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第十四話 ライのこれからと不穏な動き

書き終われました。今までで最長です。戦いはありませんがお楽しみください。


 王座の間で謁見が終わりティアと一緒に外に出るとそこにはエミル付のメイド、ユレイヌが立っていた。どうやらライが来るのを待っていたらしい。


 「模擬戦と謁見お疲れ様でした」


 二人の姿を確認するとユレイヌは労う言葉を投げかける。


 「ありがとう、でもどうしてここにユレイヌさんが?」


 「エミル様がもしイウル伯に勝つことができたらお連れするように仰せつかっております」


 「・・・俺もエミルには言いたいことがあったから丁度いい。案内して、ティアはどうする?」


 「もちろんついていくよ!」

 

 そういってティアはライの腕を取り答えてくる。


 「ティア、毎度毎度思うけどもう少し慎みを持ったほうがいいと思うぞ?自分の体のことも考えてくれ」


 「え?どういう意味?」


 「あー、えっとだな」


 少し言いにくいことを平然と聞いてくるなと困っているとユレイヌが助け舟をくれた。


 「ティア様。ライ様はティア様が腕を取るたびに腕に感じる胸の感触に照れているのですよ」


 ・・・助け舟は助け舟でも泥舟だったようだ。


 ティアはユレイヌに言われてようやく分かったのか顔を赤くしていく。しかし、腕を振りほどこうとはしなかった。


 「あの、ティアさん?」


 普通なら離すのではないかと思っていたライは視線を向けるとこちらに視線を向けないようにしつつ、ティアは呟く。


 「もうちょっとこのままじゃダメかな」


 その言葉を聞いてライは苦笑して大丈夫だと答えた。


 「ありがと」


 顔は見えないがティアはどうやら安心したようだ。


 「ゴホン、ゴホン!」


 とここで誰かがわざとらしく咳をする。


 咳をした人物を見ると王座の間を守る衛兵の一人であった。どうやらティアたちの会話と行動を見て見かねたのだろう。


 ライは一度会釈して謝ると暖かいまなざしで一度見てきてすぐに視線を逸らした。


 「このままここにいては迷惑のようですし早速行きましょうか」


 ユレイヌの先導しライとティアはエミルの部屋へと向かうのだった。


 部屋に着いたライは一度だけ深呼吸する。ちなみにティアはすでに腕からは離れていた。その代わりとびきりの笑顔が浮かんでいるが。


 「エミル様、ライ様とティア様をお連れしました」


 「中に入るがよい」


 そう言われてユレイヌは扉を開けライもその後に続く。


 それからは前日と同じようにテーブルにすわりお茶を飲んで一息ついてからエミルは喋り始める。


 「まずは最優秀者に選ばれたことに祝福の言葉をだ。おめでとうライ」


 「ありがとう」


 「うむ、これでようやく本題を頼める」


 「本題ねぇ。もしかしてそのために俺を相談役にした?」


 「ずばりその通り」


 ティアは二人の会話を聞いて理解できていなかった。


 「え?え?どういうこと?エミルのお願いってイウル伯に勝つだけじゃないの?」


 ライはエミルのほうを見る。説明していなかったのかと視線で尋ねるとエミルは頷いた。


 一度だけため息をつくとティアに説明する。


 「ティア、確かにエミルはイウル伯から勝利するように言ったよ。だけどもしそれが目的だったら俺に『相談役』なんて役職をつけようとしない。本当の助けてはここからだ」


 「そうなの?」


 審議を求めるためティアはエミルを見るとエミルは頷く。


 「そうだ。説明していなかったのは悪いが詳しく言うと最優秀者になるのは始まりに過ぎぬ」


 「そうなんだ……」


 なんとなく納得したらしいティアを放置してエミルはライを見る。


 「それでだ、私が頼みたいこと。それは国の内情を逐一報告することと内乱の兆しを鎮圧してほしい」


 「内乱という言葉が出てきたけど穏やかじゃないな」


 「ああ、これはまだ公にはなっていないのだがどうやら南方にある都市に不穏な動きがあるという情報を聞いたのだ。他にも北でも同じような報告があがっている」


 「不穏な動きが……しかし何でそんな情報がエミルに?この情報って王族に入るというか軍部でとめられるんじゃ?」


 「すべてユレイヌが調べてくれたのだ」


 「ユレイヌさん一体どうやって」


 「ライ様、メイドには秘密が沢山あるんですよ?」

 

