第四十九話 状況整理と心の暗部
こんばんわ、今日も無事出せることになりました!
ちょっとだけ今日執筆が滞ってしまいまさかスランプ!?と心配したのですが何とかできました。
では本編をお楽しみください
南リューネリスで苦戦している王国兵を援護するため、王女エミルを含めたライ達の軍 (ジュリアール兵団)はガリアント平原へと行軍を開始した。
出発した当初に与えられた情報はダンド将軍が意識不明の状態になりガリアント平原に駐留、ただリューネリスは動きを見せていなかった。
しかし、それから二日後ライ達は最新情報を聞くことになる。
「なに!?兵力がそんなにも増えておるのか!」
そういって報告を聞いていたエミルは驚いていた。最新情報ということで現在エミルを含めた主要メンバーが集まっている。
伝令の兵士からももたらされたのはリューネリスがガリアント平原に兵力を動かし進行し始めたということだ。そして、動かした兵力の数。
「総数二万とはどういうことなのだ!」
報告を聞いてエミルも声を荒げるほかなかった。
最初のうちの報告は約一万程度だったはず。だからこそダンド将軍に一万五千という余裕を持たせた兵力を差し向けのだ。
にもかかわらず指揮官であるダンド将軍は重症になり指揮官が意識不明、ここに唯一の相手より有利な部分、兵力の有利が失われたら最悪だろう。
ライ達二千五百の兵力|(第五大隊と第十三大隊は兵力を補充した)を合流したとしても王国兵総数は合計一万七千五百、兵力は劣る。
「エミル王女、落ち着いてください」
ライは驚き動揺しているエミルを嗜める。エミルとライが親しい関係と知っている人物ばかりなら王女とつけない。だが、目の前にいる兵士はもちろん知ることがない。なのでライは一家臣として接する。
エミルも動揺しつつそのことは承知しているのか指摘しないで言葉の意味を聞いてきた。
「なぜそのように落ち着いているのだ!このままでは下手したら瓦解するのだぞ!」
「ですがそうならないためにエミル王女が戦地に赴かれるのです。王族が出てきたならば王国にとって聖戦を意味します。瓦解することはないでしょう」
これはジギル国王の前でエミルが言ったことでもあるが、実戦は実質初めてのエミルには余裕がないように見える。
だからだろう。いつも冷静なはずのエミルは戸惑っていた。
安心させるようにライは説明していく。
「もしエミル王女が心配をしている内容が兵力の差だったらご心配なく。士気のことでしたら先ほどの申した通り我らが行くことこそ士気をあげる行為です」
エミルもライが説明されてようやく冷静になることができる。そうだ。よくよく考えてみればまだそれほどこちらが窮地にたたされていると悲観することはないではないかと。
説明をされて理解できたエミル。だがこの広場に数名理解できていない人物もいた。視線でどういうことか説明するように視線を送ってくるメンバー。
これはしっかりと状況整理、説明をしないといけないなと考えまずは伝令の兵に話す。
「報告ご苦労だった。疲れただろうから今は自分の天幕に帰って休んでくれ。俺らはこれからエミル王女を加えて会議を行う。ここから出るときに天幕を守っている兵士達もいるだろ?その天幕にいる二人の兵士達に呼ばれるまで離れているように伝えてくれ」
「え、でもしかし。それではエミル王女の警護が薄くなることに」
「こんなところまでやってくるとは思えないさ。仮にきたとしても俺達が遅れをとると思うか?」
兵士はそう言われて言葉をしまいこむ。この兵士は補充された兵士の一人でエンリデンヌ、ローレンス砦の戦いには参加していない。でも、話は王都にも伝わってきていてライは一部では英雄扱いだ。
「分かりました。外の兵士にもお伝えいたします」
兵士は頭をたれ挨拶をした後天幕を出ると誰かに話しかける声が聞こえる。
すると、鎧がこすれる二つの音が遠ざかり天幕の外から人の気配はなくなった。
それを確認してライは意識を集中させ魔法を発動させた。水を限りなく細くして天幕の周りに張り巡らせたのだ。
胸あたりで宝玉が光っていることに気がついたティアが兵士がいなくなったことで普段どおりの口調で話してくる。
「ライ、一体何をしたの?」
「ああ、ちょっと罠を仕掛けたんだ。王都から補充された兵士を疑うわけじゃないけど考えを聞かれたくないからね」
メンバーはライの説明を聞いて納得する。
「それで、さっき聞いたことだけどなぜ安心できるの?」
理由をわかっていなかった代表であるティアが聞いてくる。
