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第四十話 ローレンス、エンディルの戦い 後編ー2

お待たせしました><活動報告で10時半ぐらいといっていたのに四十分もオーバーしてしまいすみません;;

理由を言わせていただければ、なんと二話分を書いてました!一万二千文字です!

途中で区切ればと思ったんですが後編ー3なんていくつまでやるんだ!という感じでしたのでがんばりました!

ちょっと長くて大変かもしれませんが楽しんでいただければと思います!では!

 行軍中だいたいの指示を出し終えたライは、その後順調に進軍することができた。


 もしかしたら道中に罠や伏兵の危険があり警戒していたがよほどローレンス砦付近の防備に自信があるのか、または余裕がないのかそういったことはなかった。


 そして、ついにローレンス砦の眼前に姿を現すのであった。


 その様子をローレンス砦の所有者であるレイン伯爵が城壁の上から見ていた。


 「ふんっ、どうやらあのトムとかいう奴も裏切ったようだな。一応裏切られてもいいように土弓の腕輪を持たせていたはずだがしくじったか」


 今眼前に広がる敵の集団は正直レイン伯爵の想像より多い。


 トムに裏切られたとしても、これよりもっと少ないことを予想していた。こちらの軍が出発する前に入ってきていた報告では相手は約三千と聞いていたが、第五大隊が合流して三千五百以上はいると思われる。


 ということは、こちらの軍はたった数百しか敵を倒せなかったということになる。


 (あのライとかいう軍師を侮りすぎたな)


 そう思いつつ、軍師の顔を思い出すがすぐに考えを中断する。


 「まあいい。どうせ出陣させた兵士たちは時間稼ぎのための兵たちなのだ。所詮は使い捨て。本命はすでに準備ができてる。さあ、掛かってくるならかかって来い!」


 レイン伯爵は敵陣にいるであろうライに向けて言い放つのであった。


 場所は変わり、ローレンス砦付近に展開している混成軍は陣地を構えるがすぐに突撃をすることはなかった。


 ずっと動かないでいる。


 そのことに疑問を持った各部隊長は(ティアとリエル、トムを抜いて)集まっていた。すでに、ティアとリエルにはこちらの合図とともにあることをしてもらうことになっている。


 近寄ってきた面々を振り返ると代表してリューミルが聞いてくる。


 「あの、ライ様。どうして攻撃されないのでしょうか?攻撃しなければ別働隊が動けないと思うのですが……」


 リューミルとしては、ライに何かしらの考えがあるのだろうとは思っていた。しかし、何もせずにここにいては兵士たち、特にまだ付き合いが浅いエンディル村の兵士たちは不安に襲われる可能性があり質問をしたのだ。


 リューミルの問いにライは返事を返す。


 「ちょっと砦上の相手陣形がおかしいと思ってさ。このまま前進したら嫌な予感がするんだ」


 「陣形ですか?」


 リューミル達はそう言われて城壁を見る。城壁にはこちらが接近したら弓を撃つつもりなのだろう。弓兵が待機しており、こちらを注意深く見ている。


 でも特に変わったところは気がつかない。


 「私には特に異常は見られないですが」


 「そうだろうね。でも逆にそれがおかしいんだよ」


 「ライ、勿体つけねえでさっさと説明してくれよ。じゃないと、ティア達が戻ってきちまうかもしれないぜ?」


 「それは困るね。分かったよ。簡単に言えば敵にリューミルさんが使っていた宝玉を持っているのに普通の配置にしたのに違和感を持ったんだ」


 「そんなの普通じゃないのか?」


 「通常なら普通だろうね、ただ相手は土関連の魔法を持っているんだ。リューミルさんから聞いた話や噂は土に関係したことばかりだっただろ?水帝の宝玉みたいに何もないところから大量の物質、この場合は岩石や土、砂などを出すなどはどうやらできないみたいだけどね」


