↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
148/165

第百四十七話 捕捉

お楽しみください

 「報告します!相手は平地の真ん中からまっすぐとこちらに向かってきているとのことです!」


 エンリデンヌから出発して三日後の午後、偵察兵からそのような報告がライの元へと飛び込んできた。


 「兵の数は?」


 「当初の予定より千多い約四千とのことです!」


 「四千……か。ちょっと多いけど問題はないかな。俺はそう思うんだけどリエルはどう思う?」


 隣に護衛という名目で控えているリエルに意見を求めた。ここ数日、ライには毒殺未遂の件で一人は必ず護衛をつけるという方針が決まったのだ。ちなみに、ライ抜きで決まったのだが。


 意見を求められたリエルは首を傾げつつ、少しだけ考えた後


 「問題ない」


 そう答えた。


 「やっぱりそうだよな。けど、油断はしないでいこうか」


 「(コク)」


 首を縦に振りリエルは頷く。


 「あの、命令のほうはどうすれば?」


 すると、二人で話していた間蚊帳の外状態だった伝令兵がおずおずと聞いてきた。何か命令はないのか、対策はないのかと催促してきたのだ。


 「ああ、それならまずは騎兵三百を前に出して敵弓射程範囲ぎりぎりを走ってくれ。万が一あの部隊が何かしらの事情があってきた可能性もある」


 「もし攻撃してきたらどうしましょう」


 「そのときは、騎兵で弓を射てるものは反撃を。ただ、これは当たらなくてもいい。威嚇射撃程度で頼む。敵騎兵、または歩兵が突進してきたら騎兵は後退、騎兵残り二百を前に出す」


 「二百をですか?さすがにそれは無謀では……」


 ライは少しだけ驚きつつ目の前の兵士を見た。ライはこう見えて軍略に関して一流な人物なのだ。だからもしライがそうしろといえば、ほとんどの兵はそのまま行動するだろう。


 けれど、疑問を持ち質問してくる人物はほとんどいない。それはある意味自分で考えることを放棄していることと同じ。


 その点で言えばこの兵士は将来が有望だろう。


 「あの、軍師様?」


 「あ、ああ。ごめん。もちろん二百をそのまま前進させることはしない。後ろのほうに木の枝をつけて走らせ、ある程度進んだら後退させる」


 「その後の指示はどうしましょうか」


 「その後は、また別の人物に頼むけど……そうだね、ちなみにどうなると思う?」


 「どうなるとは、展開を読みきれということでしょうか?」


 「まあ、そうなるね。合格点を与えられる点数を取ったら昇進させてあげるよ?」


 この言葉に、言われた兵士だけではなく隣に控えていたリエルも驚きを顕にしていた。今までライが個人として、昇進話を挙げたことはほとんどないのだ。例外といえば宝玉を持っているレーシアや先日はマリーにも将軍クラスの階級にあげたくらい。これはまだ、繋がりがあるから納得できる。


 けれど、ほとんど初めて会った兵士に昇進のチャンスを与えるなど珍しい。将軍クラスではないだろうが、確実に出世はできるだろう。


 リエルは少しだけ目の前にいる兵士に興味を持ちじっーと視線を向けていた。その視線に兵士はたじろぐ。


 それに気がついてライは苦笑した。


 「リエル、そんなに見すぎたら相手も緊張するだろう?あと、君も別に緊張することはない。ただ思ったことを言ってくれればいいから。でも目の前に敵がいるから時間はあまりあげられない」


 緊張を和らげるように告げると、ようやく兵士は少しだけ緊張が解けたのか深呼吸してから話し始めた。


 「……この先、おそらく騎兵を後退させた後弓兵の一斉射撃をさせます」


 「……それだけ?」


 「いえ、ただ一斉射撃は移動しつつ左右からです。敵は二百の騎兵が起こした土煙で大軍に見えるだけではなく、視界が少し悪くなります。おそらく軍師は視界を悪くすることが目的と考えましたので。だったら、視界が悪い中方向感覚を狂わせるために軍を左右に割り、左右から攻撃させるのかと思ったのですが」


 「なるほど、他には何かある?」


 「そうですね……他にすることといえば最初に後退させた騎兵を視界が悪いうちに左右どちらかに展開し、敵陣のかく乱を行う。その間に敵騎兵を殲滅、有利にするってことぐらいではないでしょうか」


