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第百四十五話 消えた大部隊

お楽しみください

 「謎の部隊が複数で確認されている?」


 そのような報告を部屋で受けていたライ。


 先日斥候を北以外のすべての方向に差し向け、正確な情報を求めたのだが、その第一報が今届いたのだ。


 部屋の中には現在数人の仲間が話を聞いていた。


 ライのほかには報告者のラン、国盾の砦のトップの一人キャサリン、国盾の砦内政総監フィル、フェレス王国王女エミル、侍女ユレイヌ、氷壁の砦傭兵団団長ダンテ、義勇軍総司令イプスである。


 この町にいる重要な幹部が全員そろっていたのだ。これはライの指示でありこれからの行動指針を決める重要な会議でもあった。


 ランはライの言葉に頷き報告を続ける。


 「はい、先日のご命令どおり西のドリアド、南のリューネリス方面、王都、東のアスティールへと斥候を放ちました。北はジュアン帝国が調査するとのことでしたのでわかりませんが……風影隊の隊員第一陣が持ち帰った情報によるとすべての場所で謎の軍勢が進軍していたとのことです」


 「規模は?」


 「規模はばらばらと。数百の歩兵隊が西で確認されたかと思ったら今度は南で一千の騎兵、重歩兵の軍団がいたとか」


 「……ランちゃん、不明というからには旗などを持っていなかったんだろうけど鎧で所属はわからないの?」


 質問したのはキャサリンだ。そして、キャサリンの言っていることは正しかった。フェレス王国で支給されているものはありふれたとしても、それがドリアドではもちろんありふれた物ではなくなる。地域ごとに意匠が違うのだ。


 キャサリンの質問にランは首を横に振る。


 「それが……少し奇妙なのです。もちろん私も持ち帰った兵士に聞いたのですが帰ってきた言葉は、様々な鎧を着た軍団だったと」


 「様々な?」


 「騎兵は王国の鎧に見えたと思ったら、中にドリアドの鎧を着た歩兵がいた。歩兵は王国兵なのに旗はしていないとか」


 「なんというか、おかしい事もあるもんだな。戦争状態に突入したというのに一緒に手を取り合ってというわけにもいかねぇ。仮に和睦したとしても一緒に領内を進軍する意味がわからない」


 「ダンデ団長殿の言もごもっともなものです。ですが実は……先日ライ軍師殿が同時にジュアン帝国のほうからドリアド王国に動きがあるか偵察をするようにと送ったのですが、昨日偵察の返事がきました。結果はドリアド王国から出兵した軍はまだ帰国していないという話。しかし、こちらもそこまでしかわからず、軍がどこに消えたかわからないと」


 「イプスのほうもやはりそうなのか」


 「?やはりそうなのかと仰られるとは、何か考えがあっての言葉でしょうか?」


 「一応考えはある。あるけど……自信がない。規模もわからないし能力もわからないからやりようがない」


 憶測で物事を言うことを控えるという意味で言ったのだがそれを否定する言葉が上がった。


 「ライ、お主の考えを包み隠さず言うのだ」


 今まで決して口を挟まなかったフェレス王国の王女エミルだ。


 視線を鋭くした、王女としてのエミルはライに要求した。


 「全て言え。全員に小さな可能性でも、考えでも、行動でも命令でもな」


 この言葉にフィルが戸惑った様子で言葉をさえぎる。


 「エミル王女、少しきつく言いすぎではないですか?誰にも言いたくないことはあるんです」


 「フィル、確かにこの場が個人のお茶会や普通の報告会議ならば私も言わぬ。だがな、ここの決定が国の命運を左右するものかもしれないとなれば話は別なのだ」


 「ちょっとそれは大げさでは……」


 「大げさと?ドリアドとフェレスは戦争状態だった。にもかかわらずなぜか戦闘は起きず不明の軍がフェレス王国で動いておる。ということはだ、今消えた軍がわからない以上フェレス国内で最大の軍はこの国盾の砦の軍ということになるのだ。大げさとは言えまい。それに私がライに命令するのは別の懸念もあるからだ」


 「懸念……ですか?」


 「そうだ。ライ、お主の力はいくつもの力を集めたものなのだろう?その間にもちろん副作用もあると聞いた。以前は記憶喪失も一つと言っておったな。けれど対となる反対の魔法があれば一時的に症状が出るだけで収まると聞いた。……ならば少なくとも氷、そして光の副作用はどうなっておるのだろうな?」


