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第六十九話 噂の影

 ライの行方が判らなくなり半年が過ぎようとしていた頃、 エミルとティア、リエル、ユレイヌは久しぶりに四人で町に来ていた。


 これは息抜きをするためという名目でもあるが、もう一つの名目がある。


 それはある人物、リューネリスで行方を絶ったライの情報がないか意見を交換するため。


 少女らはあの夜ライに置いていかれショックで身が張り裂けそうな思いをした。帰ってきたら絶対に許さないとも。


 しかし実際に本当に帰ってこなくなり、ショックがさらに圧し掛かり喪失したものの大きさは計り知れないと実感した。


 今でもライが置いていったことに対して怒りが収まることはない。おそらくここにいないフィルやラン、ラッシュ、トムも納得いっていないだろう。どのような理由があっても。仮にライがいかなかればならなかったとしてもだ。


 では約半年経った今日この日になぜ少女四人がここに集まったのか。それはいくつかの情報を手に入れたからだ。



 デートの際によった食堂 豊潤森林 ここに四人は軽食を頼みながら落ち着いこうとしつつ、エミルが切り出した。


 「早速話そうか。実は昨日フィルからライにかかわるかもしれない噂を仕入れたと遠風の書で伝えられたのだ」


 そういってエミルは机の上に本を置く。


 フィルがなぜ遠風の書を持っているかというと、メンバーの中で一番情報を集めるのに適した人物だったので、ライが置いていった遠風の書をエミルが渡したのだ。


 それが功を奏し今回文字で噂を知ることになる。


 「それで一体何が書いてあるの?」


 ライのことと聞いて身を乗り出すように尋ねると、エミルは話し始める。


 「ふむ、それを言う前にお主らは最近西の国境付近で不穏な動きがあるのは知っておるな?」


 「あーうん。そのために何回か遠征に行ったからね」


 ティアの言うとおり西のほうで村がよく襲われるようになったため王都から援軍ということで、何回か派遣されていたのだ。


 「でもそれが何か関係あるの?襲ってきたといってもガリアント平原の戦いで敗れた海賊や山賊とかの、残党ぐらいだよ?」


 「報告ではそうらしいな。けどそれはよく考えてみればおかしいのだ」


 「どういうこと?」


 「あの戦いがあったのが約半年前、なのに未だに村を襲撃でいるだけの人数がいるのがおかしいだろう。捕虜から聞いた情報では海賊は二千、山賊は二千だった。あわせて四千だがそのうち半分ほどは戦場で死んだはず、ならば二千のならず者が生き延びたとして半年間ずっと村を襲えると思うか?しかも襲ってくるのは百人単位、計二十回しか計算ではできない」


 「言われてみればそうだね。戦いの後に何回かリューネリス近郊に襲撃があったから半年間も行動できるほどの人数はいるとは考えられない」


 「そうであろう?」


 「でもそれが噂とどう関係するの?」


 「ああ、すまん。そのことは関係ないことはないんだが本題ではない」


 「ん?」


 「問題は、襲撃される村から伝えられた噂なのだ」


 「村からなの?」


 「フィルはなにやら後ろに大きな組織がいるなどと少し言っていた。それを利用してライを探していたら西にある襲われた村からこういう噂があったという」


 《山賊が大勢襲ってきてもうだめだと思ったとき突如、普通ではありえない光景が起こったと思ったら山賊たちはほとんど地に伏していたと》


 「それだけじゃ判断つかない」


 今まで静かに聴いていたリエルが言うとエミルも頷く。


 「ここまでなら不確定が多すぎる。でもこの噂には続きがあって

  《不思議な光景の後には二人の姿があった。生き残りの山賊が襲い掛かるもそのものは動かずとも刃は届かず、火や水を出し圧倒していた》

  これはどういうことだと思う?」



 「「……」」


 リエルとティアは黙り考える。


 するとユレイヌが補足を始めた。


 「先ほどフィル様が遠風の書で引き続き調査をするとは言っておりました。ですが、実はフィル様も知らない情報を昨日ランのほうから連絡が来たのです。曰く、村の農作物が枯れていた所一人の青年と少女が現れ、豊穣の土地にしてくれたという話を」


