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第十三話 副賞と特権

 辺りに響く銅鑼鐘が鳴り響き終了の合図がなったことにより模擬戦が終了したことを告げる。


 するとあたりからは割れんばかりの歓声が鳴り響く。拍手は模擬戦をした兵士、対戦者二人を祝福したものだった。


 祝福される兵士たちは模擬戦前のピリピリした空気ではない。イウル伯に指示をされていたベテラン兵たちは後輩の兵達が予想外のように善戦し、後輩兵たちによくやったなどを褒めたあったりしていた。


 互いの健闘を称え合い勝利したライの兵士達は充実したような表情をしている。


 その仲で一人だけが悔しそうに恨むような表情でライを見ていたがライは無視する。


 ジギル国王は二人を呼び近くに来ると周辺の人々に声を張り上げる。


 「模擬戦に参加した兵士、そしてそれを率いた優秀者候補両者!とてもすばらしい戦いであった!」


 また再び歓声があがる。


 「そして同時に一年間かけて争ってもらった成績優秀者も決定した!皆の者もこの目で見たであろう!感じたであろう!正々堂々と戦い勝利した者を!」


 地鳴りがしそうな歓声にライは迫力があり戸惑っていたが近くにいたティアは嬉しそうに微笑んでいる。


 「フェレス王国 国王ジギル・フェレス・ギリエルの名において最優秀者ライに褒章と副賞および特権を授与する!内容は後日発表する!もし異論があるものがあれば今申し出るがいい!」


 しかし、もちろん異論があるものはいない。


 「ではこれで第二戦目の模擬戦は終わる!怪我をしたものはこの後救護所により手当てを受けるように!他のものは通常の仕事に戻ってもらいたい!それからライと従者は後ほど王座の間に来るように!」


 「わかりました」


 ジギルが言い終わると国王とエミル王女は周りの兵士達に守られながら城へと帰っていく。それを機に見物に来ていた住民や兵士達も散っていった。


 ライも帰ろうとしていたところ声をかけられる。


 「ライ殿!」


 声をかけられたほうを向くとそこにはライの指揮下に入り模擬戦を戦ってくれた兵士達がいた。話しかけてきたのはどうやら一番最前列にいてライが最初に話しかけた兵士だ。


 「どうしたんだ?」


 「兵舎に戻る前にお礼を言いたくて」


 「別にお礼なんていいよ。逆にこっちがお礼を言いたいぐらいなんだから」


 「そんなことありません。もし、ライ殿が指揮をしなければ確実に負けていたでしょう」


 「けど、俺じゃなくても他の将軍が指揮すれば勝てると思うよ?」


 「確かに勝てたかもしれません。ですが、私達はライ殿に大切なことを教えてもらったのです」


 「大切なこと?」


 「はい、それは決してあきらめないこと。いくら不利でも勝つ方法はあるのだと!なあ皆!」


 「「「「おう!」」」」


 後ろの兵士達も頷く。


 ライは頬をかき、そう言われてどのような反応をすればいいのか迷っているとティアが傍にやってきて


 「ライ、こういうときはどういたしましてとか言えばいいんだよ。この人たちが感謝しているのは本当なんだから」


 ティアの言葉に笑顔で頷く兵士達。


 ライにとってこれほどまでにお礼を言われるのは久しぶりだ。孤児院にいたとき以外お礼を言われたことがない。……いや一人いたか。


 でも久しぶりには違いなかった。


 「ああ、その、なんだ。どういたしまして」


 「ありがとうございました!」


 それから、兵士達はライにお礼を言って兵舎のほうに向かっていった。


 兵士の背中を見て遠くなるとティアが話しかける。


 「ライお疲れ様~」


 「ありがとう」


 「それにしてもよく勝てたね。兵の質的にライのほうが悪かったでしょ?」


 「ん?気がついてたのか?」


 二つの軍の兵士の質が違うということに気がついたといわれてライは驚く。


 「うん、だって雰囲気がまず違ったよ」


 「雰囲気?」


 「なんていうのかな。こう、士気の違いというかライ達の兵士達からはどんよりとした空気、あっちのほうは士気が高いとは言えないけどどこか落ち着いた鋭い空気を感じたかな」


