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第三十五話 悪い話と良い話 

お楽しみください!

 ライ達がエンディル村に到着して、兵士達が気がつき近づいてしたことといえばライに武器を突きつけることだった。


 集まってきた兵士十人は槍をライに向けフィルを解放するように叫ぶ。ちなみにランのほうにも槍を向けられていた。どうやらライの仲間だと思われたらしい。


 フィルは慌てて兵士達の間に入り二人を呼んだのは自分で非はないと説明していた。


 先日、食料を奪うために殺し合いをしたのだ。いかにライ達に非がないといってもどこか今回の共闘が納得できていない兵士もいるのだろう。


 ライとランは静かに黙りフィルに任せることにした。


 そして、十人の兵士たちはようやく納得したのか兵士達は槍を下ろし自分たちの配置に戻っていった。


 説得を完了させたフィルは申し訳なさそうにしながら説明を屋敷でするといい、まずはずぶぬれになっているランと怪我をしたライの手当てをするといい、ライ達も承諾する。


 三人が屋敷に着くと、フィルはランに着替えを渡しお湯を用意していた。お湯といっても今は深夜に近い。風呂の用意はするわけにはいかないが、体を拭くぐらいのお湯を沸かすぐらいはできるらしかった。


 二人がそのようなことをしている間ライはフィルに頼み事前に兵士を一人借りることにした。


 呼ばれた兵士は何か粗相をしたのかと怯えていたがライが陣地にティアやリエルへ状況説明を伝えるため、伝令として頼むと兵士は安堵し頷き走っていく。


 本来ならば誰にも気づかれず戻るつもりだったけど、怪我をしてしまった今部屋の中で寝ていたといっても納得いかないだろう。だから、素直に伝えることにした。


 ……後が怖いような気がするけどしょうがないだろう。


 そんなことを考えながら次にライはフィルが持ってくるといった薬を待っている間一冊の本を取り出した。


 ランが持ってきてくれた遠風の本だ。


 「確かこれに手を触れて念じればいいんだったな」


 無言で本を開き何も書かれていない場所に手をおきライは念じた。


 《エミル、ランっていう女の子がこの本を届けてくれたよ。こんな時間だから見ていないだろうけどこっちは何とかなりそうだから》


 念じた内容は本が少しだけ赤く光ったと思ったら、本表面に文字が浮かび上がっていた。


 しかしそれも少しの間で徐々に消えていき元のまっさらな状態に戻る。


 「これでいいんだよな?」


 この時間ならばすでにエミルは寝ているはず。後もう少しだけ同じように近況を報告すれば良いだろう。


 ライはそれからエンリデンヌのことやローレンス伯、リューミル、エンディル村、フィルのことを伝えた。

 

 念じるだけで伝えたいことを伝えられるなんてすごく便利だなと思いつつ、フィルが部屋の中に入ってきたので本を閉じた。


 部屋に入ってきたフィルの手には新しい布が握られていた。


 しかし、そのほかには何もない。確かライは治療に必要なものを持ってくるといっていたはず。


 「フィル?薬品はなかったのか?」


 「いいえ、そういうわけではないんですけどこっちのほうが早いと思いまして」


 そういってフィルが取り出したのは一つのネックレスだった。


 「ネックレスが早い?」


 「はい、もちろん普通のものじゃないんです。常に持っていれば怪我をしたときに直せたんですけどね」


 そういいながらフィルはライに近づき目を閉じてアクセサリを傷口に近づける。

 

 すると淡い青い光を放った瞬間に傷口が熱くなった感覚が伝わってきた。ピリッとした痛みが走り顔をしかめるがそれも一瞬のことで痛みはすぐ治まる。


 フィルも終わったようでアクセサリーをどけると、驚いたことに先ほどまで左腕に裂傷があった場所が綺麗になくなっていた。


 驚いた顔でフィルのほうを見るとフィルは微笑みながら説明してくれた。


 「これは治療をしてくれる魔法アクセサリーで名前は『天使の微笑』使用者の能力によりますけど、ある程度の傷は直せます。しかし、即死や手遅れの場合は無理ですけどね。あとこれは不思議なことですが自分以外は使えないみたいなんです」


 「試してみたのか?」


 「はい。昔とある事故があって自分が少し前にこのネックレスと出会い大怪我をしていた人たちを治していたんです。ですが……精神力を大幅に使ってしまい能力を使えなくなっていました。なので誰かに使ってもらおうとしたんですが誰も使えなかったのです。中には精神力があった人がいたにもかかわらずです」


