第四十六話 報告とエミルとの再会
本編をお楽しみください。
ローレンス砦から出立してからしばらくたち、ライ達はようやく王都リミルに到着した。
到着してまず最初にやらなければならないことは、ジギル国王に報告することだ。
王都に近づく際に、王国の旗をなびかせて帰ったのはよかったが旗を持たないフィルの部隊に対して城門の兵たちは少し戸惑っていた。
話を聞くとエミルからはライたちがもうすぐ帰還して、その際に義勇軍が来るであろうとは聞かされていたらしく、フィルの部隊は都市に入らずに外で待機するように指示されていたよだ。
自分たちだけ中に入って、フィルたちの部隊を外に待機させた場合もしかしたら快く思っていない暗殺者や住民から悪さをされるかもしれないとライは考えた。
なので、ラッシュを含めた第十三大隊の半分を護衛と置き残りの第五大隊と、ティア、フィル、リエル、トムは王城に出廷するのであった。
本来なら無口なリエルより気さくなラッシュが出廷したのほうがいいとも考える。しかし、いつもよりやる気?のリエルからの挙手と、元十三大隊隊長ということで向かうことになった。
それから場所は移り王城の王座の間。ここにフェレス王国の国王であるジギル。隣には王女エミルがおり、一段下に降りた左右にには将軍と大臣がいる。
だが、ライがエンリデンヌに向かうときより少ないようで、どうやら南の都市リューネリスの関係で王都にいなくなっているのだろうとライは推測した。
王座の間に集まったライ達をみてジギルは言葉を発する。
「ライ軍師、よくぞ無事に帰還した。お主の活躍はこの王都にも届いておる。エンリデンヌを守り、反乱を起こしたグリム伯爵を討ち、内通していたレイン伯爵の策略も看破したとな。軍師という立場としてさっそく手柄を立てるとはさすがだ」
「身に余るお言葉でございます陛下。ですが、恐れながら今回の手柄はすべて私めの手柄ではありません。ここにいるメンバーや、エンリデンヌのドール伯爵、ローレンス砦のレイン伯爵の娘であらせられる、リューミル様。そして、付き従ってくれた兵士たちのおかげです」
「うむ、それは承知しておる。彼らにも後にしかるべき褒美を与えよう。さて、では早速だが報告をしてもらおう。大体は伝令の兵やエミルから聞いておるが本人から直接聞いたほうがいいからな」
「わかりました」
そういって、ライはこれまでのことを話していった。
自分の能力を使いすぎたことと、白帝の宝玉のことについては伏せた。もし自分が持っているというのが知られたら無駄に狙われると思ったからだ。
だが、水帝の宝玉と土帝の宝玉を手に入れたことを説明した。戦をしたときに使ったりしていたためさすがに隠せなかったのだ。このことを話したら没収する危険性もあったが、報告しないときのリスクを考えると、報告せざえる終えなかった。
報告を聞いていた周りの将軍や大臣も津波や人よりも大きい石を動かせるという魔法の宝玉に興味を持ったらしい。
ジギル国王も興味津々に聞いており、すべてを話した後こういった。
「ライ、その宝玉はお主がもっていたほうがよかろう。危険を冒して手に入れたのはお主だ」
そういって、ジギル国王はライの所有を認めるのであった。
このことにほかの将軍たちから一人に所有させることの危険性や、自分たちにあわよくば手に入れられないかと思いつつ、異論を唱えていたが国王は一蹴し
「話を聞くと、水帝の宝玉と土帝の宝玉は使い手を選ぶと聞く。ならば戦闘をまじかで見ていて、すでに使ったことがあるものが使用したほうが効率がよいであろう。それとも、もしや私の言葉やリエルの騎士である、ライ軍師が裏切るとでも思っておるのか?」
この問いに全員は黙りこんでしまう。もしここで異論を唱えようものなら、すなわちそれはライが裏切ると示唆し、あまつさえ王族が決めたことに反発することになるのだ。
