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第二十七話 エスティアとの会話と出立

今回は戦闘がないというのに長くなってしまいました。ですが必要な説明でもあるのでご了承ください。

では本編をお楽しみください

 グリム伯を処刑してから二日後、元グリム伯爵の砦に情報が入ってくる。


 現在ライは執務室でとある報告を受けていた。


 「村が襲われているだって?」


 偵察兵からの報告を聞いて最初に出た言葉がこれだ。


 「はっ、任務を受けて南下していたのですが途中荷造りした馬車を何度か見かけのです。たった一つの荷馬車だったら不審に思いませんでしたが、それが数台、しかも家族ずれとなれば多すぎるような気がしたのです」


 「それで不信に思い調べたと」


 「はい。なので馬車を止めて事情を聞いてみたところ、エンディル村で武装蜂起の兆候がありしかもその後ろ盾には貴族がついているという話。逃げている住民たちは戦場になるであろう村を捨て逃げてきたらしいのです」


 「でも少しおかしくないか?馬車とは身分が高いもの、また裕福なものが使うはず。なのに村で家族づれ、数十人単位もの馬車を使うなど」


 ライがそういっている理由は、馬車とは結構維持費用が馬鹿にならないのだ。


 まず、日々の整備をしていないと事故になりやすくこまめに点検しなければならない。


 次に馬車を引く馬だ。


 馬は馬車を引くため最低一頭、荷造りをして家族を乗せているのなら二頭必要なはず。そうなると、数台、仮に五台あったとして十頭の馬がいることになる。


 馬は日ごろの体調管理も大変なことや食事にも繊細だ。干草を用意するのも一苦労。


 とここで一つ考えが思い浮かぶ


 「そっか、誰かが馬車を提供したと」


 「仰るとおりです。村から少し離れた場所に貴族がおりましてその者が民を逃がすために馬車を用意しているようです」


 「その貴族の名前は?」


 「レイン・ローレンス伯爵というそうです。レイン伯爵は蜂起の意思がない民が保護を求めてきたので、馬車と食料などを提供して逃がしたそうです」


 王国に忠誠を誓っている人物と考えてよさそうだな。または、義がなければ動かない人物か。


 「評判や治世はどんな感じ?」


 「伯爵としては有能というわけではありません。いわゆる平凡の部類にはいるかと。村に対してもそつなくこなしていたようですが、逆に言えば重税をかけるや労働を強いるということはなかったようです」


 「なのに武装蜂起が起こったと。おかしいな。普通村人が反乱を起すとすれば重税、労働、などに問題があるはず」


 「確かにそのようなのですが……武装蜂起についての理由はわかりません。しかし人数は数百人にのぼり、村から一日のところには規模は分かりませんが部隊が駐屯しているらしいのです」



 「どこの部隊かわかる?」


 「分かりません。村に向かおうとも思いましたがすでに厳重に警戒していたようでよそ者が入る気配ではありませんでした」



 「そうか……わかった。他に報告することはある?」


 「いえ、私が調べてきたことはこれですべ……あ、もう一つ噂というかお伝えしていいものなのかと」


 「噂でもなんでもいいから教えてくれる?」


 「はっ、実は馬車で移動している村人の数人が私に頼み込んできた案件があったのです」


 「頼み込んできた案件?」


 「はい、どうか騎士様を助けてくださいと」


 「ん?噂といっていたのに頼みなのか?」


 「頼み込んできた騎士についての噂なのです。名前はリューミル・ローレンス。レイン・ローレンス伯爵の長女になります」


 「長女ということは女性か」


 「ですね」


 「それで噂は?」


 「その、噂なのですが……何でも、大地を動かすことができるとか」


 「……は?」


 思わずそのような声を出して驚いていると兵士が戸惑った顔をする。


 「あ、ごめん。続けて」


 「私も驚いて同じような返答をしたのですが、目の前で騎士様が大地を動かし崩落した岩盤を取り除いたとか、痩せこけて作物が育たない土地を豊穣な土地にしたなど奇跡を起していたそうです」


