第五十一話 精神汚染
こんばんわ、ようやく終わりました。昨日書いた時点では果たして一日でかけるぐらいのアイディアが今日も出てくれるんだろうかと心配していました。
でも、思ったようにではありませんが何とかくことがで安堵しております。
では本編をお楽しみください。
王都リミルからガリアント平原へと行軍途中、ライ達が捕まえた間諜から得られた情報はいくつかの共通点があった。証言をした後残らず殺したが。
どうやら間諜の雇い主はそれぞれバラバラであり共通の利点があったことから同盟を組み潜り込んだらしい。
でもその全員のほとんどがリューネリスにいる貴族や商人から依頼を受けたということが一つ目の共通点。
二つ目の共通点は全員が口にした証言。もし王都から出立する兵力が普通の部隊なら大人しく帰還し、もしこの国の軍師ならば妨害、工作をしろと命令されていたのだ。
確かにライの名前はエンリデンヌ防衛線とローレンス砦の戦いで売れ始めている。だがその話を真逆の位置にあるリューネリスが仕入れたとしてすぐに王都の兵の中に潜り込めるものなのだろうか。
仮に遠距離の伝達を遠風の書で連絡を取り合ったとしても難しいだろう。
ならば考えられることは二つ、すでに何かを見越して進入させていたか誰かが裏切り内部に潜り込ましていたか。
ライはおそらく後者だと考えていた。ライ達がエンリデンヌに出発した後にイウル伯爵を含めた数人が姿を消したということは聞いていた。ならば姿を消す前に工作や協力者を作ることは造作もないはず。
そのことを加味してライは考える。今回はすべてを検挙できたがこの先もできるとは限らない。もしあのまま放置していれば壊滅はなくても自分の周りにいる仲間が殺される結果になっていたかもしれない。
絶対にそんなことはやらせない。まだガリアント平原まで数日の日数がある。何かしら対策をしないといけないな。
そんなことを夜、陣を構築して天幕内で考えていると天幕の布が少しだけ揺れる。
一体こんな時間に誰が?と思い警戒したが取り越し苦労であった。
布の先から現れたのは銀色の髪をユラユラさせているリエルだったのだ。寝る前だったのか、それとも気分を変えてなのかツインテールではなく今は髪を下ろしている状態だ。
いつもと違う髪形にドキリとしつつもライはリエルに話しかける。
「どうしたんだ?こんな時間に」
追い返されないことで中に入って良いのかと判断しライの傍にトテトテと掻けて来るリエル。
そしてリエルは言葉を発する。
「お願いがある」
「お願い?」
これは珍しいことだとライは思う。
今までリエルからお願いをされたことはあまりないのだ。あったとしても心配をかけた代わりにデートをする約束をした程度が。……あっ。
ここでライは思い至る。約束をしたもう一人ティアとはデート?をしたのにリエルとはしていないのだ。もしかしてそれを追求されるのかと思い謝罪する。
「もしかしてティアから聞いたのか!本当にごめん!二人で出かけるってずいぶん前に約束したのにまだリエルとだけ一緒にデートできていないなんて、怒ってるよな。本当にごめん!」
ライが謝り始め頭を下げる。それから何も反応がないことにライが気づき不思議に思いながら顔を上げると
「……」
キョトンとした顔がそこにあった。
だがすぐに表情が緩み笑顔を浮かべると思ったけど、なぜか頭を横に振り違うと意思表明してきた。
「え?そのことじゃないのか?」
また横にフルフルと首を振る。
ライはてっきりデートのことを追及されると思って。って翌々考えればお願いといっていたんだ。こんな時間にそんな話をしに来るはずがない。
自分で突っ走ってしまったことに少しだけ恥ずかしくなりつつも照れ隠しするようにライは聞いた。
「ならお願いってなんなんだ?」
するとリエルは懐に指差してくる。大体心臓辺りだろうか。
こうされてもしや命を頂くとか言われる!などは考えない。おそらく、心臓の前にある物。それに用があるようだ。
「もしかしてリエルはエスティアに何か用があるのか?」
尋ねるとどうやら正解だったらしく頷く言葉を紡ぐリエル。
「大事な相談」
先ほど顔が緩みそうな表情だったのにリエルは今、瞳の奥に硬い決意を持った光を持っていた。言葉で伝えてきたとおりよほど大事なことなのだろう。
だからこそライは少しだけ迷いがよぎる。決してリエルを疑っているわけではない。しかしなんとなくだが離すことに抵抗があったのだ。
だけど結局はライが折れることになる。真剣に見つめてくるリエルに負けたのだ。
「わかった。でもエスティアにも聞いて見るから少し待ってくれる?」
リエルは頷く。
