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第百六十一話 エスティアの真意

お楽しみください

 作戦会議室を後にしたエスティア、ストラ、ライの三人は現在孤児院内にいた兵士に案内された部屋で腰を下ろし一息ついていた。


 しかし、そう悠長にしているわけにもいかない。


 何もなかったようにしているエスティアに向けてライは問いかけ始めた。


 「エスティア」


 「あら、何かしら?」


 エスティアは何か聞くことがあるのかと、本気でわからないという感じで返事をしてくる。


 「そんな顔して、何も知りませんというわけじゃないだろ?」


 でも、ライとしてもエスティアの考えを知らなければならない。というか、最近のエスティアの言動と行動が一致していないのだ。先ほども感じたことだが仲間なら助けるべきだと言ったと思ったら、今度は仲間を切り捨てるような提案をする。


 真意がわからない。


 「もう、そんな顔をしないでちょうだい。もちろん考えなしにしているわけではないのよ?」


 「それなら別に突き放すような言い方をしなくてもよかっただろう」


 「それがそうでもないのよね。これはこの先にとても重要な分岐点。上手くいけば希望が消えずに済むわ。でも失敗すればすべてが潰える。少なくともライ、あなたが望まない結末になるのは確かよ」


 望まない結末。エスティアの言葉に対して、自分が望まない結末とは何かライは考える。


 「……ティア達が死んでしまうということか?」


 「それだけではないわ。ティア達ではなく王女であるエミル、隣国のアスティールも北の国出身であるマリーも、すべての人間に不幸が訪れるわ」


 エスティアの顔は最悪の結末を示唆してくるが決して冗談を言っている雰囲気ではない。何かしらの根拠があっての発言だと推測できた。


 そして、ライにも漠然とだが自分の宝玉による副作用と最近の現状、状況を推測していくと一つの推論が出てくる。


 「……ストラ。一つ聞くがストラの魔法で気分を高揚させることはできるか?」


 「気分の高揚、というと人間の士気を上げるという意味です?」


 「いや、士気だけではないよ。たとえば絶望している人に希望を見せるみたいな」


 ストラは考えるように手をあごに置き首をかしげる。


 「う~ん、わからないのです。今までの宝玉保持者は光を使うことだけに注力していたので人間に作用させることができるのか、試したことがないのですよ。しかもその大前提に人の気持ちを変化させるということは簡単ではないのです。ですから、優れた資質がなければできないことなのです。でもなぜそんなことを聞くです?」


 「エスティアが何を考えているのか、正直わからない。けど、エスティアが何も考えずに不利になるようなことをしようとすることは無いと思う。でも、なら何に対抗するためにさっき皆の前であんなことを言ったのか。と考えれば一つなんだよ」


 ライは視線をエスティアに戻して言った。


 「エスティア、俺が持っていない残りの宝玉、闇の宝玉だけどそれが周りの皆、ほかの宝玉もちにも影響するってことか?」


 その話に、半ば考え付くのだろうと予想してしていたのだろう。エスティアは頷く。


 「考え方は間違っていないわ。ただし、半分正解ってところかしら」


 「半分なのか?結構いいところまで言ったと思ったんだが」


 「ここにたどり着くまでが大変なのだから謙遜はしなくていいわよ。それで、私が半分正解といったのは、確かに宝玉もちにも影響は出るわ。それだけ強力な宝玉だから。でも宝玉もちの力によっては影響を受けないの」


 「力って……そもそも力というのは魔法を扱う才能や訓練に積み重ねられたもののはず。それが今回ティア達に言った対抗手段なのか?」


 エスティアはライが性急に答えを出そうとしていることを諌めつつ、ため息をつく。


 「ライ、少し落ち着きなさい。あなたの美徳の一つはすべての条件が揃った時、最適な答えにたどり着ける思考能力なのだから。まだすべてを私が話したわけではないわ」


 そういわれてライは口を閉じる。それを見てエスティアは再び説明を始めた。


 「それで、一応ライの言葉に返事をするなら。そもそも力ってさっきライは訓練と才能といったわよね?でもね、ちょっと宝玉を持っている人物には全部は当てはまらないの。いい例を出すとあなたの副作用ね」


 「副作用……?」


 「よく考えて見なさい。もしライが言ったように才能と訓練だけで宝玉が使えるならマリーはどうなるの?才能はあったかもしれないけどとても訓練だけであそこまで使えると思わないわ。そして、もし体力が無いとかなら別にフィルとかでも使えるはずでしょ?」


 「確かに」


 「丁度いいから教えましょうか。宝玉を使う条件として最低限必要なもの。それは精神力よ。精神力が強くなければ宝玉から選ばれない。訓練や才能にも確かに影響するけど、最後に影響するのは折れない心、不屈の精神なの。そして、それがそのまま力となるの」


 力の定義を話したエスティアはだが、言葉を続け一番ライが聞きたかった内容を話し始める。


 「それで、ようやく先ほどのライの問いかけ。どうしてティア達にああ言ったのかを説明できるわ。理由は簡単。闇帝の宝玉の力を跳ね返すだけの精神力を培うためによ。ライの答えが正しくなるためには、宝玉だけを持っているだけではだめで、宝玉に加えて精神力が強くないと魔法に飲まれるの」