 「その話を数名から受けたんだな?」


 「はい」


 もし一人の住民から聞いたなら何かしらの噂かまたは宗教的なもので祭り上げられている可能性があった。だからそれだったら嘘だろうといったかもしれない。


 しかし、数人からも同じ説明を受けたのなら別だ。


 しかも話を聴いている限り目の前で現象を起したような話まであった。だったら放置していくわけにも行かないだろう。


 あとこのこととは別にライはある考えを持っていた。


 そのような奇跡のような現象を先日目のあたりにしたのだから。


 水源がないはずなのにいきなり目の前で大津波を発生させたり、水の塊を放つだけで人の命を奪う光景を。


 「報告ありがとう。その噂もあわせて検討するよ。偵察で疲れただろうしよく休んでくれ」


 「ありがとうございます。ではこれで失礼いたします」


 ライが労いの言葉をかけると兵士は下がっていった。


 「んーこれは関係あるのかな」


 腕を組み大地を動かすという現象について考えていると


 【あるでしょうね】


 突如頭の中に声が響く。


 「もう大丈夫なの?」


 【ええ、おかげさまで】


 「それはよかったよ」


 【いきなり声をかけたのに驚かないのね】


 「そっちが数日後に話せるようになるっていったんだろ?」


 【まあそうね。……余計なお世話かもしれないけど一つきいてくれないかしら】


 「聞くだけならいいよ」


 【貴方大丈夫?】


 「どういう意味?」


 【質問しているのはこちらでそう聞かれると困るのだけれど】


 「いや、本当に意味が分からないんだって」


 【ならはっきりと言わせてもらうけど、あなた今すごく無理しているように見えるわよ?】


 「……」


 この質問に対してライは無言になる。


 【少しは自覚があるようね。安心したわ】


 「安心したって」


 【私が気に入ったのはあのときのライよ?全力で手伝うと言ったのもあのライに対して。だから、決して自分を見失うことはしないで】


 確かに自分が無理をしているかもしれないという感情は少しある。グリム伯をあのときの処刑して決意を決めて、人を殺すことに対しても躊躇なく実行したことも。


 前は心を無にしていけば楽なのかもしれないとも思った。今でも人を殺すことにためらいがないといえば嘘になるのだから。


 【この話はここぐらいにしましょうか】


 「そっちから話してきたんじゃないか」


 【私としてはまだ言いたいことも沢山あるわよ。でも、あそこにいる子がずっと見ているから無視しているのも可愛そうと思って】


 「あそこ?」


 そう言われてライは扉のほうを向ける。すると確かに扉から頭だけを出しこちらの様子を見ている髪が銀色の少女がいた。


 「どうしたんだ?リエル」


 ライは銀色の髪の少女リエルに話かけると少しだけ扉から体を乗り出し質問してくる。


 「ライ、大丈夫?医者呼んでくる?」


 「え?なんでそこに医者が?」


 突拍子なことを言われて顔をしかめると原因をエスティアが言う。


 【このぐらい分かりなさいよ。私の声は他の人には聞こえないわ。だったらもし独り言を喋っている貴方の様子をずっと見ていたあの子、リエルだったわね。リエルの質問の意味も分かるでしょ?】


 「あー」


 リエルは一人で喋っているライがついに幻覚が見えているのではないかと思ってしまったのだろう。


 現に「あー」と声を出しただけでビクッと怯えたような反応をしているのだから


 【仕方ないわね。ちょうど良いから主要な人員を全員ここに呼んで頂戴。私のことも説明したほうがいいでしょう?】


 「そうかもしれないな。分かった。リエル。ティアとラッシュ、ドール伯も呼んできて。実は話すこと」


 【もういないわよ】


 「え?」


 そう言われて扉を見るとすでにリエルはいなかった。


 【呼んできてといったとたんに、ものすごいスピードで出て行ったわ。よほどあなたのことが心配なのね】


 「だとしても最後まで聞いてほしいんだけど」


 【あら、あんな反応もかわいいじゃない】


 苦笑しながらライは答える。


 「否定はしないけどね」


 そういってライは返答し、皆が集まるのを待つのであった。


 リエルが呼びにいってから四半刻後、執務室にはよんだメンバーが集まっていた。


 ただ、扉に入ってきたメンバーが


 「ライが幻覚を見始めて独り言を言い始めたって本当なの!医者を連れてきたからすぐに診察を!」


 といって、医者を二人も呼び噛んだことにびっくりする。


 このことにエスティがクスクス笑っていたのはあえて気にしないことにする。


 とりあえず、医者二人には帰ってもらい誤解だということを理解してもらったメンバーには現在椅子に座ってもらっていた。


 「ライ、医者が必要ないということは分かってけど独り言を言っていたのは本当なんでしょう?」


 「まあ、他人から見たらそうかもね。でも話している人物はいたんだよ。エスティア頼む」


 【ええ】


 そういって、ライが頼むと返事が頭の中に帰ってきて変化はすぐに起こった。


 突如その場に一人の少女が現れる。


 何もない空間から現れたことに驚いているようだ。リエルがみんなを呼びに言っていた間、途中どうやってエスティアのことを説明するのかと聞くと姿を表せることができるらしいと聞いていた。