 「どうして分かるんだよ」


 「もし、できるならここに現れた時点で上から岩とかに押しつぶされてるよ」


 ラッシュがそれを聞いて納得していた。


 「なら考えるられることは、あの宝玉はすでにある物質、いわゆる地面の岩や土を操作することができるんじゃないかと思うんだ」


 「あ、っていうことはお兄ちゃんは砦付近の地面に何かあると考えているんですか?」


 フィルが何かを悟ったように言ってくるとそれにライは頷く。


 「うん、多分そのはず。でなければ城壁に弓兵を置くとかせずに道中奇襲や罠を仕掛けたり、外に兵を配置して岩や砂を飛ばしたほうが効率的だろ?」


 「ですね、宝玉の力をまだ見たことがありませんがもし地面に何かが、足止めするなどのことが仕掛けられていた場合、上から弓を降らせる魂胆ってことですね」


 「俺はそう思うんだけど、リューミルさんは以前使ってたんだからそのところどうなの?」


 「申し訳ありません。正直なんとも言うことはできないんです。土地を豊かに、土砂をどかしたなどをしたりしただけで大規模にやったことはなかったので……あの力で攻撃をしたこともありません」


 「わかった。正直どうしようかと迷っていたんだけど……しょうがない。まだ温存したかったんだけどね」


 そういってライは集団から前方に突出し馬の上で右腕を砦前方上空に向ける。


 【ちょっと早すぎるするけど、大丈夫なの?】


 予定より早く力を使うらしいと思いエスティアは心配そうに聞いてきた。


 「しょうがないって、戦争は個人より集団の力が重視されるんだ」


 【でも、時には集団より個人の力が重視させることもあるわよ】


 「かもね、だけど今は集団のときだ」


 エスティアの言葉を否定しながらライは水帝の力を放った。


 ([水帝 水弾3 滝1 広範囲0 白帝のガントレッド、小範囲複数 中範囲2 広範囲1]残り水帝の宝玉と白帝のガンドレッド使用可能回数。精神力限界の目安)


 ライが使ったのは広範囲の魔法だった。


 突如、ローレンス砦の砦前方から大量に水が発生した。


 「て、敵の攻撃か!」


 突如現れた大水に慌てたレイン伯爵。あのまま水がこちらに落ちてきたら下手したら城壁から投げ出され下に落ちてしまう。


 すぐに近くの岩にしがみ付き衝撃に備える。


 反応が早いものはレイン伯爵に続き、反応が遅れたものは呆然と目の前の光景を見ているだけしかできなかった。


 しかし、結果から言えば反応が遅かった兵士達の方が事態を把握することができた。


 上空に現れた大量の水は砦に流れるのではなく、なぜか外側砦付近に後半囲に落ちていったのだ。


 落ちた水は、地面とぶつかりあたりに鋭い音を響かせる。一斉に聞こえる弾くような音は砦にいた兵士達や混成軍の兵士達にも聞こえ、すぐに耳を押さえた。


 でもすぐに音がやむと次に混成軍の兵士達には疑問が浮上してくる。


 なぜ、水を砦に流すのではなく手前に流したのか。あのまま城壁にいた敵兵を巻き込めば、崩れたところを突撃でき勝てる確立が高くなったというのに。


 でも、彼らはすぐにライがした意味を知ることになる。


 水が落ちたはずの地面をよく見ると、地面に至る所に異常が確認できたのだ。


 城門を中心にクモの巣のように色が薄くぬれた場所といくつ者黒く水が染みた土がある場所の二箇所があるのだ。


 この違いはなぜか。それはすぐにライが説明した。


 「地面を見てわかるように地面には二つの色があるだろう!そのうちに決して黒い土の部分は踏むな!踏んだら最後、落とし穴に落ち串刺しにされるか上から矢を撃たれ死ぬぞ!」



 説明を聞いて、最初は半信半疑だったライ達。しかし、すぐに大歓声が上がる。あのまま突っ込んでいたら大勢が死んでいただろう。そのぐらいに沢山の落とし穴と思われる場所があったのだ。


