第五十四話 ガリアント平原の戦い ②
こんばんわ、更新しましたので本編をお楽しみください。
互いの思惑が運びる中、リューネリス軍がついに動き出す。
陣を構築した後に相手の総勢二万の軍勢は陣形をとり始めたのだ。
その陣形は横に長く、王国兵たちに左右を強襲、または囲まれないような陣形になっている。もちろん兵数にものを言わせるために縦にも層が厚くされていた。リューネリス軍の本陣はその後方に配置されていて、ここでイウル伯爵と総指揮官である王国第二王子エッジ・フェレス・ギリエルが指示を出すことになっている。
対して王国兵も相手の陣を見て動き始める。
さすが王国兵というべきかリューネリス軍のようにならず者を保有している軍に比べ、すぐさま陣形を構築していった。
時刻はおよそ正午より少し過ぎたぐらい。天候は頭上に輝く太陽が容赦なく降り注ぐ快晴。雲など一つも見当たらなず、その様子はまるでどちらかを祝福するような光、または無常にも現実を叩きつけるような容赦ない光とも思えた。
両軍は号令が掛かればいつでも動けるように待機しその時を待っていた。
そんな時リューネリス軍のほうから数人の兵が前に出てくる。
「私はイウル・ダリアント伯爵という!そちらに王国の王女エミル様がいることは承知している!こちらとしても無駄に血を流すことは願っていない、エミル様をこちらに引渡し降伏する考えはないか!」
それに対してエミル自身が返事を返した。
「イウル伯爵!お主は何をしているのか本当に理解しておるのか?そのように山賊、海賊と普段民に被害を加えている者どもを貴下に入れてこれはどうみても謀反であろう!」
「エミル王女、確かに貴方から見たら謀反に見えるかもしれない!しかし、私らも意味もなく行動をしているわけではないのです!いえ、我らこそが聖戦を仕掛けるに相応しい軍隊なのだ!」
エミルはここで困惑してしまう。イウル伯爵のことは何度か会って知っている。いつも傲慢で下にいるものを見下し馬鹿にしていた。
しかし、騎士と伯爵の名は伊達では慎重なことで頭はそこそこ切れていたはず。でなければライとゲームの優秀者決定戦で戦うこともなく負けていたはず。賄賂を贈って上り詰めたのは確かだが少なくとも王国に手をつかませないぐらいの工作ができたという裏づけでもある。
だからこそ困惑していたのだ。そんなイウル伯爵が簡単にばれるような嘘をつくだろうか。でなければおそらく何かしら強気に出られる根拠があると考えるのが常道。
その時エミルの困惑を読み取ったようにイウル伯爵は朗らかに言った。
「私たちが王と認めるお方、この国の第二継承者 エッジ・フェレス・ギリエル様こそがこの国の王に相応しいのだ!我らはこれから無能な王、ジギル・フェレス・ギリエルを討ち果たしこの国に新しい風と秩序を!そして、長きに渡る繁栄を作り上げる!」
この言葉に王国軍に動揺が走り追い討ちをかけるように、一人の男が姿を現す。
「兄上!」
エミルがその男、エッジ王子の姿を見て声を上げた。
前に出てきたエッジはエミルの声に返事をするように返す。
「やあ、エミル。久しぶりだね。それでだ相談なんだけど降伏してそこをどいてはもらえないか?降伏しろとは言わない。でも、大人しく道を譲ってくれるだけでいい」
エッジが言うことにエミルは動揺しなにも言えなくなっている。そして、エミルは動揺したからか相手が本当にエッジ王子だということが分かり兵士たちにも動揺が走っていた。
しかし、一人だけ冷静に考えているライがいる。事前に聞いていたではないか、何かの旗の下に動いていたことは明白。貴族が何人も現在の地位を捨て去るような行動をし、リューネリスの商人たちが協力をしている。普通に商人の下に貴族がつくとは考えにくかった。
ならば、貴族が下についても良いと思われる権力を持った人物がいてもおかしくはないとは考えていたのだ。
何も言えなくなってしまったエミルの代わりにライが声を出す。
「俺の名前はライ・ジュリアール!エミル様の騎士であり、この軍の軍師を務めている!エッジ王子貴方に問いたい。なにゆえ矛を国に向けたのか!王子である貴方がなぜ!」
「ほう、そなたが卑怯な手を使いイウル軍師に勝利したというライ・ジュリアール軍師か!それで、なぜ矛を向けたかだったか。それはこの国を父上の暴虐を繰り返す圧政から救い出すためだ!」