 人差し指を口元に当てウインクしてくるユレイヌさん。いや、軍部の機密を調べられるメイドって……。


 でもこれ以上しつこくしてもまずいだろう。ライは詳しく聞くことはやめ情勢について聞く。


 「不穏な動きってたとえば?」


 「ユレイヌ説明してやれ」


 「かしこまりました」


 エミルがユレイヌに情報の説明を命じて説明が始まった。


 「まず南最初に南の町リューネリスですが最近盛んに船が寄港しているのです」


 「船が盛んに寄港しているってとてもいいことじゃ?」


 ティアが疑問を口にする。


 「確かに盛んに寄港するならいいのです。ですが問題は積荷が問題なのです」


 「一体何を?」


 「大量の食料と武具を。あとなぜか新造船の船が多いのです。ただあまり騒ぎになっていないようで上手くごまかしているみたいですね」


 「なるほど、ならもう一つの北の町は?北で最大の都市といえば確かエンリデンヌだっけ」


 「はい、そしてそのエンリデンヌでも不穏な動きがあるのです」


 「不穏な動きの理由は?」


 「こちらの都市では軍馬と馬車を大量に集めているらしいです。理由としては農業で馬が大量に必要になるとか」


 北の町エリデンヌは作物などの農業が盛んで人口も多い。それに加え気候が寒いことから繊維類と暖房による技術が抜き出ている。


 「理由としては間違ってはいないか」


 「はい、まだ不穏程度で留まっているのは最近発見されたことと、脅威にはならない程度の搬入物資だけなのです」


 「ん?ちょっと待ったそれおかしいだろ。ティアには一年前から俺を探すように頼んでたんだろ?最近になってということは時期がおかしい」


 「そうですねティア様が仰るとおりです。ここで一つとある問題を出しましょう」


 いきなり話を変えるユレイヌ。


 「エミル様は一年前から探しておられました。一年間ですよ。そして最近ようやく発見されました。しかも発見されたライ様は優秀候補者でありぎりぎりのタイミングです。ここで質問しましょう。この二つの都市の動きに少し違和感を感じませんか?」


 「・・・タイミングがよすぎるか」


 「はい。まず一年前にエミル様がライ様を探し始めたのはゲームで不正が行われていることに気がついてです。何人もの有力者が不正を行っていました。ですが相手は貴族や騎士であり処罰が難しく表立って手が出せません」


 「それで、捜索をしていた。そしてもし俺が現れなかったらイウル伯が軍師の地位を手にいれて軍部や内政、権力を自由にできる。しかもそんな時期に合わせるように二つの大都市で不穏な動きか」


 「そうです。ですからライ様にはこの二つの動きを解決してほしいのです」


 ライはそう言われて困った顔をする。


 「解決してほしいって言われてもな」


 「エミル様からは聞いております。ジギル国王様から軍師の地位を受け取ったと」


 エミルもそれは頷き周知であった。しかし、次の瞬間二人は放心状態に陥る。


 「ああ、それはしばらく辞退するように言ったよ」


 「「は?」」


 予想外の展開、予想外の事態。


 エミルはライの返事を聞いた瞬間頭が真っ白になりすぐに叫んだ。


 「どどどどど、どういうことだ!?」


 「どういうことって言っても」


 「なぜ辞退した!それでは私が父上にした賭けもなくなったというのか!?」


 「エミル様落ち着いてください」

 

 混乱して叫ぶエミルをユレイヌは落ち着かせて冷静に質問してくる。


 「ライ様先ほど相談役のことを仰ったとき了承したように仰られましたよね?」


 「それは了承したよ。ジギル国王からも相談役はしてほしいといわれたから」


 「ん?どういうことなのだ?」


 その問いにティアが変わりに説明した。


 「ライはしばらく町の警備隊とかに入隊してから経験を積むことを条件に将来は受けるとしても今回は辞退したんだよ。ただそれならと王様が相談役だけでもって仰って受けたの」


 説明を受けたエミルは上半身を乗り出し話を聴いていたが、完全に辞退したわけではないことに安心する。そして冷静になるために手前に置かれている紅茶を一口飲む。


 「ふむ、完全には辞退していないならばいい。私の願いは二つの都市の不穏分子を取り除くこと。ただ最近不穏な動きがあっただけでこちらの勘違いもあろう。また、もし動くとしてもまだ時間がある。ならその間にライの言うとおり経験が積むがいい。ただ こちらとしても条件が二つある」


 「条件?」


 「うむ、条件の一つ目は経験を積むために警備隊に入隊するらしいがそれは二月の間だけとする。そのころになればまた再び動きがあるかもしれないからな」


 「わかった。それで二つ目は?」


 「二つ目は父上から聞いたすべての条件を飲んでほしい」


 「条件を飲むって言うのは軍師になること伯爵の地位を受けること?」


 「それだけではなく私の相談役と騎士になることだ」


 「んー、この国って騎士と貴族が両立できるの?」


 「馬鹿者。イウル伯はその両方をしていただろうが」


 「あ、そっか」


 「でどうだ?頼みは聞いてもらえないだろうか?」


 ライは一度考える。一つ目の条件はいい。二月だけでも学べることはあると思うからだ。しかし、二つ目のないように少し戸惑う。果たして王族の騎士になってもいいものかと。しかも新参者の自分がエミル直属の騎士などに。