 フィルはその言葉だけではっとしてライのほうを見る。


 ライは困ったような表情をしていたが、エミルは続けた。


 「ライ、すべてを話してもらうぞ。今の状態も含めてだ。王女としての命令だ。私の騎士であり、軍師であるライ・ジュリアールに命ずるすべてを話せ。……それと、ユレイヌ、ラン。ライを逃がさないようにするのだ。リューネリスの時みたいに逃亡されては適わんからな」


 「はっ」「了解しましたわ」


 そういって、ランはライのすぐそばに移動した。ユレイヌは返事はしたが視線は一挙一動を見逃さないような眼光だ。


 「さて、これで逃げれまい。しっかりと話してもらうぞ?ちなみに外にはティアやリエル達も待機させておるからな。この場を無力化しても逃げれまい」


 話が物騒になってきたと、リューネリス時にいなかった人員は考えたが真っ先に擁護しようとしたフィルが何も言わないことから、何か過去にあったのだろうと想像するのであった。


 全員の目がライに集まる中ライは苦笑してエミルに話しかけた。


 「そんなに、俺って信用ないかな?」


 「信用がないというわけではない。信用がなければ誰もお主を軍師とは呼ばぬし近寄らないだろうからな。ただ、お主は宝玉や自分のことになるととたんに抱え込んで周りを置いていく。さっきも言ったが前例があるだろうが」


 「リューネリスか」


 「フィルなどから話は聞いておる。レーシアとともに行動していたのを発見したときもういなくならないと約束したと。けど……な」


 「まあ、しょうがないのかな。ただ、一つだけ聞くけどどうして危機管理能力が危ないと今明言した?」


 「私が言うのもなんだが、ここ最近ティアやフィルなど町で散策や遊んだりして療養しておっただろう?お主も心底楽しんでおった」


 「まあ、うん。楽しかったけどそれで?」


 「お主、その間に。ランが報告してくるまで軍部に行ったことはあるか?」


 「……あぁ」


 「戦争が終わったばかりなのに、視線が軍部に向かなかったなど以前のお主にはありえないのだ。意識では向かっているかも知れぬがどこか、欠落していると感じたのだ」


 「なるほど……納得した。ならまずは何を聞きたい。


 「ならまずはお主の状態から。お主の意識で今どの程度危機管理ができておる?そして、行軍行動は可能か」


 「行軍は今のところ問題ないよ。危機管理能力も今のところはね」


 「今のところということは、今後はわからないということですか?お兄ちゃん」


 「ああ、そうだよフィル。今エスティアがいないだろう?あいつは副作用を抑えてくれるために力を使ってくれてるんだよ。本当は出てくることもできるらしいけど必要ないときは休んでいてほしいんだ」


 「そうですか……なら副作用はどういったものを抑えているんですか?」


 「光は危機管理能力を欠落させる。敵と認めた相手は大丈夫だけど少しだも味方という情報があれば親友のように信じてしまうだろうね。氷については……二つあるんだよ」


 「二つ?」


 「これも先に言っておくけど……一つは誰の言葉も表面上にしか聞かず奥底には響かないといえばいいのかな?信じられないというべきか。もう一つは孤独感にさいなまれるってところかな」


 「ん?ちょっと待ってくれよ。それはおかしくないか?光ってのは信じてしまうのに、氷は信じられないってのは」


 「ダンデ団長、確かにおかしいかもしれないけどこういえばわかるかな。相手が味方だと思ったらお節介をかけたくなる。けど、どこかで一線を引いてこちらには踏み込ませないって言えば」


 「……なるほどな。なんとなくわかった。続けてくれ」


 「まあ、今のところは大丈夫なんだけどね。さてと、それで次は何が聞きたい?」


 「今行動している軍に関して、ライ、お主の見解を」


 「エミル、最初に言っておくけど憶測しかないよ?」


 「それでも構わない」


 「わかった。なら言うけど、俺の見解は……二つの軍の混成軍で間違いないと思う。そして目的はフェレス王国全土」


 「なっ!お兄ちゃん何をいっているのですか!それでは」


 「そうだよ。滅亡の危機だね。それにエミルがさっき言っただろう?この国で今動ける最大戦力は俺らだと。もし、確認されている混成軍が二つの国の部隊だった場合、その国の防衛力はどうなると思う?」