「な、何を言っている!圧政とはまたおかしなことを、ジギル国王はよき民の理解者と評判のはず!」
「ならライ・ジュリアール!なぜ私はここに傭兵、海賊 山賊をここまで集められたと思う!そなたの言うように良き政策をしておればそもそも彼らは普通の生活を約束されてしかるべきではないのか!なのに、こうなってしまったのは、逆に言えばこうするしか身の振り方がないということではないか!」
海賊、山賊、傭兵は二つの種類に分けられる。一つは自ら戦や暴虐を望んで所属するもの。もう一つは食うのに困って所属するものだ。
約八千のものに自ら望んでいる人数がどれだけいるのか分からない状態では、エッジ王子には説得力がある。
「山賊、海賊、傭兵。確かにその日を凌ぐ為に属した人物もいるだろう!でもだ、それは国王が執政をおろそかにしたのではなく、その地域を統治していた貴族に問題があるはず!」
「それも父上の治世が隅までいきわたっていないことを示している!ライ・ジュリアール!これ以上の討論はそなたの言を聞いた限り不要だろう!ならば次は言葉の刃ではなく、武力という純粋な力で語り合おうではないか!どちらにも譲れないものがあるのならそれを突き通す力を誇示すればいい!」
「こちらも望むところ!王家に弓引くことは……たとえ、たとえエミル様のご家族だろうと許さない!すべて『潰して』差し上げよう!」
二つの人物が言い合いを終わり各陣営に戻っていく。戻る際にリューネリス軍のエッジ王子の隣から鋭い視線、イウル伯爵の視線を感じたが無視をしていた。
王国軍の陣営では相手にエッジ王子がいるということにやはり動揺を持ったものは多かった。王家が前線に来たからこそ士気があがり、また敵が海賊などを率いていたからこそ戦う危害を持っていた彼ら。なのにいきなり敵に王族が現れたのならば動揺するのも仕方がない。
だけど、ライは士気を崩さないように言った。
「全員何を恐れている!敵にエッジ王子がいたとしてもあの王子はエミル様しいては現国王ジギル様まで愚弄し、剣に手をかけるとまで宣言したはず!当初とは確かに意味が変わったとしても根本的なところは変わっていない!王家に弓引くものは打ち滅ぼし、王国を守り抜く!これぞ聖戦とせずになんとする!ここで戦い抜ければ我らは英雄になれるかもしれない!奮い立て兵士たち!敵を討ち滅ぼすぞ!」
このライの言葉に動揺していた兵士たちはようやく落ち着きを取り戻す。まだ若干引きずっていたとしても戦いになれば、戦うことに躊躇しなくなるだろう。
とここまで考えてライは心の中で自分を嘲笑した。
(これじゃあなんだか完全に悪役の考えかただな)
でもと思い直す。自分が考えて効率よくすればエミル、しいては『仲間』の生存確率は上がる。それならば良いではないかと。
ライは無言になっていたエミルに話しかけた。
「ここは危ないから後方に下がろう。指示はそれぞれすでに出しているから最初は号令を出すだけで始まる。その後は俺も指示を出すから。エミルは後方でこの戦の行方を見守ってくれ」
未だに無言を貫くエミル。しかし、瞳に決意を抱かせて正面を向いた。そして堂々とした姿勢で後方に下がっていくのであった。
二つの軍が口上を述べた後ついに後は戦うだけになってしまった。
そんな中最初に動きがあったのは王国軍のほうだ。
突如として王国軍後方に地面が四角形にくり貫かれたように盛り上がり高台ができたのだ。その上にはライと副官のティアがたっていた。これはライが指揮を取るときに戦場を見渡せるようにしたためだ。
しかしそんなことを知らないリューネリス軍に動揺が走る。いきなり得体の知れない魔法を見たのだから。でもそれはイウル伯爵の声で収まる。
「うろたえるな!相手が魔法を使ったとしてもこちらにも強大な魔法を保有している!それをいま実行しよう!」
そういって、イウル伯爵は右手に赤く光る宝玉を持ち左手に剣を持ちながら掲げると頭上に丸い炎の弾が生成され始めた。
それはライからも見えており、一体なんなのかと思っていると突如ライの隣が輝きエスティアが姿を現す。
「ライ、どうやら相手は宝玉を持っている見たいね」
「やっぱりか。見るからに炎だから炎帝の宝玉って所?」
「ええ、おそらくそうなのだけれど……」
