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第百五十六話 少女たちの奮戦 前編

お楽しみください

 「それでは今から行動を開始します。皆さんは事前に伝えた作戦通りに動いてください。状況の変化によって通達しますが、そのときは各隊長の指示に従ってください」


 この言葉を言い終えてから四半刻。


 ライはせわしく動く味方の兵士たちを見つつ状況を静観していた。


 本来ならば自分は一人でやるなというだけで協力してもいいはずで、実際は何かをしようかと動こうとした矢先ヴェトリアに止められてしまったのだ。


 今回は自分たちだけで行動するのだと。


 ただ、そうなると手持ちぶさたになってしまうライにとっては少しだけ落ち着かない。いつもなら近くに護衛と称して誰かがいるのだが、今この軍に余分な戦力など無くライが前線に出ないのならなおさら戦力となるティア達を遊ばせているわけには行かないのだ。


 だからだろう。この二人が監視するように両隣に地面に立ち挟んでくるのは。ちなみに、周りには十数人の兵士達が護衛のためについているが、ある意味連絡役もかねているので実質監視役はこの二人だ。


 「いやー、皆さん忙しそうなのですよー」


 「何を言っているのストラ。忙しいに決まっているでしょう」


 エスティアとストラ。二人の精霊。


 「ん、どうしたんですかライ?何を呆けたような表情で私を見ているのです?……ハッ!もしかして私に見惚れたのです!?」


 何を勘違いをしたのか腰をくねくねしながらほんのり赤くなった顔に手を当てて喜んでいる。


 その様子を見たエスティアが冷静に一言。


 「何を馬鹿のことを言っているの。寝言は寝て言いなさい」


 憮然とした表情で突っ込む。しかし、いつもならここで話は終わるはずなのにストラが反撃をした。


 「寝言ではないのですよ!可能性は十分にあるはずです!あ、もしかして嫉妬なのです?」


 ニヤニヤしながら聞いてくるストラは楽しそうに問いかけ、ライもどういう反応をするのかなと思い視線を向けるとそこには


 「……」


 反論すると思っていたのに反して無言でそっぽを向く精霊がいた。微妙に唇を突き出しすねるようにして。


 ライは正直このときこの精霊がかわいいと思ってしまった。


 ピュイイイイイイ



 そんなやり取りをしている間に、ついに一本の矢が空に打ち上げられた。作戦開始の合図である。

 

 打ち上げられた合図と共に兵士達は行軍を開始した。


 今回の陣容を説明すると次のようにである。

 国盾の砦陣営

 騎兵三百 歩兵七百 支援部隊二百 光帝部隊五十 弓兵三百

 計千五百五十

 

 対して敵陣営 目視による兵力は


 騎兵五百 歩兵千五百 弓兵七百 支援部隊三百

 計三千


 と予想された。


 すべての兵種に対して負けて、尚且つ疲労の度合い的に絶望的な数値だろう。


 あえて両軍の違いといえば特殊部隊であるサチ専用の部隊五十人がいるくらいだろうか。


 ライは動き出した兵士達を見つついつでも出られるように神経を研ぎ澄まし機会を伺う。信頼をしつつも、信頼をしていない感情を持ちながら。矛盾した二つの感情を有しながら。


 「始まったようね。ねえ、ライ。あの子達は勝てるかしら?さすが今まで一緒にいただけあって作戦を聞いたときは感心したのだけど。後で冷静に考えればあれには一つ欠点があるように思えるのだけど?」


 「え、エスティア。何か欠点があるのです?自分には結構いい作戦だと思ったのですよ」


 「ええ、私も結構いい作戦だとは思うわよ?でもね、この戦いでは結構では駄目なの。とても良い作戦じゃないと。……だからライも装備を整えているのでしょうしね」


 「……」


 「でもライ。これは私達の杞憂なのかもしれないからヴェトリアとの約束は破っては駄目よ?わかっているわよね?」


 「わかってる」


 この間にも決してエスティア、ストラに視線を向けずライは答えていた。視線は最前線である戦場に向けられていた。


いつでも介入できるようにと。




-----------前線 国盾の砦陣営----------


ここでは現在前線歩兵部隊を率いるヴェトリアの中央軍歩兵三百、ティアによる左翼歩兵百五十、サチによる右翼歩兵百五十 中央後方にマリーの弓兵三百 その後方に支援二百と予備歩兵百と光帝部隊五十、最後に虎の子部隊である騎兵をリエルが率いる。