 大歓声が収まらないうちにライは負けないように声を張り上げて指示を出した。


 「よし!ではこれからローレンス砦攻略を始める!第一部隊は前線に進軍!その後ろをフィル隊のの弓兵部隊が続き射程に近づいたら一斉掃射、第二部隊は左翼の砦側に進軍、第三部隊は右翼砦に進軍!弓兵は攻撃が激しいと思われる場所に撃つんだ!第一第二第三部隊のいずれかが城門、または城壁に到着したら後方からはしごをよこす、城内に殴りこめ!」


 指示を出したとたんに歓声は一際大きくなる。

 

 「では全軍進軍開始!」


混成軍がついに動き始めた。


 全員が、駆け足で前に走っていく。もちろん事前にライが説明したように黒くなっている場所は避ける。


 黒くなっている場所はたくさんなあったが、おそらく戦が終わった後のことを考えたか、また馬車が二台分とおれるぐらいの進む道はあるようで、足止めをするには不足。


 混成軍動き始めたのを見て、レイン伯爵は先ほどの水の真の狙いを察する。


 「やられた!こちらの策を看破されていたか!」


 レイン伯爵の考えでは数で勝る敵が兵にものを言わせて襲ってきた所を宝玉を使い地面に落とし、穴の中にある槍などで串刺し、または上から撃つ弓で倒すつもりだった。


 宝玉を使わない限り落とし穴として機能しないから、看破することはできないだろうと思っていたのだ。


 でもまさか、地面の厚さを利用して水で場所を特定されるとは思わなかった。


 城壁にいる兵士達も動揺しているようでちょっとした混乱をきたしている。あの水は結局は罠を見破るために使ったのだ。


 しかし、もし次こちらに大量の水が流れ込んできたら危ないのではないかと恐怖していた。ライがすでに使えないのだが知らない兵士達には再び使えると考えてもおかしくない。


 レイン伯爵は落ち着かせるために声を張り上げた「。


 「全員落ち着くのだ!こちらの策が一つ破られたといってもたった一つ!しかも相手が使ったあれほどの大規模魔法をそう何度も使えるはずがない!それよりも今は目の前の敵に矢を放つんだ!こちらにもまだいくつもの策はある!」


 魔法が何度も使えるはずがない。根拠もなく伯爵は言ったのだがこれは偶然にも正解でありこの言葉を聞いた兵士達は冷静さを少しだけ取り戻し順次眼前に迫る敵に弓矢を放ち始めた。


 矢が降ってくるのを見て第一部隊を率いるラッシュは指示を出す。


 「城壁から矢が降ってきたぞ!全員たてを頭上に掲げろ!亀のように動けば相手の矢なんて怖くねえぜ!」


 第一部隊の兵士達は指示通りに盾を掲げる。落とし穴を避け細い道を固まって移動していたのもよかった。盾が密集し、被害が大きくはならない。


 第二部隊(ラン率いる)、第三部隊(リューミル率いる)も同じように盾を掲げた。今の目的は城壁か城門に取り付くためだ。


 前線に矢が降り注いだの見て、ちょうど射程位置についたフィルは急いで号令をかけた。


 「前線を援護するためにこれから城壁弓兵に向け、一斉掃射します!不利な場所を指示するので指示はしっかり聞いててください!最初は城門正面の第一部隊を援護します!一斉掃射始めてください!」


 弓を引き絞り号令と共に弦を離した矢は放物線を描き空を飛んでいく。


 しかし、滞空時間はそれほどなく約五百近い弓矢が城門上にいた兵士達に刺さり、または石に弾かれ落ちていった。


 城壁に少なくない悲鳴や痛みに苦しむ声が聞こえるが、負けじと矢を放つ。


 混成軍が城壁までもう少しというところで、ローレンス軍に変化が訪れる。


 「よし!敵は城壁付近に近づいたな!全員土矢に持ち変えて撃ち放つのだ!私は敵の足止めと攻撃を開始する!いいな!」


 レイン伯爵が指示をし、野戦で苦しめられそうになった土矢を兵士達が持つ。それから苦しめ始めたのは混成軍だった。


 突如矢が土矢に代わり、盾に伝わる衝撃と威力が強くなったことが分かる。


 これを第二部隊を率いるランはどうしたものか考えていた。


 (あの矢は非常に厄介のようですね。今はまだ防御に達しているので何とかなってますが……早くしないと、衝撃に負けてほころびが出てそこから被害が大きくなる)