さすがに今貴族たちが次々と反乱を起こしているところでこのようなことをして、いらぬ危険を冒す者はここにいなかった。
周りの声が静かになった所でジギル国王は再びライに話しかけ始める。
「あらかたの報告は分かった。どうやら私が先に聞いていた報告とほぼ違いはないようだ。……それで、問題はお主達と一緒に来たという義勇兵五百と指揮官である人物だ。それでその人物はどこにおる?」
「恐れながら私の後ろにいる人物こそがローレンス砦攻略のおり、ともに戦ってくれた義勇軍の指揮官、フィルでございます」
呼ばれたフィルは緊張しながらも言葉を発する。
「お、お初にお目にかかります!私はお兄ちゃん、あ、じゃなくてライ軍師と主に戦わせていただいたフィルと申します!どうもよろしくおねがいしましゅ!」
よほど緊張していたのだろう、ここでライのことをお兄ちゃんと呼んだり最後に噛んでしまったりしていた。
そのことが恥ずかしいのだろう、顔を真っ赤にしてうつむいてしまっている。
フィルの挨拶を聞いたジギル国王は驚きつつも
「お主が報告に聞いていたフィル殿か。いや、なんというか想像では男性と思っておったのじゃがまさかこんなかわいらしい御嬢さんだとは思わなんだ。……フィル殿、そこにいるライ軍師をそして、国に力を貸してくれて礼を言う。これからもライ軍師に力を貸してやってくれ」
「りょ、了解しましゃた!」
再び噛むフィル。
微笑ましい光景に場の空気が緩み、ジギル国王も笑みを浮かべていた。若干一名、国王の隣にいる人物だけが複雑な表情をしていたがそれに誰も気が付かない。
ライはそのことよりもフィルにジギルが言ったこれからも力を貸してくれという言葉に注目していた。
「陛下、これからも力を貸すということを仰られたということは」
「うむ、お主の私兵として認めよう。本来ならばおぬしには伯爵の地位と同じくある程度の領土と資金を譲渡するつもりであった。私兵を持っていてもおかしくないだろう。譲渡する金銭の範囲内でやりくりするといい」
「ありがとうございます」
ジギルが言った範囲内という言葉は裏を返せば現在引き連れてきた五百の私兵以外にもローレンス砦に置いてきた残り約千五百の兵も私兵にしてもいいということだ。
おそらく、それもすでにエミルから聞いていて許可を出してくれたらしい。
感謝の意を伝えながら、ライ礼を言うのだった。
「では長旅でおぬしらも疲れたであろう。第五大隊の隊長であるトム隊長はここにすまないが残るように。お主にも聞きたいことがあるのでな。ほかのメンバーと、義勇軍の兵士たちと第十三大隊の兵士たちはここまで行軍してきて疲労が溜まっておるだろう。今日はゆっくりするように伝えるがよい」
「わかりました、兵士たちにはそう伝えます」
「うむ、後日また呼び出すかもしれぬがそれまでゆっくりしておくがよい。あと、義勇兵の兵士達は場内に入れ、宿舎をあてがうがよい。手続きはこちらで取り計らおう」
そこまでジギル国王が言うと謁見はトム隊長を残し終わるのだった。
王座の間を出たライたちはさてどうしようかと考えていると、ある程度予想通りというべきか、扉を出た先にはにこやかに笑う一人の女性がいた。
「お久しぶりですライ様。エミル様がお呼びです。ご同行を願いますか?他にそこにいるフィル様とティア様もできれば」
そこにいたのはリエル付のメイドであるユレイヌであった。
「久しぶりユレイヌさん。それで、エミルが俺のことを呼んでいることは分かったけど二人とも呼ぶってなぜなんだ?」
「ああ。それは……正直ご自分の胸に手を当ててお考えになったほうがよろしいかと」
「え?あ、あの、ユレイヌさん?」
「では皆様ご案内しますので後をついて来てくださいませ」
そういって先導するユレイヌ。
しかし、ライに対して対応が厳しかった。別に変なことを言った覚えはない。しかもなんだか口調的に怒っているような印象を受けた。一体何に怒ってるんだ……?
