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第四十一話 目覚めぬ軍師

こんばんわ、また遅くなりました;;

昼に気分転換にでて帰ってきたのが八時……急いで書かなければ!と思いやり続けた結果このような時間に。

今回は戦闘はなくちょっとだけ暗い話ですが、初めて主人公がいるのにしゃべらなパートを書いた気がします。

至らないところもあるかもしれませんがお楽しみください!

 ローレンス砦での戦いは見事混成軍の勝利となった。


 城主であるレイン伯爵が負けたことと、すでに千近い敵が侵入し外からも約二千もの攻撃にさらされては砦が落ちるのも時間の問題だったのだ。


 砦を落とし、普通ならば戦に勝利したため歓声が鳴り止まないはず。


 しかし、最初にラッシュが歓声を上げ少ししてから、ある情報が出回り歓声が動揺に変わってしまう。


 歓声が動揺に変わってしまった情報それは、勝利の立役者、自分たちの上司であり指揮官のライ・ジュリアール軍師が倒れたことだ。


 幸い倒れたのが戦闘が終結に向かっている途中だったので、戦局に影響はなく終わったがもう少し早くライが倒れていたら勝っていたか分からないだろう。


 ライが倒れた後、すぐに砦内のとある一室のベッドに寝かし医師を呼んだ。元々ローレンス砦にいた医師に、混成軍にいた医師。


 また、事情を聴いたフィルがすぐさま治療用魔法ネックレス、『天使の微笑』を持ってきて総動員で治療に当たった。


 でも、治療に当たった全員が途中で困り果てることになる。


 現代の医学と魔法を使ったとしても直せるのは外傷なのだ。外傷も戦闘があったのだから擦りむくなどももちろんあった。それは、フィルのネックレスですでに完治している。


 問題は精神力のほうだった。


 精神力を使い過ぎたとしても、今のところ廃人のような兆候はなく(グリム伯爵のようにはなっていない)、予断は許さないが時間をかけて自然に精神力を戻すほかないという結論に至った。


 そのことを、フィルは別室でずっと待機していた主要メンバーに伝えた。


 フィルから話を聞いて顔を真っ青にして心配し、目に涙を浮かべているティアやリエル。会ってから日が浅いリューミルとランも表情を暗くし、ラッシュも苦い顔をしながら「あんのバカがっ!」と小さく呟いていいた。


 フィルとしても、お兄ちゃんと呼びまた、自分たちの為に戦ってくれたライのことが心配で何かして助けられるなら何でもしよう。


 だが、今のところできることはない。医療の知識をこの場にいるものより持っている自分がしっかりしなければという思いだけで、体は動いていた。


 「なので、全員お兄ちゃんが動けない間各戦後処理と砦の整理、捕虜の編成、近辺の貴族の動きや情勢を調べるなどをしてほしいんです」


 してほしいとフィルが言って反応をしたのはリューミルとラン、ラッシュだけだった。リエルとティアはまだ正気に戻っていない。


 フィルはその反応を見て、やることを分担していった。


 「まず戦後処理と砦の整理は私とラッシュさんにお願いしようと思います。第十三大隊と第十五大隊は王国の兵士。お兄ちゃん以外の人で指示できるとしたらラッシュさんが適任です」


 「ああ、わかった」


 「次に投降した捕虜の編成ですがこの砦から去るという人たちは次の町につけるぐらいの食料を持たせて解放してあげてください」


 「ん?良いのかそんなことをして」


 兵力が増えたほうがこれからも都合が良いと思っていたラッシュは思わず質問する。


 「兵力が多ければ選択肢が増えるのは承知してます。ですが今回捕虜として降ったのは約千二百。そのうち動けるものは七百人です。こちらの混成軍にも六百の死者が出ました。補充できれば良いんですけど今回は、それよりも放つほうを優先したほうが良いんです」


 「理由を教えてくれ」


 「理由は三つあってお兄ちゃんは現在グリム伯爵とレイン伯爵、エンリデンヌでドール伯爵と助けました。これは実質有力貴族を二つ潰し、北で影響力が大きい町を治めた貴族とつながりを持ったことになります」


 話を区切りまわりの反応をうかがいながら説明を続ける。


 「ということは、その話が村や町に伝わっています。ただ、いい風に伝わっていたらいいんですがグリム伯爵のところでは少し過激なこともしたみたいなのでここで民衆を味方にしようかと」


 リューミルが察して確認する。


 「フィル様が仰っていることは解放した兵士たちに伝令役を頼むということですか?」


 「はっきり言えばそうです。何かあったとき村の人々が力になってくれれば助かります。あと、念のため私たちがいたエンディル村からも数人町に散って噂を流してもらいます。お兄ちゃんが正義として認めたら誰でも助けると、でも悪事を働いたら貴族であろうと許さない、刃を向け粛清するだろうと」


