第三十三話 孤児院の昔話
どうぞ本編をお楽しみください!
ライは一度エンディル村を後にし陣地に戻ると状況をラッシュと兵士達にエンディル村で話し合った結果、ローレンス伯爵の娘であるリミュールがいて大儀はリミュールにあると。
なのでこれからローレンス城を攻めるつもりでいてくれというとほぼ全員が頷き、意識をはっきりと切り替えていたようだ。
次の敵はローレンス伯だと。
それを確認してティアとリエルには準備を頼みライは陣地にある自分の天幕に入っていく。その時にラッシュを呼びこれからフードの女に会いに行くことを告げた。
話を聴いたラッシュはあまり言い顔をせずに、指揮官が危険な場所に行くのは得策じゃない。お前はもう部隊にとって必要な存在なんだ。万が一があったらどうするのだと止めようとしてきた。
しかし、頑として会いに行くことを主張するとようやくラッシュは折れる。
「もう何も言ってもいくってぇのは分かった。お前さんにはガントレッドと魔法があるし、エスティアもいるわけだからな」
ラッシュがそういうとライが懐に入れている宝玉が少しだけ点滅していた。大丈夫だといっているようだ。
エスティアの返事を聞いて頷くと思い出したようにラッシュは聞く。
「でも、リエルとティアには話さなくていいのか?」
「二人に話したら絶対についてくるって言いそうでさ」
「まあいうだろうな」
「だからラッシュに話して二人をいざというときに止めてもらおうと思ってね。あと、いきなり俺がいなくなったら軍に動揺が広がるだろうから知っている人が一人はいたほうがいいだろ?」
「めんどくさい役を与えてくれたもんだ」
「ごめん、今度何か埋め合わせするよ」
「おう、いい酒を期待してるぜ?」
ニカッとラッシュは笑って頷いてくれた。これでライは部隊を気にせずに夜出発することができるのだった。
時間は経ちあたりが暗くなり夜が訪れたころ。
部隊の兵士達は夕食を済ませ会談している姿もちらほらと見られる。早い兵士はすでに就寝しているだろう。
見張りの兵士達は当たりに気を張り巡らせ警戒してくれていた。
そんな中をライは静かに移動していきエンディル村へと向かいだす。
途中見つかる可能性があって、見つかったら面倒だと考えていたがどうやらうまく抜け出せたようだ。見張りの兵士達も外からの侵入には意識を張り巡らせても、内側から出て行くことまでは考えていないようだ。
そのままライはエンディル村に向かい村の入り口にやってくると不思議なことに、村の前に兵士の姿はなかった。
ライが来るのが分かっていて兵士を外してくれたのかもしれない。しかし、今は戦時中で夜襲の危険性もあるのに警備をつけないとは危険だと思いつつ、門を通り目的地の昼に訪れた家に扉を開けて入る。
家の中は時間が時間なので静かで明かりになるものは灯っていない。まだフードの女は着ていないことを悟りどうするか考える。
真っ暗な家は不気味な様子を表し静かだ。
暗い夜道を歩いてきたため暗さになれて少しは見える。でも人間は明かりがないと安心できないものだ。
早く着てくれないかなと思いながら椅子に座ると奥の扉が音を立てつつ開かれる。
扉が開いたほうを見るとそこには昼にあったフードの女がいた。
この時にもフードを被っているのでそれだけ顔を見られたくないのかなと思いつつ話しかける。
「ようやく来た見たいんだな。それで、話はここでするのか?」
「いいえ、ここは待ち合わせをするだけのつもりでした。ですので少し離れた森のほうに行きましょう」
そういってフードの女は扉からでていきライも後に続く。
二人がしばらく森を歩いてついた場所は小さな丘があるところだった。
ここだけが森林から顔を出し月の光を浴びて幻想的な景色を醸し出している。
「ここまでくれば大丈夫ですね」
それからフードの女……少女はフードを取りながら振り返る。
振り返った少女は短いピンクの髪を揺らし、黒い瞳を涙に潤ませながらまるで嬉しさを堪えているような震えた声でライをこう呼んだ。
「お久しぶりです……お兄ちゃん」
お兄ちゃんと呼ばれたライは一瞬言われた言葉に驚くが少女の顔を見て、少女の名前を言う。
「フィルなのか?」
すると、フィルと呼ばれた少女は満面の笑みを浮かべて
「はい!」
肯定をしてきた。
フィルとは孤児院で一緒に過ごした子だ。
フィルがやってきたのはライとティア、エミルと出会う半年前だった
ライ達がすごした孤児院は一人でも生きていくことを基本として様々な訓練なり知識を学ぶためのサポートを受けていた。しかし、そんな中ほとんどの孤児院にいた子供は力が強くという考えが多かったため訓練に力を入れていたのだ。
