第百五十三話 表明そして決意
お楽しみください。
ランと話した翌朝、ライ達は場所を聞いたというティアの先導の元部隊は孤児院へと出発した。
行き先についてはそのときに全員に伝え、部隊を複数の小隊に小分けしてからの各自出発である。
そんな中、ライは先行して孤児院に向かう部隊に所属するのが本来正しい。
しかし、ライ自身がそれを拒み後方からの出発となった。
ライが所属する部隊には幹部が二人、リエルとマリーであった。数日後に合流することにはなっているが、現在は発見の可能性を考慮して三人になっている。
ただこの部隊の人数は五十人編成になっており隊長級が三人という豪華な部隊となっているのである。
ただ、第三者から見ればこの人選は間違えではないだろうかと思わないこともないだろう。
「……」
「……」
「…、…」
ライ、リエル、マリー。この三人は近くにいるというのに話題がない。いつもならライから話題を振っていたのだから当然だ。マリーやリエルからも話すことはあるが、断然今までならライから話を振るのが多かった。
マリーはそんな中当然何度か会話をしようと頑張っていたのだ。昨日の夜、エスティアに問われ答えた思いは決して嘘ではない。決意もある。だけどすぐに変われるかといえば難しいものだ。
「……ライ。少し話をする」
そんなマリーの心を読み取ったのか、普段口数が少ないリエルが話を切り出した。
「ん……何の話をするんだ?」
「なんでもいい」
「といわれてもな」
「なら……サチのことを話す」
「サチのこと?」
「そう、ライはサチを本当にお妾さんにするの?」
リエルは前々から妾になるといっていたサチのことが気になっていた。果たしてライはどう思っているのかと。
「そうだな、それもいいのかもしれないな」
そしてライから帰ってきた言葉は衝撃的な言葉であった。普段のライならばまず否定していただろうことを、前衛的に考えているのだ。
「……なら私もなるといったら、ライはどうする?」
「わからないけど、前向きには考えるよ。リエルも大切な人だからな」
「ティアも?」
「ああ」
「……そう」
そこでリエルは無言になってしまう。
確かに、リエルの心の中にはそうなれたらいいなという思いもあったと思う。サチが妾になるという話を聞いたとき、心臓がドクドク音を立てて焦っていた。
だから、ここで自分のことを妾にしてくれるといわれて嬉しい筈なのだ。
そう
嬉しい筈なのに
「……」
どうして素直に喜べないのだろう。
いや、原因はわかっている。今のライは普段のライではないのだから。
と、そこで別の考えが浮かんできた。
自分は自分の知っている以外のライだったら嫌いになるのだろうかと。もしそうなら、自分が気になる、好きなライはただ自分の理想を押し付けた幻のライであってそれを押し付けているのではないかと。
リエルは自分の考えに囚われ今度はどうすうるべきなのかを考えてしまう。
すると入れ替わるように、勇気をもって話をしてきた。
「あ、あの。ライ様!」
「……どうしたの?」
リエルと話していたよりも少しだけぎこちない返答だったが、それでも言葉を続けた。
「お兄様のことはもう気にしないでください!そして、助けてくれてありがとうございました!」
「……え?」
これにはさすがのライも面を食らってしまった。リエル自身もそのときは驚いていたが、必死なマリーには周りの人の表情なんてわからない。
それでもマリーは言葉を続ける。
「私は、正直……まだ立ち直ったとはいえないと思います。けど、私のこの姿を見てお兄様が喜んでくれるはずありません。それに、お兄様の最後の言葉を……お願いをあきらめるわけにはいけませんから」
「最後の、願い?」
ライは問う。イプスが最後に何を言ったのか。あの場にいた自分には知るべきだと思ったからだ。
「お兄様が言った願い。それは、ライ様。生き残ることができたら貴方様と一緒に幸せに暮らしなさいと。それが最後のお願いでした」
「……マリー」
「言わないでください!もちろん今言うことではないです。大変なこともわかっておりますし、ライ様に好意を抱いている人たちはたくさんいるとわかっています。これはただ自分がやりたいように、言いたいようにしているだけです!」
無言で次の言葉を待つライ。
「私は、ライ様が何を言おうとついていきます。離れません。離しません。さっきはお兄様のお願いといいましたが、これは私の意志でもあるんです。ですから覚悟してください!」
言葉を聞いたライは、情熱的な強い意志を向けられて、でもただただ無言であった。
リエルはというと、これほどまでに強い意志を見せられ自分が先ほどまで考えていたことが何だったのかを忘れてしまっていた。
自分の思いを伝えたマリーは、これほどまでに強く言ったことにようやく?羞恥心が出てきたのか、顔を赤くしていき俯いてしまった。
その様子で、再び最初のように沈黙が辺りを支配する。
周りから聞こえるのは行軍する兵士たちの鎧の重なり合う音、木々のこすれる音のみだ。
でも、しばらくしてライは一言
「……わからないよ」
たった一言だけつぶやいた。