珍しくエスティアが言いよどむ。
「どうしたんだ?いきなり言いよどんだりして、もしかして炎帝の宝玉に問題が?」
「いいえ、炎帝の宝玉も例に漏れず宝玉として強力な魔法を保有しているけど、それは使い方しだいだわ。ただ少し気になる気配があるというべきかしら」
「気になる気配?」
「なんだかもう一つ宝玉があるような気がするのだけれど自信がもてないわ」
今まで敵に二つ以上の宝玉を持っているなどなかったが可能性としては考えていたほうが良いらしい。
「まあ、とりあえずは炎帝の宝玉をどうにかしないといけないな。他の宝玉は出てきたら出てきたらで対処するだけだ」
そういってライは片手を前に突き出し戦場の中心に向け意識を集中させる。
見た限りリューネリス軍の炎の固まりは一軒屋ほどの大きさまで大きくなり上空に存在していた。
「ラ、ライ。大丈夫なの?」
「あれぐらい問題ないよ」
ティアは心配そうにライに声をかけた。返事で問題ないといっていたがティアが言った心配ないのかというのは、魔法を使用することによっての負担のことを言っていたのだ。
しかし、ライ自身も魔法の負担のことについては結構考えていたのだ。ならばどうやれば効率運用できるのかなども。
そして、ライは今回敵の炎帝の宝玉に対して最善策を選ぶ。
「いけ!」
そして、ライは声を出すとともに相手の炎の球の半分の大きさの水の塊を撃ち放った。奇しくもそれはイウル伯爵が炎の球を王国軍に放ったのと同時であった。
二つの威力を持った魔法は互いの軍のほぼ中心でぶつかり合う。片方が強大な炎に対してもう一つは大きさはあまりない水の球、しかし威力と速度は並々ならぬものがあった。
二つの魔法はぶつかり合った瞬間に均衡を保ち中央上空で止まったかに思われたが、次の瞬間爆風と閃光をほとばしらせる。その後に残ったのは空から中央にドスンッという音と共に落ちてきた岩だけであった。
ライは強大な炎に対して質量を持った岩に水をまとわり纏わりつかせて放ったのだ。岩だけならば素通りしていたとしても炎と相性が悪い水ならば素通りしないと考えたのだ。
そして、見事に策は成る。少ない精神力で敵の大規模魔法を打ち破ったのだった。
最初の打ち合いでは王国兵もとい、イウル伯爵とライの精神力を考え見ればライの勝ちであった。
でもいつまでもこうしているわけにもいけない。ライはすぐに指示を出す。
「全軍進軍開始の指示を!中央部隊は中央に落ちた岩を目標に進み敵部隊の相手を!左翼は中央部隊と同じ速度で前進!右翼は中央、左翼部隊より遅めに前進を開始してくれ!そして後ろの後衛は『予定通り』に攻撃を順次開始するんだ!」
目の前で繰り広げられた魔法を見せつけれられて固まった兵士たち。しかし、すぐに我に返り指示通りに前進を開始した。
「伝令役はすぐに動けるように各部隊に二人ずつ配置しているだろう!密に連絡を取るために迅速に行動するように!土兵隊は援護を!騎兵隊と予備兵はそのまま待機、水兵隊も待機だ!」
矢継ぎ早にライは指示を出していく。
「さあ、戦争の始まりだ!」
ライは声高々に宣言した。
場所は変わりリューネリス軍。
リューネリス軍のほうも王国軍が動き始めたのを見てイウル伯爵が指示を出し始めた。
「敵の大魔法を止められたと知って相手も動き始めたぞ!中央の歩兵部隊は敵歩兵部隊と交戦して戦線を維持に努めるのだ!左翼の海賊隊は目の前の敵を蹴散らせ!右翼の山賊部隊は前方敵を蹴散らすのだ!その後に騎兵で前線に穴を開ける!それまで持ちこたえるのだ!」
王国軍の進撃に対してリューネリス軍もイウル伯爵の言葉に従い動いていた。
右翼と左翼は共に進軍を開始、徐々に距離は縮まっていき最初に右翼山賊隊、次中央部隊が戦闘を開始、左翼の海賊隊も戦闘を開始したのであった。
ここにガリアント平原の戦いは幕を切ったのである。
こんばんわ、現在活動報告にも書いたのですが、実は先ほど病院から帰宅し、点滴をうってきました。このまま無理をして更新ができなくなるという事態を避けようと思いますので、大事をとって二日ほど休ませていただきます。
楽しみにしていただいている方申し訳ありません。体調がよくなり次第更新しますのでそれまでお待ちください。これまでの連続更新が途切れるのがとても心苦しいですが。




