第二十二話 砦攻略と蒼い宝玉 前編
こんばんわ、何とか後三十分で日が変わりますが、毎日更新するという目標を途切れさせないでできそうです。
今回もまた前編になってしまいましたが目標字数を五千と決めて、しかも今回この調子だと一万文字越えそうだったので分けさせてもらいました。
グリム伯の城を攻略するのは次回までお待ちください!
グリム伯爵が砦にたどり着き兵士とメイドなどが逃げ出した翌々日。
ライ達はグリム伯の城門前にやってきていた。
兵力の数は八百。
残りの二百は予備として後方に待機させてある。
本当はドール伯からも兵力を差し出すと言われ、そうすればライの兵力の損害率も少なくなるとは思う。
だが、ライ達はいつまでもここにいることはできないのだ。しかも、エンリデンヌは北地域の要衝。この作戦が成功したとしてもエンリデンヌの防衛力が下がっては意味がない。
グリム伯爵の言うことが正しければ王国全体に脅威が潜み、エンリデンヌは一番危険にさらされるであろう都市の一つのだから。
なので今回はライ達だけの兵力で出兵してきた。申し訳ないといって、ドール伯が食料や武具などを用意してくれてそれだけは受け取り、万全の状態だ。
平原にライ達の姿を確認したグリム伯爵は理不尽な怒りと恨みをもって凝視する。あの部隊のせいでこのような状況に貶められているのだ。
そうしていると、平原にいる部隊から三人の馬が前に出てくる。一人は体が大きい大男。もう一人は対照的に背は小さく銀色の髪をした女兵だ。
そして、その真ん中にいる青年。
おそらくあの部隊の指揮官である人物がある程度馬で近づくと城門前まで来て止まる。
グリム伯は見下すように青年、ライを見ていたがライは気にすることなくグリム伯に伝える。
「俺の名はライ・ジュリアール!陛下から先日軍師の称号をいただいた!そして初任務でエンリデンヌを訪問していたが、グリム伯!いや、陛下に弓引く逆賊よ!エンリデンヌを強襲するなど言語道断!私が粛清する!」
逆賊という言葉に反応して城の中からはざわめきがおこる。
「だが俺はグリム伯以外、兵士達には非がないとも考えている!命令を聞くしかなかったこともだ!しかし加担したのも事実であるが、ここで武器を捨て降伏するのならば罪を軽くすることも検討しよう!時間は一刻!それが過ぎたらこちらから降伏の意思なしと判断し攻撃に転ずる!以上だ!」
ライは言いたいことだけを言うと馬の踵を返そうとしたが、グリム伯が怒鳴る。
「この!平民風情だった小僧が!一体何の恨みがあってこのようなことをするのだ!私はグリム・エンデステン!貴族であり伯爵なのだぞ!」
ライは顔だけをグリム伯に向けて答える。
「お前は何をいっている?」
「どういうことだ!」
「お前はすでに伯爵ではないだろう!多くの兵士の前で言ったのだから!革命を、反逆をしたと!伯爵の地位はフェレス国王から承るもの、国王に弓引いたものが伯爵と名乗るのはおこがましい!首を洗って待っているがいい!」
ライは今度こそ踵を返してラッシュとリエルと陣地に帰っていった。
いなくなった城内では沢山のざわめきで収集がつかないほどまで拡大し始めていた。
口上を述べて陣地に帰ったライ達だったが、ついたところでラッシュが話しかけてきた。
「なんとか第一段階は成功したみたいだな」
「だろうね」
「しっかしまぁ、本当にすげえな。まだ戦っていないのに相手は疑心暗鬼に陥ってみただけでも分かるぐらい士気が落ちていたな」
「よく考えれば簡単なことだよ。今回のエンリデンヌ出兵。これにすべての兵士に伝えていきなり納得するはずもない。本当に話すことになれば反感を買うだろうから。なら、兵士にはこういえばいいんだ。国王陛下からの命令で何かしらの不正を働いたエンリデンヌを攻めるように言われたとかな」
「すぐに疑って嘘だってわかるもんじゃないか?」
「そうとも限らない。国王に忠誠を誓い、エンリデンヌのドール伯のことを知っている兵なら疑問は感じるだろうね。けどほとんどの兵士は農家の次男、三男だ。伯爵に言われて逆らってしまったら稼げなくなり下手したら殺される。なら、疑わしくても命令どおりに動いて稼ぐしかないんだ」
「生きるために・・・か」