 「え、あれ、それってどこかで……」


 「そうです。以前ローレンス砦を訪れたときリューミル様が女神と呼ばれた所以である実話ですね」


 「ふむ、それでもしかしたらその青年がライの可能性が高いカも知れない」


 エミルはそういうと一度落ち着くように机にあるカップを持ち紅茶を飲む。おそらくエミルも感じた疑問をティアとリエルが聞いてくると思ったからだ。


 そして予想通り疑問をリエルが質問してきた。


 「……その人がライなら、なぜ王都に来ないの?」


 そう、もしライが無事で生存しているならなぜ王都に戻ってこないのかという疑問が残る。あの夜に聞いた言葉は絶対に嘘ではなかったはず。しかもあんなときに嘘を言う人間でもない。ならば帰ってくるという言葉も嘘ではないと信じたい。


 しかし、現に帰ってこないのはわざと帰ってこないのか、それとも帰って来れないのか。


 空気が重くなり始めた場をエミルは一言で切って捨てる。


 「そんなの知らん!」


 机を叩き声を上げるエミル。ユレイヌが周りを伺いながら諌めようとするが、エミルはそのまま宣言する。


 「その者が本物か、偽者かは知らん。だが、会えば判るのであろう?もし違うのなら探せばいい。そうだったのだら首に縄でもつけて無理やり引っ張ってくればいいのだ!あいつは私の騎士なのだ。なのに私の元に戻らないのは不忠すぎるであろう!」


 エミルが声を荒げて言うとすでにティアとリエルの表情からは憂いが抜けて強い意志が瞳に宿り始めていた。人はこれを希望というのだろうか。


 「うん!そうだね!ここでウジウジ考えていても始まらないもんね!」


 「私も頑張る!」


 三人の少女が大声で意思を確かめ合い決意したところで


 「お客さん、もう少し静かにしてもらえませんか?」


 横合いからウェイトレスが注意をして来る。それを聞いて三人でウェイトレスに謝り見合って苦笑いする少女たち。ユレイヌもそんな三人を見ながら心の中で思う。


 (ライ様。目の前の子達に見つかったら大変ですよ?今から覚悟していてくださいね。もちろん私からもたっぷりと説教がありますので)


 ユレイヌもまた決意を新たにするのであった。


 この会合?があってから数日後、捜索をするためにティアとリエルは出立の準備をしていた。これはすでに国王から許可をもらいあとは旅立つというところで再びフィルから連絡があったのだ。


 内容は数日後にローレンス付近の村が襲撃される可能性があるということ。


 ローレンス砦の位置は西北に位置している。そこで襲撃されるのはまだ納得できた。しかし、問題はそこではない。


 襲撃があるならば例の二人組みが現れる可能性がある。


 おそらくフィルもそれを伝えるために連絡してきたのだ。王都にはまだそのような情報は出回っていないが、おそらくフィルの組織が突き止めたと予想する。


 そのことをエミルがジギルに話すと王都から少数の兵を派遣することを決定。その兵にティアとリエル、ラッシュが志願する。


 本当はエミルも志願するつもりだったが王女という身柄上無理であり悔しそうにしていた。ジギルも本音では行かせてやりたい気持ちもある。しかし親としては危険な場所に派遣はしたくないのだ。


  それから二日後、リエル、ティア、ラッシュの三人と十三大隊からの志願兵約二百人でローレンス砦と向かう。


 ローレンス砦の城主、リューミルの場所に行くとともにそこで約数ヶ月ぶりに会うであろう人物、フィルとランが待っているとのことだ。


 馬を飛ばして少しでも早く行こうと気持ちが焦るが、何とか理性で我慢して落ち着こうと必死になることが何回もあったティアとリエル。


 そのような葛藤がある中、数日後ついにローレンス砦に到着する。


 到着した砦は以前戦ったときの爪あとはすでに殆どなく、元通りになっているようだ。少しだけこの下が空洞になっているかと思うと怖くなるが、土帝の宝玉がない限り大丈夫と割り切り城門へと進んでいく。