理由が分からずに首をかしげながら、なぜかユレイヌが怒っていることが分かっているらしいティアは頷き、フィルはこれからこの国の王女に合うことに緊張して足と腕が同じに出ていたりしている。
しばらくユレイヌに案内されると、ついにライはエミルの部屋に到着した。
扉の前にたったユレイヌは扉を叩く。
「エミル様。ライ様、ティア様、フィル様をお連れしました」
「分かった、はいるがいい」
そういって、ユレイヌが扉を開け中に入るように促す。
それからティア、が先に入り次にライが入り最後にライに隠れるようにフィルが入ってくる。
中に入ったライはエンリデンヌに行く前に出会ったときとあまり替わらないエミルを見て、どこか安心し、話しかけようとしたところでとめる。
エミルは確かに変わりはないように見えてはいた。でも、表情は分かれる際に見たものと全然違う。
椅子に座ってこっちを見るエミルはどこか不機嫌な空気を出して、最初に入ったティアではなくライを見ていた。いや、見ていたというより睨んでいた。
全員が部屋の中に入ったのを確認して、扉を閉めエミルのそばに立つユレイヌ。そのユレイヌまでこちらを凝視してきていて居心地が悪いったらない。
無言な空気が充満している中、緊張が限界に達したのだろう。一番最初に声を上げたのは以外にもフィルだった。
「あ、あの!フィルと申しましゅ!よろしくお願いしますです!」
途中を噛み、最後を噛まないというなんだか奇妙なことを言ったフィル。
その言葉を聴いて、エミルは少しだけ空気を和らげ笑みを浮かべながら応対した。
「先ほども王座の間であったが、私も自己紹介をしておこう。私はこの国の王女というものをしている、エミル・フェレス・ギリエルという。よろしく頼む」
「こちらこそ!」
ようやく最後まで噛まずに言えた事が嬉しかったのかフィルがよし!と可愛らしく言っているのが聞こえた。普段なら傍観をできるんであろう。
……普段の状況ならば。
「……なあ、ティア。何でそっちに立ってるわけ?」
そう、いつの間にかティアはライの傍ではなくユレイヌの近くに立っていた。
「一応かな。ライが乙女心を理解していないから」
「乙女心?」
ああ、乙女心といったとたんにまた空気が冷たくなったような気がする。
そんな中エミルは状況を把握していないライではなく、フィルに話しかけた。
「それで、いきなりで申し訳ないがフィルとやら、少し聞きたいことがあるのだ」
「は、はい!?」
いきなり話を振られると思っていなかったのだろう。元気よく返事をしていた。
「お主が先ほどライのこのことを、そのお、お兄ちゃんといっておったであろ?あれはどういう意味なのだ?今までライに兄妹がいたということは聞いたことがない。それとも生き別れの兄妹なのか?」
「い、いいえ。違います。その、昔お兄ちゃんにはよくしてもらって私が勝手に呼ばせてもらっているだけで……でも!お兄ちゃんを本当の兄として慕っています!」
最後に強く言われてエミルはたじろぐが、表情には出さずに質問をしていく。
「なるほど、それで昔とはどこで出会ったのだ?」
「えっと、孤児院で出会うことがあったのですが」
「む?孤児院で?だが私はあったことがないが」
ここでティアが補足するように説明する。
「どうやら、私たちが来た少し前に出て行ったみたいだよ。だから入れ違いで会わなかったみたい」
「なるほどのぅ。それで、ライとであってお兄ちゃんと呼ぶ間柄になったと」
「はい!」
思慮するように目を瞑るエミル。
そんな状況を見守っていたライ。しかし、先ほどから『聞きなれない』言葉を聴いて疑問に思い質問する。
「あ、あのさ。少し聞きたいことが」
ギロリッ!