「ああ、だから降伏の道を提示した。王国に弓引くことを納得しているんだったら容赦なく攻撃する。でも、だまされているなら逃げくれればいい。少なくとも真実をしって動揺してくれるなら儲けものだ」
「なんだか今回思ったんだが、ライ。おまえさんを敵にまわさなくて本当によかったと思うわ」
「ほめてるの?」
「俺にしちゃ最高の賛辞さ」
それにライは苦笑した。そういってくれるのはそれだけラッシュも効率的であることを認めてくれているんだろう。
しかし、ライはラッシュにこの策について説明していない理由もあった。
ライとしてはだまされた兵士達、戦う意思のない兵士たちを殺すのに躊躇ったのだ。自分の策で敵を殺すことにティアとリエルのおかげで少しは踏ん切りがついた。
でも、できればそうでないものたちは助けたい。
これは戦争であり矛盾していることも自覚しているがこれがライが相手を疑心暗鬼を誘発させた理由だ。
味方の被害は最小限に、敵の被害は最大に。
軍師に求められることはこのことに尽きるだろう。
でもライとしては味方の被害は最小限に、敵の被害は最大に。そして、意思のない兵士達には救いの手を。
これを考えて策に取り入れようと考えていた。
「ライ」
ラッシュの話を聞いていたライは隣にいたリエルに呼ばれる。
「ん?どうしたんだ?」
「敵の城に動きがある。おそらく事態が動いた」
「そっか」
確かに城のほうを見ると動きがあるようだ。喧騒がここまで聞こえてくる。
と、ラッシュが驚いた声で話してきた。
「リエルお前・・・」
「・・・・・・」
リエルはラッシュの言葉に視線を向けるが返事は返さなかった。集中しているのだろう。城のほうを見ている。その代わりにライが聞く。
「リエルが何かおかしなことをいったのか?」
「いや、別に内容はいってねえよ。けどこんな兵士が・・・ああ、いや忘れてくれ。俺の勘違いだった」
ラッシュが驚いたのはこのように兵士が多い場所で普段喋らないリエルが喋ったことに驚いたのだ。
親しい人には会話をするといってもそれはほとんど人がいなく二人きり、多くて数人のときに限り。
このように兵士がいるところで喋ったことに驚いていた。
でも、ライに説明をしなかったのはいい変化だと思ったからだ。このライという若い青年が来てからリエルに間違いなくいい影響を与えてくれる。ならば理由を教えて変に気を使わせるよりも、自然の人柄で接していい方向に進んでくれればと願ったのだ。
ラッシュはそのように、まるで妹や娘を見るような目でリエルを見ていたのだった。
「何言ってるんだよ?」
「頼むから忘れてくれってえの。それよりもそろそろ予定よりも早いけど行動を起そうぜ」
城のほうを見るとなんと城門が開き始めているではないか。
降伏する兵士が来るのか、それとも士気が落ちきらないように外にうってでたのか。
どちらにしても部隊を動かさなければならないだろう。
前者なら助けるために、後者なら殲滅するために。
「全兵士に告げる!前進を開始してエンリデンヌを攻め国王に弓引いた愚か者であるグリム・エンデステンに制裁を加えるぞ!全員俺に続け!」
ライはそういうと戦闘で馬を走らせはじめた。その後ろをラッシュ、リエル。そして数名の騎兵と歩兵である兵士達が続く。
城門前では、二つの軍勢が争っていた。
一つはグリム伯が強制的に従わせ、また金品などで納得させた兵士達七百。
もう一つは、エンリデンヌを攻めたおり逃げ帰ってきた兵士と従わなかった兵士達三百。
城にいる全体の三割が離反する事態になりしかも城門を空けてしまったことに激怒したグリム伯は城壁上にいる兵士達に弓による攻撃を命じていた。
城から全力で走ろうとすれば城壁から攻撃され弓が体を貫き、逃げようとしなければ追撃に来る敵の対応を迫られ結果孤立する。
三百の兵士達は離反することに命がけになったとしても、納得しなかったのだ。しかしこのままではいずれ全滅する。
そんな時、遠くにいた王国軍の兵士達が動き始めていた。
最初は時間よりも早く動き始めた王国兵に殲滅をされるのかとも考えたが近くを通っていた城から逃げ出した兵士を無視するのを見て助けに来たのに気がつく。
だからだろう、グリム伯爵は門から追撃をあきらめ急いで城門を閉め始めた。
これで逃げようとしていた兵士達は兵士による追撃に気を使わなくてもよくなったと考えた。
