第三十話 遭遇戦
こんばんわ、少しネタに詰まっている……わけではないのですが進行速度に迷っております。このままところどころをもっと詰めて描写していくべきか。それとも今までどおり書いていけばいいのか。色々と考えている今日この頃です。
といっても、全力でやるだけなのですが!
ということで本編をお楽しみください
グリム伯が所有している砦から出立してから二日後、現在ライ達は問題になっているエンディル村近くまで来ていた。
だが、このまま直行して向かうのは得策ではないと思っている。
貴族であるローレンス伯がどのような人物か分からないが、統治している貴族ですら抑えられていないのだ。それをいきなり外から来た王国兵士が介入しても、民達は威嚇と捕らえかねないからだ。
それに報告にあったエンディル後方にいる部隊のことも気になる。どうやら話を聴いている限り主だった戦闘行動はしていないみたいなのだ。
しかし、エンディル村に無関係でいるはずがない。エンディル村とは手を結んでいると考えたほうが現実的だ。兵士もこの前の戦いで約一割ほど脱落している。脱落といっても死亡はもっと低くなり重傷者の割合が閉めるが、それでも数日間で回復することはなかった。
なので現在行軍しているのは九百五十の兵士達だ。中にはぎりぎり回復したということで行軍している兵もいるので万全とは言いがたい。
よって、まずはここを収めている貴族、レイン伯爵の屋敷に向かっていた。
行軍している場所は左右に森林が覆い茂り少しでも道を外れてしまえば進軍するのも難しいほどの森だった。
「ねえライ。レイン伯爵ってどんな人なのかな」
行軍中、馬に乗りながら暇になってしまったのかティアが馬を寄せてきてライに話しかけてきた。
「そんなの分かるはずないだろう」
ライは少し前まで田舎にいて外のことなどまるっきり知らない状態なのだ。もしあのまま村に残っていたら、宝玉のことすら未だに知らなかったのかもしれない。
「もうー。そんなこと分かってるよ。ただどんな人か予想を立てようといってるだけだよぉ~」
「先入観はあんまり持たないほうがいいと思うんだけど」
「だって、ぶっちゃけ暇なんだもん」
「いや、お前が言っちゃダメだろ」
ティアの立場は現在ライの副官という立場だ。
実際には大隊の隊長はリエルと副隊長がラッシュとなる。
そして、ライの位は二人よりはもっと上だ。もっと大きな戦に発展していれば将軍と同等の発言力を持つことも可能になる。
先日、軍師になったばかりで王都では経験不足ということで将軍ほどの発言力はまだ持っていない。しかし、エンリデンヌ防衛戦の評価が上乗りされれば可能になるだろう。
ティアはそんな軍師であるライの副官となる。そうなると、将軍は無理だが発言力としては大隊を一つ命令することはやろうと思えば可能だ。その場合ライの承認も必要になるが。
そんな人物がいくら暇だからといって暇と公言するのはあまりいいことではない。
「だって~暇なんだもん」
「だから。あぁーもういいや。分かった話し相手になるからもうそういうこと言わないでくれ」
「やった!」
ティアは暇つぶしの相手ができたことに喜んでいた。というか、ライにかまってもらう為にあんなことを言っていたのだ。少しだけやりすぎたかなとも考えていたけど終わりよければいいかと考える。
「それで、ローレンス伯の人物像だったっけ?」
「うん、私は堂々としていて頭も良くて、優しくて、いい領主様って思っているんだけど」
「うーん。それはどうだろうな」
「え?ライは違うと思うの?」
ライは後ろにいる兵士達に聞こえないように声を落としてから話し始める。部隊の責任者が伯爵批判などしていると思われたらそれだけで不信感を与えてしまう可能性もあるからだ。
「俺は違うと思う。ティアも聞いてたよな?ローレンス伯は優秀ではなく平凡であまり突出した能力はないって」
