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第六十七話 別れ、そして新章へ

こんにちは、今日は早めに更新できました。

まず一言、タイトルで分かるように物語が急変することになります。

一体どういうことなのか。

本編をお楽しみください。

 エミルとティアから話を聞いた面々はリューネリスの領主の屋敷で無言でいた。


 そもそもこの集まりはライが話を思い出すかどうかが目的であり肝要なのである。


 二人はライを見ながら説明を続けた。


 「その約束をした数日後私は王都に帰ることになったのだ」


 「あーだったよね。今聞いてはじめて知ったけど王都であった騒ぎは解決したの?」


 「ああ、それは解決したらしい。私たちを襲った集団が手がかりを残したのもあるが……どうやら匿名で王城に密告があったらしくな」


 「へーそんなことした人がいたんだ」


 「うむ、やはり善良な者もいるということだな」


 密告した人物がまさか自分を襲った男だとは想像もつかないだろう。


 「あ、それでライは何か思い出したことある?」


 「そうだな。この話はお主の為の話し合い。私たちだけが説明しても悪い」


 そういって全員の視線がライに集まる。


 「……ごめん。ほとんどは思い出せたんだけど所々もやが掛かったように思い出せないんだ」


 「どこにもやが掛かっておるのだ?」


 「エミル達と喧嘩したところや、訓練をしたところ、約束をしたところ、事件のことは覚えてる」


 「ん?それって完全に思い出せているんじゃないの?」


 「いや、それがほら説明の中にあった職員の人。先生のことが思い出せないんだよね」

 

 「なに?あんなに良くしてもらったのにか」


 「申し訳ないんだけどね」


 「どうしてそこは思い出せないんだろうね~」


 ティアが首をかしげながら言うと、話をずっと聴いたフィルが話しに入ってくる。


 「お兄ちゃん。もしかしてお兄ちゃんと良くお話していた職員の人ですか?」


 「そんな気がするような」


 「そういえばそなたも私たちが孤児院に来る前にライと会っていたのだったな」


 「は、はい!なので職員の人……キャサリン・マルベール先生とよくお兄ちゃんは呼んでいました」


 「キャサリン……」


 名前を呟くと頭の中に何かがよぎるがそれは流星のごとくすぐに過ぎ去って行く。本当に刹那のことであった。


 その様子は幸いというか誰にも気づかれておらずライはすぐに正面を見る。しかし、次に目の端に移ったのは光を照らす蝋燭の奥にある部屋の隅。そこに何かが揺らめいたような気配を感じる。


 (意外に早かったかな。でもどうにかしないといけないよね)


 でもライは何もなかったように視線を逸らし話を切り出した。


 「今日は俺のためにありがとう。色々と話を聴けてよかったよ。幾分と思い出せたこともあるしね。また……いつか話を改めて聞かせて欲しい」


 まだティアとエミルの話しか聞いていないが、それでも時間は結構たっている。いい時間になったので今日は話をやめてまた後日話そうと言ったのだ。


 それを『数人』は一人で心を整理したいのだろう汲み取り頷く。


 ライはそれにありがとうというと、少女達は立ち上がり部屋を後にするのであった。エスティアもすでに宝玉の中に帰っている。


 誰もいなくなった部屋に天井を少しだけ見上げて「よし」と呟くと立ち上がり、壁側に吊るしていたライの相棒。白帝のガントレッドを手にとって両腕に装着していった。


 そして装着が終わるとライは独り言を言う。


 「それで、この部屋に来たってことは見つかったんだよね?」


 普通なら返事が帰ってくるはずもないのにライに帰ってくる返事はあった。


 「はい。リューネリスから海沿いに徒歩で約三刻(六時間)のところにある場所で野営しています」


 影の中から返事は返ってくる。その正体はランだ。ランが今夜この部屋にいなかった理由はとある別の任務で来れなかったから。しかし、この時間帯に来たということは任務を全うし、ライに報告に来たということだ。