 この部隊の総司令はライだが、今回は代行でヴェトリアが行う。


 敵軍約三千の敵兵はこちらの軍勢を視認後、進軍を停止。こちらに向きを変え陣形を整えていた。


 「さてと~、計画通りにいけばいいんですけど。それは敵の動き方したいですね~。……それにしてもやはり敵軍は目にすると多いですね~」


 自軍と比べ約二倍の敵。ライに勝てると見栄をきったのだから勝つつもりではある。けれど、やはり厳しい戦いになるだろうなという思いはあった。今回指揮をとるのは自分だが、ライには勝てないと思っているからだ。


 けど、仲間たちとやればできると信じている。


 なら、後は自分と仲間を信じてやるだけだ。


 ヴェトリアは敵が前衛に槍兵を整え前進を開始した。


 その行動を見てやはりそうかと思う。


 ならばこちらからやることは決まった。


 「全部隊中央の歩兵に対して圧力をかけます~。弓兵部隊は中央に集中して攻撃を開始してください。その後、マリーさんは例の作戦通り魔法を使うよう指示を。それ以外は敵兵の動きがあるまで待機です」


 ヴェトリアが指示を出していくと伝令はすぐさま移動を開始して飛んでいった。


 それからしばらくして、両軍は徐々に距離を縮めていく。互いの射程距離を見極め少しでも被害を抑え敵に被害をもたらせるために。


 そして


 「全員今です!射撃を開始してください!」


 最初に攻撃を開始したのは国盾の砦だ。約三百もの弓矢が空を駆け敵兵へと飛んでいく。


 しかし、もちろん敵も黙っているわけがない。


 敵軍からは国盾の砦の2倍以上もの弓矢が飛んできたのだ。純粋に考えれ確実にヴェトリアの陣営が被害を多く受けるだろう。


 そもそも数が少ないヴェトリア陣営が奇襲ではなく正面に展開したこと事態が愚策である。


 ……と、一般の戦略家ならばいうだろう。


 けれど、この世界には愚策を良策に変える技術があるのだ。


 キン


 今にも降りかかると思われた敵からの矢が空中でそのような音を立てて力なく落下を始めたのだ。後に続く矢もヴェトリア達の前にどんどん落ちていく。中には届く矢もあったがそれは事前に盾で防ぐように指示していたおかげでほぼ無傷である。


 「マリーさんはちゃんとやってくれたみたいですね~」


 今の現象は以前国盾の砦がマリーにやられた戦法だ。空中に薄い氷に膜を張り敵の矢を跳ね返すというもの。


 ただ、今回さすがに全域にするのは負担が大きく、ライの副作用などを考えて限定的に展開してもらっていた。


まずは初戦の弓による戦いはこちらの優勢に終わるだろう。しかし、まだまだ天秤はこちらに傾いていない。こちらに天秤を向けるためには次の策を実行するべきだろう。


「敵兵もそろそろ矢による攻撃をやめて数による攻撃に移動すると思います。ですので、全軍敵が進軍してきたら後退を開始してください。ただゆっくりと。弓矢隊は射撃を継続。マリーさんの判断で次の指示を決めちゃってください~」


 指令を飛ばしたと同時期に、敵兵はやはりというべきかヴェトリアの予想通り矢による攻撃をやめて歩兵戦に切り替え全身を開始した。こちらはいまだに絶え間なく射撃をしているので敵軍の被害は増えていく。だからだろう、できるだけ身を寄せてゆっくりな移動しかできない。だが確実に前進をしてくることに変わりはない。


 「これは、結構すんなりと勝てるんでしょうかね~」

 

 と前線を見ながら独り言を言うがヴェトリアはすぐに首を横に振る。


 「と、以前までの私なら楽観していたんでしょうね~。少なくとも魔法という強力な現象を、使い方によって威力は何倍にも振れると気づかなければ」


 ヴェトリアが言っているのはジュアン帝国との戦いの折、火、風、光、水など多くの魔法を使い強大な火の玉を作って敵兵の士気を折ったこと。実際には威力は無いようなことを聞いたがそれでも効果はてきめんだったのだ。