もちろんこの呟きには二人が反応し、視線を向ける。
今のつぶやきただ、第三者から見ればなんともない優柔不断の言葉に聞こえるだろう。事実兵士たちが聞いていたら同じ感想を抱いたはずだ。
けれど、最近のライの近況を知っていて反応を近くで見ていた人物なら今の呟きの重要性を知っているはずだ。
そもそも、優柔不断というものは自分の価値で『考えて、迷って、結局わからなかった』という結論の元に導き出されるもの。最近何の答えにも考えずに、ただ流れで答えていたライを見てきた二人には、驚くに値する出来事なのだ。
しかも、ここでようやくエスティアの言葉を理解した。
あの、ずっと一人はそばにいるようにと。そうすれば今はわからなくても何かしらの糸口になるのではないかと。
一言を呟いた以外にはライは静かになった。
けれども、周りにいる二人は最初のように無言ではなく、ぎこちなく一緒にライに話しかけるのであった。
そんな日々を過ごし数日後の夜。
何度目かになる野営時にライは最近考えないようにしていたのに、考えさせられる事象に直面する。
「……いったいどういうことだ?」
問題のそれは、目の前にしかれている毛布。しかもライのテントなのに四枚ある不思議な光景だ。
問い正すための質問を四枚のうち一枚を持つ幼馴染聞いてみる。
「何って、見てのとおりだけど?」
「見てのとおりって」
「三人で決めたんだからいいでしょ?」
「俺の意思はないのかよ?」
「今のライに、決定権は、ない」
「リエルもいうのか……」
「あ、あの。私もその、そう思います」
さらにはマリーにまで言われてしまった。
そうなのだ。この三人、何を思ったのか一緒のテントで一緒になると言い出したのだ。いまさらだが、これでは風紀が保てない。……いや、すでに風紀などどうでもいいのかもしれないが。
「……ライ、だめ?」
上目遣いで聞いてくるリエルに、顔をしかめるライ。が、最初に出てきた言葉は
「なら、俺は外で寝るよ」
拒絶、または折衷案であった。
でも
「リエル!」
「わかった」
ティアの指示を受けて入り口前に先回りをするリエル。
マリーとティアは逃がさまいと裾をつかむ。
「どうした」
「一緒に寝ようよライ。もちろんただ文字通り寝るだけだけど」
「別にする必要もないだろう」
「けど別にやっても困らないでしょ?」
「俺が我慢ができない可能性もあるが?」
「ライを私は信じてる。それに三人対一人で負けるつもりもないよ」
「……」
そこまでいわれて、三人の目を見るが
「「「……」」」
決して三人、意思を曲げるつもりはないようだ。
裾を握られ入り口も防がれて逃げることは難しい。というか逃げる必要もあるのだろうか?
色々と考えるのが面倒になったライはため息をひとつつき、床に体を下ろす。
それを見た三人も少しだけ安心したのか床に腰を下ろすのだった。
「わかった。一緒にねるよ。ただ、寝るだけだけどな」
「それでいいよ。ほかの二人もそれでいいでしょ?」
「うん」「はい」
そして四人は横に並んで体を倒す。
文字通りただ、横になって寝る準備をするだけだ。
後は目を閉じ寝るだけ。次の瞬間は朝日が昇っているだけだろう。
「ねえ、ライ」
だけど、目を閉じようとしていたライに問いかける人物がいた。
「どうしたんだティア?まだ何かあるのか?」
「う、うん。ちょっとね」
「何だ?」
「この戦争、戦いを終わらせたらライは何かしたいことがあるのかなって」
「したいこと?」
ライは、虚を突かれた思いだった。よく考えれば自分はいったいその後何をしようとしていたのだろうか。
今はこの力を使って、漠然とだがやろうとしていることはわかる。ただただ、本能に従って。けど、としたらその後は何かあるのだろうか。そもそも、漠然とした目的もはっきりとしないのに。考えればわかるかもしれないが、考えてまた失敗したらイプスの二の舞になる可能性がある。
「ライ?」
無言になってしまったライが気になって質問するティア。そこでライは慌てて考えるのをやめて
「わからない」
一言返す。
またわからない。
けど、ティアは返事として
「そっか、なら一緒に考えようかこの先を」
そのような提案をした。
それに対してライは、無言のままだった。返事をしない。しかし、最後にティアは一言。
「絶対に見捨てないから安心してねライ」
その言葉は暗闇の中へと消えていくのであった。無言で聞いていた二人も静かに聴いて頷くだけであった。
こんばんわ、お久しぶりですね。
今学生の方々は夏休みになったころでしょうか。大学は試験真っ只中か始まったばかりでしょうね。
書くいう自分も似たような状況なのですが。
一応ここで連絡していくと8月末まで結構忙しいことになりそうです。失敗したら人生を失敗することになりますので。
といってもこの話をやめるということはないのでご安心を。
ただ、もうちょっといえば話のほうは手抜きをしているわけではないですからね!この先の話をどうするか、少し考えがまとまっておらず展開を迷う状態になってるのは確かなんですが……。
とまあ、近況と話の状況?をお伝えまでにと
ではまた次回お会いしましょう。




