第三十四話 来訪者
本編をお楽しみください。
フィルと密会しているエンディル村から少し離れた場所。
そこで、二人を取り囲むように草むらから集団が飛び出してくる。前に三人、後ろに二人。
「……」
出てきた人物たちを見ると黒い装束を着ていて顔は分からない。しかし、目元だけは見え鋭い視線をこちらに送ってきていることだけはわかる。
二人だけで会うつもりだったのかをフィルに聞いたのはこいつらが関係者かを聞くためだった。フィルが嘘をついていいないことが条件になるけど、ライとしてはそこは疑っていない。
「なら問題はどっちが狙いなのか、あるいは両方か」
もしここで自分達が死ぬことになれば瓦解はいかないにしても動揺してしまうはず。
それを狙ってきたのは間違いない。
一応注意しながらも声をかける。
「一体誰からの指示で」
話しかけようとしたと単に空中に銀色のナイフが壁に当たったような甲高い音が響き、地面に落ちる。
それを皮切りに周りから剣を投げてきた。ライは視線を周りに向けながらまず正面のナイフを落としていく。
後ろにいた敵には抜き放った剣で打ち落としていた。
「ぐっ!?」
しかし、くぐもった声がライの口から漏れる。左腕に装備していたガントレッドを通過して腕の部分の皮膚が裂ける。
裂けた皮膚から血が流れ銀色に輝くガントレッドに一滴の赤い筋ができていた。
剣でナイフは弾いたはずだと考えていたのに傷を負ったのだ。何かしらの魔法か、技術なのか。
とりあえず剣で応対するのは危険かもしれない。
「フィル、お前って戦えるのか?」
「護身用程度には戦えますけど、それより大丈夫なんですかその怪我!」
フィルは心配をしてくるがライは返事をしない。視線をはずすだけで謎の攻撃が来るかもしれない。
フィルは暗殺者相手には無理ってことだから守らないといけない。
……ローレンス伯と事を構える前に精神力を消耗することは避けたかった。でもしょうがないだろう。明日のことを気にして今フィルを守れなかったり、自分が死んでしまうことになったらだめだろう。
「エスティア、いざというときは頼むよ」
【こうなったら仕方ないわね。でも明日覚悟してね】
「わかったよ」
エスティアの許可を得て意識を集中させる。
周りににいる暗殺者は一人で話し始めたことに警戒をし、フィルも心配そうな顔で何事か見ている。
ライはゆっくりと二つの手を上げ水を意識させる。
すると胸あたりから青色の光が輝きだし周りに水が浮かび上がる。
「!?」
何か危険を感じたのだろう。敵は再びナイフを投げる。
しかしナイフは正面のナイフと何かは壁で、後ろは滝のような水を発生させ防ぐ。これで全方位を防ぐことはできたが精神力的に水帝の宝玉の力を使ったために体が重く感じる。
敵は投げナイフでは倒せないと感じたらしい。後ろと前はナイフを投げながら他の二人がライにもう一人がフェルに遅い掛かる。
ガントレッドだけならば自分で精一杯だ。
でも水帝力があれば別。
後ろから投げられたナイフを移動しながら回避行動を取る。必ずしも防御しなくていいのだ。よければそれだけで済む話。
だが避ける際にまたしても謎の攻撃を受ける。幸いにして足を少し避けた程度だこれならば先頭に師匠はない。
こちらが魔法を動いたことにも接近していた二人は進行方向を変えて前後で挟み込むように攻撃しようとする。
このままガントレッドと水帝を使えば簡単だけどフィルの攻撃を防がなければならない。
なのでライは剣で正面の敵が振り上げてくる剣を受け止め。動きが止まったところで横に飛び出す形でフィルのほうに転がり込みながら水帝を使用した。
すると今までライがいたところから足元に大量の水が発生しライに攻撃してきた二人の体勢を崩すことに成功する。そこに水弾を打ち込めれば楽なのだろうけど暇はない。すでにフィルと暗殺者一人の距離がないのだ。
「フィル!」
名前を呼びながらフィルと暗殺者の間に壁を作る。
透明な壁に防がれ暗殺者の剣は弾かれる。それを見越して水弾を放つ。
放たれた水弾はフィルを襲っていた男に当たり吹き飛ばされていた。吹く飛ばされただけでは終わらずに、気に衝突し崩れ落ちる。
残りは四人。接近戦を持ち込んできた二人はもう立っているはず。ライはすぐにフィルを守るような形で立ちふさがり剣を構える。
予想通り足元を崩され倒れていたはずの暗殺者二人は、味方がやられたことにも気にせずに襲い掛かってきていた。
だが二人の暗殺者は失念していただろう。背後の攻撃は食らっても正面の攻撃は一度として食らっていないことを。
二人が同時に剣を突き刺そうとしてくる。
キィン!