「聞いてたけど馬車を用意して村人を脱出させたのはローレンス伯でしょ?」
「確かにそうだけど、果たしてそれがレイン・ローレンス伯とは限らないんだよ」
「意味が分からないや」
「ティアが村人で馬車を用意してくて逃がしてくれたら、その馬車を用意してくれた人に感謝するよな?」
「うん」
「ならさ、もし馬車に近づいてきた援軍だという兵士にあったらその人たちはどういうと思う?逃がしてくれた人が戦っている可能性があるなら助けてくれっていうと思わない?」
そこまで言ってティアは「あっ」といいながら納得したようだった。
「そういえば、馬車で逃げていた人はレイン伯爵ではなくて娘であるリューミルっていう女の人を助けてっていってたね」
「そうなんだ。だからこう言うのもなんだけどローレンス伯の家はどちらかというと、リューミル嬢の人気のほうが高いかもしれない」
こう言うのには他にも根拠があって、宝玉の力と思われることも報告兵に話していたからだ。
人は宗教や神秘的な力を目のあたりにしたら、恐怖か崇拝のどちらかに感情が動く。
そして兵士に助けを求めたということは崇拝のほうに気持ちが動いているのだ。自分も何も知らずに見ていたらそう思うかもしれない。
「でもさ、ならなんでそんな女の人を困らせるようなことをしたんだろ?もし感謝したりしているのなら、反乱を起そうと思わないけど」
「それも検討がついているけど」
と言いかけの所で突如部隊の中腹あたりで悲鳴が上がる。
ここでライとティアはすぐに気持ちを切り替え状況把握に切り替える。リエルとラッシュには後ろと中腹にいてもらい、動けるようにしてもらっていたのですでに動いているだろう。
中腹にいるのは確かリエルだ。
「一体何があった!」
ライが叫ぶと前から一人の兵士が走ってきた。
「敵襲です!人数は不明!現在リエル隊長が交戦しています!」
「わかった!ティア先頭は任せる。中腹を攻撃されたなら、もしかしたらまだ伏兵がいて正面から攻撃されるかもしれない」
「任せてよ!そっちも気をつけてね」
二人は意思確認すると、今度は走ってきた兵士に指示をする。
「後方にいるラッシュに伝えてくれ、後ろには輜重隊がいる。敵の狙いはそれかもしれないからリエルの加勢はせずに輜重隊防衛を優先と」
「で、ですが!リエル様のことはいかがなされるのですか!」
「もちろん俺が行くに決まっている!ここにいる弓を持っている兵士はついてきてくれ!」
「「「「「はっ!」」」」」
いきなり指示されても近くにいた兵士達はすぐに指示に対して返事をする。
先日のエンリデンヌ防衛戦やグリム伯での戦いではライは経験だけではなく、もっと大切なもの、兵士達からの信頼までも勝ち取ることができたのだ。
なので、兵士達は安心して躊躇なく指示に従っていた。
ライは急いで馬の踵を返すとリエルのほうに向かう。後ろからも徒歩だが複数の兵がついてきている。
そして、馬を少しだけ走らしたら中腹にすぐに着くことができた。
中腹では予想どおりリエルが交戦していた。でも、ライが思っていたより苦戦はしているようだ。周りには最初に襲撃を受けて射抜かれた兵士達が倒れている。
リエルが持っている魔法武具を使えば複数の平凡な兵士に遅れは取らないだろう。
しかし、今相手は森の中から襲撃しておりリエルとの間には覆い茂る木々と草が生えている。
これでは俊足を出したとしても木々に阻まれ、転倒して隙を作る可能性が出てくるために断念し、飛んでくる矢を二つの剣で落とすことに集中していた。
なので、リエルはライの姿と弓を持った兵士達が来たときに安堵する。
「弓で交戦するんだ!矢が飛んでくる方向に向けて撃て!こちらに飛んでくる弓矢は俺が何とかする!」
そういって指示したら連れてきた弓兵と中腹で防御していた兵士達がいっせいに弓を放ち始めた。
襲撃してきた相手はもっと多くの弓を放とうとするが異変に気がつくことになる。森から放った弓が途中で壁に当たったように落ちてしまうのだ。