大してライも訓練をさぼるということはしなかった。でも、ガントレッドを魔法を使うライに対抗することができるのはそのときにはおらず(後でティアという訓練相手ができた)暇なときは職員からもらった本を参考に知識を学ぶことに専念していた。
そして、そんなことをしていたある日皆が訓練にいそしんでいる中いつもは誰もいないはずの部屋に一人のピンクの髪をした少女が本を読んでいた。
珍しいなと思いつつ自分の勉強もあるため適当なところに座ると座るときの音に反応して少女がこちらにを見てきていた。
ちょっと乱暴に音を立てたからかな?気をつけないと思いつつライは今日は商いについての本を読んでいた。
将来商人をするつもりはない。でも仕組みについて知っていれば便利だと思っていたからだ。
しばらく真剣に読みふけり町それぞれの物流の仕組みや取引の内容、物産に対してどれだけの価値があり、必要としている町に届けるためにどれだけ経費を削減すればいいのかのお手本を書いているところまでみて、ライは目の端に捕らえたピンク色に驚く。
「!?」
目の端に捕らえたピンク色が何かと見ていたら先にいたはずの少女がライが持っている本を覗き込んできていたのだ。
「……」
ライが気がついたことに気づいていないのか本に釘付けだ。
そんな少女相手にどうすればいいのかわからなかったライは話しかける。
「この方が気になるの?」
話しかけたことによってようやく少女から反応があった。顔を上げながら徐々に顔を赤くしながら
「えと、あの、こ、これはですね」
どうやら混乱をしているようだった。何をそんなに混乱しているのか分からない幼いころのライは首をかしげながら気になったことを質問する。
「それにしてもなんでこの本を横から見てたの?」
「え、えっとそれは、その、物流に対しての流れについて色々と面白いこととかですね、その、改善できるんじゃないかなとか思って……」
「改善?」
少女の話を聞いてライは俄然少女に興味を抱いた。
ライが持っている本は結構難しい内容ではある。それに対して読めるだけではなく改善案を提案してきた同じ孤児院の仲間は誰もいなかったのだから。
「た、例えば南の町にリューネリスがあります。それでここでは海産物や塩と海の幸が特産物です。しかし、北の町エンリデンヌは地域柄から塩や海産物が不足してます。でも代わりに穀物や山菜は豊富にあります」
「確かにそうだよ。だからお互いの町は商人を通して馬車で輸送して北と南を行き来してるんだと思うけど」
「現状ではそうですが、例えば塩を大量に使いたいと注文したとしてリューネリスからどのくらいでつくと思います?」
先ほどのオドオドとした態度はすでになく、堂々とした態度で質問してくる少女。態度の変化に気がつかないライだったが、質問に答える。
リューネリスとエンリデンヌの距離は馬を走らせて二月ほどだろうか。しかもそれは軽装で馬の体力が持った場合の話だ。
今回の条件では塩を運ぶのに馬車を使うだろうし馬にも体力があり餌などの心配もある。途中と中の村にも寄り、夜は移動できないことから少なく見積もっても四月は掛かるかもしれない。
その考えを言うと少女は頷く。
「ですけど私は思うんです。もしその塩を王国が管理したとして最初に王都で貯蓄してそれから、注文があったときに輸送していく。輸送する際に防備が高い村や町、伯爵家が近い場所に貯蓄場所を設けてそこに集めるのもいいですね。それで塩が減ってきたらリューネリスから塩を王都に運べばいいかなと思うんです」
ライはその話を聴いて驚いていた。そして、感嘆の視線を送っていた。
自分は知識を学ぶために見ていただけなのにこの少女はこのような改善案を考えていたのかと。基本だけを見るのではなく、それから別の見方をして効率化しているのかと。
少女の言うとおりにすれば現状の輸送形態より二倍以上の物流速度になるかもしれない。注文されて塩が取れる場所ではなく貯蓄している場所からもらえるのならあまり時間が掛からずに届くはずだ。
しかもこの物流の方法は塩だけに限らず他の消耗品にも当てはまる。
ライは新たな見方や自分よりはるかな考えを持っている人にあい嬉々として自分の考えを言ってみた。
「でも、それじゃあ盗賊や山賊による盗難の危険性があるんじゃないかな」
「そうなんですよね……それに王国の兵士を動かしたとしてもずっと貯蔵地を見張っているわけにもいきませんし」
「けどそれならさ、独自の警備体系を作ればいいんじゃないかな?」
「警備体系?」
「うん、今言ったとおり王国の兵士を動かしたりしなくてもいいと思うんだ。例えば新しい部署を作ればいい。貯蔵の見張りと輸送の護衛を任務として」
「しかし、それでは経費が掛かるために王国も動き出そうとはしないとおもうますけど。移動費や人件費、維持費などのも大量に掛かるでしょうし」
