↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
156/165

第百五十五話 精霊と少女の約束

お楽しみください

 ヴェトリアはライに進言し許可を取ってからこの後の動きについて話すために後方へと下がり、ティア達と合流した。


 この場にいるのはマリーを除き、ティア、ヴェトリア、リエル、サチの四人である。


 ヴェトリアから先ほどのライとのやり取りを聞いて、今回の戦いの成否がとても重要だということを全員が認知した。もしここで失敗してしまったら守ってもらうだけの存在に、それどころか仲間としてみてもらえなくなる可能性も考えてしまう。


 重い空気になり始めたところを最初に意見を出したのは、この原因を作ったともいえるヴェトリアからであった。


「……勝手なことをしたかもしれません。けど、私にはこれがとても大切な、避けては通れない道だと思うのです。ですから力を貸してください」


 いつもののんびりとした声ではなく、しっかりと強い意志を持った言葉に全員が無言でいる。この中でもサチが一番びっくりしていた。アスティールでも出会ったことはあったが、いつどんなときでも余裕を持った人物であったヴェトリアが、これほどまでに真剣に言葉を発し助力を求めたのは見たことが無かったのだ。


 だからこそだろう、最初に声をかけられたのがサチであったのは。


 「私は……私は元から力を貸すつもりだ。将来の良人が困っているのなら助けるつもりでもあるし、何よりこの先には仲間がいる。となればどの道誰かがやらなければならないのだ」


 「サチ……」


 サチの言葉に、無言で聞いていたリエル、ティアも苦笑とどこか緊張が解けたような表情をしつつ同意していた。


 「そうだよね、サチさんのいうとおりあれはどうにかしないといけないんだから。ライがやるか私達がやるかの違いだけ。それに、リスクを考えればライにやってもらうより私達のほうが人数が要るぶん少ないよ。私はそう考えるのだけどリエルはどう?」


 「私はライの味方。ライが困ってるなら助ける」


 「そっか」


 「でも……」


 「ん?」


 そこでなぜかじっーと視線をサチとヴェトリアに固定して無言で視線を向けるリエル。その事態に視線を向けられた当人たちはどうしたのだろうかと困惑してしまう。


 けれど、次のリエルの言葉で今度は別の意味で困惑してしまうのであった。


 「二人ともライの妾さんになるの?」


 ここでまさかの爆弾投下である。いや、既にこの話題に対して爆弾はどこにでもあったので松明を投下して引火したとでも言うべきか。


 そのことを体現するようにヴェトリアとサチは何を想像したのか、ライとそうなったときのことを考えでもしたのか顔を赤くした。


 そしてなぜかティアまで。


 「……皆頑張る」


 果たして、すべてを察したのかわからないがリエルは一言そういうのであった。


 四人の天幕から少し離れた場所。


 そこに天幕から聞こえるにぎやかな声を聞きながら困った顔をした人物がいた。


 困った顔をしている人物の隣にはさらに困った顔をした少女と含み笑いをする精霊がいた。


 「あらあら、何をそんなに困った顔をしているの?」


 「いや、というかだな」


 「幸せ者じゃない。あなたに好意を寄せている娘達があなたのために頑張ろうとしているのよ?男冥利に尽きるんじゃないかしら」


 「……」


 ライは答えない。


 本来先ほどヴェトリアが下がり、おそらく作戦を立てに後方に下がったと思っていたのだ。


 一人で飛び出すことを止められたライ。しかし、策の献策についてはとめられていなかった。だからこそ、ライはヴェトリアの後を追ってやってきたのだが。話していた内容はなぜか自分の話であった。


