても全員が戦争を経験しているはずもない。


 なのに全員が恐怖、緊張という表情をしていないのだ。回りには駐屯した兵士たちもいたが村人より困惑した表情を何人かしており、来ているものを交換すれば村人たちが兵士といわれても通じるかもしれない。


 フィルは違和感を拭えないままとりあえず何があったのか聞こうと馬を降り村の中央へと歩いていく。


 そこで兵士たちの一団に話しかけた。


 「あの私の名前はフィル・マスティルといいます。アトインが強襲され巡回中応援に来たのですが……単刀直入に聞きますがどうやって敵を倒したんですか?見た限りこちらに損害も出ていないようですが」


 「あ、はあ。えっと、実は私もあまり実感がないのですが……」


 そういって問いかけられた兵士はぎこちなくも説明してくれた。


 当時強襲された時、常駐した兵士達約三十人はすぐにアトインで防衛網を展開したらしい。


 辺りを警戒していた兵士が接近を察知していたから防衛網を展開することに成功したようだ。これならば敵は百あると聞いていたが村の男達も戦うといっており守るだけならば持つかもしれないと思っていたのだ。


 それでも数的不利と明らかに素人である村人がいる状態なので死も覚悟はしていた。


 そしていざ敵が現れたと思ったとたん突如、村人の一人が魔法を行使したのだ。


 すると突如村に襲い掛かってこようと村の入り口に差し掛かる前に正面から姿を消した。後ろにいた数人から十数人まで。


 一体何がと考えているとどうやら地面には落とし穴があったらしい。それでまず相手の勢いを殺すことに成功。その時までなら用意周到なのだろうと兵士も考えていたようだ。


 しかし、その後も村人の数人が魔法を使うと地面が大雨が降ったようにぬかるんだり、炎の柱が立ち上り敵を動けなくしたなど、超常現象が起こったのだ。


 その後不利と悟ったのか山賊たちは味方を見捨てて逃亡したという。


 見ていた兵士達は兵士達である自分達より村人のほうがよっぽど訓練された兵士ではないのかと思ったぐらいで、常駐した兵士達がやったといえば仲間から見捨てられた兵士達を縄で縛り、味方が来るまで監視することぐらいだった。


 フィルは兵士の話を聴いて頷く。


 「なるほど……」


 (なんだか聞いている感じだとお兄ちゃんが何かをした可能性があるとも言い切れる)


 村人が使ったという落とし穴、ぬらるんだ地面、炎の柱。これら三つは確かライが使えるようになった魔法だったはず。


 実際にライが使ったのではなく今回は村人が魔法を使ったが小さな魔法で何かかしらが動くように細工をしていたといわれれば納得ができる。


 フィルは次に兵士ではなく村人達のほうに向き直る。


 「すみません!私はローレンス砦から応援でやってきたフィルといいます。先ほどこちらの兵士の方々から聞いたのですが魔法を使った方とはどなたですか?」


 すると、魔法を使ったと思われる数人が前に出てくる。


 「俺らだが……」


 「お聞きしたいのですがあなた方がご自分一人で魔法を使用した結果、炎の柱がたったり大きい落とし穴ができたということではありませんよね?」


 「違う。レーシアさんともう一人の子供に言われたんだ。もし相手が数十人の敵だったら教える魔法を使って時間稼ぎできるようにするって。その間に逃げるなりすれば生き延びれるって」


 フィルは後半の内容も聞き逃してはいないが前半の例の二人組みの情報と思われるほうに興味を持つ。


 「レーシアさんという方ともう一人の方の特徴とはどのような感じなんです?」


 「あ、いや、その」


 二人について聞こうとした途端に言葉に詰まる村人。突如どうしたのだろうと首をかしげると申し訳なさそうに村人は言ってくる。


 「すまない。実はもしそういうことを聞かれたら、言わないように言われているんだ」


 む、とフィルは感じる。なぜ正体を隠すように村人に言っているのかも気になるが、それよりもこれ以上どうやって聞き出そうか、頭を回転させる。村人達にとって、その二人は信頼が厚いと判断していい。代表して質問に答えてくれている村人が名前を呼ぶたびに、後ろで何人かが頷いているのだから。


 フィルはどうしようか考えた結果、少し申し訳なく思いつつ意地の悪い、フィルが得意とする政治、処世術を使って聞きだすことにする。


 「それは困りました」


 「え?困ったって?」


 「実は皆さんご存知かもしれませんが、今回襲撃にやってきた敵は先遣部隊だと思われるんです。ですから後方に本隊、数百人がこちらに向かっていると予想されてます。ですが、この村にあった落とし穴や炎の柱などの罠はすでに使ってしまったために、相手も逃げ帰った兵士から話を聴いて警戒するでしょう。」


 フィルが少しだけ声を大きく周りに聞こえるぐらいに話すと住民はざわめくが、フィルはそのまま離し続ける。


 「現在ローレンス砦に駐屯中の兵士に援軍を要請していますが、敵はいつ来るか判りません。ですからその二人組の方々たちに応援を要請したいと思ったんです」


 「うっ、でも」


 目の前にいる男は少しだけ言葉を詰まらせるが、その後説明をしようとはしない。他の村人もまだ踏ん切りがついていない様子だ。


 だからフィルは交渉術で使いどころが難しいが、成功すれば勘違いをさせ有利に運ぶことができる方法をとる。


 「それにそのもう一人の青年の方は私の知り合いと思うんです」


 「知り合い?」


 急に警戒し始めた目の前の男であるが、何もやましいところはないという表情を浮かべ言う。


 「その青年の特徴は黒髪に黒い瞳じゃないですか?そして、その人自身沢山の魔法を使ったり。他には独り言を言ったりしているかもしれませんね。あ、両腕にガントレッドをつけているのではないですか?」