 あのときのことがヴェトリアの価値観を変えた。敵が何をするのか用心することに越したことは無いと。用心を重ねて慢心はしていけないと。


 「さて、相手はどう動くんでしょう。……とにかく次の行動に移しましょうか。誰か伝令を。左翼右翼に敵兵が攻めてきたらできるだけ派手に戦ってくださいと。サチとティアには作戦通りにやってほしいと伝えてください~。最後にリエルさんも両翼が動いたら行動を開始するように伝えてほしいです~」


 ヴェトリアがそうやって伝えるとすぐに伝令はいなくなる。伝令の後姿を見て少しだけ思う。よく不利な戦いでも動揺せずに動いてくれるものだと。それだけ今の王国に不満を持っているのか。それとも、いくところが無いからついてくるだけなのかわからない。ただ一つだけいえることが


 「これもライ様の人徳のおかげでしょうね~」


 ヴェトリアはそう思っている。今まで不利な状況でも奇跡的な策略で突破してきた指揮官。今は不利でも最後には勝つと思えるからこそ兵士達も心が折れず士気が下がっていないのだ。


 ライ様がいれば勝てる。ライ様が何とかしてくれる。ライ様が自分達を導いてくれる。


そんな思いを抱いているのだろう。


 「……」


 けど


 けれど、それが今回のライ様の原因となってしまった。


 上に立つものの責任、重圧、羨望、そしてプレッシャー。


 すべてが降り注ぐ。理不尽に、個人の動きに関わらずに。


 だから


 だからこそ今回は自分たちが重さを軽くするようにと考え作戦に参加しないように伝えた。自分たちにも頼っていいのだと伝えるために。


 自然とヴェトリアは少し高い位置にいるライのほうに視線を向けるのであった。


------------丘の上 ライ---------------


「どうやらリエル達が動き出したようね。両翼も動き出したし概ね計画通りね」


 エスティアが戦況を見ながら少しだけ安堵をしていた。エスティアとしては連戦による士気低下と戦線崩壊を危惧していた。


 しかし、見た限りだと今のままだと大丈夫だろう。


 ストラもエスティアの表情を見て少しだけ安心したが……ライの表情を見て顔を傾げる。まだライは緊張感を持った視線で中央……ではなく、両翼に展開しているティアとサチの動きを確認していた。


 エスティアも視線に気がつき質問する。


 「どうしたの?何か両翼に心配事があるのかしら?」


 「ああ、心配事しかない」


 「どうして?事前に聞いていたとおりに動いているような気がするけど」


 「そうだな。確かにそうだ。けれど戦いは最後までわからない」


 そう、今までライたちは敵が勝てたと思ったときその隙を突いて逆転勝利をしていた。自分たちにできたことが敵にできないわけがない。


 ストラとエスティア。二人が考えすぎだろうと、もう少し楽観していてもいいのではないか。


 そういおうとしたときに



 ドン


 一箇所。たった一箇所から何か地響きするような音が聞こえた。


 音がした場所は左翼 ティアが展開している前線付近。

 

 その近くで空に舞い上がるほどの煙が発生していた。


 どうやら


 ライの嫌な予感は当たっていたようであった。


 

 

 

こんにちは、投稿できましたよ。

今回は珍しくヴェトリアが中心となった戦争になりそうです。もちろんほかのキャラクターも動かすつもりですけどね。

今後どうなるかはご期待ください。

と、ここで今回は切り上げて前回の話で実は重大なミスが。とある友達からの指摘があったのです。それは

友人「あ、そういえば小説読みましたよ」

自分「お、それでどうだった?」

友人「よかったんじゃないですか?けど、名前間違ってましたよ」

自分「え?名前?間違っていた気はしないけど(マリーやティア、リエルとか間違ってたか?)

友人「なんかストラが出てきたじゃないですか」

自分「出したよ。名前出ていなかったしようやくね」

友人「……ストラの契約者がマリーになってたんですけど」

自分「ん?」

友人「ストラって光の守護者ですよね?サチじゃなかったですっけ」

自分「……」

友人「……」


というやり取りがありまして、なぜかマリーが光の宝玉もちになってました。申し訳ない。もう修正したんですけどね。マリーは氷の宝玉もちだ!

というところで今回はこんなところで。

以上お疲れ様でした!

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