第百五十七話 少女たちの奮戦 中編
お楽しみください。
-------------国盾の砦 左翼 ティア部隊----------
ここ左翼では今まで順調にことが進み次もあと少しで行動を起こすところであった。
しかし、行動を起こす前に目の前で爆発が起こる。
「何が起こったの!誰か命令前に暴発をさせたの?!」
ティアはあわてつつも状況把握に努め後ろにいる兵士たちに問いかけた。だが、帰ってくる返事には誰も攻撃はしていないということである。
ということは、この仕業は相手から行われたとしか思えない。ならば自分は対応するだけだ。
「皆落ち着いて!計画ではこちらから攻撃する予定だったけど、敵も攻撃してきたなら応戦するだけだよ!私が最初に魔法を使う。だからその後にあわせて敵前線の対応をして!それと誰か後ろに伝達を!弓兵隊で敵の牽制をお願いと!」
すぐに判断を下すと、後ろの兵士が走るのを見送ることもせずにすぐ前を向き敵に対峙した。
今起こった現象が何かわからないが敵は爆発を起こして黒煙を上げた。当然視界が悪くなりこのうちに攻撃してくるのだろう。
この方法はよくライが奇襲作戦のときにしている作戦だ。煙や霧による視界不良を起こして情報を遮断して混乱させるために。
でも
「それはこっちもやる手だから当然対処法も考えてるけどね!」
ティアは魔法を使用した。魔法内容は敵と同じ炎を爆発させるもの。だが敵を焼きつくすことはせずに敵前線の手前で爆発を起こす。
それによって敵の視界も浮かび尚且つ、こちらの作戦も進められる。
あたりには煙が立ちこみ青い空にはいくつかの黒い筋ができていた。
「これでどうなるかなぁー……ってそんなにうまくはいかないのかな」
視界はあまり見えないが換わりに地響きが起こる。敵が迫ってきているのだろう。
「敵は突撃してくるみたいだよ!前衛は防御に徹して!後方からは魔法を使える人は使って、使えない人は敵を槍で牽制をして!……来たよ!」
そうして左翼は激突を開始した。
-----------後方 マリー隊----------
「わかりました。えっと、すぐに行動をします。その副隊長さん」
「はっ」
「今から百の兵士を預けますので味方左翼の援護をしてください」
「わかりましたが……兵百でよろしいのですか?敵は少なくとも倍以上はいるというのに」
「できれば全兵力を差し向けたいですけど、あの、敵が何をしてくるのかわかりませんから」
オドオドしつつも、マリーは指示を出すと副官と呼ばれた男は微笑を浮かべうなずいた。
「わかりました。ならばすぐにでも行きましょう。聞いたな!今から左翼を援護する。百人俺についてくるのだ!」
そういってすぐに副官は左翼の応援に走っていった。
残ったマリーは伝令に別の指示を与える。
「伝令さん。その、今から中央のヴェトリアさんに伝えてください」
「よろしいですが何を伝えればいいでしょうか?」
「中央の防備を固めるようにと。後方にいる予備兵を半分中央にまわす様に」
「了解しました」
「お願いいたします」
伝令が去った後を見送ったマリーは黒煙が上がった方向を見つつ、ひとつだけ懸念をしていることがあった。
それは兄が、兄のイプスが自分の魔法を使う場合よく視界を悪くすることが効果的だといっていた。けれど、それがすべてではないとも言っていたのだ。
[いいか マリー。確かに視界を悪くすることは情報量を与えないという利益をもたらす。けどね……時には情報量をわざと多く与えて敵を崩すのも効果的なんだ]
いつかそのようなことを聞いたことがあった。
そして、今の状況。左翼で大きく上がったひとつの黒煙。二回目の聞こえた爆発は味方が放ったものだが、一回目は敵。ならば、敵は何かをするつもりなのではないか。そう考えてマリーはヴェトリアに進言したのだった。
------------中央 ヴェトリア本隊-----------
「マリーさんがそのようなことを?」
「はい、後方に控えている予備兵力をこちらにまわすようにと」
「そうですか……わかりました。あなたはわかりましたとマリーさんに伝えてください~」
返事を伝えると伝令は戻っていく。次にマリーの言動を頭の中で考える。
(普通ならば今攻められている左翼に予備兵力を動かす。けれど、まだ攻撃を仕掛けられていない中央に予備兵力をまわすというのは……何か心配事があるんでしょうね~)
ということならば後方からまわすのが正しいのだろう。けどそれだけでは不十分かもしれない。万が一のときにのために用意をしておこう。
「万が一の場合火矢をあげる用意を」
今のところ予備しかできない。だから予防線を張るしかできないのだ。ただ、こうなると右翼に万が一のことがあった場合対処がしづらい。大丈夫だろうか。
ヴェトリアは右翼のほうに視線を移すのであった。
-----------右翼 サチ隊------------
サチには左翼で起きた爆発のことも見えていた。おそらく何かしらの敵による攻撃があったのだろう。