 「馬を飛ばしてどのくらいかな」


 「馬ならば二刻かと。ただ野営地は街道から少し離れているため馬は途中で乗り捨てになると思います」


 「でも街道から離れているなら見通しも悪く進入しやすいんだよね」


 「はい」


 「わかったありがとう。ならランは休んで良いよ。後はこっちで何とかするからさ」


 ライはランに休むように言って踵を返そうとしたがそれよりも早くランが返事を返す。


 「お断りします」


 ランの返事にライは目を見開いて驚いた。今までランはライの言うことを拒否したことはない。もちろんライが無茶な命令をしたことがないからだが、故にランはここで拒否したのだ。何か胸騒ぎがしていたのだから。


 「……どうして?」


 「私は貴方を全力で補佐するように命令を受けております。なのでライ様が一人で死地に向かわれるのに休んでいるなんてできません」


 死地に向かうといわれてライは指で頬か掻く。


 「なら、その補佐という命令を解くといったら引き下がる?」


 「その場合は私の勝手ということですよね?何者にも縛られないのならたとえ行き先が偶然一緒だったとしても問題ありませんよね?」


 確かにランの言うことは正論であった。命令を解いても付いて来るつもりがあるなら、ライに引き止めることはできない。偶然といえばほとんど筋は通るのだから。


 ライは一瞬苦笑をするが顔を真剣にして影に目を向け言う。

 

 「今リューネリスは復興のために忙しい。周りにも残党がいる可能性があって兵を無闇に動かすこともできない。なら最大戦力が一人で向えば済むだろ?その間にリューネリスが攻められたとしても簡単に落とされるとは思わない。ならその後用件を済まして帰ってくれば問題はないよ」


 「確かにそうですね。ならその用件を一人より二人でやったほうが早く終わりますよね?」


 ランはどうやっても引き下がらないようだ。だからライはランがなぜ一人で行くことに拘っているか、そして人を連れて行くのを嫌がっているのかの理由を言うことにした。


 「はぁ。ラン。ならはっきり言うよ、お前は俺に恐怖を抱かずにいられるか?俺は時々自分でも思わないほどに冷酷になることがある。殺気を抑えられないことも。それにラン、お前は恐怖を感じたよな。平原で戦う前、スパイがいたときに」


 「……」


 ランは無言で話を聴く。

 

 「自分でも、なぜそんなにも理性が効かなくなってしまっているのか分からない。いや、おそらく宝玉の副作用なのかもしれないけどさ。この記憶障害もそうらしいし。まあだから何を言いたいかというと、これ以上自分の姿を見られたくないってのもある。恐怖を与えるのは敵だけでいい。味方なんかにあんな目をされたら嫌だよ」


 ライは『理由の一つ』を口にする。今までライが冷酷になった時、自分でもなぜこのようになっているか分からないがその時に見たティアやリエル、ラン、フィルなどの瞳の奥に恐怖が宿っていたことを。そんな目で見られるのは辛かった。


 「だからラン。俺に一人で行かせてくれないか?」


 「……それでもお断りします」


 「ラン……」


 「私は……確かに貴方に恐怖を抱くこともある。それをライ様が気にしていたのなら私にも非があるのです。ならば私はライ様の負担を軽くすることで助けたいのです。私の魔法は『愚者の影人』夜ならば絶大な効果を発揮する魔法。お願いです。どうか私も連れて行ってください」