 もし、聞いていなかったら同じく驚いていただろう。


 全員が固まっている間にもエスティアは気にせずドレスの裾を持ちお辞儀をする。


 「貴方たちとは初めてになるわね。私の名前はエスティア。ライの持っている白帝の宝玉に住んでいて、今はライの守護神をしているって感じかしら?」


 「最後に疑問で終わらすのかよ」


 「だって、説明するならこの方が分かりやすいでしょ?」


 「そうか?」


 なんだか少し引っかかるが二人が会話している間にティアが質問してくる。


 「あ、あの。エスティア……さん?ライの守護神ってなんですか?それに白帝の宝玉って、なんだか水帝の宝玉とにているけど。あとあと」


 「少し落ちつきなさいな。一つずつ質問を聞いてあげるから。ね?」


 「は、はい」


 「さて、ではまず何から話しましょうか。ライからはどこまできいてる?」


 「いえ、何もあなたのことは……」


 その言葉にエスティアは頭が回り仲間思いのライにしては以外だと思ったが、次に納得した顔になる。


 「まあいろいろあったわけだし仕方ないわ。じゃあ、説明していくわね」


 そういって、エスティアはライが気を失ってからライとはじめてあったこと。水帝の宝玉のことや他にもまだいくつかの宝玉があること、ライに新しい能力を付与したことなど、これまでライとエスティア、二人がかかわってきたことを説明していった。


 新しい能力のところを説明したところでリエルが質問してくる。


 「あの能力使ったから、ライは倒れた?」


 どうやら、ライが倒れたのは新しい能力を使ったからではないのかとリエルは考えたらしい。


 その言葉に困った顔を浮かべるエスティア。


 「そうね、確かにあの能力を使ったから倒れるきっかけになったわ。だから否定はできない。でもきっかけだけで原因ではないわね」


 「原因ではない?」


 「ええ、私たち宝玉の力はとても強大だってことは水帝の宝玉で想像がつくわね?」


 質問してきているリエル以外のラッシュ、ティア、ドール伯も頷く。


 「でもよく考えてみて。何も代償なく使えると思う?たとえばそうね。火を起こそうとしていきなり空中に炎をつけることはできないわよね?火をつけるには薪が必要で次に火種が必要だわ」


 周りの反応を見てエスティアは質問がないことを確認し説明を続ける。


 「私たちの宝玉を使う場合、薪は精神力、火種はイメージを浮かべること、または言霊といえばいいかしら。それによって火は起こる。すなわち魔法現象が起きるの」 


 「ならライが津波を防いでくれて、しかも水帝の宝玉の能力を使えたのは?」


 「あれは少し特別なのだけれど、火種を言霊で代用して薪である精神力で発生させたって所かしら。それとあの能力は相手の力を利用するものも含まれているから」


 ここでティアが確認するように質問する。


 「ならライが倒れたのは薪がなくなったから。すなわち精神力が足りなくなったから?」


 「そうね。そして、もし精神力が足りなくなって倒れずにそれ以上の力、精神力を使おうとするととある危険が伴うことになる」


 「危険?」


 「貴方たちは見たはずなんじゃないかしら。グリム伯爵だったかしら?水帝の宝玉を使ったあとに狂ってしまったんじゃない?」


 そう言われて、グリム伯が狂ったことを思い出す。


 「危険というのは精神力が消耗されて脳に障害を起す可能性があること」


 「ならライにも危険が」


 「もちろんあるわね」


 「な、ならライは今後絶対に」

 

 「それは無理。というかティアにも分かっているはず。この先能力を使わないと勝つ勝率が落ちるって」


 「そうだけど……」


 すでにライが壁によって敵の弓矢を防いだことは周知の事実だ。


 なのに次の戦いでそのようなことをしなければ前線の兵は見捨てたと思うかもしれない。


 ならば使わないというのは無理な話だった。


 「貴方たちの心配もグリム伯って言う人を見た後だから分かるけど、安心しなさい。何のために私がいると思ってるの?それに、普通に使う分には大丈夫よ。宝玉の力ではなくてガントレッドに込められた力が基本だから。もちろんガントレッドを使うときにも精神力は使うけど宝玉の力よりはましよ」