だというのに相手からの弓は飛んでくる。
一体何が起こっているのかわからない兵士達。だが、よく訓練されているのか判断は早い。魔法関連のことだと悟るとすぐに退却を始めたのだ。
それを見て相手からの弓矢による攻撃が止んだことを確認し、ライはすかさず指示を出す。
「中腹の部隊は大盾を持っている兵士達を左右の外側に配置し防御体勢を。弓を持っている兵士は左右から攻撃された場合大盾の影から攻撃をするんだ!リエル、多分先頭で敵が来る可能性があるから向かってくれ。ティアがいるけどリエルの俊足が必要になると思う」
ライがリエルに指示をするとリエルは頷き先頭へと走っていった。
ライも次は後方に馬を走らせると、後方も攻撃をされているらしくラッシュが交戦していた。しかし、こちらは弓を使うだけではなく敵兵士達が剣や槍で突撃していて乱戦になりかけている。
完全に乱戦になっていないのは細い道のためでこれが救いか。
「ラッシュ!敵の規模はどのくらいか分かるか!」
ラッシュの近くに来るとライは腰につけている愛剣シュレイを引き抜くと襲い掛かってくる敵兵に対応し振りぬく。
すると、シュレイの切れ味がすごいのかほぼ抵抗なく敵兵士の首を跳ね血を撒き散らしていた。
隣ではラッシュが体躯にあった大きなハルバ-トを振り回し敵を吹き飛ばしている。ラッシュはライが隣に来ると敵兵の相手をしながら話しかけた。
「おう!ちょうど助かったぜ!敵さんの狙いはどうやら輜重隊のようで人数が多くて困ってたんだ!それにしてもおめぇまでここに来て中腹や先頭は大丈夫か?っと」
ラッシュは敵の剣を弾き飛ばしながら聞く
「先頭はティアとリエルに任せた。中腹は多分陽動で、弓を射掛けるぐらいしかしないと思う。なら防備を固めるだけでいいよっと!」
ラッシュの質問に相手の剣を避けて剣を敵兵に突き刺しながら答える。
「そうか!ならさっさとこっちも終わらせねえとな!」
空からの弓矢はライが防ぎラッシュは弓矢から味方を守らなくていいことになったために存分に暴れることができる。
【ちょっといいかしら?】
突如頭の中にエスティアの声が響く。
「今忙しいんだけど!」
【ちょっといい機会だから宝玉の扱いにも慣れていたほうがいいと思ったのよ】
「何で今なんだ!」
【後で教えても戦闘中に使えないと意味ないでしょ?安心しなさい簡単なことなのだから。それを使うだけで今の戦闘をおそらく終わらせることができるわよ?】
そう言われて、どうするか考えようとするがそんな暇はない。実際先頭にいる二人には任せているが気になっているのだ。すぐに終わるには越したことなかった。
「なら頼む!どうすればいい!」
するとエスティアはその方法を教えてくれる。
聞かされた内容は確かに簡単だった。聞いたときは本当にできるのかと思ったが、よく思えばできない理由はない。
ライは行動を起すためにラッシュに叫ぶ。
「ラッシュ!後ろに下がるんだ!あることを試す!」
叫びながら言ってきたライにラッシュは眉をひそめるがすぐに指示に従う。あることといわれても内容が不明瞭だったがそれでもあの指揮官だったら有利になることをしてくれるだろう。
ラッシュが下がるとライはエスティアに教えてもらった方法でイメージして、手を前に突き出す。
イメージするもの。それは『水の塊』だ。
すると何もない空間から拳三個分ぐらいの水の塊が現れた。
それに気がついた相手は
「全員下がってください!撤退を!」
いきなり撤退の指示を出す。
あまりにも指示が早くたったこれだけを見ただけでこちらがすることを悟るなんて、優秀な指揮官だなと思いつつライは水の塊を放った。
すると、撤退している敵兵に当たったとたん水は鎧に弾かれるどころか、逆に鎧を押しつぶし着ているものの体まで貫通させ絶命していた。
しかしそれだけでは終わらない。この水の塊が一番恐ろしいところは飛び散った水のほうなのだ。
