第百五十一話 原因
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ガサ
ライが一人イプスの墓前で立っていると、森の一部から葉っぱがこすれる音が聞こえた。
追っ手か、暗殺者か。その可能性を考えながら視線を向ける。
そして、現れた人物は
「……ライ?」
ティアだった。ライはティアの目を見ることはせずに聞く。
「ティア?どうしたんだこんな夜に」
「あ、うん。ちょっとマリーがライがどこかに行くところを見たと聞いたから、心配になって私たちで来たんだけど……」
ティアが説明をすると同時に後ろからリエルとマリーの姿が現れる。
ライはマリーからも見られていることには気がついていたが、あえて視線を合わせずにティアに話す。
「……そっか。大丈夫、少しだけイプスに話したいことがあっただけだよ。でも、マリーもいるんだったら何かやることがあるんだろ。俺は陣地に戻るから」
そういって、ライは視線を外し陣地へと歩き出す。
(本当はまだ言いたいことがあったけど……ティア達がいたら話せる気がしないしね)
一人心の中で呟きつつティア達の横を通り過ぎようとしたとき
ガシッ
いきなり服をつかむ手があった。
「……どうした?」
しかし、視線を振りかえずにライは聞く。
「心配をしてくれるのはありがたいよ。けど今はできれば一人にしてほしいんだけど?」
ライにとっては珍しく人を突き放すような言葉を放つが、それでも掴む手は離れなかった。
どんなに言葉を言っても放されることはないと判断し、ため息をつきつつ振りかえる。
振りかえるとティア、リエル、マリーがいた。そして、服を掴んでいる手は……全員だった。
「「「……」」」
何かを言いたい雰囲気だが、誰も自分から言わない。
「何もなければいいかな?」
けれど誰も服を離そうとはしない。
しばらくその状態が続いていたが、ついに静寂はティアの一言から破られる。
「ライ……自暴自棄にならないで」
その一言でティア達が何を考えているのかわかってしまった。おそらく国盾の砦が壊滅し、イプスまで失って自分が自暴自棄になっていると思われているらしい。
「別に自暴自棄になってない」
「嘘だよ」
「なぜ嘘だと?」
「目を合わせないから」
言われて黙り込むライ。別に自暴自棄だから目線を外しているわけではない。ただ、別の理由で外しているのだ。
「ライ様、私が原因ですか?」
マリーが質問してきて、それに対しライは少しだけ後ずさる。
よく観察しなければわからないぐらいの動揺、しかし、武術をかじっているリエルやティアは見逃さなかった。
「ライ、今後ろに下がった」
「うん、下がったね」
二人に指摘され、自分はそんな簡単な言葉にすら動揺を隠せなくなっているのかと驚く。
また再び沈黙が支配するが
「はぁ、あーもう。見ていられないわね。ライ、色々と考えてうじうじしすぎよ」
見かねたのかエスティアが現れる。
さらに
「そうなのですよー、私が見込んだ主でもあるあなたがそんな調子じゃがっかりしちゃうのですよー」
光の少女も出てくる。そういえば名前を教えてもらっていないようなと関係ないことを考えるが、今はそんなことどうでもよかった。
それよりも
「うじうじ考えて何が悪い?」
「開き直るのね……まあ、気持ちがわからないでもないけど少しだけ寄り添ったらどう?」
エスティアは自分ひとりだけ抱え込むことはない。相談をしたらどうかと遠まわしに提案したのだ。
いつもなら、ちょっとした場面ならライとてすぐに頷いただろう。
でも
「ごめん、今は無理かな。皆手を離して。本当に一人にしてくれ」
そういって、少しだけ強めに手を振りほどくと、全員の手が離れた。
三人はショックを隠しきれない表情をしていたが、ライは無視して前方に歩いていった。
「ライ、一つだけ。あのときの賭けはまだ有効なのを忘れないで」
エスティアが言うと一度だけ足が止まるが、すぐに歩き始めた。
その後、残されたのは守護者二人?とティア、リエル、マリーの三人だ。
最初に口を開いたのはエスティアだ。
「ふぅ、今回や思った以上に重症ね。ちょっと、望まない方向に動き出したわ」
「エスティア、それってどういうこと?」
「……ティア、貴女の問いに答えるのは簡単だけどすべてを答えるわけにはいかないの。ご主人様の意向を無視して加担しすぎたらいけないものね」
「そんな……」
エスティアの言葉に悲壮な顔をするが隣でエスティアをにらみながら光の少女は言う。
「何を言っているのですよ。本当は望まない方向に行かないようにわざわざ出てきたくせになのですよ」
「え?」
「エスティアはこういってますけど、ご主人様が悪い方向に行っている場合は少しだけ方向修正をするのも、守護者である私達の仕事ですよ。だから、エスティアは今回の原因を教えるつもりなのですよ」
「……ちょっとおしゃべりが過ぎるんじゃないかしら?」
「私やエスティアだけの問題なら口は出さないですよ。けど、これが守護するべき主の議題になれば口をだすですよ」
「……はぁ、正論過ぎて反論ができないのが悔しいところだけど。そうよ、助言をすることはできるから、あと原因も教えて上げられる。けどその後どう行動するかは貴方達しだいになる。いいわね?」
エスティアは三人に視線を向けて同意を促すと三人は頷いた。
「そう、なら私も貴方達を信じて原因と助言を言わせてもらうわね。ライが今の状態になっているイプスの死が原因……だけではないの」