(エスティア、聞いてるんだろ?こう言ってるけど大丈夫か?」
【ええ、大丈夫よ】
以外にあっさりと返答が帰ってきたがそれをリエルに伝え白帝の宝玉を渡す。
「ありがとう」
リエルはお礼を言って受け取る。
「リエル、その話には俺がいたらダメなのか?」
ここまで強い瞳を持つリエルに興味を持ち話しかけるが少しだけ困った表情をするリエルを見てライは笑い
「ごめん、今のは聞かなかったことにして。俺はおそらく遅くまで起きているから話が終わったら宝玉を返してくれ。朝まで掛かるなら翌日に返してくれればいい」
「(コク)」
リエルは頷く。
そうしてリエルは天幕から出て行ったのだった。ライはその後姿を見送った後、天幕の中で再びこれからのことを考えていくのであった。
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リエルは天幕から出た後白帝の宝玉を持ってとある天幕を訪れた。
天幕を訪れるとそこには五人の人物が集まっていたのだ。
集まっていたメンバーは ティア、フィル、エミル、ユレイヌ、ランの五人である。
この五人は今日の行軍が終わりいつもどおりに体を休めようというところをリエルに呼ばれて集まったのだ。内容については聞かされていないが真剣な眼差しを向けるリエルにただ事ではないことを感じ取り集まったのである。
ちなみにここにはラッシュはいない。理由はライに悟られたくないからだ。
恐らく後日自分達のこの密会を行ったことがライの耳に入るかもしれない。とある方面に関しては朴念仁というか鈍いライだとしてもその他ならば、人の機微、心情、計略などには聡い。
ならば、後からライに何をしていたのかといわれたときに女同士でしか相談できないことと押し通そうと考えていた。幸いと言うべきかエスティアも女性?で好都合。でもラッシュがいたら反論が難しくなるので申し訳ないが呼んでいない。トムも同じ理由だ。
本当は最初ティアとフィルしか呼ばないことも考えた。しかし、王女エミルもライとは親しく聡明といわれるほどの人物。いい考えを指摘してくれると期待して呼んだ。ランもライには少なからず好意を寄せているように思えて読んでいたのだ。ユレイヌに関してはどうしようか首を傾げたが王女だけを呼んでユレイヌを遠ざけるなど無理だろうということで黙認していたのだった。
リエルは中に入ると集まった面々を前にして丸く固まるように座っている少女達の輪に入っていく。
座った次にしたことは宝玉を中心に置く事だ。とここでリエルはしまったと思った。今まで特に気にしていなかったけどリエルからエスティアに果たして呼びかけられるのだろうかと。しかもどうやってエスティアに外に出てくるように言えばいいのか聞くのを忘れていたのだ。
もしこのまま出てこなかったライに聞いてくるしかない。だけど下手したらついてくるといわれてこの集まりを感づかれるかもしれない。だから少しだけ焦りを覚える。
しかし、その焦りも徒労に終わった。
中心に置かれた宝玉が突如輝きだし人の像を結んだ。エスティアだ。
「あらあら、こんな所に女の子だけなんて女子会というものに呼んでいただけたのかしら?」
まず最初にエスティアが言葉にしたのがそれであった。
エスティアとしては場を和らげようとしたつもりだったのだが、誰からの反応もないのを確認して困った顔をする。どうやら冗談に返事をする余裕がないようだ。
「……仕方ないわね。なら早速本題に入りましょうか。あ、リエル。一応話は全部聞いていたから言わないでいいわ」
何かを口にしようとしたリエルをとめてリエルは口を閉じる。
それを確認してエスティアは全員に習うように少しだけ後ろに下がって全員が見える位置に座りなおした。
「さて、じゃあ早速話し合いをしましょうか。それで、リエルは良いとして、ここにいる人たちはなぜ集まったのかわかってるいるのかしら?」
するとティアがおずおずと口にする。
「多分だけど……ライのことだよね?」
そういうとエスティアが頷く。
「一応正解って所かしら。でもならライのどういうところだと思ったの?」
エスティアは再び聞く。ここでこのまま話始めてもいいがそれでは気づいていなかった人物がいるかもしれない。どれだけライのことを心配して意識しているのかも調べるつもりなのだ。
この答えに今度はエミルが答えた。
「どういう所といわれてもな。この時期に集められてエスティアといったか。お主を呼んだということは先日の間諜の時の態度であろう?」
「あら、てっきり自信なく言ってくると思ったのだけれど自身があるのね?それともよく観察をしていたのかしら?」