 そうすれば後々ライが有利になる。そのための種まきが今重要なのだ。


 ラッシュやラン、リューミルは少しだけ引き締まった顔をしていた。ライに無理させたのだからいない間、しっかりしなければと持ったのだ。


 特に、目の前の少女、フィルに触発されたのが大きい。


 本人は隠しているのかもしれない。でも、無意識なのか右拳を握り震えている。必死に感情を押し殺しているのがありあり分かってしまったからだ。


 ティアやリエルも早く元になってほしくてもライが目覚めるか、時間がたたないと役に立たないだろう。その分がんばると決意をするのだった。


 三人の表情の変化を読み取ったフィルは、指示を出し始めた。


 「では、先ほど言ったように砦のことは私とラッシュさんで。ランさんには怪我をしていない兵士を百名ほど選びまわりの村、町、王都などの状況を調べるために密偵を放ってください」


 「了解」


 「リューミルさんは基本的に砦にいてもらいます。お父上であるレイン伯爵の刑について分かったことがあったら教えてください。それと、もう一つ。捕虜の扱いについてですが投降した兵士は貴方にお渡しします。訓練などをしてください」


 「わかりましたわ」


 「最後に、お兄ちゃんの情報はあまり外に漏らさないでください。今兵士たちには念のために休養してもらうと伝えようと思いますが、ずっと目覚めないと知ってしまったら士気にもかかわり、暗殺などの危険性があるので、お兄ちゃんの扉の前には二人の兵士を配置します。では早速行動しましょう」



 そういって、話は終わった。


 でも、リエルとティアは最後まで一言も言葉を話すことはなかった。



 それから数日間、砦では忙しくなることになった。


 ラッシュはまず戦争で死んだ、兵士たちの死体を一箇所に集め火で燃やした。疫病蔓延の危険性もあるが、できれば弔ってやりたかったのだ。その後は城に戻り事務処理をすることになる。


 フィルは兵士たちの維持費の計算、食料の残量を確認、補給地からの輸送手配、重症軽症の病人の対応、捕虜の編成処理にランと選ばれた百人が持ってくる情報の処理に追われていた。


 リューミルはフィルに言われたとおり降伏した捕虜を受け取り、直属の部隊として編成訓練をしていた。もう一つ言われた父親であるレイン伯爵の処遇についてはすでにフィルに話していた。


 レイン伯爵の処遇は遠くにある屋敷に隠居をしてもらい、ある一定の範囲から出ることを許さないというものだった。


 殺すことはやはりできなかったリューミルだが、それでも王国に反意を翻し行動を起さないでもグリム伯爵と結託してしまったのだ。それは決して許されるものではない。


 なので、父親に対しリューミルはある意味の軟禁状態の生活を強いる決断をした。


 報告を聞いたフィルは目にクマを作り疲れ果てた目で「わかりました。でも、最終的な決定はお兄ちゃんが起きてからです……ですからレイン伯爵と自由にあってもかまいませんよ」と気を使われてしまった。


 実質上、レイン伯爵が隠居すると娘になるリューミルが伯爵に本来なることになる。でも、王国で女で伯爵になっている人物は稀だ。いくら軍師であるライが起きていたとしても一存では決められず、国王の判断に任せることになっていただろう。



 そして、ティアとリエルは


 「……」


 「……」


 二人ともとある一室の椅子に座っていた。


 ここには立派なベッドがあるのだがその上に寝ているのは数日間過ぎても目覚めないライの姿があった。


 二人ともライの寝顔を見ながら無言でいた。時々様子を見にラッシュたちも来るが二人の様子を見て何も話しかけることをせずに立ち去っていく。


 もちろん、ラッシュは最初にティアたちにそんなことをしているだけでライが起きるのかと言おうとは思っていたのだ。


 だが、ティアとリエルがここまで憔悴しているのは倒れたのだけが原因ではない。


 当日にライに襲い掛かり精神力を失わせた原因について責任を感じているのだ。


 ラッシュはティアの顔を見てやめ、またこれまで長い付き合いで一緒に行動してきたリエルのここまで深刻な表情を見たら言葉をかけることはできない。


 そんな静寂が包む部屋で、突如ポツリとティアがリエルに話しかけた。


 「……リエル」


 でもリエルは反応せずライを見ている。それでもティアは話し続けた。


 「私たちって、ライの足を引っ張る存在……なのかな」

 

