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第二十九話 エミルとユレイヌの策略

何とかかくことができました。ちょっと腱鞘炎になりかけていますががんばります!

本編をお楽しみくださいー。

 広間で話合いが終わり退出したエミル。


 そのエミルは現在自分の部屋で、自分付きのメイドであるユレイヌに紅茶を入れてもらいながら一息ついていた。


 「それにしてもこれはまずいことになった」


 「そうでございますね。ですが今は軍部の方々に頼るしかないでしょう」


 先ほどユレイヌは軍義の場所にいなかった。にもかかわらず、すでに知っているような口調なのはエミルにとって不思議でたまらない。しかし、以前そのことを指摘したら


 「メイドのたしなみです」

 

 とはぐらかされて、結局教えてもらえなかったのだ。こちらとしてはそんなものがメイドの嗜みだったならば、この城にいるメイド全員が知っていることになる。もしそうなら、この王国は終わりだろう。機密なんてあったものではない。


 なので、エミルはあえてそのことを指摘せずに頷く。


 「軍部のものに頼る……か。だが、それもままならぬのではないのか?こうも相次いで貴族が反旗を翻したのだ。今や疑心暗鬼に陥っている兵士たちも多いだろう」


 「確かにそうでしょう。しかしそれは王都と北、南の貴族たちだけだと思います」


 「ん?なら西と東の貴族たちは大丈夫だと?」


 「おそらく大丈夫だと」


 「そう断言するということは何か確証があってのことだな?」


 「はい、というかお考えになれば簡単かと。もしエミル様がこの国を攻略しようとして、北と南の反旗が起こりました。では、エミル様ならどうしますか?」


 「あまりこの国を攻略という縁起でもないことを考えたくないが……そうだな。私なら西と東でも反乱を起すかもしれないな」


 「そうでしょう。そして北と南では反旗が翻されたのに敵は西と東ではほぼ報告は入ってきていません」


 「……そうか、父上が仰られていたように兵力の分散か」


 「おそらくは、王都の防衛力を裂くことができなくなると反乱が起きていない西と東から兵力を増援で差し向けなければならないでしょう。ですが、それはエミル様も考えておられたのでは?」