 ランは影から姿を現すと臣下の礼をとるように頭を下げて懇願してくる。


 困ったような表情をしてどうするか迷っていると


 「ライ……お主というものはそんなことで悩んでいたのか」


 突如暗い部屋の中で声をかけられる。


 驚いてライとランは扉のほうを見るとそこには……先ほど解散したはずの少女達が全員いたのだ。


 「一体いつからいたんだ?」


 「ライがランちゃんに《どこにいるか分かったか?》と言ったぐらいかな」


 ということはほぼ全部聞かれていたということになる。


 「でも、どうして」


 「それは私と彼女がライ様に違和感を感じたからですよ」


 そう言うのはユレイヌ。ユレイヌが彼女と言ったのはリエルのことであった。


 「別に違和感を感じさせることはないはずなのに」


 「いいえ、十分に違和感を感じましたよ」


 「どこで?」


 「ライ様のために今回集まったのですよ?ならばライ様のことを見ている視線があるのは当たり前です。なのに視線を何もないところに一瞬移した瞬間、終わりを告げるのはあまりにも不自然ですよね?」


 「んー」


 ここにいるということは本当に違和感を感じたんだろうという証明だ。そこでとどめとなる言葉をリエルが言う。

 

 「ランがいなかった。なのにライは影を見た」


 そういってきたリエル。そしてこれが違和感の答えらしい。


 ライは諦めたようにため息をつく。そして諦めついでに言うことにした。


 「なら皆も聞いていただろうけど一人で行かせてくれないか?危険も伴う」


 「ライ!」


 突如ティアが名前を大声でライの言葉は途中で止まる。


 何事かと思ってみると今度はフィルが話しかけてくる。


 「お兄ちゃんには二つの選択を取ることが可能です。一つは私たちの随行を認めるか。それとも断るか」


 「それは断るほうを」


 「ただし!断ったとしても、私たちはおそらくエミル王女様から直々に命令されるでしょう。ランさんが先導し野営地にと。そこで例えお兄ちゃんの手助けをしたとしても『偶然』ですからしょうがないですよね?」


 フィルに言われてライは顔をしかめる。


 「ライ、諦めろ。どのみち話を聴かれた時点で付いて行くのは確定事項になっておるのだ」


 「ライ様人間諦めが肝心といいますよ?」


 ユレイヌが最後に言うとライ諦めた表情を浮かべ……その後、悲しそうな顔をしつつ後ろに下がりながら言う。


 「エミル、ティア。さっき子供の頃さ約束した物は絶対だと思う。これから先も忘れないし、もしティア達に何かあれば駆けつける。それだけは忘れない」


 ライは帰ってくるつもりだ。もちろんそれもある。でも万が一も考えていた。ランに頼んだ物事のほかに懸念事項があった。


 それは宝玉の気配。炎帝の宝玉以外にもう一つあるのではないかと言っていた宝玉の存在。


 エスティアに聞いて敵がもう一つ宝玉を持っている可能性を示唆していることも知っている。エスティアがなぜ部屋で姿を現したのか。宝玉の中にいても話は聴けるのに。それは少しの間でもみんなを見ていたかったからだ。


 これからもう戻って来れないかもしれない可能性があるのだから。これからライが向かう先にはそれだけ強大な力を持つ宝玉がある可能性があるのだから。


 エスティアもさっきから無言だ。


 ここにいる全員がライの言葉に疑問を持つ。約束を忘れない。この言葉はなんだか一種の別れの言葉にも聞こえたのだから。


 そしてライにはその一瞬の時間があれば十分だった。


 「ごめん」


 ライは一言呟くと能力を発動する。それは土帝の力だ。


 突如エミルたちの周りに土でできた牢獄ができる。とっさに動こうとしたリエルとランだったが、一歩遅く牢獄の中に閉じ込められてしまった。


 「おい、ライ!これはどういうことだ!」


 「ライ!どうしてこんなことするの!ねえ!何とか言ってよ!」


 中から声がするが顔は見えない。それはそうだろうライ自身が自分でやったことなのだから。突如のライの奇行にエミルとティアは叫ぶ



 「ラン!貴方の力でライ様を止めなさい!」


 珍しく焦ったユレイヌの声が聞こえる。しかし、それを制するようにライが伝える。


 「それは無理だと思うよ。ランが使っている愚者の影人にはその名の通り影がないとできないんだ。そして影は光があって初めてできる。真っ暗だったり逆に眩しすぎたら使えないよ」


