第百四十六話 接敵
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エンリデンヌで軍備の準備や情報収集に力を尽くしていたライ達、この頃になるとライ自身も仕事を再開していた。
仕事といっても、優秀な部下が沢山いる国盾の砦であるため視察以上の仕事にはならなかったのだが、それでも組織の象徴である一人のライの姿を見るだけで兵士たちは士気を上げていた。
そんなある日、ついにライ達は行動を開始することになる。
とある情報が舞い込んできたのだ。
「敵部隊の規模と位置は?」
情報とは、例の謎の部隊がここエンリデンヌにも向かっているというのだ。
情報を持ってきた ティアが報告をする。
「巡回部隊が見た限り、三千ぐらいらしいよ。なにぶん旗がなかったらしいから正確な数はわからなかったらしいけどね。それで、どうする?兵を貸してくれるなら蹴散らしてきてもいいけど」
報告を聞いて、少しだけライは考え込むが首を横に振る」
「いいや、やめてたほうがいいと思う」
「私に実力がないってこと?」
「違うよ。というか今更実力云々を問うことはあり得ない。俺がこの状態なんだからもっとも信頼出るのは幹部の人たちや親友ぐらい。もしこれでティアすら疑うようになったら人として終わりだよ」
冗談で言ったつもりだったのに、まさかこのような切り返しが来るとは思わなかったティアは思わず口を閉じる。
気づかないライはそのまま話をつづけた。
「今回やめろといったのは、ティアだけに先行させることを否定したんだよ。あと懸念事項もあるし」
「懸念?」
「先日発見された軍や部隊の報告はティアも聞いたはず。そこでは発見兵数は数百から千ぐらいだった。なのに三千の兵を、しかも的確にエンリデンヌという要衝に送ってくるのは相手に軍行動がとれてるってことだよ」
しかし、この言動についてはティアは首をかしげる。
「そうかな?逆に、エンリデンヌには現在約一万の兵が待機しているのに三千しか送ってこないのは軍行動がとれていないと思えるけど」
「よく考えるとそここそがおかしいんだよ。さすがに北で戦争が起きたということは全土の人が知っているはず。そして勝利した陣営もわかってる。なら、勝利した俺らがどこに行くか、一万もの軍を置ける場所なんて限られてくるんだ。エンリデンヌしかない。そこまでわかっておきながら三千しかよこさないのはなぜか」
「……罠の可能性があるってこと?」
「そうだ。でもかといって敵軍を放っておくことはできない。だから今回は俺とティア、リエルそれと……うん、サチにも手伝ってもらおうかな」
「え?リエルはわからないでもないけど、サチさんにも?あんなことを言ってるけど、仮にもアスティールの使者だし、さすがにまずいんじゃ」
ティアのあんなこととはライの妾と言っていることだ。このことにはライ自身少し困っている。
「まあ確かに他国の使者でもあるからあまり動かすことはできないかもしれないけど、サチには経験を積んでほしいんだ」
「経験って十分積んでると思うけどね」
「でも宝玉に関しては積んでいないんだよ。とりあえず、サチも加える方向で。兵数は二千でいい。部隊の選別は歩兵と新しい部隊を加える」
「新しい部隊ってあったっけ?」
「サチを今回同行させる理由の一つでもあるんだ。彼女専用の部隊を実は先日から作ってもらってる。前の作戦会議でサチがいなかった理由も遠風の書で本国に許可を貰っていたんだ」
「許可ねぇ」
「とりあえず、ティアも準備を開始して。リエルにも伝達してほしい」
「わかったよ。リエルにも伝えとく。あと他には何かある?」
「ほかのことは別の人に手配を頼むから、とりあえずは準備を始めて」
「わかったよ。ならまたあとで」
そういって、ティアは部屋を出ていった。
しかししばらくしてから別の人物が入ってくる。
「呼ばれたので来ましたけどどうしましたか?お兄ちゃん」
フィルだ。
ライは先ほどティアに下した命令の内容を話すとフィルは真剣な表情をしつつ話を聞いていた。
「というわけなんだが、軍需方面は大丈夫?」