 「そうではないさ。でも後ろの予備兵力を充実させなければいざというときに動けないだろう。だからお父様に予想より多く王都に兵力を残すように進言したのだ」



 そう、本当はまだ王都に余剰兵力は確かにある。なので北でエンリデンヌが攻められると聞いてすぐに援軍を立てようと思えばできた。


 しかし、情報はまだ初期段階でしかない。これがすべてとは分からないのだ。しかもこの内乱に乗じて隣国が攻めてくるとも分からない。備えをするに越したことはなかった。


 「エミル様の判断は正しかったかと思われます。……ですが本当によろしかったのでしょうか」


 「それ以上は言うなユレイヌ。ライを信じるしかない」


 エミルの進言は状況を見れば正しいかもしれない。予備兵力があれば状況に合わせて動きやすいのだから。


 でも逆に言えばそれは、ライに援軍を送らなかったことになり幼馴染であるライの死ぬ確立を上げたことに他ならない。


 ユレイヌとしても、ライには好感を持っていた。


 人間とは好感や親しい知り合いを優遇する生き物だ。たとえばライとイウル伯どちらを助けるかといわれれば、絶対にライだろう。


 だから、ユレイヌにはエミルのあの進言も苦渋の選択ということは十分に伝わってきた。


 自分のやりたいことを押し殺し、まず国のことを考えて進言する。


 この少女はそのことを自由にすることはできない立場なのだ。


 もし自分なら自由に動いてライを手助けできるかもしれない。しかし、それは今ではない。


 この先、ライのことを助けることはできるかもしれないがまずは目の前の少女を守ることが先決だ。

相手が反乱を起した理由が国への反逆ならば、王家に連なるエミルは殺害の対象になってしまうのだから。


 なので、ユレイヌはエミルが心が軽くなるように進言することにした。


 「エミル様、ちょっとご提案があるのですがよろしいでしょうか?」


 「なんだ?」


 「以前エミル様に品物を進呈したいといって、大量の贈り物があったのはご存知でしょうか?」


 「ああ、そのことか。確かに覚えているぞ。でもあまりにも大量にあったためにユレイヌに任せたいた奴であろう?」


 「はい、その中にいくつか実は面白いものが混ざっておりまして。どうやら贈り物をした者は高価なものを急遽集め送ってきた感じのようです」


 「感じとはまた面白いことを言うな。それで?一体何があったんだ?」


 「見てからのお楽しみということで、少し席をはずしてもいいでしょうか?」


 「むー勿体つけるのか。早く知りたいから持ってくるといい」


 「では少々お待ちください」


 そういって、ユレイヌは部屋を後にして、しばらくして手に本を二冊持って戻ってきた。


 その本を見て、エミルは驚く。


 「それはまさか?」


 何度か見たことはあったが使ったことはない。エミルが求めればすぐに手に入るかもしれないが、このような戦時中は重宝されるものだ。


 「はい、エミル様も知っているように遠風の書でございます」


 「しかも二冊もあるのだな」


 「この二つのうち一つをエミル様が持ち、もう一つをライ様にお届けしたら連絡できると思いまして」


 「むぅ、確かにそうだが……」


 ここでエミルは躊躇してしまう。


 遠風の本を利用して連絡できればエミルとしては嬉しい。信用するとは言っていたけど心配にはかわらない。


 だが、先ほども思ったように今は戦時中。いくら自分に対しての貢物に入っていたからといって私用で使わずに軍部に渡したほうがもっと有効活用できるのでないかと考えていたのだ。


 ユレイヌはそのことを見透かしたように提案する。


 「これはとても必要なことなのですよ?」


 「必要なこと?」


 「ライ様はエミル様の騎士でありますよね?」


 「うむ、そうだな」


 「ということはライ様はエミル様の直属の部下ということにもなります。そこで上司と部下が連絡を密に取ることはおかしくないことだと思います」


 「ユレイヌの言うことは分かるが」


 「もっと言わせていただければ現在エンリデンヌの防衛に成功したとしましょう。あのライ様がそのまま終わると思いますか?」


 「……ライだったらおそらく、攻めてきたというグリム伯を追い詰めるだろうな」


 「そうですね。そしてグリム伯の砦は実はエンリデンヌから少し西に向かった方面にあるのです」


 「まて、少し西といえばそのまままっすぐ向かえば報告にあったエンディルがあるではないか」


 「はい、そしてその情報はすぐにライ様に伝わり、ライ様の性格からして放っておくことしないでしょう。ここでもし王都から千の兵力を差し向けるなどの情報があれば楽になるでしょう。王都での情報をライ様に、そしてライ様から現状の情報をいただければもっと幅広く対策ができます」


 ここまで説明されてエミルは渋るのをやめた。ユレイヌの説明は理にかなっているのだ。


 しかしそうするとここで一つ問題が出てくる。


 「ユレイヌ。もしそなたの言うとおり連絡を取れるように遠風の書を使うとしよう。だが連絡を取ろうにもあちらにもないと取れないのだぞ?これはどうする?」


 「それはお任せください。私が選任した者に二つのうち一つの本を渡してもらいます」


 「選任した者?こんな戦時に兵士を貸してもらえそうな宛てはあるのか?」


 「兵士を借りる必要はありません。なんでしたら今お会いになりますか?」


 「会えるなら会うが今?」


 「はい、お任せください。ラン」


 ユレイヌが言葉をかけるといつの間にかユレイヌの後ろに一人の女性が膝を折り返事をする。


 女性の髪は黒く髪は後ろに括られ、馬の尻尾のように髪が揺れている。


 瞳は左右違うようで右は翡翠色、左は青色でありいわゆるオッドアイといわれるものであった。

 

 「お呼びでしょうか?」


 その少女?はユレイヌに対して質問をする。


 「一度エミル様に挨拶をと思っていたの。だから挨拶して?」


 「分かりました」


 そういって、その姿勢のまま名乗り始める。


 「私の名前はラン・シュエルと申します。現在はエストリア家で奉公しております」


 「エストリア家というと、ユレイヌの実家だな」


 ユレイヌがエミルのメイドになったというのがエストリア家からの推薦と父であるジギルが進めたからであった。


 それ以前にも実は個人的に縁があった為、すぐに受け入れていた。


 「実家でちょっとした理由で出会ったのですが、この子は情報収集や隠密などの行動に長けているのが発覚して、私と同じくエミル様をお守りする任を受けておりました」


 「ちょっとまて、私に伝えなかった理由はなぜなのだ?」


 「理由としては変に意識をされないようにという拝領でございます。もし、お伝えしていたら姿を現すように言われていたでしょう。しかし、そうしたらランの姿を見られることになって都合が悪かったのです。もしお気を悪くさせたのならどのような罰も受けます」