「えっとな、エミルがガリアント平原に向かっている理由はさっきも言ったけど士気を上げるのが目的だ。次に兵力に関しては敵が多くても、あまり脅威にはならない。兵力を集めた時間と兵力を保有した時間は同じ意味を持たないんだ」
ここでラッシュがなるほどと頷く。
「そうか、兵力を集めた数が多くても短期間で集めた場合と、兵力を保有した時間、兵の錬度と質は同じにならないと」
「正解。一万の兵士を集めたとしても急遽二万の兵士を集めるなんてなりふり構わずってことが多いから、錬度は低いかもしれない」
「しかしライ。お前はそうは言うが敵の大将は商人と聞いておる。リューネリスの商人を束ね、あまつさえ王都に牙をむくならばそれ相応の準備が必要なはず」
冷静になったエミルがライに質問してきた。
「だろうね。だけどそんな相手が海賊や山賊を集めると思う?」
「こちらを油断させる策の可能性もある」
「なら仮にそうだったとしても、海賊と山賊ここに傭兵が加わったとして一朝一夕で連携を取れると思うか?見つからないように内々に連携訓練をしていたとしても二万の兵力が見つからないなんて無理だ」
「連携訓練はそんなに重要なものなのか?」
「小規模な戦いなら山賊、海賊、傭兵のほうが強いと思う。でも一万や二万といった大きい戦になると一つの遅れや綻びが手遅れになる。確かに兵力も重要だけどそれほど離れていない兵力数ならば連携と策略で覆すことは可能なんだ」
ここまで言われるとエミルも納得したようだ。
「なら会議もとい状況説明と整理はこのぐらいにして今日は休もうか。それともこのまま会議をするか?」
周りも納得しこれならば悲観することもないと安心し、話し合いは終わるのかという空気を出していた。
ただこの中で二人首をかしげる人物がいた。
「「?」」
フィルとリエルである。
二人の視線に気がついたライは違和感に気づかれたのかと苦笑しながら笑みを返す。
それで再び首をかしげたリエル。首をかしげるリエルは不思議そうにしており、フィルは理知的な瞳を宿しこちらの意図を考えているようだった。
ライはリエルは何かしらの勘、フィルは違和感を感じて気がついたのかなと考える。二人が共通して違和感を感じたのはおそらくライが状況を整理しただけして、この先の方針を打ちたてなかったからだ。いつもなら作戦を伝えるはずなのに。しかも、状況の整理のような説明だけで。
その様子を見てさてと思う。
説明しても良いけど彼は動かないつもりかな?
ライがそうやって考えていると外から
「な、なんだっ!ぐあっ!」
という叫びに似た声が聞こえてきた。
叫びを聞いたメンバーは全員驚き臨戦態勢をとる。敵襲と考えたのだ。
でも、ライはそんなメンバーに話しかけた。
「警戒しなくてもいいよ。罠に引っかかったようだから」
その言葉でライが最初に魔法を使って罠を仕掛けたという言葉を思い出す。
ライは自ら外に出て天幕の正面ではなく後ろ側に行くと、そこには兵士が一人地面に転がっていた。
やはりとライが納得している中、一緒についてきた面々は驚くことになる。
「な、おぬしは!?」
エミルが驚きの声を上げるのも無理はない。
目の前で床に転がり何かしらに拘束されている兵士は先ほどライ達に最新情報を報告に来た兵士だったのだから。
ライ達が突如現れたことに驚いた兵士。でも、兵士は助けがきたというふうに声をあげた。
「ライ軍師!お願いします!なにかいきなり纏わりついてきて襲われたのです!これを解いてくれませんか!」
地面に転がり助けを求める兵士。その兵士を笑顔を返しながらライは言う。
「もちろん解いてあげるよ。すべてを話てくれたらね」
突如言われた言葉に意味が分からないという表情をして困惑する兵士。
「な、何を言われるのですか!すべてといわれても先ほど報告は」
「うん、だからそれが正しいのか。あと、誰の差し金なのか教えてくれ」
「私には何をいっているのか。もしや私が敵の間諜とでも考えておられるのですか!周りの方も!」
目の前で喚く兵士の声に対し、周りのメンバーも困惑する。ライがいくら罠を設置し罠に掛かったのが彼であったとしてもここまで断定することができるのかと。
喚く兵士に、ライは上を一度向いてから兵士を見て声を出す。
「黙れ」
一言。たった一言だ。兵士に向かっていうライ。でもその声は低く底から響くような声。冷たく聞いたものが震え上がるような声であり一言だった。
すでにライの表情には笑みはなく鋭く睨む視線だけであった。