 本当の兵士を見たことがあまりないライには違いがまあ分からなかったが、どうやら兵士として働いていたティアには分かっているようだ。


 「それでさ、これはいくらライでも士気が低ければ苦戦するんじゃないかなーと思ったんだけど、杞憂だったよ」


 「苦戦であって負けるではないんだな」


 「だって、イウル伯ってライのことを見下してたし、あまり頭もよさそうじゃなかったし」


 「あれ、でもあのゲームで高い得点をだしたんだろ?」


 「一応そうなっているけど噂では色々あるんだよー。賄賂を使ったとか権力を使ったとか」


 「それってやばくないか?」


 「やばいよ。でも訴えた人のほうがもっとやばいかもね。相手は大貴族で騎士なんだもん。消されるよ」


 物騒な単語が出てきて顔をしかめるライ。


 「ま、そんなことはどうでもいいよ!それより早速王様に会いに行こう?エミルにも勝ったら部屋に来るように伝えろって言われてるし」


 「行こうって、ティアも来る気?」


 「むー行っちゃダメなの?」


 「そんなことないけどティアの立場的にいいのかなって」


 「それなら大丈夫だよ。王様かエミルが配慮してくれたみたいだし、さっきライと従者と言ってたでしょ」


 「あーってことはティアが従者としてくるのか」


 「正解♪」


 ティアは笑顔で頷いてライの腕を取る。


 「さぁ、早く行こうよ!」


 ライは苦笑しつつもティアに腕を引かれて王城に向かう。


 場所は変わり王城の中にある王座の間。


 現在ここには将軍と大臣が数名、それにジギル国王、エミル王女、先ほどはいなかったが第一王子、第二王子の姿もあった。


 なぜこんなに重要人物がいるのかライには少し引っかかったがすぐに考えるのはやめ、ジギル国王の前に来ると膝を折り頭を下げる。後ろにいるティアも同じような格好をしていた。


 「ライ、そして従者であるティアよ。頭を上げよ」


 国王に許しが出されたので頭を上げる。


 「この度の試合見事であった。不利な条件にもかかわらずよく勝利したな」


 ジギル国王の言葉にライは驚いてしまった。


 「不利とは、国王様ここは大臣や将軍がおられますがよろしいのですか?」


 このようなところでライにとって不利な条件といってしまうことは王がイウル伯の不正とは言わないまでも、不平等にしたことを指摘していることになる。


 ジギルは笑いながら否定した。


 「安心せい。ここには口が堅いものしかおらぬ。このようなことを言っても外に漏れることはない。仮に漏れたとしても発覚を恐れて大事にはならぬ」


 だから以前イウル伯と始めてあったときより文官と将軍の数が少ないわけかとライは察する。


 「それよりも、この度は以前話しかけた最優秀者に与えられる褒賞と副賞特権を説明しようと思っておってな」

 

 ライも肝心なことを聞いていなかったと思い返す。


 ジギル国王はライに向けて話した。


 「まず褒章だがお主には金五百万フェルを与える」


 「五百万フェル!?」


 思わずライは叫んでしまった。


 この世界の通過といえばフェルで通っており お金の種類もある。


 ちなみに四人家族が普通に暮らして掛かるお金が五万フェルだ。ライは今回働かなくても五十年間普通に暮らせば手に入るであろうお金を手に入れたのだった。


 「ん?副賞と特権の話は聞いていないようだったが褒章の内容も聞いておらぬのか?」


 「は、はい。なにせ田舎のほうにいたのでそんな話はまったく」


 「ふむ・・・まあこれは今回の褒章なのだ受け取るがよい。それで気になっているであろう副賞と特権だが」


 褒章が五百万フェルという破格の褒章なのだからライは嫌な予感を感じていた。


 「副賞はおぬしに伯爵の爵位を与え国の軍師としての地位を与える。特権としては王城に入るのを許し、軍部、政治部に指示する権限を与える」


 「はい!?」


 思わず叫んでしまった。確かに破格の内容が来るとは思ったがまだ功績も挙げていない、何も国に貢献していない平民にいきなり伯爵の地位を与え、しかも国の中核を担うであろう参謀の地位を与えるといい始めたのだ。ライが驚くのもしょうがなかった。


 「だが副賞と特権に関しては強制ではない。私としてはそれほどの頭脳を国のために役立ててほしいがな。よく考えてほしい」


 驚きのあまり頭考えることを放棄していたようだがティアにつつかれて正気に戻る。


 「いや、でも、本当にいいんですか?いきなりそんな重役をお命じになって?」


 「おぬしの言うことももっともなのだがな。・・・実はな先ほど不利があったといったであろう?最初はどういうことか問いただし平等にしようとも考えたのだ。しかし、しなかったのかには理由がある」


 「理由?」


 「うむ、それはな娘のエミルが私にある賭けを二つ持ちかけてきたのだ」


 「賭けですか」


 「その賭けの内容は一つ目はもし不利な状態でもお主が勝てば国の軍師にすぐ取り立ててほしいと。最初は平民であるお主には荷が重いと思っていたが本当に勝ってしまったのだ。言い方を変えればお主は国で一番の知恵者。当然の地位であろう」