「観察しなくてもわかる。エンリデンヌに向かうために王都を発つ時とこの前とではあの時だけ別人に見えた。そして白帝の宝玉だったか。関連するのは間違いない」
これに隣に座るユレイヌも頷く。
「そうですね。ライ様が出立してから王都に帰還するまでに初めての戦場、熾烈な戦いがあったのだと思われます。ですが王都で接したときにも普通のご様子。しかし、先日のあれは失礼ながら異常と言わざるえません。……自分に嫌になるほどですが一瞬だけあの場から逃げ出したいとも思ったぐらいですから」
ふむと考えるエスティア。ここにいる他のメンバーに比べれば最近接した時間は少ない。なのにライのよく見ている。しかも恐怖を感じたといいつつも集まったということは何かある場合助けようと考えているのだろう。
エスティアは他のメンバーに視線を向け、ティア、ラン、フィルに問いかける。
「私がこれから言うことは他言無用。しかも下手したら結果的に命を落とすより辛いことになるかもしれない。それでも聞く?」
この問いかけにまずティアが
「もちろん聞くよ!私は幼馴染なんだもん!それにライに何かあったらあの約束を果たすときだよ!」
「私もお兄ちゃんにはいつもどおり優しいお兄ちゃんでいてほしいです!あんな姿……私は見たくありません!」
「あら、フィルはそれは自分勝手かもしれないわよ?あんな姿というけどあれもライの一部なのかもしれないのだし」
フィルは即答する。
「もしそうだったとしても、私は嫌なんです!わがままでも何でもいい。辛い思いをしてでも何かあるのなら救いたい、昔私を孤独から救ってくれたんです!」
「……そう、ならラン。貴方はどう?確か貴方が一番ライとは関係が薄いわよね?元々命令されてきたのだから貴方はここで降りてもいいのよ?別にここでいなくなっても誰も攻めないわ」
問いかけられたランは無言で考え込んでいた。確かに自分はここにいる人たちよりあの指揮官と接点はない。だから深刻な状態になっているからと言われても、誰よりも抜けやすい位置にいた。
だけど
「……私はそうですね。エスティアといいましたか。確かにライ軍師とは接点が低く自由に抜けられる立場なんでしょう」
「なら抜ける?」
「いいえ、抜けません。私は貴方に先ほど言われ通り関係は薄い。ですが少なくとも一時期一緒に過ごしたのは間違いありません。暗殺者を一緒に倒したこと。ローレンス砦を攻めたこと。すでに戦友といってもいい。最初は命令でしたが私のこの思いは私個人のもの。今はこの先のライ軍師が何をするのか見ていきたいと思っています」
ランはそう告げた。
他のメンバーよりあまり積極的にライかかわっていないラン。でも、暗殺集団を相手取ったあの日の夜。戦う姿にライという人物に興味を持ったのだ。それから、次々の困難に立ち向かう姿を見て日に日に存在は大きくなっていた。
エスティアはまだ形にはなっていないけど見過ごせない程度には気持ちがあるのだなと考えそれ以上追求はしない。
「わかったわ。なら全員抜けることはないのね?抜けるなら今のうちよ?」
エスティアが最終確認と言うように聞くと全員が頷く。
それを確認してからエスティアは話始める。
「なら言うわね。今ライは簡単に言うと悪い怨念に囚われ始めているといいかしら。精神が少しずつ汚染されている状態なの」
エスティアの言葉に全員が驚愕する。ここまでエスティアが念を押していたから重い話だとは思っていたが、精神汚染という言葉が出てくるとは思っていなかった。
周りが驚くのを気づきながら話を続ける。
「貴方達グリム伯爵だったかしら?あの伯爵が牢屋の中でどうなっていたか知っているわよね?」
それに全員が頷く。その場にいなかったエミルとユレイヌ、ランは知らなかったかもしれないと思ったがライが遠風の書か、またはランが聞いて王都に帰還した際に報告していたのだろうと考える。
「あの時伯爵が狂ったのは精神力を使いすぎだから。……と思っているだろうけど少し違うわ」
「え、違うの?」
てっきりそう思っていたティアが聞きなおす。
「ええ、もし精神力を使いすぎて異常をきたすなら普通狂うではなく何も考えられなくなる。廃人になるはずなの。でも、伯爵は廃人にはならずに狂った。理由は宝玉の精神汚染が原因」
「少し待つのだ。ということはライが宝玉を持っていることが原因だというのか?」
「ええ、そうとも言えるわね」
「ですがエスティア様、そうなると白帝の宝玉である貴方様にも原因があるということになります」
「結果的にはそうなるわ。でも言い訳をさせてもらえれば正確には違う。問題は水帝の宝玉と土帝の宝玉が原因ね」
「だけど別に今までライに異常は見えなかったよ?」