甲高い鉄の音が二つ響き壁と剣の間で火花が飛び散る。
思い切り振りかぶり壁に弾かれていた暗殺者二人の目には失策を用いて失敗を悟った色が浮かんでいた。
そして二人の考えは正しく二つの水弾が自分の胸に当たり吹き飛ばされる。当たった瞬間に胸が一気に押しつぶされる感覚がして骨を折れただろう。
二人の暗殺者が最後に感じた感想はそれだけだった。
ライは襲ってきた暗殺者を水弾で吹き飛ばすことに成功すると頭に痛みが走る。以前倒れる前の前兆に感じたあの痛みに似ているため精神力現象の警告信号なのだろう。
でもまだ二人残っているのだ倒れるわけにはいかない。
前後にいるはずの敵を視界に治めようと顔を動かすがここで少しおかしいことに気がつく。
そういえば、自分が接近戦を挑んだときになぜ接近戦を挑まなかった暗殺者はナイフを投げてこな買ったのだろうか。
もし投げてきていれば傷は増え負けなかったにしても苦戦はしていたはず。
敵がいたはずの場所に視線を向けると暗殺者は倒れていた。後ろを向くがどうやらまったく一緒の状態だった。
「フィル、何があったか分かるか?」
見ていたかも知れないという考えをもってフィルに問いかける。しかし、フィルは頭を横に振り
「見えてませんお兄ちゃん。ただ、いきなりナイフを投げようとした二人が足を折るように倒れて首から血を出したんです」
それを聞いて、ライはフィルの側に立ち水帝の能力を広範囲に使い地面に水を勢い奥流す。。昔見た書物に地面を移動する道具や視認をしにくくするものがあったはずだ。
暗殺者を助けてくれたとしても、敵か味方か分からない上無理をしてでも警戒しなければならない。
【ライ、それ以上はやめなさい。完全に意識を失う危険性と明日いざというときに使えなくなるわよ】
水帝の能力を使いすぎをエスティアに注意されライはやめる。今日自分が使いすぎて前みたいに三日以上意識を失うなどしたら、その間にどれだけの人間が死ぬのか分からない。しかもその中にティアやリエルなども含まれる可能性もあるのだ。
水帝の能力をやめて敵が現れるのを待つ。
すると、地面から突如飛び出すように出てきた人影があった。
それに対しどこからでも襲われてもいいよう、剣を構え怪我をしていない右手で相手の動きを注視していた。
現れた人物はライの目の前にすばやく近寄って攻撃しかけて
「ライ様、貴方様を探しておりました」
と思ったら突如ライの名前を呼びながら水が張っている場所も気にもせず膝を折って頭をたれていた。
よく見ると、目の前の人物に敵意はないらしく武器を持っていない。
未だに警戒を解かずに質問する。
「君は一体?」
「私の名前はラン・シュエルと申します」
「暗殺者二人を倒したのは君のおかげ?」
「私が手を下さずとも処理できたようですが、その場合負担が多いと判断したので手を出させていただきました」
「一体どうやって?」
「すみません、それはさすがに機密になります」
普通に聞いてそうだろうなとライは思う。今思えば自分の魔法を使うということは相手に対策する余地を与えることになるのだ。会ったばかりで言うこともないだろう。
「なら俺に何のようなの?」
「エミル王女から命を受けて馳せ参じましてございます」
「内容は?」
「内容は二つあり一つは貴方様の力になるように動くこと、もう一つはこれをお渡しするように言われております」
そういってランは一冊の本を取り出してきた。
エミルがわざわざ本を渡すために送ってくるなどおかしいなと思いつつ、受け取り本をめくるとそこには何も書かれていない。
「ランさん。これ何も書かれていないようだよ」
「ライ様。私のことはランと呼び捨てでお呼びください。それとその本ですが中に文字が書かれていなくても問題ないのです。本の名前は遠風の本と呼ばれております」
「遠風の本だって!」
ライは驚いていた。書物で遠く離れている場所に文字で情報を瞬時に送る魔法書があるとは聞いていた。