 「そうなんですか……そういえばもう一つの賭けの内容とは?」


 「うむ、それはお主をわが娘エミル直属の相談役兼騎士に任命する」


 「なっ!」


 これには周りの将軍、大臣も驚く。王族の一人の騎士に任命するのには重要な意味があるからだ。


 「どうだ、さっきも言ったとおりこれも受けるかは自由だ」


 言われてライは考える。突如重役に配置されて動けるのか分からない。不安が大きいのもあるがもっとも不安なのはライの常識であった。


 今まで田舎に住んでいて知識はあったとしても兵を率いたことはない。王都の兵士達を動かしたりするにも慣れていないのだ。


 そこで考えたぬいてでたライの答えは


 「一つ条件をつけさせてはいただけないでしょうか」


 「条件とな?」


 「はい。条件は副賞と特権。エミル様の役職を任命していただく前に私は町の警備隊と軍部に少しの間配置していただけないでしょうか」


 「ほう、理由はなんなのだ?」


 「私は今まで田舎で暮らしておりました。兵を率いるのは今日がはじめて。それならばまずは軍部の形態を知るのが肝要。ならば、実際に動いて経験をしたほうがよいと思ったのです」


 それを聞いてジギル国王は頷く。


 「うむわかった。では副賞と特権の授与はまた後日にしよう。ただ条件をつけるというならこちらの条件も飲んでほしい」

 

 「なんでしょう」


 「先ほどいった娘の二つ目の条件だが相談役のほうだけでも今のうちに受けてもらいたい」


 ジギル国王としては娘の話し相手を用意してやりたかった。エミルからはライが孤児院に会ったとき仲良くなったとは聞いていたのだ。ただ、いくら娘が仲良くしていたからといっていきなり相談役などに抜擢したら反発が出るだろう。だが褒章という形にすれば反発は出ないはずだ。


話をした感じライは無茶なことはしないであろうと判断しての言葉だった。


 ライは考えた末に答えを返す。


 「わかりました。その任お受けいたしましょう」


 「うむ!ではそろそろ終わろう。そちも疲れているであろう。皆も褒章や副賞、特権について異論はないな?」


 周りを見ると誰も手を上げていない。



 そう見てたが一人だけ手を上げていた。


 手を上げていたのはライをこの王都に連れてくる要因となったクレイ将軍だ。


 「クレイ将軍何か異論でもあるのか?」


 「いいえ、特に異論はございません」


 「ではなぜ手を上げる」


 「副賞の中に軍師という役職があると仰られました。それについて先ほどの部隊戦で見た手腕を見て異論はありません。どころか私としても推薦したいところ。しかし、一つ先ほどの部隊戦で疑問がありお聞きしたいと感じた所存です。おそらく私と同じように感じ入る方々もおられるはず。はっきりしておきたいのです」


 「なるほど、ということだがライよクレイ将軍の質問に答えてやってくれ」


 「はい」


 そういってライはクレイ将軍のほうを向くとクレイ将軍は模擬戦の内容を聞く。


 「ライ殿あなたの指揮能力は見せてもらった。兵士の質が違い士気が低かった部隊であったが、士気向上させることに成功させていた。だが分からないのはなぜあのように複雑に動いたにもかかわらず兵達がすぐに纏まって動けたのかわからないのだ。理由を教えてほしい」


 それは周りの将軍も分からなかった。ライ自身が何回も訓練しているならまだしも今日はじめて指揮した兵達を手足のように動かしたやり方を。


 クレイの質問にライは答える。


 「答えは簡単、指揮官を増やしただけです」


 「指揮官を増やした?」


 「はい、最初部隊は千人いました。ですが千人もの兵士、しかも武器や兵数も一緒で伏兵などの奇策も使えない。それに加えこちらの兵は実力差的に劣っていた。陣形をお手本どおりにやったとしても負けるのは必至でしょう」


 クレイは頷く。


 「だったらこちらは奇策を使って相手を不利にするしかない。でも自分は一人で、千人に指示をしてもすぐには動けないでしょう……ならば指示する人間を増やせばいい」


 「増やすといってもなぜあそこまで動けるのですかな?」


 「指示といっても本当に簡単なもの。まず百人単位に一人の部隊長を決めて相手の動きでどう動くか指示する。あとは前線に私もいたので事前に決めた合図で動いてもらえれば各隊長が指示を出し指示を出された百人が行動してくれる。兵士達は自分の合図を見なくても自分達の隊長の兵士達を見ればいいのですから行動も早くなる」


 「なるほど、イウル伯が負けた原因は千人の兵士にすぐに情報伝達ができずライ殿の兵に翻弄され追いつけなかったことにあると」


 「ですね」


 一応他にも方法は考えていたがそこまで説明することはないだろうとライは余計なことは言わないでおいた。


 理由を聞いたクレイ将軍は満足したのかジギルに向かって礼式を取る。


 「陛下、私も理由を聴いてライ殿の慧眼には恐れいたしました。私からも副賞などの権限をお与えになること異論はありません」


 クレイ将軍の言にジギル国王は頷く。


 「他に何か質問があるものはあるか?」


 周りを見渡し手を上げているものはいないか確認するが次こそ誰もいなかった。


 「うむ、ではこれにて授与式を終了する。ライには後ほど追加された条件について通告するのでそのつもりでいるがよい。では下がってよいぞ」

 

 「はっ」


 そういって王座の間をライは退出する。


 そして退出した扉の外ではユレイヌが待ち構えているのであった。


 

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