 「ライ、別にいいと思うよ」


 意外なことにここでティアが賛同してきた。


 「簡単に言うなぁ」


 「簡単にいうというか、そうなっていたほうが都合がいいよ。エミルにとってもライにとっても」


 「エミルは分かったとして俺にとっても?」


 「んーいつもは鋭いのになんだか今日は鈍いね」

 

 少しむっとしてしまったが静かに聞く。


 「えっと、エミルとしては信頼できて自分の手助けをしてくれる人を近くにおきたいの。私もエミルが私にお願いした本当の目的を今聞いてびっくりしてたけど理由を聞いて納得した」


 「俺に関しては?」


 「ライが仮にライをどうにかしようとしている人として、王族の騎士になった人物を簡単に襲おうと思う?」


 「あ」


 そっか、確かに王族の騎士になるということは立場も権力も上がる。そしてもしその王族の直属の騎士に何かあれば間接的に王族の防備を薄くすることになり、下手すれば反逆罪が適用されるだろう。


 「だからライはこの話を受けるべきだよ。今すぐにね。二月なんて待ってたら高い確率で謀略をかけてくるよ」


 ティアは真剣な眼差しで訴えている。ティアとしてもこの目の前にいる青年に怪我をしてほしくない。せっかく再会できたのに、自分にとって特別であるライに。


 ライはティアの目を見て頷き椅子からどいてエミルに臣下の礼をとる。


 「エミル王女、私の名はライ……ライ・ジュリアール。この度の騎士のお誘い是非お受けいたします。我が武具は迫りうる敵を時には排除し、我が防具は貴方様に指一本触れさせぬようにすべてを防ぐ所存。我が命がある限り最大限の忠誠を誓いましょう」


 ライがそういうとエミルは頷きライの目の前に建つ。


 「ユレイヌ」


 「こちらにございます」


 いつの間に持ってきたのかユレイヌは一振りの剣を持ってきていた。


 エミルはそれを受け取ると剣の腹をライの右肩に乗せ、頭を越えるように動かし反対側の剣の腹で左肩に乗せる。


 「ライ・ジュリアール。先ほどの言に嘘偽りはないか?本当に我がエミル・フェレス・ギリエスの騎士になることに後悔ないか?」


 「ありません」


 「よかろう。では私 フェレス王国第一王女 第三王位継承権者 エミル・フェレス・ギリエスの名の下にライ・ジュリアールを騎士として認める。また騎士になるにあたってこの剣を譲渡する。この剣の名は『シュレイ』。今は本来の力を失い魔法を使えない。しかし将来必ずそなたを助けになるだろう。受け取るがいい」


 「謹んで頂戴いたします」


 そういってライは両手をひざまずきながら掲げエミルはライに剣を渡した。


 そこで儀式は終わる。


 「よし、これでライは私の正式な騎士となった。このことは後で父上に話しておく」


 「わかった。でもいいの?普通こういうのってもっと盛大に色々な人の立会いの下とか書いてたはずだけど」


 「それには心配いらん。私たち王族には個人的に騎士を複数人、任意に決める権利があるのだ。それは私から父上に話て父上が承認すれば決まる。そして父上はすでにライ、お主を騎士にすることは認めている。だから問題はない」


 「そうなのか。って、そういうことは俺以外にも騎士がいるのか」


 「いいえおられませんよ?」


 ライの疑問にユレイヌが答えてくれる。


 「他の王族のかたがたは騎士がおられるのですがエミル様はどなたも任命されておりません」


 「それだと警護という意味で不便なんじゃ」


 「そうなんですが頑固としてお決めにならなかったのです。いつも《私の騎士はもうすでに決まっている!そやつ以外は決めるつもりはない》といってまったくお決めに」


 「わーわーわー!」


 最後までユレイヌの声を遮ろうとしていた。


 「ユレイヌ!それ以上言ったら許さないぞ!」


 「そうなのですか?それなら怖いのでやめておきましょう」


 「なあ、ティア。俺は喜んでいいのだろうか」


 「さあ?自由にすればいいよ」


 助けを求めるようにティアに聞くがなぜかティアは少し不機嫌になってしまいそっぽを向かれる。


 それを見てライはため息をつくのであった。        

二人のやり取りが結構大好物です!これからも二人で会話をさせてあげたい・・・と思ってるんですがどうなることやら。

それも含めてお楽しみです!

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