 「うん、その手も悪くないね。満点ではないけど七十点はあげられるよ。君の所属と名前は?」


 「はっ!私の所属は風影隊所属のブレイ・カッパスと申します!」


 「そっか、わかったブレイ。後ほど隊長であるランから通達があると思うから」


 「わかりました!」


 「じゃあ、さっき言った最初の命令を伝達してくれ」


 「はっ!」


 そういうと、ブレイはすぐさま陣営のほうへと消えていった。


 「ああいう人材も埋もれているんだなぁ」


 なんだかいい買い物をしたという感想を抱きつついると、不意に


 クイクイ


 リエルに袖を引っ張られていた。


 「ん?どうしたリエル」


 「続き」


 「続きって?」


 「百点満点」


 「ああ、さっきの回答が七十点なら百点はどうなのかってこと?」


 「(コクコク)」


 どうやら言いたいことは当たっているらしい。


 ライはこの先にいるであろう方向を見つつ言う。


 「さっきブレイが言っていた最初の半分は百点満点だったんだ。騎兵に木をくくりつけるのもやっぱり視界を悪くするため、大軍に見せるためってのが本音だし。ただ、後半が少しだけはずれてた。騎兵をまず殲滅させる。これでもいいけど、もっといいのは敵司令官、または本陣を殲滅する。これが正しい」


 「?挟み撃ちになる」


 「騎兵が後ろから、敵が前からってことか。うん、だろうね。もし、敵騎兵が外に出られたらだろうけど。そして、攻撃ができたらだろうけどね」


 言っている意味がわからないのだろう、首をさらに傾けるリエル。


 「リエルにはわかるヒントをあげようか。ヒントはサチかな」


 「……!わかった」


 「理解が早いね」


 「私も似たようなものだから」


 リエルにはすべて理解してくれたようだ。


 「一応サチに経験をつませるというのが今回の目的だから、例の部隊も活躍してくれることを願うよ」


 チカッ


 一言、最後まで言ったとたんに、太陽が一瞬だけまぶしく光ったような錯覚に陥る。けれど一瞬だからほとんどの人は腕で視線を覆う程度だけで何も感じない。


 だけど例外はいる。


 「はぁ、普通に出て来いよ」


 「ありゃりゃ、すぐにばれてしまったのですよー」


 突如ライの傍に現れる仮面を被った少女。いや、光の守護者といったほうがいいだろうか。


 「うーん、それはなんだかかわいくない名前ですよー」


 「普通に人の心を読んでいるんじゃねえよ」


 「あははー」


 「それで?何のために出てきたんだよ。もしかしてサチや部隊に何か問題があったのか?」


 「いいやーそういうことはないのですよー。サチっちはとっても調子がいいようですし、部隊のほうもいい経験をつめればいいと思うのですよ」


 「ならなんで出てきたんだよ」


 「もう、ライのために来てあげたのに邪険にするのは得策じゃないのですよー?」


 「それならさっさと用件を言えよ」


 「影響と闇」


 一言


 たった一言、光の少女が言うだけでライは表情を真剣なものにさせた。それはリエルをビクリッと驚かせるほどに。


 その様子にニヤリとした様子の少女はライの視線をまっすぐに受ける。


 「さて、さっきの言葉に関することでも邪険に扱うのです?」


 「……いいや、邪険に扱うことはしねえよ。忠告もありがたく聞かせてもらう。でもなひとつだけ言わせてもらうか」


 「あははーなんですよー……ッ!?」


 一瞬の回避能力を発揮してか、体の前に光の壁を精製した。そして一瞬遅れること光の壁に何かが激突し、煙を上げて霧散する。光の少女はまだ笑いつつも冷や汗を一筋流していた。


 静かに少女を睨むライは視線を正面に向けて


 「頼むから余計なことを言わないでくれ。興味本位で口にしないでくれ。時と場所を考えてくれ。俺はお前とも仲良くしたい。守護者というわけではなく一人の友達としてな。けどな、親しき者にも礼儀ありってことでやってはいけないことはあるんだ。だから軽々しくいわないでくれよ」


 二人の会話を聞いているリエルは少しだけおろおろするが、状況はすぐに変化した。


 「……へっく」


 「ん?」


 「う、う、うわあああああああああん!ごめんなさああああいですよー!」


 「あ、いや。おい、そんなに泣くなよ。わかってくれればいいから」


 「うわあああああああああああん」


 ライにも意外だったのか、光の少女が泣き始めるとは思わなかった。エスティアに慣れているのか、強く言っても理解してくれるだろうとは思っていたのだ。目の前の光の少女も謝ってくれていることから、納得はしてくれたのだろう。けれど、それで泣かれるとは。