もし音があったらそのような音が聞こえてくるように目線をエミルから送られるが、勇気を出して続ける。
「孤児院で……俺らは出会ったのか?」
この質問をしたことにより今度は別の意味で空気が重くなり冷たくなるどころか凍りつく。
エミルとフィル、ティアは信じられないというように。ユレイヌも純粋に驚いていた。
エミルは声を震わせながら聞いてくる。
「お、お前は。孤児院のことを知らないだと?冗談にしては笑えないぞ?」
「冗談……のつもりはないんだけど」
おずおずといいながら言うと、エミルは椅子を蹴飛ばすほどの勢いで立ち上がりライに詰め寄った。
「あ、お前は私とティアがあったことを忘れたのか?すごした日々も、交わした言葉も!それに、あの三人で約束したことも!」
「エミル様落ち着いてください」
興奮して質問してくるエミルに落ち着くように言う。
その言葉で少しだけ落ち着いたのか、椅子に戻って言った。
ショックで顔が真っ青なエミルにライは言う。
「……いいや、言い訳じゃないけど。交わした言葉は覚えてる。三人で誰かが困ったときに助けるというのは。でもその他のことは、なんと言うか断片的なんだ」
約束を覚えているということを伝えるとエミルの表情が先ほどもよくなる。と、そこで思い出したように話す。
「もしかして、報告で言っていた記憶を改変されているという奴なのか?」
エミルはライにではなくティアに聞くとティアは頷く。
「うん、多分。私もまさか孤児院のことを覚えていないなんて驚いたけど……全部攻めるわけにはいかない。この状況を作ったのは私にも原因はある。だからライを責めないであげてくれないかな」
顔を暗くしながらエミルに言うと、エミルは頷く。
「……別に記憶を失っただけならばいい。また思い出すことがあるかもしれない。それに、全部を忘れたわけではないならばいつか思い出すだろう。……だが私が怒っているのは別のことだ!」
ここでようやくライは来たと思った。機嫌が悪いのは記憶を失ったということではないとは想像がつく。その前にもずっと機嫌が悪かったのだから。ユレイヌが機嫌が悪かったのもそれが関係しているのかもしれない。
ユレイヌがエミルの代わりに質問してくる。
「ライ様、なぜ私たちが怒っているのか分かりますか?」
直球で聞いてきた質問にライは考える。
もし、逆の立場だったらと考えたのだ。もしエミルがライと逆の立場で王都にいてエミルのことが同伝えられてきたら怒るか。状況を聞いたらと。
そこでもしかしてと一つの可能性に思い当たる。
何か気づいたのかと気がつきユレイヌは少しだけ表情を和らげる。
「ライ様、おそらく貴方様が考えていることで間違っておりません。もし違ったら……その時はそのときですけど」
最後に怖いことを言われるが、ライは思い当たったことを言う。
「もしかしてだけど……無理したことに怒ってるのか?」
答えかと思い言ってみると、エミルは声を出していってきた。
「そうだ!何で倒れるまで無茶をしたというのだ!戦争はお前一人でやっているのか?違うであろう!大勢の人、仲間でやっているのだ!しかもお前の立場は軍師であり指揮官だ!そんな人物が倒れてどのくらいの動揺が広がっていたと思うのだ!」
ここまで言われてライはエミルが心配したのだろうと伝わってきた。言っていることも正論ではある。
だけど、これだけは言いたかった。
「心配させたことは謝るよごめん。でも、俺が無理をしなければならないほど相手は強かったんだよ」
エミルとしてもそれは分かっていた。軍師であるライが前に出ないといけないじょうきょう。しかも、個人で話によれば強力な魔法も持っているという。だから分からないこともない。
でも、一人のライの友達として、友人として、そして好意を寄せている人物に言わなくてはすまない。
「分かるが、他にどうにかならなかったのか?」
「あれが、最善だったと思う」
「……本当か?」
「ああ」
「私の騎士として誓っても?」
「誓って最善だったと思う」
「……」
ライの返事を聞いてエミルは黙り込んだ。
ユレイヌにはエミルが何を考えているか分かった。
ライも苦労したことは分かるが、心の部分で納得していないのだろう。
ティアがこちらに来たのももしエミルの立場になったら同じように言うからと感じたからかもしれない。
何かを考えるように再び瞼を閉じて考え始めたのを見てユレイヌはライに話しかけた。
「ライ様、話を変えますが以前町に出たときの商品のことを覚えておられますか?」
最初のように冷たい態度ではなく、柔らかい態度で尋ねるとライも少しだけ安心したようだ。
そのような空気を出しながら聞き返す。
「商品ですか?」
「はい、ティア様とエミル様、どちらかが謙虚であるかを決める際に私を選んでくださいましたよね?」
そこで、話を聴いていたフィルが興味を持ったようだ首をかしげながら聞いてくる。
「あの、いきなり聞いてごめんなさいですが商品ってなんですか?」
ユレイヌが言ったと単にティアとエミルは思い当たったのか緊張させる。ライも首をかしげていたがそのことを思い出した。
「……まさか、あの権利のことですか?」
「はい、あの権利のことです」
ティアとエミルはどうしてこんなときにという顔でユレイヌを見て、焦った様子。
フィルも質問しても返してくれないことに戸惑っていたが、ユレイヌが次に発した言葉で目を見開き動揺する。
「あの権利、一日デートをする権利を使わせていただきます。よろしいですね?」
ユレイヌが言い切ったと単に部屋の時間が止まったようであるのだった。
こんにちは、今から出かけるのであとがきは書きません。申し訳ない。
ですが明日また更新しますのでお楽しみに
ではまた。