一人に当たったとき勢いよく水が飛び散るがそれが回りにいた兵士達に襲い掛かる。
鎧を貫通させる威力はなくてても皮膚を貫通させる威力はあり、顔や腕、首などを引き裂かれ絶命する兵士が何人かいた。
でも相手の被害はそれだけにとどまる。これは敵指揮官の指示が適切だったのだ。それ以外の兵士達には被害は及ばなかったのだ。
【確かにやってみなさいと入ったけど……貴方の想像力にはびっくりするわ】
教えた本人であるエスティアは感心したような声でライをほめる。
「エスティアが言ったんじゃないか」
【そうだけれど、私としては水弾をぶつけるしか考えていなかったわ。その後飛び散る水に役割を与えたのはライ自身よ】
魔法とは決まった能力を発現するが、使う人によっては様々な効果を与えることができる。いい例が、グリム伯が水弾だけではなく津波を起したことだろう。
「まあ、とっさのことだったからあれしか浮かばなかったんだ。って、こんなことしている場合じゃない。ラッシュ!俺は前に行くからここのことは任せた!」
「お、おう」
ラッシュは目の前で起きたことに呆然としながら返事を返した。
今見たのは水帝の宝玉をつかっていたグリム伯と対峙したときに見ていた。しかし、まさかライが使うとは思っていなかったのだ。水帝の宝玉を持っているならばまだ分かるが、宝玉の力を使い倒れたライを心配したティアとリエルの提案で今はどちらかが厳重に保管している。
ライが泥棒などをして持っているならまだしも、そんなことをする人物ではないとは知っている。ならどうして使えるのか。
「……まあ、後で聞けばいいか。独り言を言ってたみたいだからエスティア関連だろうしな。ただなぁ」
ラッシュはここでもしライの行ったことを少女二人が知ったら、どういう行動を取るのか考えて苦笑した。
「よし、とりあえず頼まれたことをしますかね」
気を取り直してラッシュは周りにいた兵士達に指示を出していく。周りにいる兵士達に負傷他兵士達の手当てを命じて、敵から受けた被害などを確認していく。
この戦いの結果はライ達の勝利となる。先頭に向かったライだったが、すでに後衛が失敗したことを悟ったのか、すぐに撤退していったらしかった。
そのままライ達は負傷した兵士達の手当てをして、完了してから行軍を再開した。
場所は変わりライが率いる部隊から離れた場所でとある部隊が集結していた。
この部隊こそ先ほど接近してくる王国兵の物資を略奪しようとした部隊なのだ。
しかし見事に失敗してしまいこちらに少なくない被害を出してしまった。
本来なら指揮官はこのことに対して落ち込んだり、上官から与えられる罰のことを考えるかもしれない。
でもこの部隊の指揮官はあることを思い出してそのようなことは考えていなかった。
「あれってもしかして……」
その指揮官が思い出していたのは輜重隊を襲い物資を奪おうとしたときに後方に来て、矢を跳ね返し不思議な力を使って水の塊を出した青年のことであった。
その指揮官を思い出し、目を閉じ昔のことを振り返る。黒い目に黒い髪。昔いた施設でとてもお世話になった大事な人。
まだ確認は取れていない。あの人が本人なのかも分からない。
でも、この部隊の指揮官である、少女は呟いた。
「お兄ちゃん……」
そう呟いて少女はその人物に思いをはせるのであった。
いかがでしたでしょうか。
そしてここでお詫びを。自分も思ったんですが……グリム伯のところから出立していつローレンス伯のところにつくの!遅くない!という思いを考えておられる方がいるかもしれません。
そこに関しては、謎の部隊に関連させるために今回の遭遇戦を追加しました。次回こそはローレンスのところに到着できると思います!……すると思います。するといいな。
となんかだらだらと書いてても締まりませんのでここらへんであとがき終わります!ではまた明日お会いしましょう。