 ランはそう考えていたが、そこにさらに追い討ちをかけるように更なる脅威が迫る。


 レイン伯爵が混成軍が近寄るまで土矢を使わなかったのは本数のこともあるがそれだけではない。宝玉の射程範囲におびき寄せる意味もあった。


 「これでも食らえ!」


 そう叫んだレイン伯爵の持っている宝玉が黄色に輝き変化が訪れた。


 戦闘が始まる前に持ち運んだ大きな岩をいくつも空中に浮かばせて、任意の所に勢いをつけて落とし始めたのだ。


 土矢を盾で防ぐことはできても岩までは重さと衝撃で完全に防ぐことはできない。しかも、衝撃を受けたときに体勢を崩されそこに大量の矢が殺到しそこから兵士達は串刺しにされ始めた。


 これには混成軍に焦りが浮かび始める。


 こちらはまだ城壁にも続いておらず、散開しようにも周りには落とし穴が大量にあり今できることは矢を盾で防ぐことと、岩が自分の頭上に落ちないことを祈るだけだった。


 この異常はフィルも気がついていた。このままでは士気や流れを持っていかれてしまう。すぐにフィルは指示を変更した。


 「現在の掃射目標を正面城壁から、先ほどまぶしく光が光った場所へと変更します!順次掃射を開始してください!」


 突如の命令にもたついた兵士達だったが、すぐに指示通りに攻撃を開始する。これで、どうにか相手の攻撃が少しでも緩めばとフィルは思っていた。


 だがその思惑は打ち破られる。こちらに狙いを定めたことを知ったレイン伯爵は宝玉の力で岩を目の前に構築し覆いつくす矢から身を守った。その間に先ほどと同じように後ろにおいてある岩を混成軍部隊に落としていく。


 状況の推移を見ていたライは旗色が悪いことを悟り、後方で待機していた梯子隊に指示をだした。


 「梯子隊!全体第一、二、三部隊の後ろに続き梯子をかけろ!」


 この命令に梯子隊に動揺が走る。

 

 どうみても旗色が悪いのにこれでは死んで来いといわれたとも同然だからだ。動揺したのをライは知っていたが無視して次の言葉を伝える。


 「俺がこれから弓矢と岩をすべて防ぐ!梯子隊が中腹に到着したら展開するから安心しろ!分かったら全体突撃してくれ!」


 【ちょっと待ちなさいライ!?】


 慌てたエスティアの声がしたが無視して、梯子隊のほうを見る。


 すると、以前ライが矢を防いだことを知っている兵士達は納得し梯子をもって突撃を開始した。


 ライ達の周りには残り騎兵部隊であった六百の精鋭騎兵が残ることになった。野戦で絶大な威力を誇る騎兵も攻城戦では役に立たない。でもこの騎兵隊がこの後の作戦で重要な役割を持っているのだ。