 するとそこには懐かしい姿があった。


 先日砦の城主になり、父親、レイン・ローレンスに代わって領主になった女性伯爵、リューミル・ローレンスの姿である。


 ティアはリューミルを見るとすぐに近寄って挨拶をする、


 「リューミル久しぶり!元気だった!」


 テンションが高いティアに嫌な顔一つせずにリューミルは返事を返す。


 「お久しぶりですティアさん。私は見ての通り元気でしたよ。……そちらも色々とあったとお伺いしております。大丈夫ですか?」


 「うん、大丈夫。今回ライかもしれないって言うことを聞いたら落ち込むより即行動だよ!私ライにあって言ってやらないと気がすまないんだから!」


 リューミルはティアの様子を見て内心安心する。リューミル自身、ライには好感を抱いていたのだ。


 自分がライが失踪したのを知ったのは遠いこの地で。ならば失踪したときに近くにいたティア達は冷静にいられたはずがない。


 多分ライかもしれないという情報を希望として捕らえ、縋るような気持ちでここにきたのだろう。


 リューミルは笑顔を崩さずに後ろからやってきた二人に挨拶をする。


 「お久しぶりです。リエルさん、ラッシュさん」


 「久しぶり」


 「おう、久しぶりだな。そちらも変わってないようで何よりだ」


 「はい、おかげさまで。では皆様こんなところでもなんですからまずは中へお入りください。すでにあの方々達は到着しております」


 リューミルの言葉を聴いてティア、リエル、ラッシュは頷き砦の中に入っていく。後ろの二百の兵士も中に入り、ローレンスの兵に案内されていった。


 砦内に入ったティア達はしばらく案内されるままに歩いていると、応接間へと通される。


 そして中に入って見るとそこには予想通りフィルとランがいる。


 「フィル!それにラン!」


 「お久しぶりです皆さん」


 「お待ちしておりました」


 椅子から立つと二人は立ち上がりお辞儀をしてくる。ティア達はそばによると、それぞれ息災であったことを喜びながらすぐに机を囲むように座り、今回のことを話し始める。


 最初に切り出したのはフィルだ。


 「まず私から話しますね。今回は事前に聞いていたと思いますが数日のうちにこの近隣を数百単位で村が襲撃される可能性があるらしいです。そして、問題はここなのですが約数ヶ月前から襲撃がある村を守る二人組みの男女がいると。男のほうは炎や水を出し攻撃が聞かない。しかも、痩せこけていた土地を豊かにしたとか」


 「なあ、前から思ってたんだがよ。仮にそいつがライだったとしてもう一人の女に検討はついているのか?」


 「正直判りません。ですが、一つの可能性を考えればそれはエスティアさんではないかと」


 「なるほどな。で?ちなみにそいつらがライだったとしたらとっ捕まえるんだよな?」


 ラッシュは物騒なことを言う。正直ラッシュもあの夜にライに対して思うことがあるのだ。何よりリエルを泣かしたことが許せない。ティアと同様何かしら言った後でぶん殴らないと気がすまないのだ。


 また、置いていった理由もラッシュはなんとなく検討はついている。理由は自分達の力不足。あの時点でライは一人で一つの軍隊と渡り合えるぐらいの能力は持っていたかもしれない。ならば連れて行かないのは正解だろう。


 でもそれでもラッシュは納得できない。ならばあっちから助力を請うような力を身につければ良いではないかとラッシュは考え、そのために特別な武器も用意していたのだ。


 ラッシュの言葉にフィルは頷く。


 「はい。本当にその人物がお兄ちゃんならばどう合っても私は捕まえようと思ってます。首根っこを掴んででも。そしてあの日の夜のことを聞かせてもらいます。じゃないと許してあげません!」


 フィルはきっぱりと宣言すると場にいた全員が頷く。とにかく重要なことは二つ、ライを捕まえること。そしてあの日のことを問いただすことだ。


 「例の二人組みが現れるのは村が襲撃される場合。それならば私達は襲撃する村に行き現れたところを確保しようと考えています」


 「襲撃される場所ってどこなのかわかってるの?」


 「それは私が説明したほうが良いでしょうね」


 ティアの言葉にリューミルが答える。

   

 「フィルさんとランさんから聞いた話ではここから西の方面に行った場所にある村、アトインが標的になるらしいと聞きましたわ」


 「ならやることは決まったな。そのアトインって所に行って、村を救いつつ二人組みが現れたらそいつらを確保すればいいってことだろ?」


 ラッシュが言うとフィルが頷く。


 「そうですね。基本それで行きます。まだ兵をどの程度移動させるかなどを話し合わないといけませんが、それは休憩した後にしましょう。ティアさん達も着いたばかりで疲れたでしょうし。リューミル伯爵もそれでかまいませんよね?」


 「もう、フィルさん。私のことを呼ぶときは伯爵をつけなくていいと仰っているではありませんか」


 「うぅ。それはそうなんですけどどうしても緊張しちゃって……」


 リューミルは困った顔をするといつの間にか近くに来ていたリエルに視線を向けられ


 「伯爵、頑張れ」

 

 といわれる。

  

 それにリューミルは諦めたように苦笑すると応接間には暖かい空気が流れる。


 こうしてライ?捕獲作戦の準備は進められるのであった。

いかがでしたでしょうか。

今回はあとがきは書きません。

このままもう一つ書いてしまおうかなという気でいるからです。

ですが、もし間に合わず明日になってしまったら申し訳ない。

ではまた後か明日にお会いしましょう。

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