 ユレイヌは頭を下げる。


 「いやいい。私はユレイヌお前を信用しているし、この措置も私の身を案じてくれたのであろう。でも次からはやる前に教えてくれ。ランとも話をしたいと思うし人柄も知りたい」


 「それはもちろんでございます。これ以外には私の家のエストリア家に誓って嘘はついておりません」


 「そこは信じている。ラン、今まで影で守ってくれていたのだが礼をいう」


 そういってエミルは頭を下げる。


 ランは頭を下げられたのことによりどうしたらいいのかオロオロとしていたが、ユレイヌはその光景をほほえましそうに見ていた。


 頭を上げたエミルはランに質問する。


 「ラン、一つ聞いていいか?」


 「なんなりと仰ってください」


 「おぬしが先ほどユレイヌの後ろに出てきたのはどうやって出てきたのだ?」


 「それは……」


 なんなりといった手前話さないといけないが、少し躊躇してしまう。これは、今までランが姿を見せなかった理由に直結するのだから。


 指示を仰ぐようにユレイヌを見るとユレイヌは頷き説明するように促した。


 「私の魔法アクセサリー 『暗愚の影人』は陰に潜むことができます。ですがいくつか制約もありますがそのことはお伝えするには」


 「別によい。それでいつも守ってくれていたのだからな。しかし、話を聴いてようやく納得いった。ユレイヌがなぜ状況把握が早いのか」


 おそらくランに指示して広間の話を聞かせていたのだろう。


 「ではランよ。この遠風の書をライに届けてくれ。それと、ユレイヌ。ランに他にも頼んでも大丈夫か?」


 「ご自由にお願いいたします。ランも私と同様と考えていただいてください」


 「わかった、ではランよ。これは命令ではなく頼みだ。この本を届けた後はライを助けてやってくれ。お主の暗愚の影人は必ず手助けになるはず」


 「ですが、姫の護衛が」


 ここでユレイヌもエミルに同意するように提案する。


 「姫の護衛は私もいますし強化するようにします。それとその場合エミル様には外出を控えていただきますが」


 「かまわん。こんなときに散歩などする気にもなれないしな」


 ユレイヌの許しを得たのでランは同意する。


 「わかりました。本をライ軍師にお届けした後指揮下に入ります」


 「うむ、頼んだ。……ただ一つだけ注意してほしい」


 「注意ですか?」


 そこで、ランはエミルがおそらく本を確実に届けるようにや敵と遭遇したときのことを言うと思っていた。


 しかし、予想は見事に違った。


 「ライには気おつけろ」


 「は?」


 思わず声を上げるラン。


 ランは意味が分からずに質問する。



 「ライ軍師に気をつけろというのは危険な人物ということですか?」


 以前からエミルとユレイヌがライに好感を持っていることは知っている。なのに気お付けろとはどういうことか。


 「いや、そのだな。あいつはなぜか人の心に入ってくるのがうまいのだ」


 「そうですね。あの方はいつの間にか心に居座っていることが多いですからエミル様の言うとおり気おつけたほうがいいですね」


 エミルはソワソワしながら言っており、ユレイヌは同意しながらどこか面白そうに笑っている。


 未だにランは言っていることが分からなかったが


 「わかりました」


 と相槌を打つ。


 その言葉にユレイヌは分かっていないのだろうと感じたがあえて指摘することはなかった。


 「ではこれから行ってまいります」


 ユレイヌから本を受け取ったランは一度挨拶をするとその場からいなくなる。影に入り移動したのだろう。


 ランがいなくなったのを確認して二人は話す。


 「……ああいうタイプが一番コロッといきそうな気がするんだが」


 「そうですね。ランはかたい部分がありますが、一度気を許すと一気かもしれませんね」


 二人はまたライの被害者が増えるだろうと予感を感じていた。


 決して直すことができない感情をあのランという少女も持つのではないかという予感を。


 そうとも知らずにランは任務を遂行するためにエンリデンヌに向かう。


 ランが出立したのはちょうどライ達がエンリデンヌ防衛線の火蓋が切られるかどうかというときであった。


 


 

どうもです。いかがでしたでしょうか。前回、次回予告した際にこのままライのほうに行くと考えていましたが、やはりエミルの様子も書きたいと思い今回はライの登場はありませんでした。


 なのでライの話は次回になります。お楽しみに。

お気に入りもよろしくお願いしますー。


 

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