 梯子隊の後姿を見ていたライだったが、エスティアの慌てた声が聞こえてきて意識を向ける。


 【あなた分かってるの?すでに水帝の広範囲魔法を使った後なのよ?ここで白帝のガントレッドの補助があるからって広範囲の壁を形成して大丈夫だと思っているの?】


  「でもそうしないと、負けるよ」


 【そんなの知らないわ。私の主人は貴方なのよ?主人の安全を第一に考えるのが当たり前よ】


 「……そんなことを言うなよ。戦う前に頼むって言ったじゃないか」


 【そうだけど……!】


 エスティアの考えでは水帝の広範囲をつかったとしてもライは水弾と滝、小範囲の壁魔法を使うだけと思っていた。


 でも二連続で広範囲を使った場合の影響を計算できていない。ライが倒れるどころか、命にかかわる可能性があるのだ。


 「っと、そろそろ時間だな。それはまた後でってことでいくぞ!」


 【待ちなさいライ!リスクがたかす】


 エスティアの静止を聞かずにライは両手を砦と見方との上空にに向け意識を集中させる。


 集中するときに以前グリム伯爵と戦ったときにも感じた頭痛が襲ってくるが、無視して魔法を発動した。


 すると戦場に再び変化が訪れる。


 矢を防ぎながら岩を飛ばしていたレイン伯爵。でもいきなり飛ばしていた岩が空中で止まり弾かれたのを見て驚愕する。周りを見ると城壁から放っている矢も弾かれて地面に落ちていた。


 「何が起こっているのだ!?ま、まさかあの軍師が!」


 そういえばあの軍師がグリム伯爵と戦ったときに矢を空中で落としたということを聞いたことがある。最初は眉唾物と思って脅威は水帝の宝玉だけだと思っていた。


 だが目の前の現状を見てそれは事実だと実感するのだった。


 空から矢が止まったことを知り、各部隊の隊長はライが何かをしたと納得しすぐに指示をする。


 「後ろのライが弓矢と岩から守ってくれたぞ!全員すぐさま城壁に取り付け!そして梯子隊の道を開けろ!」


 兵士達はすぐさま盾を降ろし全速力で城壁に走り始めた。


 見事城門と城壁に取り付いた部隊は後からやってきた梯子隊の橋を架けると上り始めた。


 その様子を身ながらラッシュは勝負が五分に戻ったと感じつつも後ろにいるライのことが気になった。


 確か、あまり大規模なことはできないといっていたのに大魔法を連続して使ったのだ。これ以上負担をかけるわけにもいかない。


 「くそっ!全員これ以上ライに負担かけんじゃねえぞ!絶対にさっさと砦を攻略するぞ!」


 「「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」」」


 ラッシュの部隊から気勢が上がる。


 それを後方でライはうまく梯子をかけることに成功したことを確認して安心した。


 とここで少しだけふらつく。万全な状態ではないのに大魔法を連続して使うにはやはり無茶だったみたいだ。

  

 でも何とか意識は保っていた。


 【……なんとか無事みたいね】


 無事といいつつ不機嫌な空気を隠そうともしないエスティアの声が聞こえる。


 「なんとかね。戦況も五分に戻せてよかったよ」


 こちらの被害も何百人となっているだろうがそれでもまだ攻め落とすのは可能な兵力は残ってそうだ。


 エスティアはまだ刺々しい空気を送ってくるがライは別のことを考える。


 「後は、ティアとリエルの動きで戦況は変わるかな。俺らも」


 そういって、今ティアとリエルが何をしているのだろうかと考えるのだった。


 

 時間は少し戻りライが白帝のガントレッドを使用する少し前、


 ティアとリエル、トムと少数の兵士達は現在主戦場になっている南門とは逆の北門、しかも城門付近ではなく少しはなれた城壁にいた。


 なぜライが城を包囲せず正面だけに兵力を集中させたか。もちろん兵力の問題もあるが、別にティア達の存在から目を逸らすためだ。


 水を大量に撒きつらしてくれおかげで注意は北門にはない。


 ちなみに、北門にももちろん落とし穴があったがレイン伯爵が落とし穴を見破られたことを知り、発動させなかったためティアたちは無事落とし穴に落ちることなく接近することができた。


 「トムさん、本当にここにあるんですか?」


 城壁付近を歩いているティアは先頭を歩くトムに質問する。


 「はい、もう少し歩いたところに……ありましたぞ!あそこです!」


 そういって指す先には排水溝と思われる場所があった。進入を防ぐために鉄格子がはめてあるが、古いのか長年水にさらされたからだろう。鉄格子は錆びて強い衝撃を与えれば取れそうな気がする。