 「だけど」


 エスティアは苦笑する。自分がライのことを気に入ってしまったためにティアやリエルたちの気持ちは分からないでもない。だけど、ここまで過保護だとライの日常は大変なのだろうと思ってしまったのだ。


 (まあ、自分もその一人になる可能性はあるから何ともいえないけどね)


 心の中でそういいながら返事を返した。


 「なら逆に聞くけどなぜ水帝の宝玉には私みたいな存在がいないと思う?」


 「え?」


 「普通いても良いわよね?でもいないのよ。『私のような存在は』ね。で、私がいる理由なのだけれどそれは持ち主である人物。この場合ライになるわね。彼が精神力を消耗しないためよ。だから本当に危なくなったら意識を奪うなりして止めるわ。だから使うなとは言わないであげて」


 この言葉に全員が押し黙る。言葉で言われてすぐに安心することはできないのだ。


 そんな中リエルが立ち上がりエスティアのそばにやってくる。


 「どうしたのかしら?」


 質問するとリエルが答える。


 「本当にライのこと守ってくれる?」


 「ええ、白帝の宝玉の宿主として誓うわ」


 エスティアの本心だった。


 しっかりと見つめてくるリエルの瞳に、目をさらさずにエスティアも返すとリエルは頷きどこから出したのか、以前ライに渡したクッキーを取り出し渡してくる。


 「ありがとう」

 

 エスティアは受け取りお礼を言うと、リエルは満足したようだ。


 その様子を見てみんなが納得したようだった。


 「リエルが納得したみたいだし私も納得できた……というわけでもないけど信用するよ」


 「ありがとう。信用を裏切らないようにがんばるから任せてね?」


 「ええ、私の名前はティアリス。ティアって呼んでもらって良いよ」


 「なら私のこともエスティアとよんで頂戴ね」



 そういって打ち解けた空気になるとメンバーは全員が自己紹介をする。


 それが終わってからライはころあいを見計らって話す。

 

 「ここで少し提案なんだけど明日俺はエンディルという村に向かおうと思ってるんだ」


 ライは偵察兵から受けた説明をそのまま説明していった。


 説明を聞き終えたメンバーは頷き同意する。


 「それなら行ったほうがいいね。報告を聞く限り結構大規模な部隊がいる可能性があるんでしょ?なら放置しておけないだろうし」


 「だなぁ、王都に俺たちが戻った後にエンリデンヌに向かわれる可能性もある。それに」

 

 「ですね。先ほどのエスティア殿が言われたことが本当ならば宝玉関係である可能性が高い。そのリューミル殿が敵の地に落ちてしまわれ宝玉を奪われてしまったら一大事です。ただ、心苦しいのですが」


 「分かってる。ドール伯はエンリデンヌの防衛があるからついて来れないということは」


 「はい、エンリデンヌで私が抜けてしまうと士気などにも響くでしょう。そうすると危なく思います。ですができることはさせていただきます。支援物資の援助のほかに奇跡や噂なども調べさせましょう」


 「ならドール伯にはそれら関連をお任せします」


  それから出立するための詳細を話し合って一刻後、話し合いも終わる。


 「なら今話し合ったように頼む。明日俺たちはエンディルに向かう。目的は反乱の鎮圧と謎の部隊の調査、時には殲滅。そして、レイン伯爵とレミュール嬢と出会い宝玉の有無を確認、手助けが必要な場合は手伝う。それでいい?」


 全員に聞くと皆は頷く。


 「よし、なら今日は解散しよう。今日はゆっくり寝て疲れをとる様にな」


 そういって、執務室での会話は終了する。


 そして翌日、ライたちはドール伯と別れ問題を解決するためにエンディルへと向かうのだった。



 

どうも、いかがでしたでしょうか。いくつかの説明を消化した感じです。

最近毎日更新することを目標としているのですが、何とかまだまだいけそうな感じです。

あ、あとかいてて思ったんですが完全にエミルを放置していますので次は、エミルの王都でのことを書くかそのままエンディルの話に入るか迷っております。エミルの話を入れたとしても次にはエンディルに入るつもりなので一日の違いですが。

ではまた明日よろしくお願いします。お気に入りもお待ちしておりますー。

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