「それはライが白帝の宝玉を媒介にして白帝のガントレッドの魔法を使っていたから。あの時はまだこの宝玉に他の宝玉の力が入ることはなかった。だからこそ、グリム伯爵のところで限界まで力を使っても汚染は一時的で済んでいた。だけど、ローレンス砦では水帝の宝玉をつかって倒れてしまい精神力を使い果たして空いた隙に汚染されてしまったわ」
「汚染をされたからあのような……もう一人のライというべき人物が出てきたと?」
ランが確認するように聞いてくるとエスティアが頷く。
「ええ、汚染の内容は人それぞれなの。でもライに対しての汚染内容は恐らく悪に対しての冷徹すぎるぐらい感情の増大。味方に被害は加えないでしょうけど少しでも敵対行動を起したならば、容赦なく殺すでしょうね。もしかしたら女子供でも容赦しないかもしれない」
現在のライの状態は敵と判断したら通常理性で制御している情を枷からはずし、一気に冷徹に徹してしまう状態なのだ。
「な、なにか戻す方法。お兄ちゃんが汚染されないための方法はないんですか?」
今にも泣きそうな表情をして聞いてくるフィル。
フィルの問いかけにエスティアは頷いた。
「今回のこの汚染を取り除く方法はあるわ」
エスティアがあるといって全員が無言で視線を向けてくる。
そして、エスティアは内容を説明する。
「貴方達は汚染される前と後にライに変化があったことを知っているわよね?」
この言葉に一番最初に思いついたのはリエルだ。
「記憶の改変」
「そうね。なぜ記憶を『無くした』ではなく『改変』になったか。これは汚染した影響が記憶をつかさどる場所に入り込んだ結果だと思うの。だけどもしこの汚染した原因が取り除かれた場合どうなるかしら?」
「元の記憶が戻るということですね?」
「そう、逆に考えれば記憶を戻せれば汚染箇所を取り除くことができるということ」
だがここでエミルが質問してくる。
「だが、エスティア。お主が言うように汚染箇所を取り除けたとしてもそれはまた別の所に移動するのではないか?」
「そこは状況によるけど心配はないわ。汚染される危険があるのは精神力を著しく消耗した場合。ならば、精神力を消費していない場合なら再び汚染されそうになっても入ってくる余地がないってわけ」
ここまで聞いてティアが内容を纏めた。
「ここまでの話を纏めると、ライの精神汚染を軽くするには記憶を正しく思い出してもらうこと。思い出してもらう時には精神力を消費していないこと。これから先戦いがあっても精神力を消費させないようにして、精神汚染を防ぐようにすることでいいのかな?」
「大体それでいいわ。ライのことだから今回の戦いでも必ず無茶するでしょう。私もできるだけ手助けするけど、貴方達もライのことを気にかけて頂戴」
全員がこの言葉に頷いてくれた。
それを見てようやくエスティアは一度だけ息を吐き出してため息をつく。
「はぁ、それにしてもライは幸せ者ね。こんなに気にかけてもらえるなんて」
エスティアが言うと全員が少しだけ頬を赤くし初々しい反応を見せていた。
「でも、貴方達もがんばりなさいよ?ライったら機微には聡いと思ったらこういうことには疎いんだから」
「ああー!わかる!こっちがいくらアプローチしても気づいてくれないよね」
ティアの言葉に何人かが頷く。リエルなど首が外れるような勢いで頷いていた。
ここからは本当に年頃の女達がお喋りに興じる女子会となるのだった。
でも、エスティアはその様子を見て不安が過ぎったのだ。
彼女らは忘れてしまったのか、はたまたわざと言ってこないのか。エスティアがランに言った最悪死ぬよりも辛いことになるという言葉を意識していない。
ただ記憶を思い出せば確かに精神汚染は収まっていく。
だけどそれは今の状態ならばだ。
この先宝玉が集まって言った場合。
そのことを考えて少しだエスティアの表情は曇るのであった。
いかがでしたでしょうか。
昨日予告したように戦争に行くかエスティアに関連したことを書くか迷っておりましたが、今回は女子会を含めたエスティアのほうを書かせていただきました。
理由はこの先記憶を戻すために奔走する少女達を書きやすくするためというのももちろんありますが、ここを逃して戦闘に行ってしまってはこの話しをする頃には時期的におかしくなってしまうと思ったからです。
最近戦闘がなく退屈に思われてたらごめんなさい。
次回予告ですが、ようやくライがガリアント平原に到着します。これは確定事項です。
明日気分が優れれば到着後、一気に戦闘に移りたいと思います。ただ、戦闘は前編、後編などいくつかに分ける可能性があるのでご了承ください。
ではまた明日会いましょう。お楽しみに。