 「少々待ってください」


 トムがティアに反して腰にある袋から取り出したのは刀身が赤く光るナイフだった。それを見てティアはナイフが魔法道具だと推測する。


 トムはナイフを持つと音を立てないように水の上を歩き鉄格子に近寄る。


 そして、ナイフを鉄格子の上部分とした部分を一閃すると鉄格子は綺麗に切断され取り外される。


 だが鉄格子を切断した代償なのかナイフのほうも赤い刀身から光が失われ水の中に落ちていった。道具が壊れてしまったことに驚いているとトムは笑いながら説明してくれた。


 「これはとある剣のレプリカなんです。なので一度しか使えません。ですが、一度だけだったら弱った鉄を切断することぐらい簡単です。それよりも早く行きましょう気がつかれないうちに」


 ティアは頷き後ろに、その後にリエル達も続く。一度だけでもあのような切れ味を持つものをこんなところで使って後悔がないのかと聞きたかったが、今は戦場なのだ目的を達成するのが先決であった。


 排水溝を進みティア達はしばらく中を歩くが、まさかここを通ってくると予想はしていなかったのかすんなりと砦内に侵入することに成功する。


 排水溝から出た場所はとある倉庫だった。倉庫の一角に排水溝から出る場所がありどうやらここは緊急時に脱出するための抜け道として利用されるものだろう。排水溝の鉄格子を繰るのではなく別の道には無事抜けられる道もあるはずだ。


 倉庫から進入したティア達はライの指示を思い出していた。


 「城内に侵入したら兵量庫か燃えやすいものがある場所に火を放ってほしい。あと、できれば東門を開場する用意ができたら火矢を一本あげてくれ。こっちは混乱させるようにフィルに二本放ってもらうから」


 侵入する前にライにこのような作戦を伝えられていた。後は火を放ち東門を制圧、開城するだけだ。


 と、倉庫の扉前がいきなり開かれる。


 「何か音が、って、お前達は何者だ!ここでなに」


 一人の見回り中らしい兵士が中に入ってきて叫ぼうとしたが最後まで言い切ることはできない。双剣を抜いたリエルが兵士を瞬く間に切り捨てていたからだ。


 切り捨てた兵士を見てからリエルは言う。


 「早く行ったほうがいい。……なんだか嫌な予感がする」


 リエルの勘は結構あたる。そのリエルが予言したのだ。早く行動を起すことに誰も意義を唱えずすぐに行動を開始した。


 でもリエルの胸の中には何か嫌な予感が渦巻いて消えなかった。


 それでもリエルにティア、トム達は急いで動き始めた。


 場所は南門、主戦場に移り戦況は膠着し始めていた。


 このままでは攻めているこちらが再び不利になると感じていたが、ティア達の侵入組みを信用するしかなかった。

 

 と焦り始めたところでついに待ち焦がれたものがローレンス砦内から放たれた。


 二つの火矢が空に上がったのだ。

 

 それをみて、こちらのフィル隊から二つの火矢があがる。


 「よし!合図が来た!伝令はそのまま戦闘継続を第一部隊と西側にいる第二部隊に伝えるんだ!東門に近い第三部隊にはこちらの騎兵が東門に向かったら正面攻撃を中止、騎兵の後ろに続き東門を強襲するように伝えろ!いくぞ!本陣はこれから東門を強襲する!」


 「「「「「「おう!」」」」」」


 「全員俺に続け!」


 そういって、先頭でライが馬を走らせる。その後ろを伝令である騎兵以外約六百の騎兵が後に続いた。


 その動きと先ほどあがった火矢を見て何事かとまず砦内から上がった火矢の場所を見た。


 するとそこから煙が上がっており、火災が発生していたのだ。それですでにどうやってかは知らないが侵入者がいることに気がつく。


 レイン伯爵は舌打ちしつつも、相手騎兵が動いている意味は分からない。


 攻城戦でなぜ騎兵を移動させているのか。しかも西に。砦内の敵の合図は外にいる敵弓兵に伝えた連絡ではないのか?そこでなぜ騎兵を動かす?