ただそれに対して右翼には何もない。敵は沈黙を保っている。普通ならば左翼を攻撃したならばどちらかを動かすのが定石。陽動のために攻撃した可能性があるのだから。
しかし、それがないということは。
「敵には別の意図があるということですね」
ならば自分なら何をするか。
「……光帝隊。今から魔法を使ってください。目標は敵部隊前方。効果は光の屈折を目的とし、攻撃魔法はしなくていいです。攻撃に関しては敵の動きによって私が攻撃します」
そういって、指示を出し前方を見る。
【何かあったのですよー?攻撃ではなく光の屈折を狙うだけなんて何か懸念でもあるのです?】
突如サチの頭の中に声が響く。といっても知らない声ではない。自分のよき友人であり相棒である声だ。
「懸念があるから指示を出したんですが、敵が魔法を使っている可能性を考えたんですよ」
【魔法を?】
「そうです。敵が動かないことがおかしいので、もしかして自分たちの見ているものが嘘ではないのかなと思っただけです」
【なるほどなのですよー。……このこと、ライには伝えてもいいのです?】
「伝えても問題はないです。ただ……ライ様の様子はどうですか?」
サチが質問をすると、なにやら少しだけ間があった。おそらくライの様子を見ていたのだろう。
【……相変わらずなのですよ。予断を許さないという感じの視線ですよ】
「そうですか……ストラ。そっちのことはよろしくお願いします」
【わかりましたなのですよー。あ、ほかに何かサチっちからライに伝えることはありますか?】
「なら、私が考えたことが正しかったら右翼の防備を少なくして中央に戦力を集中させます。その折、ライ様にもし、わが軍が危なくなったら手を貸してほしいと。伝えてください」
サチの言葉に、頭の中に響く声が一瞬息を呑むような空気をだした。
【今回は力を貸さないという約束でライは参戦していなかったのではないのです?】
「いいえ、ヴェトリアとはどうかはわかりませんが、私が聞いた内容では一人で戦うなといっていました。ならば別に協力して手を貸してくれるぐらいはいいと考えます。私が認めた将来の夫がただそれだけのことに関しても怒るなど器が小さい人ではないですよ」
一瞬だけだけ微笑を浮かべるサチだがすぐに表情を引き締める。
敵が少しだけ動き始めたのだ。
「……さて、そろそろ行動をします。よろしくお願いしますね。ストラ」
そう告げると頭に響く声はなくなった。伝えに言ってくれたのだろう。
それを確認してサチは行動を開始した。
-------------ライ 丘上---------------
「サチがそんなことを?」
ストラがサチの言葉を伝えると、ライは初めて戦場から視線をストラのほうに向けた。その表情は少しだけ驚いているようだ。
「そうなのですよー。だからいざというときにはよろしくお願いしますなのですよー」
ライとしては、サチの言葉に意外という言葉が頭の上に浮かんだ。いや、一応何かあれば介入するつもりだった。まさかサチから助力をしてほしいと来るとは思っても見なかった。今回ヴェトリアには戦闘に参加するなといわれていた。この話はサチも聞いているだろう。
「……わかった。なら早速行動するか」
ライは一言告げると丘から少しだけ移動しようとする。
しかし
「だめよ」
止めるものがいた。エスティアだ。
「助力をされたのにか?」
「まだだめよ。まだ真価を見れてない」
「だが」
「だがといってもだめ。彼女らはあなたの負担を減らそうとしているの。このぐらいのことで一々あなたが介入するならば最初から頼りにしないほうがいいわよ」
エスティアは心を鬼にして答える。本当は彼女たちのために判断するということはいい兆候だ。このままいい感じになってくれればいいと思う。だけどそれだけではだめだ。ライだけではなく周りにもある程度求めないといけないのだ。
「本当にあなたが介入するのはぎりぎりまで待つの。それに彼女らの作戦は完全に負けたわけではないのよ?」
ライはそう言われて無言で視線を戦場に向ける。
そこで見えたものは騎馬の一団が左翼を走り去るの姿であった。どうやら視界を悪くしたのは敵にも言えることで騎馬部隊であるリエルが突撃を開始したところであった。
まだ策があるのだろう。ただ時間がしばらくかかってしまうが。
「わかった。まだ待つよ」
そういって、ライは動こうとしていた体を再び正面に向ける。
「俺は信じてみる」
一人呟いて視線を左翼に。リエルの騎馬隊に向ける。
ライは思っていた。
この戦いで一番の切り札のひとつはリエル達だろうと。
こんばんわ。まずは、活動報告のお騒がせいたしました。
実は、小説が消えていたと思ったのでがありました。これは先日書き手のみの緊急メンテナンスがあり正常に更新、表示されていなかったようです。
さて今回のお話ですが、それぞれの視点で行動を書いてみました。まだまだ戦いは続く……と思います!なんだか途中に連載が終わるようにあとがきになってますけど、続きますからねwもっともっと書いていきますので!
ではまたお会いしましょう。




