↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
159/165

第百五十八話 少女たちの奮戦 後編

お楽しみください

------------左翼 リエル騎兵隊--------------


「……」


 リエルは現在騎兵を三百騎率いて左翼の援護と別の作戦のために行動していた。


 辺りは敵と味方の魔法により視界が遮られよく見ることはできない。これは本来こちらの作戦通りという状況でもあるが。


 「……」


 だが、敵が攻撃したのに力押しの攻撃をしてこないことに少しだけ違和感を感じている。



 確かに視界という情報を遮って敵軍は攻撃を開始した。ならば、普通は敵軍は左翼だけではなく中央、右翼も攻撃したほうが効率的。又は左翼に数の物量で押しつぶすのも手であろう。


 でもそういう風に見えない。


 相手が何をしてくるかわからない状態。だからこそこちらもヴェトリアの指示か弓兵の攻撃が増やして散発的な攻撃しかできていない。このままの状態が続けば時間の問題だろう。


 馬で戦場を駆けながら考える。


 もしライならいい作戦でも立ててくれるのだろうか?


 そんな考えが浮かぶがすぐに首を横に振る。


 確かにライなら、昔のライなら自分が望む作戦を立ててくれると思う。


 でも今のライは違う。


 今のライはすべてを力で解決しようとしてる。策略ではなく圧倒的な力で。そんなもの自分は望んでいない。


 この前のは自分が押し付けた幻想で、違ったら嫌いなのかと自問した。


 今も確実に言えるわけではない。言える状況でもないだろう。だけど


 「ライという人が好きということは違いない」


 一人呟くとなぜか内側からやる気があふれてきた。自覚したから?言葉にしたから?わからない。


 けれど今やるべきことは問題を片付けること。ライに会うために生きて勝つことだ。


 「……騎兵隊二百五十は私と一緒に来る!五十は作戦通りに!」


 後ろの騎兵に指示を出すリエル。指示を聞いた騎兵隊は普段おとなしいリエルが大声を上げて指示したことに内心驚きつつも指示に従った。前衛二百五十はリエルの後に続き残り五十は左に向けて別方向に走り出す。


 「目標は左翼味方を援護、突撃後、距離をとって今度は右翼、中央にも援護をする!」


 騎兵はリエルを先頭にまるで一体の生き物を操るように行動をしていく。そして


 「全員突撃!」


 リエルは右手を上げて前に突き出す。


 すると、水の礫が空気中に現れリエルたちの攻撃を待ち構えていた前線の兵士たちに当たり一瞬の隙ができた。


 リエルにはそれで十分だった。


 腰に下げている双剣を取り出し突撃した。左翼は騎兵突撃のために乱戦模様になり始めていた。



---------------中央 ヴェトリア本隊----------------


「物見の報告です!左翼にて騎兵隊が突撃した模様!敵兵力は勢いを削がれ均衡状態になったとのことです!」


 「サチ様より報告いたします!右翼で敵正面に魔法を使ったところ右翼前方に展開していた兵力は予想よりも少数とのこと!十分警戒をされたしとのことです!」


 「後方の弓兵隊から進言!味方騎兵が突撃を開始したため援護射撃をやめ中央本隊に合流するそうです!」


 様々な戦況が自分のところにやってくる。戦場は刻一刻と変わっていくのだ。これに対してすぐに、最適に指示をしなければならない。


 「左翼に対しては騎兵隊が引くときに援護をするようにしてください。その後前衛は一度前面に突撃、その後勢いがあるうちに後退、防御の陣を」


 「右翼はそのまま待機。変わりに光帝隊を中央に配置させてください。そして、敵右翼に使った魔法をもう一度中央に向けて放つように」


 「後方の弓兵隊については了解しました。そのまま次の指示があるまでは待機を命じます」


 ヴェトリアは慣れないながらも指示を出していく。今までアスティールで氷壁の砦で補佐をしてきたのだ。そのおかげである程度の戦略についても理解している。


 ただ、このような大規模な部隊を率いていないので慣れていない。


 だからこその綻びもではじめる。


 「左翼に敵騎兵隊が突撃してきております!どう対処すればいいでしょうか!」


 「中央敵兵が進軍を開始、こちらに向かっております!」


 「右翼敵兵も行軍を開始。左翼が劣勢の模様!右翼からの救援はだせないでしょうか!」


 慣れていないからこその、大量の情報量をすぐに処理できない。戦場において一分、一秒、一瞬でも迷えばそれは伝達方法が人である以上、累乗できに伝達は遅れ、行動は遅れていく。