「「え?」」
エスティアの言葉にティアとリエルが思わず声を上げる。しかし、マリーは声を上げなかった。
しかし、エスティアは言葉を続ける。
「全員気づいているでしょうけど、イプスの死が原因になったのは確かよ。でもね、それはきっかけでしかないの。マリー、貴女の命が消えかけたときライはね、ほかの大切な人たちも同じ運命を辿るのではないかと想像してしまった。そして、実感してしまったの。大切な人が死ぬという本当の意味を、下を束ねるものとして失敗がどういう結果を招くかということを……でもまあ、これは理由の一つね」
「一つ?」
マリーが思わず言葉を繰り返すとエスティアはマリーを見て、少しだけ厳しく言い放つ。
「ほかの理由としては……マリー貴女が原因なの」
「え?……私が……?」
「そうよ、貴女をライが助けたとき敵の返り血を浴びて真っ赤になったライを見たはず。けどそのとき、貴女はライをどのような目で見たかしら。恐怖をいだいたんじゃない?」
そういわれてマリーは固まってしまう。
「……あの状況で仕方がないといえば、確かにそうね。けどね、ライは昔から悩んでいたのよ。宝玉という強力な力を持つほどに副作用にも悩まされて、でも強くなっていく。そうなれば、一体自分はどこまで強くなるのかと。どこまで人間から離れていくのか、敵に恐怖を与える存在なら、味方に恐怖を与えていないかとかね」
「もしかして……」
「ええ、おそらくライはマリー、貴女に恐怖の光があったことがわかったんだと思う。そして、それがきっかけになったわ。自暴自棄、疑心暗鬼ならまだいいほうね」
一呼吸分あけてからエスティアは原因を言い放つ。
「ライはね、考えること事態に疑問を持ってしまったのよ」
「考えること事態?」
「そうよ、リエル。ライは考えることすらに疑問を感じてしまった。自分が考えていることが本当に正しいのか、考えすぎた結果今回の結果を招いたのではないか。考えなければ大丈夫だったのではないかとかね」
「おかしい」
「何がかしら?」
「ライが考えなければもっとひどい状況になっていた」
「ライが考えたからこそ今の状況で済んでいると?」
「(コク)」
「ええ、そうね。そこは私も否定しない」
「なら」
「でもそれはあくまで第三者から見た話。ライ自身が考えていることは誰にもわからない。可能性として考えなかったら状況が悪化しても、イプスが死ななかった未来もあったかも知れない。低い可能性だとしてもそれは現実する可能性があるということ。……簡単に言うとライは自分のことが信用できなくなってしまったのね」
「本当はそんなことでは困るですよー……それにふくさ」
光の少女が何かを言おうとしたがすぐにエスティアがさえぎる。
「とにかくライは自分のことを信用できなくなってしまったの」
「……エスティアさん」
そこでマリーはゆっくりと口を開く。
「何かしらマリー」
「私は、私はどうすればいいんでしょうか?」
真剣に、とある決意を持った瞳を持ってマリーがエスティアを射抜く。
エスティアも吟味するように、本当に大丈夫なのかを判断するために無言で視線を返す。再び恐怖を持った視線で主を見るようであれば二度と近づけさせるつもりはない、というような決意もある。
二人は真剣に無言で視線を交わらせ真意を探ろうとしていたが
「……ええ、信じてみましょうか。でもマリー、二度目はないと思って頂戴。ティアとリエルもいいわね?貴方達も昔一度同じことをしているのだから」
「「「はい」」」
三人が答え、エスティアは頷いた。
「なら……解決策を言いましょうか。といっても、簡単なことよ。貴女たち三人一日交代でライに張り付きなさい」
「「「え?」」」
「ああ、文字通り張り付くわけではないわよ?ライのそばに、起きてから寝るまで。可能ならば寝ているときもそばにいなさい。ライが拒否するかもしれないけど……貴女たちがどこまでやるかによるけどね。信じるか信じないかは貴方達次第。後は任せるわ。後一つだけ言っておくけど、私は姿が見えなくても見ているからそのつもりで。中途半端な気持ちならすぐにとめるから。……じゃあ、また会いましょう」
そういって、言いたいことだけ言うとエスティアは姿を消した。
残された光の少女がウインクしながらティア達に告げてくる。
「私も、二人目の主であるライに不都合な人物はできるだけ排除するつもりだからそのつもりで。……でも貴方達ならできると思うから期待しているですよ。エスティアも厳しく言ってるけど本当は信頼しているんですよ。……ってことで言いたいのはそれだけ。またですよー」
光の少女もいなくなった。
残された三人は静かに二人の守護者の言葉をそれぞれ吟味しつつ無言であった。
三人の少女を空に輝く星だけが見守っていた。
こんばんわ、体調も悪いことからあとがきは少しだけにします。
今回はライの状況を整理したような話でした。
途中からはティア達中心になりましたが、エスティアの提案したずっとそばにいるという内容は果たしてライを変えてくれるんでしょうか。
まだ具代的にライの心的状況がわかりにくいですが、次回からわかりやすくなるのではないでしょうか。
というところで、今回はこの辺で。
以上、ありがとうございました。
あと、最後に一つだけ。何かありましたら活動報告のほうに書いておりますので確認お願いいたします。
ではまた次回お会いしましょう。