「いや、言うほど掛からないと思う。人件費と維持費は貯蔵地にを立てた近くの村に配るんだよ。村の管理者にはそれぞれ馬と馬車を与えて輸送を固めて、そこの責任者にあとは任せるんだ」
「ですがそれでは、村のものが物価の高騰させて意図して売る危険性も」
「それはないよ。最初も言ったけど分配して均等に渡すんだ。そうすればもし一つの村がそんなことしても他の村がしなければ、人は安いほうから買うだろうから」
「自然と価格は一定に落ち着くんですね?」
「うん。そして、もし売れた利益は王国側に税として何割かを貸せれば財政は潤い、また物流も早くなる。初期費用は掛かるけどうまくいけばすぐに回収できると思うよ」
「ほんとです!確かにこれなら効率がすごくよくなります!」
感動したという風にピョンピョンその場ではねている少女に大してライは笑みをこぼしていた。
ようやく自分と同じように離せる人物が現れたのだ。今までは一人で学んでいくだけだったのに人と議論することの楽しさをこの時知った。
そこでふと幼いライはあることに気がつく。
「そういえば、君の名前は?」
ここまで話していたのに、名前を知らなかったことに気がついたのだ。
そのことに少女も気がついたのだろう。慌てた様子で
「わ、私はフィルです……」
「僕の名前はライっていうんだ。これからも時々今日みたいな話をしてくれないかな?」
「分かりました、ライお兄ちゃんですね!」
「え?お兄ちゃん?」
「あ、あの、なんだかそんな感じがして……この呼び方だめですか?」
「別にいいけど……」
するとフィルは花が咲いたように
「ありがとうございます!お兄ちゃん!」
とお礼を言ってきたのだった。
その後は半年間の間、二人はよく会い沢山の話をしたりした。話の内容は子供とは思えないもので大人が利いていたら顔負けだったかもしれない内容が多かったが、ライはフィルが自分よりも効率に関してはとても長けていると思っていた。
いつも話の内容はフィルが提案をして次にその後の利用法やところどころを詰めていくような流れだったから。
でも、二人のこの生活は半年後施設からフィルがいなくなったことで終わりを告げた。
その数日後にティアとエミルがやってきたのだ。
そんな行方が分からなくなっていた少女が目の前にいるのだ。
あれからいくらぐらいの時間がたったのか分からない。でも前みたいにオドオドとはしておらず性格もしっかりしているようだ。
「久しぶりだな、ぜんぜん分からなかった」
「フードを被っていたから仕方ないですよ。それにお兄ちゃんもずいぶん代わりましたよ?」
「そうか?」
「はい、昔は僕って言ってたのに今は俺とか言ってましたし」
「まあ、色々あったからかな」
「ですよね、私も色々とありましたし」
「みたいだな。それにしてもびっくりした。フィルがいたなんてそれなら疑問が解けたよ」
「疑問ですか?」
「二千以上の兵士がいるのにどうやって食料を持たせているのか疑問だったんだよ。フィルがいたならどうにかしたんだろ?」
質問するとフィルは頷く。
「はい、お兄ちゃんは以前私達が物流のことについて話したことを覚えてますか?」
「ああ、あの塩の話?」
「そうです。それで私はその話を元に沢山の中継場所を設け輸送してもらってます」
「そっか……謎の部隊って言うことは何かしらの組織を作ったってことか」
「いくらお兄ちゃんでもすべてを今話すことはできないんです」
「分かってるよ。お互いに立場があるんだしな」
二千以上の兵士を賄えるということは伯爵以上の財力かリューネリスにある商人クラスの組織がないと無理だろう。
「そういえば二人で会うとしたのは姿を俺に教えるため?」
すると、フィルは頬を少し赤くしながら答える。
「そうです。立場的に私達は反乱軍と王国軍。私もこちらでは重要な人物になっているらしくて二人でいきなり会ってしまったらいらぬ噂がたつと思ったんです」
部隊の軍師と反乱軍の統率者。二人が合えば確かに内通などの疑いが掛かるかもしれない。
「だから、『二人きり』で会うつもりだったんだよね?」
「は、はい」
二人きりのところをライが強調するとフィルは何を思ったのか俯いてしまう。
とそこで突如頭の中に声が響く。
【一応聞くけど、気づいているわよね?】
静かに頷く。
時を同じくしてガサガサと近くの草むらから音がし二人の下に近づいていくる何者かが近づいてくるのあった。。
少しネタに詰まってきました。といいつつパソコンを目の前にして文章を見るとアイデアが浮かんでくるのでそこはありがたいのですが。
今回二人の過去話を導入しました。理由は色々とあるのですがそれは後の楽しみということで。
ではまた明日会いましょう!