 それをヴェトリアは最初は上手くできていたが今は情報が最初より多くなり情報過多。いわゆる混乱をし始めていた。


 (左翼の騎兵を下げて予備兵力を前面に押し出す?いいえだめです。予備兵力をここで出してしまっては中央の守りが薄くなる。それどころか、騎兵の前面に出したら捨て駒にされたと思われ逃亡される可能性が高くなる。なら右翼から左翼に援護を?でも右翼に本当に敵兵力が少ないのか確証がない)


 思考の迷宮にはまってしまった。


 周りの兵士たちは不安そうな表情をして指示を待つ。その表情を見たヴェトリアは突如冷静さを失った。戦場で一番やってはいけない一つ。それは指揮官の暴走だ。


 「ぜ、全軍突撃をめいれ」


 混乱したヴェトリアが出した命令はすべてを運に任す、自暴自棄の命令を口にしようとした。いや、ほとんど口にした。けれどそこに


 「そんな命令をして本当にいいのか?」


 後ろからそんな声が聞こえて言葉をとめた。


 ヴェトリアが振り返った先そこには


 ライがいた。



--------------丘 ライ-----------------


 ヴェトリアが突撃命令を下す少し前。


 ライは戦場の戦況が味方にとって悪い流れが起きていることに気がついていた。それは両隣にいる精霊二人にもわかっていただろう。


 まだまだここから逆転は可能だと思える。思えるが……。


 敵騎兵の動きと中央の進軍も始まっている。もともと騎兵は右翼にいたが左翼に移動を開始しているようだ。おそらく左翼に突撃したこちらの騎兵に対し反撃をするために移動させているのだろう。戦場において魔法を除けば騎兵の攻撃力は最強だ。それに加えこちらの二倍の騎兵が突撃してきたら左翼は崩壊するだろう。


 「……もう、無理なのかしらね」


 エスティアはどこか諦めたような、悲しみを帯びた目で戦場を見下ろしていた。希望がなくなってしまったような表情だ。


 「……」


 ライは呟きを聞きながら味方の動きを見る。それを見てもどかしさを感じていた。自分なら逆転ができる。このような動きが悪い、ぎこちない指揮などしないと。


 けれど別の思考もやってくる。


 またお前は指示を出すのか?そして味方たちを危険にさらし殺すのか?自分が考えたからあのような、イプス達の結果になったのだろう?


 最近縛られている感情に、今回も心が縛られ体が縛られる。


 動きたくても動けない。助けたいと思うが助けるなと思う。指揮をすればと思うも指示をすることがいやだ。


 矛盾を考え、心と体が別々の指示を受け、結果動けない。


 エスティアとストラはそのようなライの変化に気づき……最初にエスティアが話す。


 「……ライ、あなたはどうするの?」


 「俺は……」


 「何を考えているか、何を思っているのか正確な考えはわからない。というか貴方は理屈を考えることが好きだから、様々なことを考えているんでしょうね。けれど一つだけ聞かせなさい。貴方は、助けたい?助けたくない?どっち?」


 「……」


 心配するように、そして決断を迫るようにエスティアは視線を向けてくる。すると、隣にいるストラも話しかけてきた。


 「ライ、皆がこのままじゃ死んでしまうなのですよ……」


 ライにすがるように裾を掴んでくるストラ。


 その言葉を聴いて、ライは決めた。


 「……わかった。俺がヴェトリアの元に行く」


 「ライ、魔法は使ってはだめよ」


 「何をいってる?助力をしろといったのは」


 「一応この戦いで助力することに何もいわない。けれど、もともとは彼女達の戦いでもある。中心となって勝たなければならないのは彼女達。魔法はあなたの力で彼女達の価値ではなくなるわ」


 「……あいつらにも求めないといけないということか?」


 「ええ、そうよ」


 「正直いうと、俺はまだ何が正しいのか本当に正しい行動をしているのかわからない。わからないが……あいつらが死ぬのは見たくない。……わかった。その条件でいい」


 ライが返事を返すと、ふっとエスティアは微笑を浮かべ空に浮かぶ。ストラも笑みを浮かべて空に浮かんだ。


 「そうと決まれば早速動きましょう。あなた達も一緒に来てくれるわね?」

 