 ライはしばらく棒立ちして考え、結論を出し来た道を戻り始めた。


 その後ろをあわてて少女一人と精霊がついてくる。……いや二人の精霊が。


 「あれ、どうして帰ってしまうのです?」


 突如現れた光の精霊。そういえば彼女はまだエスティアの宝玉に滞在しているということを思い出した。


 「別に俺のことは必要ないみたいだなと思っただけだ」


 ライは面倒な、何かこれ以上内面を指摘されたくないという風に顔を背けつつ言い放つ。しかしこの精霊はお構いなしに自分の考えを言い始めた。


 「んーそれはちょっと悲観的な考えですよ?あなたが必要だからこそあのヴェトリアちゃん?は頑張ろうと他の女の子たちにお願いをしていっているというのに」


 どこか諦めたようなため息をつきつつ、視線をマリーに固定して言い始めたのは


 「ここにいるマリーだって、あなたを必要だと思ったからこそそばを離れずに入るのですよ?この前聞いた話だとあなたとマリーが自室で」


 突如光の精霊がマリーの暴露話をし始めたことに、マリーは慌てて顔を真っ赤にし周りに聞こえるぐらいの声を放ち始めた。


 「あわわわわわ!それ以上は言ってはだめです!じゃないと、私も秘密をばらします!」


 「ふふん、秘密をです?私はサチが主人なのに、あなたが知っている秘密なんてあるのです?言ってみてくださいですよ」


 「わかりました。では話をします。あれは二日前のことですけど」


 「二日前……?……!まさか!」


 「エスティアさんから聞いたんですけどこの人は」


 「あわわわわわ!ちょっと待つのですよ!それは言わないでほしいですよ!というかエスティア!マリーに話すなんてひどいです!人権侵害なのですよ!」


 「いや、あなた何を言ってるの人権侵害って。私達そもそも人じゃないでしょうに。後指摘させてもらえば、家賃も払わない住居人にはそれ相応の対価か苦労を味わってもらわないと」


 「それがどうしてマリーに話すことに繋がるですよ!」


 「いえ、別に繋がらないかもしれないわね?まあ時々私もいきなり来た無遠慮な住居人の愚痴を誰かに話したくなるのよ。もっと常識がある住居人ならこんなことは無いのだけれど」


 「ひゅ、ひゅ~」


 まるで何かをごまかそうとしているかのように、吹けない口笛を一生懸命に吹こうとしていた光の精霊。


 とここでライはあることに気がつく。


 「そういえば、気になるんだが」


 「ん?どうしたのですよ?」


 話題をそらしたかったのか渡りに船という感じに食いついてきた。


 「お前の名前は何かあるのか?以前名前を言うことはまだできないと言っていたが……まだいえないのか?」


 「え。そんなこと言っていたですか?」


 「……エスティア」


 「わかったわ、すぐにでも強制的にこの精霊を強制退去させて少しペナルティーを加えさせましょう。あと、マリーが話しかけた内容もティアたちにばらしましょうか」


 「あっー!あっー!少し待つのですよ!思い出したのです!だから早まることはいけないのですよ!」


 仮面をかぶった光の精霊は表情はわからないが慌てた様子でエスティアに早まらないように告げていた。というか、マリーが知っている秘密とはそれほどまでに重要なことなんだろうか?



 気になりつつ、様子を見ているライとマリーの眼前でどうにかエスティアの説得に成功?した精霊少女はゴホンッと咳をしてお辞儀をしつつ、自己紹介を始めた。


 「では、遅くなりましたが。私は光帝の宝玉の宿る人格。そこにいます白帝の宝玉と同じ宝玉に宿る精霊でございます。長い間名前を明かせず申しわけありません。そして、ここに名前を伝え協力することをお約束いたしましょう。私の名前はストラ。主人はサチではありますが同等な立場であなたも主人と認識いたします。。かくなる上は主人がお慕いしており白帝の宝玉に選ばれしあなた様に全力で力をお貸ししましょう」


 ですよ口調の光の精霊……ストラはこのときだけはしっかりとした口調でライに告げてくる。


 口上を述べられたライはそれに対して一言。


 「ストラ、俺に力を貸さないでいい」


 そういって、助力を拒否する返事を返した。

 

 このことには全員が驚く。


 しかし、ライの言葉は続いた。


 「俺には力を貸してもらう価値があるかわからない。俺に力を貸したがゆえに不幸になっていく人がいる可能性もある。そんなことはもういやだ。許せない。だから、俺に力を貸さなくていい。……だけどその分他のやつら、仲間に力を貸してほしい。マリーにもな」


