↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
155/165

第百五十四話 合流までの難関

お楽しみください

 ザシュッ


 そのような音が目の前で聞こえてきた。周りにはほかに怒号や金属がぶつかり合う音、絶叫、悲鳴。様々な声がしている。


 「全員敵には一人であたらない様に!複数で相手をするんだよ!マリー、お願い!」


 「は、はい!弓隊の方々お願いします!」


 マリーの掛け声とともにいくつもの矢が空を舞う。そして、狙い通りに敵部隊から矢に体を打ち抜かれて倒れた重い音や、悲鳴が聞こえてきた。


 これにより相手の陣形は少しだけ崩れる。そこを見逃すティアではない。


 「サチ、ヴェトリア左右から攻撃を!リエル、騎兵で蹴散らせて!」


 「「「了解」」」


 ティアは三人に指示を出し、波状攻撃を敵に仕掛けた。左右からは光の刃や槍が飛び、正面からは地鳴りとともに騎兵が突撃してくる。


 「弓兵さん達は弓を撃つのをやめてください!」


 「マリーはそのまま待機、リエルが中央を蹴散らした後止めとして弓を撃って!左右の二人には中央のリエルがいなくなったら、退避するように指示を!」


 そして、ティアが指示したとおりに戦いは進行し、無事何事もなく勝利に終わるのであった。


 現在では、敵の掃討を行っている前線のサチ、リエル、ヴェトリアの様子を見つつ、ティアは隣にいるライに話しかけた。


 「ふぅ、ねえライ。今回の指揮どうだった?」


 ティアはエスティアが言ったとおりに誰か一人ライのそばにいるという約束を守り、今回部隊に指示を出していたのだ。


 ティアからの問いにライは戦場を見つつ


 「ああ、よかったと思うよ。」


 無難な言葉を返すだけだ。


 返事を聞いたティアは少しだけ心にチクリとした痛みを感じたけど表には出さず言葉を続ける。


 「ふっふっふ。いずれライの国一番の知恵者という称号も奪い取って見せるんだから」


 「まあ、そうなるように負けないよ」


 「ライ様、ティア様」

 

 二人がそのような話をしているときに、会話に割って入ってくる人物がいた。



 「どうしたんだいマリー」


 名前を呼ばれただからだろうか、ライは自然と返事を返していた。数日前にはぎこちなかった会話も、今は少しだけスムーズになっている。


 「前線からすべて終わり今から合流すると斥候の方が」


 「わかった。なら、合流後は負傷者がいるなら手当てして終わり次第移動を開始しよう」


 「わかりました。そう通達します」


 マリーは頷いて後方に下がっていった。


 ティアはその様子を見ながら最近のことを考える。


 実はこの敵襲撃は三度目のことだった。


 相手の規模はそれほどまでに多いというわけではない。けれども、散発的に攻撃されるというのは精神的にくるものがある。ランが言っていたように追っ手がかかり撃退している状態だ。


 今回も同じように後続から襲い掛かってきた数百の軍勢を蹴散らしたところだったのだ。


 ただ、この三度の襲撃。軍にとってはいやなことでも、実は女性陣にとってはある意味幸運なこともあった。


 ライの状態を認識できたからだ。


 ライの現在の状態を表すとこうだ。


 ・自分に自信がもてず、考えを放棄している。

 ・疑心暗鬼に近い状態にないっている。

 ・味方のことを考えてくれている

 ・味方に危機が迫ると全力で排除しようとする。

 ・副作用を無視して文字通り全ての魔法を使って排除する。

 ・普段はティアたちから話しかけても軽く返事を返されることが多いが、三番目と四番目の理由から戦いや部隊戦の時だけは、しっかりとした作戦や考えることもある。ただ、あまり自信がないのか命令口調ではなく提案だけだ


 とこんな感じだ。


 その事実を知った時少しだけティア達は安心した。完全にライはまだ私達を見捨てたわけではない、興味を無くしたわけではないのだと。仲間としてみてくれているのだとわかったのだから。


 それから今いる女性五人は話し合って、できるだけ戦いでもライには負担をかけない様にしようとすることになった。副作用の加速を止め自分達をもっと信用してもらうために。


 戦闘が終わり事後処理をして、負傷者の手当てをしてから再びライ達は進軍を開始した。味方がいる場所を求めて。合流するために。



 戦闘がその後も散発しながらもさらに数日後、ライ達はついに孤児院近くまで進軍することができた。


 しかし、その場で再び困難な状況を目にしてしまう。


 約三千ほどの軍隊が自分達が向かう孤児院へと進軍していたのだ。どうやら、孤児院を発見されて攻撃しようとしているのだろう。


 ライはその報告を聞き、後ろにいる兵士達の表情を見てみた。するとそこには数日の行軍による疲れと、ボロボロになった鎧を着た人間がいた。士気が完全に消えたわけではないけれど、決して高いというわけでもない。


 一人、ライは馬を隊列からはずして道をそれようとする。


 しかし


 「あらあら、ティア様。どちらに行かれるのですかぁ~?」


 傍にいたヴェトリアに声をかけられる。


 「ん、ちょっと……ね」


 「えっと、どこなのか仰ってください~」


 「それは」


 「あ、やっぱりいいです。私もついていきますから~」


 「いや、別に大丈夫だよ」


 「大丈夫かは私が判断しますよー?」


 「生理現象といっても?」


 「私はライ様のことなら気にしませんー。というかその先のことでも」


 「……」


 「というのは半分冗談です。けど付いていきますよ?」


 いつもと変わらない表情と好意を向けてくるヴェトリアに、戸惑うライ。ここはきっぱりと断ろうかとした時、タイミングを見計らったようにヴェトリアは小さく、だけどライにははっきりと聞こえるような声で言った。