重要な場所、王都やエンリデンヌなどの大都市、重要な拠点、砦などにあるとは知っていても簡単に見ることはない代物だ。
そんなものをエミルはライに送ってきたのだ。
ランは補足するように説明する。
「すでにエミル王女様は一冊所持しておりますのですぐに伝えたいことを本を持ち紙に触れるだけで、相手に文字として伝えることができます」
これでエミルに連絡できるのかと思い手を掲げようとしてフィルから待ったをかけられる。
「あ、あのおにい……ライさん!まずは怪我の手当てをエンディル村でしないといけないです。このまま血を流しすぎると危険ですし、結構村から離れている時間が長いのでそろそろ騒ぎになるころかと」
「くちゅん!」
フィルが説明して同意しようとしたところでどこからか可愛らしいくしゃみが聞こえた。
ライはフィルのほうを見ると首を横に振る。
ならと、ランのほうを見ると頭をたれていて表情を見ることはできないが、全身がライのせいでずぶ濡れになっており、寒いのか小刻みに震えているではないか。
ライは遠風の本を閉じフィルの提案を受け入れた。
三人はその後暗闇の中村に向かっているとエスティアが話しかけてきた。
【ライ、いくつか分かったことがあるから今のうちに教えておくわ】
「わかったこと?」
近くにいる二人に聞こえないように小さな声で喋る。
【ええ、貴方が白帝の宝玉を利用して水帝の宝玉の能力を使える限度ね。もちろん、今はって事で増えるでしょうけど】
「それで、回数は?」
【水弾など簡単なものなら十回。体勢を崩すために使った能力なら五回。広範囲に使った場合二回ね。ただこれは水帝の能力だけの場合。ライは他にガンドレッドの力も使わないといけないでしょ?今言った回数の半分を上限と考えたほうが良いわ】
「わかったよ」
【それと、これは今思ったのだけれどそろそろガンドレッドの名前でも付けてみたら?】
いきなり話が変わったなと思いつつそういえば名前をつけることをしなかったなと思っていた。
宝玉にも名前があるのだ。父親からもらっただけで名前はついていなかったがこれまで、そしてこれからもお世話になるならばつけても良いだろう。
「んーけどいい名前っていってもな」
【私にいい名前があるんだけど】
「なに?」
【白い壁や白帝の宝玉を併用して使ってたでしょ?しかも用途は多用できる。ならばこれを白帝のガンドレッドと呼べばカッコウがつかないかしら?】
「白帝のガンドレッドか……ならそれでいこうか」
エスティアの提案にすぐに受け入れ名前を決めてしまったからか、意外そうな雰囲気をエスティアが出していた。
【本当にいいの?適当に考えたつもりはないけど、それはいえば貴方の父親ガレック・ジュリアールの形見でしょ?】
「うん。でもだからこそエスティアが考えたのならばいいかなって」
【どういう意味かしら】
「父さんから名前をつけられなかったけど、その父さんと親密につながっているらしかったエスティア がつけるのが正しいと思う」
【……】
「だから白帝のガントレッドこれで決定だな。っとそろそろ村に着くみたいだ。
ライが言ったとおり森の中に火がたかれている為におこる光が差し込んでいた。
【……また、用事があれば声をかけるわ】
突如エスティアの声は途切れてしまった。もしかして、余計なことを言ってしまったかと思うが心辺りはない。もし非があれば謝るがまだわからないし、今度話をするときに聞けばいいだろう。
そう思いながらライとそれに追従するランという少女とフィルはエンディル村に向かうのであった。
あとがきを書こうと思ったのですが現在忙しく出かけなければならないために、次回予告などは控えます。
また明日には更新すると思いますのでよろしくお願いします。
お気に入りの少しずつ増えていっております。皆様ここでお礼を申し上げます。ありがとうございます。また、これからもお気に入りのほう入れていただけるとありがたく存じます。