 フィルはまだ断定できていないが、さも相手をわかっているような口調で言うと、住民達の反応は劇的で十分な効果がでる。


 「た、確かに両腕に銀色のガントレッドをつけてるし独り言を言ってるのも見たって言う奴もいる」

 

 すると後ろのほうから別の男が言った。


 「そ、そういえば俺あの人が沢山の魔法を使ってたの一回だけ見たことがあるんだ。この村に何かしていたと思ったけど全部罠と説明されたよ」


 フィルは内心歓喜する思いだ。行方が知れなかった、自分が兄と呼ぶ彼の特徴とほぼ一致するということはほぼといって良いほどライに間違いない。


 隣にいるレーシアという人物には少しだけ気になるがエスティアだろうと予想をつける。


 でもフィルは喜んだ顔を表情に出さず、ニコニコと愛想のよい表情で住民に止めとなる言葉を話す。


 「私はこれから後に来る仲間と一緒にこのアトインを守ります。ですが、それにはその二人が加わればもっと確実になる。だから貴方達に説得してくれとは言いません。私自身が言って説得します。せめて居場所だけでも教えてもらえませんか?」


 フィルは頭を下げながらお願いをする。しばらくざわついていた住民達は困った顔をしつつ、ついには折れる。


 知り合いという情報も有効に働いたが一番有効に働いたのはまだあどけなさが残るフィルがずっと頭を下げて懇願する姿に負けてしまったというのが大きい。


 ついに村人に一人が居場所を話してくれる。


 その二人組みがいると思われるのはここから少し北にいった場所で、少し森を書き分けた奥にある小屋にいるらしい。


 フィルは感謝してもう一度頭を下げ次には打算ではなく心から出る笑顔を浮かべた。これで居場所は掴んだ。ついに、ついに半年振りにお兄ちゃんにあえる。


 本心で言えばすぐにでも向かいたいがそれは自制する。さすがにこの場の暫定指揮官である自分が離れるのはまずいだろう。もし良くとしたら後から来るティア達が一緒のほうが良いと判断する。


 ニコニコとしながらもうすぐ会えると浮かれているフィル。


 だからだろう、注意力が散漫になり目の端に緑の髪を持った少女が村から『北に向かって』風のように走っていたのに気がつかなかったのは。



 緑の髪を持った少女は自分達が仮宿として住んでいる小屋に急いだ。あることを切っ掛けに一緒に行動するようになった青年にアトインでの出来事を伝えるため。


 魔法を使い速度を上げて走る続けるとすぐに少女は小屋に到着する。


 そして扉を無造作に開けて中にいた人物に声を上げた。


 「ねえ、ちょっと聞いてるですの!」


 中にいた人物は持っている本を読みながら顔を上げて緑の少女に聞きなおす。


 「何かあったの?」


 「アトインが攻められたんですの!それと、王国の兵士達もきたですの!」


 「ん?それが何かおかしいの?確かに王国の兵士達が動くのも速いような気がするけど驚くほどのことじゃないよね」


 「そうなんですけど、違うですの!なんか可愛らしい女の子が村に来て町の様子を聞いていたら、私達のことも詳しく聞こうとしていたですの!」


 「ん……かわいい女の子か」


 青年は一瞬頭の中に数人の少女達がよぎるが首を振り頭の奥にしまいこむ。まだ会うわけにはいかない。もしあってしまったら絶対に巻き込んでしまうから。


 「その女の子のことはわかってけど、頼んでいたことはやってくれた?」


 「あ、はいですの!やっぱり予想通り南西のほうから約六百の集団がアトインに向かっているですの!」


 「六百か……」


 青年は考える。


 「王国兵はどのくらい援軍をよこすと思う?」


 「なんだか全部は聞き取れなかったけどどうやらローレンス砦から応援をするといってましたの」


 「んーでも六百はちょっと多すぎるよね。どのくらいでその集団はアトインにつくと思う?」


 「多分、二日後と思うの」


 「……なら万が一のことを考えると出ないわけにはいけないよね」


 天井を仰ぎ向きながら考える。本当はその女の子とはまだ会いたくないが、さすがに危険が伴うなら、裏切ってしまうように出て行ってしまった自分できることならばやるのが道理だ。


 「それでライ。どうするです?いつものように行きますの?」


 レーシアが言うと青年、リューネリスで突如として行方がわからなくなっていたはずのライは頷く。


 「ああ、いくよ。エスティアも良いと思うよね?」


 ライがそういうとエスティア光とともに姿を表す。


 最初に向こう側で出会ったときと同様に白い純白のようなドレスを身にまといつつ頷く。


 「ええあなたがそう思うのなら良いと思うわ。私は前にも言ったけどどこまでも、何があろうとついてくわよ」


 そういいつつ、エスティアは心配するような瞳でライを見ていたがライは気がつかない。


 するとエスティアが突如現れても驚いていないレーシアはエスティアに対抗するように片手を上げて言う。


 「私もどこまでもいくですの!火の中水の中ですの!」


 元気よく言ってくれる。


 それをほほえましく思いつつライは読んでいた本を閉じる。


 行方不明となっていた、半年前の内乱を防いだ英雄軍師、ライ・ジュリアールが再び表の世界に名をとどろかせる瞬間であった。



いかがでしたでしょうか。

ついに本作品主人公が再登場でございます。

ですが、あまりフィルやティアという仲間達に会いたくない様子。一体どういうことなのでしょうか。というところを見ていただければまだ謎が深まると思われます。

さて次回予告ですが、小規模ですが戦いが起きますね。アトイン村の戦いとでもなずけましょうか。といっても本当に小規模で一話で終わると思いますけど。

では今日はこの辺でまた明日お会いしましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