 そうしている間にも敵騎兵は東のほうに向かっていた。と同時に東側に近い敵部隊が騎兵の後に続き動き始めているではないか。


 「まさか!?」


 最悪の考えが頭に浮かびレイル伯爵は後方にいる兵士達に城壁上から指示を出した。


 「おい!お前達は至急東門に向かうのだ!砦内に侵入者がいる!敵に狙いは東門の開門だ!扉が開いたら我らは負けるぞ!」


 それを聞いた兵士達は動揺し慌てて東門に向かっていった。


 急いで東門に向かった兵士達が見た光景はすでに集まっていた兵士達と敵と思われる兵士が戦っている姿だ。その姿を見て急いで制圧しなければと焦るがなかなか制圧できていないらしい。


 敵兵の中には女が二人いて、なぜ味方がこんなにもたついているのか混乱していると、すぐに知ることとなった。


 銀色の髪の少女が眼にも留まらぬ速さで動き味方を次々ときっていっているのだ。その後ろから、背後に回られないように奇妙な曲がる槍を持った女が兵士を近づけさせないようにしていた。


 城門は最悪なことに狭く作られているので一度に襲い掛かれないのも押し込めない理由であった。他にも男の兵士もいるが腕があるみたいだった。


 とここで、リエルとティアの耳に馬が走ってくる音が聞こえてきた。


 この音はリエルとティア達には勝利の女神による音、ローレンス軍にとっては死神の音に他ならなかった。


 「お、おい!急いでそんな数人蹴散らせよ!」


 「やれるならやってる!でも倒せないんだよ!」


 「早くしないと敵騎兵が!」


 「んなのわかってるこのちくしょうが!」


 徐々に大きくなる馬の足と、地響きに焦りを見せていたローレンス軍。でもその焦りと必死さもかなわず、無常にも混成軍の一人であるトムが東門を開いた。

 

 その先はすでに騎兵が見えておりライも門が開いたことを確認していた。


 うまくやったんだなみんな!


 そう思いながらライはさらに速度を上げるように指示する。


 「味方が東門を開いてくれたぞ!全員速度を上げろ!いくぞ!」


 そういって門を潜りライは東門の近くで戦っていたティアやリエルと一瞬だけ視線を合わせるだけでそのまま突き進み城内に襲い掛かる。


 「騎兵の後続は東門を確保後南門の制圧に向かえ!後方からやってくる歩兵には城壁に上り弓兵の処理を頼む!城壁の上から矢が飛んでくるから物陰に隠れながら移動しろ!」


 指示をした後ライは中央あたりで襲ってきた敵兵の相手をしていた。


 その直後にライを呼ぶ声が聞こえる。


 「ライ!」


 声のほうを見るとティアとリエルが敵兵を蹴散らし近寄ってくる。


 「二人とも無事か!」


 「うん!何とかね!」


 「大丈夫、あとはレイン伯爵をやっつけるだけ」


 「なら二人ともついてきてくれ、おそらくレイン伯爵はこの先の広場辺りにいるはず!」


 「わかったよ!」


 「わかった」


 そういって三人は少数の騎兵を従え南門ではなく西門に向かっていくのだった。


 普通なら南門の城壁にいると考えるはず。しかし、宝玉の力を使うとしたらおそらく立地条件が一番良い場所、そう、たとえば訓練場に向かうかもしれない。


 事前に砦内のことをリューミルに聞いていたが訓練場は西門にあるらしい。


 そして、予想通り訓練場中央にローレンス砦の持ち主であるレイン・ローレンス伯爵が黄色に輝く宝玉を持ちながらたっていた。


 馬から降りレイン伯爵に近づくとライはレイン伯爵に話しかける。


 「レイン伯爵。もう貴方の負けは明白です。大人しく投降してください。そうしていただければ命の保障はいたします」


 ライの言葉を聴いたレイン伯爵だったが、すぐに首を横に振る。


 「嘘をつかないでいただきたいですな軍師殿。先のグリム伯爵と戦ったおりわざわざ中央広場でグリム伯爵の首をはねたのはしっておるのです。信じることはできませんな。それに軍師殿は一つ勘違いをされている」