この声を聴いた味方である周りのメンバーに一瞬ゾクリッと身を振るわせる。初期メンバーのティア、リエル、ラッシュはこのライの姿を一度だけ見たことがあった。
グリム伯爵を処刑した前日と当日だ。
言葉を聴いた兵士はあれほど喚いていたのに無言になる。自分は決して踏んではいけないものを踏んだと自覚したのだ。
目の前の兵が黙ったのを確認してライは言う。
「俺が何も根拠なく糾弾していたと思うか?その罠は俺が仕掛けたものだ。それに引っかかったお前を疑って何が悪い?」
兵士にも胆力はあったのだろう、震える体を振り絞り言葉を発する。
「そ、それは偶然」
「偶然か。なら聞くが何で俺に最初に助けを求めた?最初にここで声を出したのはエミルだ。にもかかわらずなぜ俺に?」
息を飲む兵士。でもライは畳み掛ける。
「それも偶然か?そうだな、可能性はあるだろう。けど俺がお前を疑っているの違う。お前は俺と話したときおかしなことを言ったよな?何で俺がエミル王女といっていたか分かるか?」
「そ、それは王族である姫に使う言葉」
「違う、普通ならエミル様や王女様、エミル王女様など言い方はあるが絶対に様をつけるだろう。しかも、あれは報告の場であり同僚に話しているわけでもない。一兵卒の偵察兵が俺が王女としか言わないから、自分もエミル王女と呼んだか?」
兵士は無意識にも使っていたことを感じ体を震えさせ始めていた。
でも容赦なくライは話そうとしたとき以外にも話に割り込んできたのはエミルだ。
「ラ、ライ。落ち着くのだ」
ライを呼んだエミルは背中に冷や汗をかいている感じであったが、幼馴染であり信用するライを呼ぶ。
すると、ライは視線を向けずに返事を返す。
「落ち着いてるよ」
口調は兵士に向ける声より若干やわらかなものだがそれでも恐ろしい口調だ。
「少し聞きたいことがあるのだが」
「なに?」
「おぬしがエミル王女と呼び、そこにおる兵士が釣られて王女と呼んだ可能性はないのか?」
「あるだろうね」
「ならば」
「だけどね、俺が断定しているのはその後なんだよ。この兵士には俺は外を守る兵士を遠ざけろって指示したんだ」
「ライに言われて通りに天幕の扉前の兵士をどかしていたではないか」
「ああ、確かにそうだな。でもさ、俺は何も後ろの兵士までどかせとは言っていないんだよ」
「え?」
「俺はね、扉にいる二人の兵士に離れるよう伝えろとは言ったけど『後ろをこっそりと警護していた』兵士まで離れさせるなとはいってはない」
ライは視線を天幕の間で暗くなっている場所に視線を向けると、そこで誰かが駆け出すのが聞こえた。
「ラン!」
「は、はい!?」
突如呼ばれたランは驚きながらも視線の先で動いた人間を捕まえるために『愚者の影人』を使用し影を移動する。しばらくすると遠くで人の叫び声が聞こえてきた。どうやらランが捕まえたのだろう。
一度だけ呼吸を整えて再び地面に寝転がっている兵士を見て
「さて、なら色々と話してもらうからそのつもりでいろ」
そういって、通達したライは騒ぎを聞きつけた兵士達に指示をだし兵士を拘束、情報を吐き出させるように指示する。
その甲斐あってか、翌日の朝を迎えるころには敵のスパイだと思われる人物計十人をすべて捕らえることに成功し、捕縛した後は処刑した。
彼らはどうやら第五大隊と第十三大隊の補充兵の中にそれぞれ紛れ込んでいたらしくこれですべてということであった。
これにより内部の危険は一時だけなくなることになる。でも、何人かの心中には戸惑いや疑問。そして、あのときの恐怖を感じる者もいた。
そんな一部始終を見ていたエスティアは思案をした顔をしつつ考えていた。
あの兆候の危険性があるとしても自分だけで何とか抑えられると思っていたと。でも、これ以上は無理かもしれない。自分だけではなく周りの仲間にも事情を話さないければならないのかと。
ただこれを話してライの元を恐怖で去るものも出る可能性はあった。だからこそいままでエスティアは誰にも相談しなかったのだ。
だけどと考え
(……しょうがないわね)
ライを見捨てず助けてくれることに賭けることにする。
エスティアはライが知らないところで後日みなを集めるのであった。
いかがでしたでしょうか。
以前グリム伯爵との戦いで少し描写したライの異変。
それがこんなところでまた顔を出し始めました。なぜこのような顔を出始めたのか。そして、エスティアが話そうとしたこととは?
それも含めてお楽しみに!
次回予告は今回は申し訳ありませんがありません。これから再び誤字脱字修正をしていきます。ではまた明日!