 エスティアが周りに話すと数十名の兵士達が無言だがうなずく。


 そしてライはいった。


 「これから中央本隊に向かう。全力で向かうぞ!」


 ライは走り中央本隊へと向かったのであった。


--------------中央本隊 ヴェトリア ライ--------------


ライが到着したとき、ヴェトリアは全軍に玉砕覚悟の全軍突撃を命令しようとしていた。その様子を見ておそらく、混乱をきたしてしまったのだろう。


 だからこそ間一髪で間に合った。手遅れになる前に。


 「ラ、ライ様……?なぜここに?ま、まさか私達が信用ならなくなったとか」


 なにやらヴェトリアは最悪の事態を想像してライがヴェトリアたちに愛想を尽かしたとでも勘違いしたようだ。見る見るうちに肌を青くしていった。


 けれど、そんなことに気遣っている余裕はない。


 ライは一人声を上げる。


 「伝令!報告を伝えろ!」


 一瞬ポカンとした兵士達だったが、すぐに先ほどヴェトリアにした報告をする。新しく追加された話も元に、情報を整理しヴェトリアに話し始めた。


 「このときはリエルの騎兵隊を後方に下げて弓兵隊を二百向けるんだ。敵は密集して突撃してくるから前線で矢に当たり落馬した馬がいたら後方の騎兵数騎を巻き添えにできる。上手くいけば勢いをとめられる」



 「え、あ、」


 「中央に関しては、マリーに魔法を使ってもらって敵の矢を落としてもらう。ただこちらの残り百の矢を射撃するんだ。右翼の兵力は中央に回す。その代わりサチに魔法で兵力を多く見せる。後方にいる予備兵力を左翼に全部回すんだ。そうすれば右翼は防御が下がるが、左翼が崩壊する可能性は少なくなる」


 次々に教えるように伝えるライだが、ヴェトリアは言葉をつむげないでいる。


 「……ヴェトリア。俺はまだ自分の考えが本当に正しいのか、考えていいのか、何かを指示していいのかわからない。今もこの選択はだめなのかもしれない。ただこれは俺の経験と知識だ。決めるのはこの軍の暫定指揮官のお前だ。お前が決めろ。俺は知識を貸す。知識を教える。だから決めろ」


 突き放すようで、手を差し伸べる言葉にヴェトリアは少しだけ、ほんの少しだけ混乱が収まる。なおも鉄と鉄がぶつかりあう音が聞こえ、悲鳴や怒号は聞こえる。でも、そんな中でもなぜかライの言葉が一番聞こえ、身にしみていく。何よりもまだ、自分達を見捨てたわけではないとわかったことが嬉しい。


 ヴェトリアはうなずいた。


 「では、お願いしまよ~。伝令さん。ライ様が言ったようにしてください。予備兵力とマリー弓兵隊二百を左翼に、右翼からは五十の兵力を中央に追加。光帝隊も中央に編入させます。さらに後方支援隊の百を予備兵力として武装を、もし右翼が攻撃された場合前線維持のために参戦してもらいます~」


 少しだけいつもどおりの口調に戻りながら指示をしたヴェトリアは、話を聞いた伝令を安心させることには成功したらしくすぐに行動を開始していた。


 その様子を見ていたエスティアがヴェトリアに言ってくる。


 「先に教えておいてあげるけどライは今回魔法を使わないようにいってあるわ。だからあくまでも中心はあなた達よ。いいわね?」


 「はい~……絶対に負けません!」


 そう意気込むのであった。


 戦場では均衡状態にあった。


 逆に言えばよく均衡状態にできたというだろう。


 絶対絶望と思えた左翼の敵騎兵突撃。これを何とか受け流したのだ。そのときにリエルの騎兵隊は後方に離脱。同時に弓兵による攻撃で敵の勢いを削げ均衡状態になっている。


 中央部隊においても同じことが言えた。おそらく右翼に展開していた兵力を中央に移し一斉攻撃を開始したようだが、それをこちらの魔法部隊が光を屈折させ錯覚、また攻撃をして出鼻を挫いたのだ。こちらからの矢はとびあちらからの攻撃はほぼマリーの氷で打ち落とされる。


 圧倒的物量で崩壊しそうな中央だったが予備兵力と右翼兵力を集中させることで何とか持っている。

 