 「使用者を選ぶ道具か」


 そういうものがあるとは知っていた。でも現在流通している魔法道具は一般的に汎用性を重視したもので、使用者を選ぶ道具の数はとても少ない。


 「そ、それよりも今度は足のほうを直しますね」


 そういってしゃがみ込み皮膚が裂けていた太ももあたりにネックレスと掲げる。


 すると先ほどと一緒で怪我した場所が熱くなり一瞬の痛みを伴うがすぐに痛みはなくなる。これで直ったのだろう。


 「ありがとうな」


 そういって、ライはフィルの頭に手を載せ髪をなでた。


 するとフィルは嬉しそうな顔をして目を細め気持ちよさそうにしている。


 「「ライ!」」


 扉を開けて入ってきたのはティアtリエルだ。予想より早い到着だけど、リエルまでこんなはっきりと声を出して叫ぶなど驚いてしまった。それほどに心配をかけたのかもしれない。


 素直に謝罪し説教を受けようと思っていたライ。しかし、二人の表情をみて言葉が出なかった。


 「ラ、ライ?いいいいい、一体、なにをシテイルノカナ?」


 「…………………………」


 二人の表情が慌ていた表情から戸惑いそして怒りの表情に移行していた。


 理由がわからず二人の視線を追っていくと、そこにはライの太ももに触りながら跪いているフィルがいる。


 ここでライの頭に方程式が完成した。


 治療のためにアクセサリーを近づけ太ももに触るフィル

            ↓

 直してくれたお礼をこめてフィルの頭をなでるライ

            ↓

 こっそりいなくなっていたことと怪我を負ったことを知った二人が慌ててきた。

            ↓

 でも、ついてみるとライが女の子を撫で撫でられている女の子は気持ちよさそうにしていた。  

            ↓

 極めつけは今見えているのが体の半分しか見えていないことだろう

            ↓

 結果、なにやらいかがわしいことをしていたと勘違いされてもおかしくないかも知れない。


 ライは水帝の力を使っているはずもないのに嫌な汗を背中にかき始めていた。二人の視線を受けたフィルは今にもなきそうなオドオドとしいている。


 静かに、ティアは槍を取り出しあの大人しくあまり表情を表に出さないリエルまでもが双剣を抜いていた。


 「まて!話せば分かる!」


 「話せば……ねぇ?私って結構孤児院にいたころライに鍛えられたことで状況把握はできるつもりだよ?そんな私が考えるに見てそのまんまの状況にしか見えないよ?怪我をしたと聞いてきたのに怪我もないよ?」


 「それは、その、まずは落ち着け!」


 パキン!


 ティアに説明しようとしたところで何かが切れたような音が聞こえた。


 音がするほうを見るとそこには、花瓶が割れた音だったようだ。ただ、花瓶に入れていた水がこぼれ花瓶が綺麗に縦に真っ二つされていなければ普通に事故と見過ごせたのに。


 恐る恐る、花瓶をああした本人であろう人物を見ると。


 「……」


 リエルの視線は冷たかった。極寒の地にある氷のように。視線で人が殺せるなら何度殺されているんだろうか。


 慌てつつもどうやって場を収めるか考えているとさらに状況を悪化させる声が投げかけられた。


 「あの、ライ様。一応ご好意に甘えてお湯で体を拭かせていただいたのですが、私はこれからどうすばいいのか聞くのを忘れておりまして」


 そういって、おくからランが出てきた。

 

 ただ、問題があり髪も洗ったのだろう。濡れていてお風呂上りのような格好になっている。幸いフィルとは体格が似ていたから服には困らなかったはずだ。


 しかし、この状態でライのことをさま付けでよび、しかもお風呂に入っていたと思われる状態。


 部屋の温度が数度下がった気がした。


 チャキ


 後ろでそのような音が聞こえる。


 後ろを振り向くと槍を構えているティルと双剣を構えるリエル。なあリエル、お前の床に散らばっている同じような大きさの石ころはなんだろうか。あと、花瓶の瓶がなくなっているな。どういうことだろ。


 ライはすでに説得が手遅れだと考え一言だけ言うことにした。


 「頼むから明日の話し合いに支障がないように応戦するからな」


 そういってから屋敷の中は騒がしくなるのだった。


 そんな夜があり翌日、とある報告のためにエンディル村の屋敷に来ていたラッシュは部屋の中の惨状を見て、近くで座っているライに一言。


 「お前ここで死闘でも繰り広げたのか?」


 座りながら休憩しているライは


 「似たようなものかも」


 それだけを言うのだった。ライは二人の攻撃を白帝のガントレッドで受け止めながら説明をしていったのだ。暗殺者に襲われたこととフィルが孤児院での幼馴染でフードを被っていたこと。太ももに触っていたのは、傷の手当のためであったと。


 ランのことも説明しても止まらなかったのは困り果てたが、さすがに見ていられないと思ったのかエスティアが人の形を取り説明をすることで何とか乗り切った。


 ここまで説明してラッシュは呆れた表情をして、滅茶苦茶になった部屋を見渡していた。


 「まあ、お前が暗殺者に狙われて怪我をしたってきいて心配しまくっていた二人を見ていたから気持ちは分からんでもないが。……ちょっとこれはやりすぎだろう。で、二人はどこにいるんだ?」