 そう言われて、ライは無言で考える。確かに今説明されてライにもいくつか納得いく点があったのだ。


 まず、この世界では魔法を使える。正確には何かしらの道具を媒介にして放つ。アクセサリーや剣、盾などに仕込むなどして。ライ達の場合は宝玉が媒介となる。


 そして魔法を使うということは当然、何かを代償として魔法を放つ。そのときに代償にするもの。それは精神だ。


 でもここで問題が出てくる。いや、ライにとっては問題ではなく疑問に思っていたこと。


 果たして魔法とは何を基準にして発動しなくなり、枯渇するのだろうかと。


 人の精神力の強さに上限があるのかとの疑問があるが、そもそもこの考えもわからない。精神を削ってというが、もし0になれば何も考えられなくなるのだろうか?精神が壊れるのだろうか。


 宝玉を使って精神が壊れた人物を一人だけ見たことはある。水帝の宝玉の持ち主であった城主だ。最後に自分の手で処刑したが、前後で見たらまるで狂人のように見えた。


 しかし、あれが例外でそれ以外に見たことが無い。魔法を使いすぎて狂人になるならば、命のやり取りをする戦場では多くの狂人が生まれるはずなのに。


 と、ここであることに気がついた。魔法を使い、使った術者が限界まで使ったときのある特徴について。


 「……負の感情?」


 ポツリと呟いたライ。でもそれにエスティアは出来のいい生徒を見るようなまなざしで頷いた。


 「ええ、正解よ。魔法とは使いすぎれば負の感情が増殖されるの。戦争で大量に使えば勝っていれば勝利の期待と興奮で負の感情を押さえ込める。でも、負けてしまったら一気に飲み込まれるわ。最近の例で言うとあなたの暴走やマリーの暴走のときね」


 確かにあの時、ライはすべてを破壊しつくそうと考えた。マリーのときも自分の心の中に閉じこもると、決して正の感情ではなく負の感情に支配されかけた。


 しかし


 「……なんとなく、わかった。魔法の原理も。だが一つだけどうしてもわからないことがある」


 「なに?」


 「今回のことは、闇の魔法に飲まれないよう。負の感情に支配されないようにするってのが目的ってのはわかった。俺としてもティア達が支配されて傷つくのはいやだからな。けど、その話と俺が心から信頼を取り戻すこととどう関係があるんだ?」


 この返事に


 「「……」」


 二人の精霊が無言で驚いていた。いや、驚いていたというか呆れたというか、どうしたものかと困ってもいた。


 「……エスティア。ライってこんなに察しが悪かったです?」


 「いえ、本来は自覚もあるはずなのよ。でもまだ視野が狭くなっているんでしょう。想定内よ。それで、ライ。あなたの言葉に返事をするならば人の精神とは別に自分が考えることだけで制御するというわけではないわ」


 「そうか?自分の考え、折れない心は個人の問題だと思うが」


 「最終的にはそうね。でもそれは最後で人間とは、人に依存するものなの。戦争では英雄といわれる指揮官がいれば、どんなに戦況が悪くてもその人物が自信を持ち諦めなければ心が弱い者だったとしても、ある程度折れなくなる。これはあなたが経験したことでもあるわね」


 「まあ」


 しかし、なんだかまだ曖昧な返事をするライにがっくりとうな垂れるエスティア。この様子を見たストラは珍しく呆れているエスティアを見て驚いていた。


 そんなストラの視線に気がつかないままエスティアはため息をつきつつ


 「……はぁ。しょうがないわね。正直に言ってあげるわ。ライ、貴方自信少しぐらい心あたりがあると思うけど、ティア達女の子は皆貴方を頼ってるの。心の支えになってるの。言い換えれば貴方に依存してるのよ。だから貴方がいればよほどがない限り心は折れないでしょう。でもね、逆に言えば貴方に疑われたり拒否されることは根底が覆ってしまって、精神が不安定になるってことなの。そんな状態ではこの先どこかで絶対に不幸になるわ」


 なおもエスティアは話を続ける。


 「だから、今回がいい機会だったの。貴方はまだ心の底からどうすればいいのか決められないでいる。そして、あの子たちも不安なままじゃ全力を出せない。闇魔法にやられてしまう。だから結束を固めるために今回の条件を出したの。もし達成できなかったら本気で貴方を戦いに関わらせないというのも嘘じゃないけどね」


 ここまで言われてしまって、ライは言葉が出ない。エスティアの言葉は的を射ていたからだ。信頼しようと仲間だとは思う。が、まだ心の底から信頼できているのか、はっきりといえるのかを考えると……少しだけ迷ってしまうだろう。


 そしてこの少しでも迷っている時点でだめだという自覚はライにもあった。


 「まあ、私としては主人である貴方を困らせることはするつもりは無いわ。どんなに孤独になろうがどの道をとろうとしても私は決して貴方を見捨てない。だから安心しなさいな」


 そういって、エスティアは笑みを浮かべた。


 そんな言葉を聴いて、ライは少しだけ笑みを浮かべるが、ただ一人。ストラだけはまた空気になってルナーと思いながらエスティアに心の中で問いかけた。


 (……なんだかこう見ているとエスティアがほかを蹴落として、ライを依存させようと見えそうなのです。というか、これはエスティアがライに依存をしているともとれるです?)


 そんなことを考えながら口は災いの元という教訓を学んだのか、言葉を出すことはないストラであった。

お久しぶりです。ちょっと更新が遅くなってしまい申し訳ない。

今体調を崩して、今も熱や頭痛がありつつも更新をしてみました。

一番時間が取れるのは休日ですからね。

今回はエスティアの話が中心でしたね。

次は残されたティア達の話になるのかな。

ということで、また次回お会いしましょう。

ではまた!

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