 「全軍防御に徹してください~!」


 そうやって指示を出すヴェトリア。


 元々戦いは敵を殲滅させるか、士気を挫くか、敵将を撃つか。和平を除けばそれぐらいが終わりの合図だろう。


 でも防御に徹していては勝てない。負けるのも時間の問題だろう。


 そう、ライ達の軍がこれだけなればである。


 ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ


 突如あがった一つの火矢。それは空に舞い上がり下に落ちていく。


 ヴェトリアは何事かと思い視線を向けるとそこには


 「間に合った……!」


 そこには旗を翻す大軍がいた。五千から一万もいるかもしれない。


 この大軍には敵兵のも動揺が走っているようだ。


 そんな中大軍の一つの旗が振り下ろされると突如突撃を開始。……敵軍の中央に向かってその軍勢が攻撃を開始するのであった。


 これがヴェトリアが防御に徹した理由であった。


-------------大軍 ティア-------------


 少し前


「よかった、まだ間に合いました……!」


 大軍を率いてきたのはティアであった。両隣にはラッシュとレーシアが控えている。


 「ん、なんだか旗色が悪いようだな。さっさと行動したほうがよくねえか?」


 「そうだよティア!早くライ達を助けるなの!」


 二人の声にティアはうなずく。


 「はい、ではお二人は二千ずつ兵力を指揮してください。ラッシュさんは敵中央に突撃、レーシアさんは味方部隊が苦戦している左翼に攻撃を。ただ、敵は騎兵部隊を有しているので気をつけてください」


 「それはいいけど、敵騎兵はいったいどうすればなの?」

 

 「敵騎兵隊の対処は任せてください。後方部隊に指示します」


 「わかったなの。なら任せるなの!」


 二人はすぐに兵士達の元に向かっていった。


 それを確認しながら次にティアは後方の赤と土、水と青の兜を被った兵士達に指示を出す。


 「皆さん、この先に私達の味方が、あなた達のそれぞれの隊長がいます。ただ今はいません。ですから私が指示を出すので従ってください。あなた達全部隊は敵騎兵に対しての切り札とします。土部隊は敵の足止めを、その他の部隊は足が止まった騎兵に対して攻撃をしてください。ただ、味方の誤射には気をつけてください!」


 指示を受けた兵士達は不平を言うことなく自分の隊に戻り攻撃を開始した。


 国盾の砦で特徴である魔法部隊。


 その部隊が攻撃を開始しようとしたとき前方になぜか光が揺らいだように見えた。これはどちらかというとサチの魔法を見ているような。


 「……関係ないですね。土部隊。敵頭上に石の雨を」


 指示通り降らせると、光は再び揺らぎ蜃気楼のように揺らいでいた先はしっかりと視界が見えるようになる。


 ティアは、空から降る石によって光を通しにくくして妨害しようとしたのだ。だが、運がよかったのか術者、又は部隊に被害があり魔法が解けたようだった。


 その間にマッシュ、レーシアの部隊がそれぞれ突撃。魔法部隊も敵騎兵をつぶすことに成功しこの戦いに勝利した。


 ティアは思う。ようやくライ達にあえると。無事だったと涙が出そうなほどに。


        (ティア本隊)

  ↓(魔法連合部隊)

    ↓(レーシア歩兵) ↓(ラッシュ歩兵隊)  

  (敵魔法部隊)↓(敵弓兵)↓ (敵弓兵)↓

  ↓(敵騎兵)

      (敵左翼)↓    (敵中央)↓     (敵右翼)↓


 

 ↓(リエル騎兵)


     (ティア左翼)↑  (ヴェトリア本隊)↑  (サチ右翼)↑

                (ライ)

                           (弓兵ニ百)

              (マリー弓兵隊)

               (光帝隊)

              (予備兵力+支援)


     ↓↑:部隊方向

    ():部隊名

 

こんばんわ、なんだか久しぶりに熱中して戦いを書いたかもしれません。

というか結局少しだけライが介入してしまいましたよ。魔法使ってないからセーフだよね?……といってくれ!

さて、久しぶりのティア、ラッシュ、レーシアの登場です。なぜ彼らがこんなところに、しかもこんなに早くこれたのか。このことについては次回わかる……かも。

書くつもりではいるんですけどね。

ただ、ライの状態を見た彼らがどう思うかわかりませんが。

では、今回はこの辺で。お疲れ様です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。