 ここでリエルは反応する。ティアの言葉に驚きつつも言われてみて否定ができない。


 「グリム伯爵のところではライは限界まで力を使ったんだよ。それは私たちに力が足りなかったから。前は三日で目が覚めたのに五日間経っても目覚めない。それだけ無理をさせたんだよ」


 それを聞いてリエルはしゅんとしてしまう。


 「私たちがいなければ、前日に誤解でライの精神力を消費させずにすんだ。それに、ライは私たちとの約束を破って限界まで無茶をした。約束を守って魔法を使わなければこうならなかったんだよ?だから私たちは怒るべきなんだろうけど……なんでろ、やっぱり怒れないよ。自分より仲間を優先するって知ってるんだもんライっていう人は」


 喋っているうちに色々な感情がこみ上げて言葉が震え、いくら出したか分からない涙が目から零れ落ち服を濡らす。


 「……私たちは、ライの傍にいないほうが……いい?」


 リエルはそんなことを言い始める。自分で言っているときに心に鋭い痛みが走るが、この痛みを無視して、ティアの反応をまった。


 ティアはリエルの顔を見て泣き笑いを浮かべながら


 「どうなんだろう。そのほうが、いいのかな。それがライの為なのかな。……でもさ、でもさぁ!」


 今度は大量の涙を流しながらリエルに言った。


 「私ライの側を離れたくないよぅ、折角数年ぶりに再開したのに!これからずっと一緒に入れると思ったのに!なのに!なのに!」


 半ば半狂乱になりつつティアをみてリエルも同じ思いを持っていたが、ふと一瞬目の端に何かが写った。


 一体何だろうと重い視線を向けると、そこにはライが大事に持っていたガントレッドと水帝の宝玉。そして白い宝玉が置かれていた。


 そのうちの一つ白帝の宝玉が光ったような気がしたのだ。


 見間違えかと思ったが、しばらく見てみるとまた再び光り点滅する。


 それにはティアも気づき何事かと二人で見ていた。あの点滅は何かを伝えようとしているような気がしたからだ。


 とここで、リエルは一つのことを思い出す。


 以前ライが倒れたとき目が覚めて一番最初に言ったことは、水帝の宝玉を持ってくるように言われたのだ。


 それからライは水帝の宝玉を持たなくても水を扱えていた。ということは、また今回も宝玉を持ってくれば……!


 そう考えてリエルは久しぶりに双剣の力を使い全力疾走し始めた。ティアもどうしたのか分からずに呆然としていたがリエルは急いでいたのだ。


 向かった先は現在主な舵取りをしているフィルのところだった。


現在フィルは執務室で大量の資料に埋もれていた。今は輸送されてくるであろう食糧の数とこれからどこに行くとしても、どの程度の消費量と、輸送経路を確保するべきかを考えていた。


 この数日間フィルはほど寝ておらず、ライのところにもあまり向かっていない。側に行ったとしても何もできない。自分のできることは得意な内政で負担を減らすことだと思っていたからだ。お兄ちゃんの隣には護衛の兵士とリエルさんティアさんがいるから、大丈夫。


 仕事をすることで余計なことを考えないようにしていた。


 だからだろう。


 すごい勢いで入ってきたリエルを見て驚いてしまったのは。


 「り、リエルさん!もしかしてお兄ちゃんが!?」


 何かあったのですか!と続けようとしたが、最後までいうことはできない。かぶせるようにリエルが声を出したからだ。


 「宝玉を貸して」


 「ほ、宝玉ですか?」


 「そう、レイン伯爵が持っていた宝玉」


 フィルはどうするべきか迷っていた。一応宝玉は預かっているが、あれは下手に使うと危険なものと聞いている。だが、昨日までライのことで意気消沈していたリエルがここまで言ってくるということは何かしらの打開策を思いついたからだろう。


 「……その宝玉はお兄ちゃんのためになるんですか?」


 「なる」


 はっきりと断言したリエルを見てフィルは引き出しのカから金色の宝玉を取り出した。


 「私も一緒に行きます。それでも良いですか?」


 「いい、だから早く」


 普段のリエルとは思えないほど言葉を紡ぎ、フィルの手をつないで剣の能力を使った。


 瞬間的に衝撃がフィルを遅い寝不足の体には正直きつかった。でも、それほど早くライが眠る部屋にはつけたのだった。


 「ここに来ましたが、どうすれば?」


 「貸して」


 そう言われてフィルはリエルに宝玉を渡す。


 先ほどいなくなったと思ったリエルがフィルを伴って戻ってきたことにティアは混乱したが、リエルが手に持っている宝玉を見てようやくリエルがしようと使用ことに気がついた。