 「ライ」


 その様子を見て、リエルがライを見上げる。


 「えっと、何だ?」


 「女の子を泣かしちゃ、だめ」


 珍しいことにリエルに怒られた。第三者であるリエルから見て、ライが少女をいじめているように見えてしまったのだろうか。もしそうだったとしたら結構ショックである。


 「もういいなのですよー!帰ってやるのですよー!」


 説教をされている途中でいきなり少女は姿を消した。


 残されたライとリエルにはなんとも言い難い空気が流れる。


 「……」


 「……ペチッ」


 リエルに手を叩かれた。おそらくお仕置きなのかもしれない。


 「はぁ、ちょっとライ。あんた、あの子に何をしてるの」


 すると、今度は入れ替わるようにエスティアが姿を現す。


 「いや、何をするもただ言っただけなんだけど」


 「……まあ、私も話は聞いていたからあなたが怒るのもわかるけど」


 そういって、エスティアは一度リエルを見てから再び視線を戻した。


 守護者といっても少女を泣かせてしまったライは罪悪感がこみ上げてきてエスティアに質問する。


 「そのさ、大丈夫なのか?」


 「……ふぅ、ええ。おそらく大丈夫よ。ちなみにこの様子もあの子も見ているから反省もしているみたい」


 「なんだかすっごく罪悪感が……って、待てよなんでエスティアが様子を見てるってわかるんだ?」


 「え?ああ。あの子いま私の部屋に来てるのよ」


 「帰ったんじゃなかったのか」


 「いきなり部屋に入ってきて泣きながら部屋を走りまくるのだもの。思わず出てきちゃったのよ。私が」


 そこで思い出されるのはライがはじめて光の少女と出会った時の、あの散乱した部屋の様子だ。


 「……被害は?」


 「……前回の五割増しってところかしら」


 どうやら部屋は壊滅的らしい。


 「なんか、その、お前にもとばっちりで苦労をかけるな」


 「いいえ、いいのよ。私は守護者、所有物なのだから。フフ、フフフ」


 なんだかエスティアの表情が怖い。目から光がなくなっているような。それだけひどい有様なのだろう。


 けどそれも一瞬で、わざとらしく「ゴ、ゴホン!」と咳をしたエスティアは


 「とにかく、あの子も反省しているみたいだし、拗ねて力を貸してくれないということはないから思い切って敵軍を殲滅しなさい」


 「ああ、それだけはありがたいかな」


 途中でライはもしかして、重要な戦力、作戦の要であるサチが魔法を使えない想定までしてしまっていた。原因がライのせいで。けれどその心配が要らないというのであれば嬉しいことこの上ない。


 「そうだ、ついでにエスティアから言っておいてくれ、節度を守ってくれるなら仲良くしようなって。今度、どこか一緒に遊びに行こうってさ」


 ライは軽く言ったつもりだ。泣かせた償いもあった。


 けれどこの言葉の魔力に二人の少女が反応する。


 クイクイ


 一人はリエル。


 「へぇ、また一人毒牙にかけるのねぇ」


 もう一人はエスティアであった。


 「え?いや、そういうわけじゃなくて償いにだな「(クイクイクイクイクイクイクイクイ)」って、リエル!?ちょっと袖引っ張りすぎだ!これじゃあ伸びるぞ!」


 そういって、リエルに抗議していたところで


 「報告します!敵軍こちらを補足した模様!行軍速度を落とし陣形を整え始めております!」


 そのような報告が聞こえてきた。


 次の瞬間じゃれあっていたリエルとライは表情を引き締め、遠くに見え初めて敵軍を見据える。


 ライは久し振りにこの言葉を口にするのだった。


 「さあ、戦争を始めようか」



 

お疲れ様です。こんばんわ。

最初に申し訳ない。一日勘違いしていて今日が三日目の更新日かと思っていました。日付感覚がなくなるって怖いですね……。

さて、今回のお話。まだ戦わないのかよと思った方は申し訳ない。次から戦うのです。

敵の数は約二倍。といっても今までのライの相手にしては少ないほうですよね。なんたって万以上の違いで勝っているのですから。

でも、相手も馬鹿ではないのかもしれませんよ?と変な複線を張っておきます。

さて、今回はこの辺で。ではまた次回お会いしましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。