でも矢がいつ自分の体を貫くのか。
と、この時不思議なことに気がつく。
そういえば空からあれだけ降ってきた矢がいつも間にか降っていないではないのか?。地面には矢に倒れた仲間がいるが、それから目に見える範囲で矢に倒れる人はいないのだ。
どうなっているのだろうかと、城壁を見る。戦場で止まるなど自殺行為にも等しいがどうしても不思議な状況が作り出されているのを見ずにはいられなかった。
そして、兵士達が見た景色。それはなんと
「なんだこれは・・・?」
城壁から落ちてくるはずの弓矢が見えない壁に当たりどんどん落ちていくのだ。
ただ落ちていくだけでなく本当に壁があるようで空中で矢が横になり静止しているのも見える。
何が起こっているのかわからない。でも自分達が生き残る生存率が上がったのだ。急いで兵士が声を上げる。
「全員あの王国の兵がいるほうに逃げるんだ!神がどうやら味方してくれたらしいぞ!」
その言葉を聞いてようやく動き出した兵士達。全員が城を背に走り始めた。
その様子を見たライは兵士達が安全圏に到達すると一度だけ域を吐く。
ズキン
初めての経験だった。能力を使うことをやめたとき頭に痛みが走ったのだ。よく考えればこの魔法防具を使ったのはほとんど人一人を守るために使っただけ。
でも今回は約三百人の兵士を守るために大きな壁を作り出した。
本来、魔法関連のアクセサリーは何回でも自由に使えるものもあるが物によっては副作用がある。
そのことは書物で呼んだことはあった。このガントレッドにも制限があるのかもしれない。
あともう一つ気になることがあった。ガントレッドを使用したときにお守りとして、いざというときに使うようにと村長から渡された、箱の中身。それをライは今回必要になるかもしれないと思い箱をあけ盛ってきていた。
中に入っていたものは白い宝玉。それを懐に持っていたのだ。
それが魔法を使ったとき熱を帯びたように感じかすかに光ったようにも思えたが、気のせいだったかもしれない。
「ライ!大丈夫か!」
隣で馬を走らせているラッシュがライの体調の変化を見抜いて叫んでいるが、ライは悟れられぬように返事を返した。
「大丈夫!だから気にせずにもっとスピードを上げるぞ!ティアがうまくやってくれているうちに、門を通過しないとティアの身が危ない!開く前にもう一度魔法を使うからリエルも魔法を使って進路を確保してくれ!」
「わかった」
リエルも力強く頷いて同意してくれる。
城壁が迫り城が弓の射程圏内に入ると弓矢が飛んできた。それをライは再び壁を発生させて部隊を守る。
ズキン、ズキン
魔法を使うほど頭痛がひどくなっているような気がする。でももう一つ自分には仕事が残っているのだ。
上空に壁を展開させながらライは視線を門に向けてもう一度念じる。閉じかけている門の上あたりに数枚の壁を出現させるイメージを。そうすれば閉まりかけているといっても、馬が二等分通ることはできるはずだ。
予想通り、ライが魔法を発動させると扉が閉まる速度が止まる。
そこで隣にいたリエルは走っている馬に立ち上がりある程度近づいたところで、剣に宿る魔法を発動させた。
リエルの魔法は使用者の速度をあげるもの。効果は使用者によって違い、使えないものは少し足が速くなる程度。
しかし、もしリエルのように選ばれたものが使えばどうなるか。
その結果は、目の前で起きているように馬が全力で走っているにもかかわらずそれ以上の速度を出し表門の隙間に潜り込んだ。
リエルが見た城壁内では乱戦が行われていた。逃げ遅れた降伏の意思を見せた兵士達と命令で追撃していた兵士達が入り乱れている。
全員が同じような鎧を着ていて誰を倒せば分からないだろう。
普段ならば。
リエルはすぐに近くにいた兵士を斬り捨てる。
「ぐがぁ!」
その兵士は斬られ地面に伏すと痛みにのた打ち回りしばらくして絶命する。
斬った兵士のことを最後まで見ずにリエルは次に動いた。
目印は、『汚れていない』鎧を着た兵士だ。
こちらに降伏してきて逃げていた兵士達はほぼ全員が鎧が汚れていた。多分エンリデンヌをせめて汚れたのあろう。
でも、汚れていない兵士達は逃げる兵士達を攻撃していた。すなわち敵だ。