 「今は二階で寝ていると思う。あの後なんだかんだでティアたちがフィルとランを気に入ったらしくてね」


 「……俺から色々といっとくわ」


 「お手柔らかにな。俺にも非があるんだから」


 そういうライだったが、ラッシュとしては少しだけ怒っていた。


 いくら好意を寄せている異性がそのような状況になっており嫉妬していたとしても、ライの立場は上官でありそんな人物に手を上げるなど信じられない。

 

 しかも、その前に暗殺者と死闘を繰り広げた後にかかわらずだ。この後ライはローレンス砦を攻めることになる。その時にライが倒れたりしたら部隊は壊走するかもしれない。そしたら部隊の兵士は多く死ぬことになる。

 

 ライは良いといっているが、見過ごせることではない。


 「上にいるんだな?少しいってくる」


 「待てって。今は眠らさせてあげてほしいんだ」


 「どうしてだ?何でここまでされて気遣える?」


 怒気を含めた声で尋ねる。

 

 「うーん、正直わかんない。けど、今は邪魔はしたくないってこと。それに、ラッシュがわざわざ来たってことは何かあったんだろ?」


 座りながらも軍師のライの雰囲気が変わるとラッシュも視線を鋭くし頷く。


 「いい情報と悪い情報があるがどっちから聞きたい?」


 「いい情報から」


 「いい情報は俺が放っていた偵察兵が仕入れてきた情報で現在ローレンス伯の兵力は三千らしいが、そのうちの二千が周りの村から無理やり徴収した兵士で、実際に戦える兵士は千らしい。


 「なんでローレンス伯はそんな無茶なことを?」


 「どうやら、以前から集めていたらしい。正規兵はエンディル村討伐でやられていたらしいからな。で、昨日到着したのが二千の兵士らしいぞ」


 「二千の兵士が到着したのが悪い話?」


 それだったら確かにこちらにとって悪い話だ。戦争は数で決まるといわれている。決して勝てるとはいいわないが、人が多いということはそれだけ取れる選択が多いってことだ。


 でも、ラッシュは首を横に振る。


 「いいや、ちげぇ。これはどっちかというといい話の分類だ」


 「どれだけ悪いんだよ。悪い話」


 「悪い話といってもまだどう転ぶかわからないけどな。まあ悪い話のほうは王国の兵士千が城に入場したのと、宝玉をローレンス伯が使って色々と細工をしているみたいだぞ?」


 「ということは、俺らが裏切ったのを知ったってことか」


 暗殺者を送ってきたところで予想はついていた。


 「だな、ただ問題がこのまま戦って良いかってことだ。戦ったとして王国の兵士は絶対に出てくるはず。そうなると戦うことになる。で勝ったとしても負けたとしても国王の判断しだいでは俺達は反逆者になっちまう」


 「だよな……」


 ライの判断でローレンス伯には非があると判断しリューミルについた。


 しかしローレンス伯に合流した王国兵はローレンス伯の説明でライたちが裏切ったなどということを言うだろう。


 指揮官が誰かまだ分かっていないが、おそらく指揮官はそれを信じるはず。以前から反乱軍と思われていたのはエンディル村側であり、ライたちがエンディル村についたのだから。


 「理想は王国の指揮官を説得してこっちには非がないことを説明すればいいんだがな」


 「次にどうやって連絡するのか問題が出てくるけどね」


 困ったように首をかしげると、上で物音がした。どうやら誰かがおきたのだろう。


 「さて、このことは後の話し合いで考えるとして、困ったやるたら起きたようだし俺は少しお灸を据えてくるぜ」


 「女子の部屋に入るのに遠慮はないの?」


 「命が掛かってなければ遠慮はするが、かかってるんでな。ライおめえは朝食と食べられるところを用意してくれ」


 「ほどほどにな」


 「それはあいつらしだいだ」


 そういって、ラッシュは扉の先に入っていき階段を上っていくのだった。


 ライは少し疲れた体を起しラッシュに言われたとおり朝食と食べられる場所を確保しようと家を出て行こうとしたときに、上からラッシュの大声が聞こえてきた。


 その後、ティアとリエルが説教されたのは言うまでもない。

 


  


 

いかがでしたでしょうか。本来ならば今回で部隊戦を入れようかなと考えていたんですがそれよりも、まだ状況が整っていないのとティアとリエルの嫉妬も買い手みたいなと思い、やめました。

ですが、次回は作戦会議、スムーズに行けば戦闘に行きます。

次回予告が一行で終わってしまったことに少し申し訳なく思ってしまっている自分がいました……w

なので、一言言わせてください。

ティアとリエルがすっごく良い!と思い始めている自分です。新キャラとしてフィルやランを登場させましたがティアとリエルがここまで嫉妬したのは初めてじゃないでしょうか。

一応エンディングでどうするのはまだ考えておりません。なので、可能性として今まで出てきた女の子、またこれから出てくる女の子との可能性?もあるわけです。

って、次回予告よりも長くなり、一言といっていたのに何行書いているんだろうか。

とりえあえず今日はこの辺で、また明日お会いいたしましょう!

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