 「著しく低下しますね……」


 「そうだよ。確かドリアドとフェレス王国軍の総力は五万だったかな。王都やそれぞれの地方にも貴族たちが総力で数万いる可能性はあるけど、決戦に出兵した兵士たちが精鋭じゃないわけない」


 そこまで言うとフィルは黙ってしまうが次にキャサリンが質問してきた。


 「ライ君、あなたの話はわかったわ。けど、前提条件がおかしいような気がするわよ?確かにドリアドとフェレス王国軍が集まれば総力五万の精鋭が集まるだろうけど、フェレス王国がわざわざ国を売り渡すような行動をするかしら?」


 「本来ならしないでしょうね。けど、俺がジュアン帝国と戦っているとき倒れたのは部隊でも真面目で信頼ができる兵士だったらしいですよ?」


 「そんなもの一人の兵士が突然気がふれるなんて珍しくないわよ」


 「ええ、ですから憶測でもあるんですが……でも仮に操られていたと考えたら今回の二国の軍が消えた のと同時に国に多くの部隊が現れたのは説明がつきませんか」


 「……そう考えれば確かにそうかもしれないわね」


 「なので部隊は操られている可能性がある。けれど、果たしてそんな大勢に魔法をかけるなんて可能なのか半信半疑なんですよ。話さなかった理由はそれなんです。一応これについては軍備を整えると同時に情報を集める方向でお願いします。ランも頼んだよ?」


 「は、はっ!了解です!」


 「さてとほかに聞きたいことは?」


 「ライ、お主重要なことを話しておらぬぞ」


 「重要なこと?」


 「軍を操っていろいろな場所へと進軍しているという話は聞いた。だが、目的は?」


 「あれさっき言わなかったっけ、フェレス全土だって」


 「ならばなぜ王都へと進軍しない?王都を焼け野原にすれば崩壊したも同義ではないか」


 「ああ、なるほどね。うん、しょうがないのかな」


 ライの独り言に首をかしげる一同だが、次の言葉を聞いた瞬間戦慄が走った。


 「この黒幕がステイル第一王子の可能性があるからだよ。王都に向かわないのは別に国をドリアドに売り渡すのが目的ではないから。国に反乱を起こしたいからだと思う」



 ここであえて、とある内容は言わなかった。それは国王が暗殺される可能性だ。父親であるエミルに対しての配慮だ。


 「だけどこれはまだ可能性。外れてくれればいいと思うよ。……さてと、ほかに質問は?」


 衝撃の言葉の後に誰も返事はしなかった。


 「うん、ないみたいだね。なら、ランとイプスはこれからも情報の収集を。フィル、ダンデ団長、キャサリン先生は軍備を急いで。あまり時間はないかもしれないから」


 三人は指示に対して頷いた。


 「ほかの人はそれぞれできることを。エミルのこと、ユレイヌさん任せていい?」


 「畏まりました。ただ、ライ様のことも任されてもよろしいでしょうか?」


 「俺のこと?」


 「内容はお教えしませんが、配慮はさせていただきたいかと」


 「あー、うん。まあ任せるよ」


 「了解しました」


 一同がすべてを言い終えて会議は終了となる。


 最後に


 「じゃあ、みんなよろしく頼むよ」


 それを機に全員が動き出す。


 確実に戦火の炎は近づいていた。


 

こんばんわ、更新できてほっとしている私でございます。

さて、今回はついに状態が動き始めました。

大部隊の行方と可能性、ライの影響などを書きましたね。

ここで一つ、

もしかしたらこの戦いが最後の大部隊戦になるかもしれません。

まあ、当然かもしれませんがもう戦う外敵がいなくなっちゃうんですよ!

ということは……。

そろそろラストに向かっていくことになりますね。

といっても何十話続くでしょうけど。

といって100話続くかも・・・w

今回はこんなことを言いつつ終わりましょうか!

とも思いましたがもう一つだけ。

以前からお知らせしているお話です。合作の物語ですがついに始動する事になりました。

五人の著者が一つの世界でそれぞれの主人公を作って行動する物語。

もちろん、進行速度は別々なんですけどね。

名前は……まだ伏せておきます。運営にとある案件を問い合わせている途中なので。ただ新しい小説で題名:(副題)の小説が土曜日にでていたらそれかもしれません、私くしの場合は一気に5話更新、ほかの人は1~2話。間に合わなくて出さない人もいるらしいですが。

次こそ以上です!ではまたお会いしましょう!もちろんこっちも続きますからね!

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