 リエルはすぐに走り点滅している宝玉に金色の宝玉に近づける。


 すると金色の糸のようなものが白い宝玉に流れ込む。

 

 その状態がしばらく続いて収まった頃。


 今度は宝玉の目の前に白い光が集約し人の像を結んだ。


 現れたのは以前一度だけあったことのあるエスティアであった。


 「……お久しぶりね貴方たち。一人は会うのは初めましてかしら」


 いきなり現れたエスティアにフィルは驚くがすぐに別の声が遮る。


 「エスティア!ライは大丈夫なの!」


 「ライはいつ目覚める?」


 詰め寄ってきた二人にエスティアは少しだけ目線を鋭くして視線を返す。その視線は敵意と言ってもおかしくないもので、向けられた二人は思わず退く。


 その様子を見ながらエスティアは言う。


 「まず最初に言っておくけど私の位置はライの部下、下僕とも言ってもいいわ。そして、主であるライに負担が掛からないようにする役目もある。……だから、戦前に精神力を消費させた貴方たちに対して今機嫌が言い訳ではないわ」


 エスティアの言葉に声が出ない二人。反論したくてもできなくてエスティアが怒るのも無理がないと感じたのだ。もし逆の立場だったら自分も怒っているだろうから。


 二人が俯き無言になるとエスティアは視線を和らげやれやれといった感じで話しかけた。


 「……でも、私の忠告を聴かずに魔法を使い続けたライにも原因はあるわ。だから、貴方たちに説教をする前にライを説教しなくちゃね」


 その言葉を聴いて二人はもちろんフィルは見逃せない言葉に反応していた。


 「説教って、お兄ちゃんは無事なんですね!」


 一番最初にフィルが聞くと柔らかい笑みを浮かばせながらエスティアは答える。


 「ええ、何とかね。今はまだ精神力が回復していないから目が覚めないでしょうけど、数日後には目が覚めるはずよ。その前に私が引き起こさないといけないんだけどね」


 本当に危険な状態になっていたのは間違いない。ライがあと少ししたら脳が破壊されていた可能性や以前のグリム伯のようになっていた可能性も。


 だがそうならなかったのは実は、いくつかの要因がある。


 フィルの持つ魔法ネックレス『天使の微笑』には精神力に作用するものがあるみたいなのだ。


 でもそれだけでは不足はしていた。天使の微笑でも危険な状態は続いていたのだ。


 だが、意外なことでライは危機を脱していた。


 それは、リエルとティアの要因が大きい。


 人間は一人のときよりも誰かが近くにいたほうが安心できる。目は見えなくても、ティアとリエルがずっと近くにいたことにより、精神が安定していたらしく精神力回復も強化されたようなのだ。


 このことはエスティア自身初めて知ったが、自分が宝玉を点滅させることで伝えることができたのも、ライの精神力がある程度安定したからであった。

 

 だから、二人に対して最初敵意を向けたが緩めたのだ。主である、ライを無意識のうちに助けてくれていたのだから。


 大丈夫だと聞いた三人は安心して緊張したのか床にペタンと座り込んでしまった。その様子を、微笑みながら笑いかえるエスティアは三人に言う。


 「なら私は戻るわね。もう大丈夫だから貴方たちもライが起きるまでは外のこと任せるわ。特にそこに二人。しっかりしなさいな。起きたときにライに嫌われたくないでしょ?」


 ライが起きたとしても感謝することこそあれ、二人を嫌うことはないはずだ。


 でもライが倒れる原因を作った二人に意地悪として意地悪をいったつもりだったが効果は抜群だ。


 二人とも目から涙を流しあふれ出る涙をぬぐいながら何度も頷いている。


 それを見て、最後にフィルのほうを見るとフィルも同じように安心して涙を流していたがエスティアと視線が合うと任せてくださいというように頷く。


 「じゃあ、また合いましょう」


 そういってエスティアは消えていった。



 未だに目覚めぬ主に色々といいたいこともあるのだ。そのような思いを秘めて、エスティアは早く起すために宝玉に戻っていくのだった。

 

 

いかがでしたでしょうか。

昨日書いた時点ではアイディアが浮かばずどうしようと思い悩んだんですが、いざ、何も考えていない状態で椅子に座りキーボードを前にすると以外にアイディアが出てくるものですね。

人間なんとかなるなーと思っていた今日この頃でした!

次回予告ですが、次はお眠り主人公とエスティアの会話がメインになるかも?しれません。話の流れでは起きた後のことも書くかもしれませんが一日一日で変わっていくのでご了承ください。

では、今回はこれでまた明日!

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