「そちらは大丈夫です。本来貴族と戦うために数年は戦えるように食料は集めてましたから、それを数か所に配置して今も保存はできてます。エンリデンヌでも補給はできますし。ただ……」
「何か問題でもあった?」
「問題というか、これからどのくらいの相手と戦うかわかりませんけど兵士の数が足りません。お兄ちゃん達には強力な宝玉という力もありますけど、使い続ければ精神を消耗しお兄ちゃんへの負担も大きくなります」
「この際俺のことは考えないでも」
そこでキッ!とフィルに睨まれてライは無言になる。
「……とにかく、これから先のことを考えれば兵の損失は最小限にしなければ組織運営が成り立ちません」
フィルの言うことは正論だ。これからライ達は推測でも約五万以上の兵士たちと戦わなければならない。なのに一万の兵士では到底不利は覆らないだろう。魔法があったとしてもだ。
「まあ、それはおいおい考えないといけないとして今は現れた軍についての話をしてたんだ。そっちの対応をしないと」
「……そうですね。それにお兄ちゃんもすでにわかっていることを言うのもおかしいですし、別のことを言うために呼んだんですよね?」
「察しがよくて助かるよ。まずは軍のことを話そう」
「軍のこと?」
呟いてフィルは繰り返すが、ライは話を続ける。
「さっきも説明した通り俺らはフィルとリエル、サチを連れて迎え撃つつもり。その間別方向から軍が接敵してくるかもしれない。その時の策を説明しておこうかと思ってね」
「?お兄ちゃんがそういうならいいですけど、こういうことはキャサリン先生などが適任なんでは」
「キャサリン先生は先のジュアン帝国時の戦いで知名度が高くなったから動くには適してない。それよりも、裏方に適していてキャサリン先生の次に軍を把握してるフィルが適任なんだよ」
「……わかりました。それで、策というのは?」
それからライはフィルにこれから起こるかもしれない内容を説明していき、フィルはすべてを理解していった。
「わかりました、指示通りに準備をしておきます」
「頼むよ」
二人の打ち合わせが終わり、解散……することはなかった。
ライにとっても、そして一人呼ばれたフィルにしても大事な本題があるからだ。フィル自身最初はキャサリンよりも次に軍を把握していると納得したが、今の作戦を聞いて本題ではないと気づいたのだ。
「では、この件は準備をしていきます。ではお兄ちゃん、そろそろ本題を話しましょう」
「本題か」
「さっきの説明で私が一応適任ではあるかもしれませんが、ラッシュさんやレーシアさんにもできること、これはついでで本題が別にあると思います。それに『まずは』といったら次に続きがあるってことですよ」
「あーうん。そうだよ、本題がある」
「隠そうとはしないんですね」
「まあね、これから話すつもりもあったしこれ以上隠しても意味ないしさ。今から話すことはこれからのことだよ。内容は俺がもし正気を失ったり、この先死んでしまった場合フィル、君にみんなのことを頼みたい」
「……え?」
フィルの思考は先ほどまで、針一本も見逃さないぐらいの気持ちで考え、判断していた。矛盾を見つけ、策の合理性を判断するなど。
しかし、ライが軽く、どこかに散歩に行こうとでも誘うような軽い口調で自分が死んだあとのことを頼まれて、さすがのフィルも思考が停止してしまったのだ。
「え、あれ?お兄ちゃん、今なんといいましたか?」
何かの間違いかと思ったが、ライはもう一度
「何かがあったときフィルに頼みたいっていったんだ」
苦笑しつつ、しかし瞳は真剣にフィルを貫き言ってきた。
何かを反論しようとしたフィルに対してライは言葉をつづける。
「別に俺は死ぬつもりはないよ。皆のことも心配だし、この後この国のことも心配だから。けど、万が一もある。宝玉の副作用のこともある、戦争もある。不安要素が多いんだ。だから次の策も決めておかないと」
「でも、だからといって、どうして私が?」
「……リューネリスで俺がいなくなったとの状態をそれぞれ聞いた。ティアは心を喪失させた、エミルも王室に閉じこもり、リエルは気丈にしていたみたいだけど元々部隊に対してならいざ知らず、全軍に命令するには不向きだよ。ラッシュ、ランも同じ理由かな。でもフィルはすぐに行動してくれていたと知ってる」