 返事を聞いてストラはライの瞳を覗き込む。ストラの表情はわからない。けれど、お面から除く瞳は見た者の奥底を覗いてしまうような錯覚に陥りそうだ。


 ストラは最後にチラリとエスティアを見るがエスティアは無言でストラを見つめ返していた。


 エスティアの瞳にはストラからは好きに言いなさいといわれているようだ。


 ストラとしては、このライという人間を気に入っている。もちろん主人であるサチやそこにいるマリー、他の少女達のことも気に入っているが、同等かそれ以上に気になる存在だ。


 精霊とは本来、宝玉についている補助の役割に過ぎない。所有者を助け説明するだけの道具。中には違う人間もいたがそれでも別のものとして扱われてきた。


 最初はあのエスティアが何であんなにもライのことを気に入っているのかわからなかった。だから、色々と聞くためにエスティアのところを訪れたりもしてみた。エスティアは散々ライのことを駄目だししていたが、それでも言葉の端々に楽しそうな響きを出している。


 というか自分も少しだけ気持ちがわからないでもない。ライを見るとなんかこう楽しいのだ。これまでの所有者とは違う。そう思わせる。それにライには人をひきつける何かがある。


 だからこんなにも多くの人が今も集まっている。この先にいる仲間もライのことを待ち望んでいるだろう。


 もちろんというか、たぶん、まだよくわからないけど自分もその一人のかもしれない。


 自分も助けてあげたくなる。少なくとも見殺しなんてしたくない。生きていてほしい。


 だから、ストラは慎重に言葉をつむいだ。


 「……わかりましたですよ。ですが、こちらも条件としてひとつありますです」


 「条件?」


 「周りを助けるのはわかりました。けど、余力があれば私もあなたを助けます。だって、私から見れば主人だけではなく仲間なのですから。仲間ならさっきいた周りという言葉にも間違ってはいないはずですよ?」


 この反論には少しだけライも驚いた。虚を疲れたといってもいい。


 隣に浮いているエスティアも驚いていたが、どこか楽しそうに笑っていた。子供の成長を見守るような暖かい視線で。


 そして、エスティア、ストラ、マリーの視線がライに集まる。ストラが話した条件をライが了承するのかどうかが気になるからだ。


 「……」


 話を聞いたライはどうしたものか考えた。この先のことを考えるとたくさんの危険が待ち構えている。味方にもたくさんの危険が降り注ぐということだ。


 だったら少しでも危険を減らすために、強力な力を持っているだろう精霊や人には周りの味方を援護してほしい。守るために。


 けど、余力があるときに自分を守るといわれ、おそらくそれの了承をしないと破棄するといわれる可能性もある。実質何かあったときには仲間を守ってくれるだろうと思う。それぐらいの信用と信頼はしている。しかし、ちょっとした油断で怪我をするよりは気持ちよく行動してもらったほうが後腐れがないだろう。


 しばらくの沈黙の後、ライは首を縦に振る。


 「……わかった。その条件でかまわない。けど最初の条件は飲んでくれ」


 「はい、わかりましたですよ」


 あっさりとストラは了承した。


 「は、はあ。よかった。少しだけ緊張しました……」


 ようやくひと段落話が終わったことに安堵したのかマリーが一息ついていた。でも


 「あ、それとライ様」


 「ん、どうしたマリー?」


 「私もライ様を守ります。だからライ様も私を守ってください。もちろん、守るというのは死んでは守れません。ですから絶対に守り通してください」


 「……善処はするかな」


 「絶対です!」


 マリーが絶対と念を押しつつ言うと、エスティアとストラは静かに微笑んでいた。


 この空間を壊したくないと思いつつ。


 それにはこの今から起きる戦いは決して負けてはならない。


 この空間を壊さないためにも。小さな少女が出した少しの勇気が作った約束を守るためにも。ライを慕う少女たちが決して悲しまない将来にするために。

お疲れ様です。お久しぶりです!久しぶりの投稿です。

ようやくとある物事が終わり書くことができました。といってもまだ別の案件が忙しいですけど前ほどではないです。

さてさて、内容について。ようやく光の少女の名前が出てきましたね。まだ素顔は出していませんけど……出すタイミングをどうしようかと考えて困っていましたけど。

次回はおそらく戦争でしょう。三千の部隊に対して。

ただ、実は別の援軍が来るかも?まあまだ構想段階ですけどね。

ではまた次回お会いしましょう。お疲れ様です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。