リエルが城門を守るようにして動き近づいてくる兵士達を攻撃しているしている間についに後続が追いつき、ラッシュとライ達も乱戦の中に乗り込む。
城内は完全な混戦となり始めていた。
その様子を城壁の上にあるとある場所で守っていた数人の兵士達がいる。
「ティアリス様!軍師様が城門を突破して城内に流れ込んだ模様です!我々も下に降りて合流しましょう!」
城壁の上で襲い掛かってくる敵を魔法武器である槍で突き刺しながら答える。
「うまくいったみたいだね。なら私たちもこんな敵を蹴散らしていくよ!私の後ろに続いて城内に侵入してくる兵士達を援護するよー!」
「「「「了解!」」」」
ティアの言葉に周りの兵士達が答える。
この兵士達は実は先にライの指示で城内に潜伏していた精鋭だ。
ライの指示はライが正面から降伏勧告を出して、引き下がったあとに先導し城門の開閉を援護すること。そしてライたちが城門を突破するまで死守することだった。
ティアがこのような危ないところに来なくてもいいのだが、エンリデンヌでライの弱音を聞いてティアもライのことを支えたかった。だから猫になれる利点を説明して立候補し、潜伏している兵士達を指揮していた。
そんなティアも味方を城門に引き入れることに成功したので、任務は終了したことになる。
よって、ティアの行動方針は決まっている。
あの幼馴染のところに急ぎ加勢することだった。
場所は変わり、城内の建物に一人の男が執務室に向けて走っていく。
「なぜだなぜだなぜだ!なぜこのようなことになった!」
こちらの兵数は相手よりも多く、エンリデンヌとは逆で攻めではなく守りだったのだ。なのに、いつの間にか城壁内に敵兵の侵入を許してしまった。
「くそ!くそ!くそ!」
悪態をつきつつも、グリム伯爵にはたった一つだけの希望があった。
それを手に取るために執務室に戻っているのだ。
そして、執務室の扉乱暴に開き机に近寄り、引き出しを開けたった一つの希望。
『蒼の宝玉』を手に取った。
「ふふふ、これが、これがあれば私は、私は負けない!」
そういって、壊れたように笑いながら来た道を戻っていく。
その頃城内では混戦の中全員が応戦していた。
「敵の勢いもなくなってきた!全員グリムの野郎を見つけだすんだ!それでこの戦いは終わるぞ!」
「「「「「おおおおおおおおおおお!」」」」」」
ラッシュが声を上げて兵士達が気勢を上げる。
その声を聴きつつライも国王からもらった剣を手に取り襲い掛かってきた剣を受け止めて敵兵に突き刺す。
肉を切り裂き、突き刺し。骨に当たる感触、剣を抜いた後の血飛沫を目にするがライは考えないようにしない。少しでも油断したら自分が危なくなるのだ。
「ライ!」
とそこで、隣から自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。
隣を見るといつの間にかティアがそばに来ていたのだ。
「無事だったんだな!」
「うん!このまま押しこんじゃおう!」
「そのつもりだ!」
そういって前に走り出そうとしたとき頭の中で
下がりなさい!
大音量で少女の頭の中に響く。
その言葉に驚きつつも有無を言わさず、しかも嫌な予感がしたライは急いで声を上げた。
「全員後退するするんだ!」
有利な状況でどうしてと考える兵士達だったがラッシュとリエルが後ろに下がるのを見た兵士達は急いで後ろに下がった。
ライも後ろに下がるとそこで目の前で驚くべき現象が起きた。
「ごぼぉ!?!?」「がぁ!」「ぎゃあ!?」
今まで戦場になっていた目の前に大量の水が発生し、敵兵が巻き込まれある兵士は圧力により押しつぶされ、ある兵士は溺れ、ある兵士は流され壁に激突していた。
幸いライの指示が早く被害は少なかった。でも目の前の現象には理解が追いつかなかった。
するとそこで、甲高い声があがる。
「わはははははははは!どうだ!みよ!この強大な力を!これがあれば一人でも倒せるのだ。ヒヒヒヒヒそうだ、役に立たない兵士なんていらないのだ。この力が!この宝玉があれば私は無敵だ!」
そう叫んぶグリムは右手を掲げる。
その手には蒼い宝玉が手に握られていた。
中途半端に終わってしまいました。また明日更新するのでよろしくお願いします。明日も更新できるとしたらよるになると思いますががんばります!