 「私はライ様にどこまでも付いていきますよ。あの村で直接的ではないにしろ命を助けてもらったんですから。いまさら命を惜しむことはないです。まあ、またライ様にお弁当を食べてもらいたいので死ぬつもりはないですけど、そこにライ様がいないと意味ないんです」


 いつも好意だけを寄せてきていたヴェトリアが真剣な表情で自分の感情をぶつけてきた。


 「だから、お弁当を食べてもらえなくなるのは悲しいですけどもしライ様が無理をして命の危機にあったら、私は全力で命を捨ててでも守ります。止めます」


 「……今がその時だと?」


 「はい。私にはそう見えます」


 ライは話を聞いて、どうするべきか少しだけ迷った。


 事実、これから魔法を使って敵部隊を全滅させるつもりではいた。といっても全力で魔法を使わないという約束をエスティアとしていたので、半分の力を使うつもりではあったが。


 でもそれをすると、命を捨ててでも自分を止めるといわれれば思わず足を止めてしまう。


 「……その場にはいなかったですが、ティアさん達から聞きましたよ~?今あまり考えられないんですよね?だから部隊を率いるよりは自分ひとりで動いたほうが楽だと思われていると。だから、今も一人で行こうとしたんですよね?」


 反論できなかった。


 「沈黙ということは肯定と受け取りますね。ではライ様はっきりといいますね。私達をあまり舐めないでください」


 「え?」


 思わずそのような声が出てしまうライ。けれどヴェトリアは続ける。


 「確かに今まで大きな戦いでも、ライ様がいなければ切り抜けられなかった。しかも今回も全力を出せばお一人で部隊を壊滅することもできるでしょう。だけど、それは私達にも可能なのです。もちろん一人ではできなくても、周りの力を合わせれば」


 「敵を壊滅させることができるって?」


 「はい」


 「ここ数日は数的有利だから勝てたのかもしれない。けど連日の強行軍と奇襲による疲れ、数的不利な状況はまだ体験したことがないはず。にもかかわらずヴェトリアはそんなことを言えるの?」


 「言えます」


 ライはそこで無言になった。この状況、最初の両軍の状態を見れば確実にこちらの状態のほうが悪い。けれどそれを考えてもヴェトリアは大丈夫だという。ヴェトリアという人物は知っているし、嘘を言う人物ではないことは知っている。


 今も迷いのない強い意思を持った瞳を向けてくるヴェトリアを見て『考え、少しだけ信じてみることにした』。


 「……わかった。なら今回俺は見学することにする。けど、もし部隊が壊滅したり誰かが危なくなったら全力で介入する。それでいい?」


 「わかりました」


 「もしだめだった場合今後この議論はやめよう」


 ライの最後の言葉にヴェトリアは心臓を鷲掴みにされた思いだった。いい意味で捉えれば無駄を省くために。


 けれど悪い意味で捉えればこれは……意見の不必要性。信用や信頼を放棄して議論しても、自分の意見は考えるに値しないと、そういわれたように思える。


 もちろん、ライにはそんな考えはない。けど、無意識ではどこかそういう考えがあり出てきていた。


 「……わかりました~。ならこれからティアさん達と話してきます。護衛はマリーさんにお願いしますけどいいですか?」


 「本当は誰もいなくていいんだけど」


 「それは絶対にだめです。後勝手に先行はしないでください。約束は守ってくださいね~?」


 「ああ、約束は守るよ。とりあえずこの戦いに関しては、ね」


 「……それで十分です。では~」


 そういってヴェトリアは去っていった。


 「本当にあなた約束を守るつもりはあるの?」


 すると空中から姿を現したエスティアがライに問いかける。


 「ああ、今回に関しては守るよ。ヴェトリアも仲間なんだからね」


 「そう……でも少し意外だったわ」

 

 「何が?」


 「私との約束も覚えていたことが」


 「えっと、全力を出さないというやつか?」


 「そうよ、魔法の出力に関してはあなたの依存が強いからやろうと思えば自由にできるわ」


 「そういうことか。でも前にも言ったことがあっただろう?エスティアも仲間だ。仲間のことはできるだけ大切にする」


 「そう、ありがとう」


 「とりあえず、マリーが来たら大人しくしておこうか。皆の戦いを見つつ介入の時期を見極めるよ」


 「……」


 エスティアは内心ため息をつきたい気分であった。


 (やっぱりどこか信用はしていないということかしら、信じるといいつつすべてにおいて介入することを前提に考えているのだから。……ティア達が今回失敗したらまずいわね。全員がんばりなさい)


 心の中で応援をしつつ、エスティアは勝手に行動をしないかマリーが来るまでの監視役として、ライと会話をしていくのであった。

お久しぶりです。時間が空いての更新申し訳ない。

前話のあとがきでも書いていたとおり、忙殺されておりました。この状況はお盆など関係なく続くと思います。一息つけるのが告知していたとおり八月の末になります。

けど今日は何とか時間を取れたので更新しよう思いました。時間が空いたのに待ってくれている方々に感謝とともに、やる意欲があるという意思表示のために。

ですが、八月末までは不定期になると思いますのでご了承ください。

では今回はこの辺で作業に戻ります。どうかよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。