 そういうと中で激しい音がし始める。おそらくリエルが剣を抜いて壁に斬り続けているのだろう。


 「お兄ちゃん!どうして、また私は離れ離れにならないといけないんですか!」


 「俺としても離れ離れになるつもりはないよ。できれば帰ってくる。でも帰ってくることができないかもしれないから、死地に行くのは俺だけで良いよ」


 「ライ!行くのは許さん!お主が言ったんだろう!誰かが困っていれば他の二人が助けると!なのに一人で行くなど約束を破っているぞ!」


 「確かにそうかもね……だからごめん」


 「許さんぞ!許されたかったら早く魔法を解け!」


 「……」

 

 ライは無言だ。先ほどまで自分の為に話をしてくれていた少女達に裏切るようなことをしてしまったんだ。


 心が痛むが、どうしてもエスティアの宝玉に関することを聞いたら連れて行くわけには行かない。宝玉の相手をできるのは宝玉所有者だけなのだから。


 「おいおい!どうしたんだよこりゃあ!」


 騒ぎを聞きつけたのだろう。ラッシュが部屋に入ってきた。ラッシュが最初に見た物が土でできた壁なのだから驚かないほうが無理だ。


 ラッシュの声に気がついたリエルが叫ぶ。


 「ラッシュ!?ライを止めて!」


 普段声を出さないリエルがここまでなりふり構わず声を上げているのだ。ラッシュも尋常じゃないことが起こっていると察して窓側にいるライを見つけるとすぐに走り出す。


 それをライは見て繰り出された右腕を白帝の壁で止めながら寂しそうな顔で言う。


 「ラッシュもごめん。戻ってくるつもりはあるけど、もしもの時は皆を頼むよ」


 「何いってやがる!」


 「その土の牢獄は時間とともに強度が下がっていくから朝には出られるよ。リエルの攻撃でも壊せるはず」


 その間もどうにかしてライを取り押さえようとするラッシュ。しかし、壁はびくともせずに


 「なら行って来るね」


 それだけ言って、ライは窓を開けて外に飛び出す。昔エミルを助けたときのように空中に床を使って地面に降りていく。


 その姿をラッシュは見送り


 「くそが!」


 ラッシュは一言ほえる。状況はぜんぜん分かっていない。でもライの表情とリエル達の状況を見ればなんとなく分かる。


 ライが一人で死地に向かったのだと。危険にあわせないようにリエル達をついて来させないように。


 


 ライがいなくなったその後、ライが言ったとおり朝には外に出られた。土は簡単に。でも、出られたというのに少女達の表情は暗く、沈黙が漂っている。


 いち早くランは魔法を使い探すもすでにランが発見した野営地は壊滅していた。しかしライの姿は見つからなかった。


 エンリデンヌ、ローレンス砦、ガリアント平原を勝利に導いたフェレス王国、常勝無敗の軍師。その名をライ・ジュリアール。


 そして、そのライ・ジュリアールは翌日になっても、その翌日、翌々日、一月、二月がたってもリューネリスへと戻ってくることはなかった。


 王国に勇名をとどろかせた軍師の行方は分からなくなってしまったのだった。

いかがでしたでしょうか。

いつもはここでテンションを上げて後書きも書いていたつもりです。ですが、自分で今回のことを書いていて、ライの自分勝手な別れを書くとは昨日までは思ってもませんでした。

本来ならばもっと簡単な話を書くつもりだったのです。

ですが、話を書いていてここで転換期にすることで新しい戦い、物語、情勢、そして宝玉などを書くにはいいとも思いました。

本当ならライを戦いの中仕方なく分かれたという方法もまだありました。

……すみませんまだまだ説明をしようと思ったんですが長くなりそうなので活動報告に残りは書きます。

また新章でお会いしましょう。

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