「わ、私も泣いたんですよ?心配で。それに別にエミルさんでも」
「エミルは王女でもあるから行動をしにくい。けどそうだね、一応エミルにも話をするつもりではあるんだ。こういうのもなんだけどエミルは政治に関しては強いからね。けど軍はフィルが適任だよ。何よりも、さっきの話で言うと何かあっても一番最初に動いて、周りに指示をできる人物はフィルしかいない。キャサリン先生も実は候補にいれたんだけどね。表はキャサリン先生、裏はフィル。この形で軍を運営してほしい」
「でも……」
「頼むよ、フィル。……といってもそういう感じじゃすぐには返事を決めてくれないかな。これはまた後日答えを聞かせてほしい」
この返答には相応の覚悟でいてもらわなければならない。でないといざというとき軍が、しいてはフィル達が危険になるからだ。
何も答えないフィルにライは優しく語りかけた。
「返事はしばらくいいからさ、たださっき頼んだことは任せるよ。お願いできるね?」
「わかり……ました」
お願いをした後、フィルはゆっくりと出ていった。少し酷だっただろうか。
「酷なことを言うわね、あなたも」
心の中で思ったことをまるで聞こえていたように、返事を消してくるエスティア。
「やっぱりそうだったかな」
「そうよ、少なくとも慕っている相手から自分が死んだらという話をされて戸惑わないわけないじゃないの。それも仮に納得しても上に立つという責任の重圧はすぐに返答できるものではないわ」
「まあね、けどさ、やっぱり即答せずにしっかりと考えてくれるフィルに頼んで正解だったと思うよ?」
「人選について反論はないけど」
責任の重さとは時に一つの判断で何千、何万もの兵士を殺すことになる。その重さを知っているからこそフィルは返事をすぐに出せなかったのも要因の一つだ。
「それよりも、エスティア。彼女からは何か言ってきた?」
「ああ、彼女ね。こう伝えろと言ってきたわ。『お久しぶりですよー、サチっちとは何回か話して理解しあったから力の譲渡は無事終わったのですよー。だからあとは頑張ってくださいですよ!』らしいわ、というか、あの気になるしゃべり方はどうにかならないのかしら」
「それ以上は言っちゃだめだよ。レーシアもいるんだから」
「比較対象を持ち出す時点で同類じゃない」
「ははは」
乾いた笑い声を出すライだがすぐに表情を引き締める。
「さて、と。そろそろ真剣に考えないといけないね」
「ええ、そうね」
「じゃあ、あの宝玉はどこにいる?」
「位置は正確にわからないけど、場所ならわかるわ」
「やっぱり、そうだと思う?」
「ええ」
二人の共通認識を確認するためにエスティアは内容を口にした。
「宝玉、闇と雷は王都にあるわ」
残り二つの宝玉のありかを口にしライは頷いた。
「やっぱりか。なら敵は」
「ええ」
決定的な一言をライは言った。
「フェレス王国、全土の可能性があるんだな」
国が敵であると。
この言葉をつぶやいた翌日、ライ達は謎の部隊を撃退するため出撃するのであった。
こんばんわ!三日ぶりです。
さて、今回は色々な伏線やら戦う準備やらを書きました。ついに戦闘シーンに入っていくですよ!
フィルに対しても少しいじめてしまっているような、(重圧的な意味で)気がしますが、乗り越えてほしいものですね。
次はサチの光の守護者である光の少女の名前がでるのかな?でないのかな?というところです!お楽しみに!
と、ここでは本編を締めくくって。
次に以前の合作になる小説の話になります。
新しく数人で立ち上げた物語の名前を書かせていただきます。名前は
「フリー・ロール・ワールド」、意味は五人が物語を自由にロールプレイングする世界です。
私の作品は……すでに出ております。今私を含め二人が出しているのですが自分のは国の名前がこの小説の中にある名前で適応されております。五話?ぐらい出しているのですぐにわかるかと。
一応、ここでお知らせとして書かせていただきましたが、これって小説の宣伝は規約違反でしたっけ……少し不安でもありますので何か問題があったらメッセージ感想、活動報告にご連絡をお願いします。
以上、よろしくお願いします。またお会いしましょう。