 「勘違い?」


 「それは、軍師殿を殺せばまだ勝機はあるということ!」


 そういうとレイン伯爵はいきなり周りに隠してあった岩を左右から二つライ目掛けて飛ばしてきた。ものすごい速度で迫ってくる岩は人一人ほどあるかもしれない。ライは避けることができるかもしれなかったが、このままリエルかティアが巻き込まれる可能性があった。


 【ライ!あなた、もしか】


 最後まで言い終わることなくライは水弾を空中に二つ作り左右の岩に飛ばす。すると飛んできた岩ははじけ飛び、地面に落ちていった。


 レイン伯爵人ぐらいの大きさがある岩を人の顔程度の大きさの水が破壊したことに驚いていた。


 ズキッ


 頭に針を刺されているような痛みが襲ってきた。足元もふらつき始めるし本当に限界が近いらしい。


 でも、もう少しだけやらなければならない。


 驚いたレイン伯爵の隙を逃さず腰にある持っていたナイフをレイン伯爵に投げた、投げられたライフはまっすぐレイン伯爵に向かっていくが、伯爵はとっさに地面から土の壁を作り出しナイフを防ぐ。


 視界を塞ぐ結果となったが今度はこのまま四方に隠している岩を軍師に向ければ!


 意識を集中させて動かそうとしたとき


 「お父様!もうやめてください!」


 ライの後ろ側からリューミルの声が聞こえた。娘であるリューミルの声を聴いてレイン伯爵は一瞬だけ固まってしまう。


 それを逃すライではなかった。拳程度しか作れなかったが水弾を作り壁に向かって飛ばす。すると、壁は砕け飛びレイン伯爵に襲い掛かった。至近距離で飛んでくる岩を腕で受け止めるが衝撃は強く地面に倒れこむ。


 すぐに体勢を整えようとするがいつの間に着たのか銀色の髪の少女が剣を首につきて立てていた。観念したレイン伯爵は肩を落とし諦めこの後に来るであろう死を覚悟した。


 リエルも剣を押し込もうとしたとき突如間に割り込む影があった。


 リューミルだ。


 「お願いです!お父様は許されないことをしようとしたかもしれません!でも、どうか命だけは許していただくことはできないでしょうか!お願いします!」


 必死にリエルにリューミルは懇願していた。


 それにリエルは困った顔をしてライのほうを見るがそこで、リエルはすぐにその場を離れライのほうに近づく。そこでティアも気がついた。


 「ライ!?ちょっと、大丈夫なの!?」


 「ライ、ライ!」


 リエルとティアが見たライの顔は真っ青で今にも倒れそうなのだ。体をフラフラさせ足は震えているようだった。


 そんな状態なのにライは言葉を搾り出す。頭が割れそうに痛む。でもこれを言わなければ自分が意識を失った後リューミルが悲しむことになるかもしれない。


 「リューミルさん、貴方の責任でレイン伯爵を処罰してください。俺達が納得するような」


 その言葉を聴いて、リューミルは眼を見開く。でもそれに気がつくこともなくライは言葉を続けた。


 「あ…とさ、すぐにていせ……んをす……るように」


 そこまで言ってライは倒れた。また自分は倒れてしまったんだなと思うがそれだけを思考するのもできなくなる。


 、ライは戦場で騒がしいはずの場所にいるのに徐々に何も聞こえなくなり、明るい日の光もなくなっていき、意識を手放すのだった。


 

 


 



いかがでしたでしょうか。

正直今もう、疲れ果てました!

まさか三時間ぶっ続けで書くとは思わなかった…

次回予告は今回なしにします。

次のことを考える前に休みたいのです!ごめんなさい><

ではまた明日更新すると思いますのでよろしくお願いします!また明日!

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