第百四十四話 歓迎会
お楽しみください
ドリアド王国とフェレス王国が戦っているはずの西の状況がわからないという不穏な情報がエンリデンヌに流れてきていた。
でも
それは、ランによる風影隊による再調査で情報が入ってくるのを待つしかない。
ライ達の平穏な日常はそれまでは続くのだ。
わからないという情報が入ってきた翌日、今回はライがとある提案をした。集まった相手はティア、フィル、リエルだ。丁度手が空いていたらしい。
こちらが提案をすると、それを三人は了承。関係者には後で連絡するということであった。ただライは準備をしなくていいと言われたことには首を傾げたものである。普通提案者が率先して動くべきだと思うのに。
けれど、とりあえずライは強く三人に言われたことから渋々と頷くのであった。
そして翌日、ライはユレイヌに呼ばれて部屋を出る。どうやら昨日話した案を実行する準備ができたらしい。
「それにしてもまさかこんなに早くできるとは思ってなかったよ。結構大変だったんじゃないの?」
「そんなことはありませんよ?まあ、私一人だけなら大変でしたけど……見習いメイドが屋敷に沢山いましたので人数には困りませんでした」
「ふぅーん、やっぱり戦争のせいで職をなくした人が多いのかな」
「その懸念はどうかと思いますが、ジュアン帝国の進行を瀬戸際で止めたのですから被害は少ないかと。さすがに両面同時作戦を展開しているので物価の高騰で生活が圧迫しているのは確かですけど」
「なら早くそんな人がいなくなるように戦争を終わらせないとね……ところでさ、前から聞きたかったんだけどいいかな」
「なんでございましょう?」
「話を聞いている感じ情報の選択、考察、そしてジュアン帝国との戦争の時もエミルが最前線にでたとき隣で護衛していたって聞いた。王族のメイドさんだから只者じゃないってのは知ってたけど、本当にユレイヌさんって何者?」
「あらあら、ライ様はまさか私をどこかの間諜かとお思いですか?」
「それならもっと遠まわしに探るよ。それにエミルが信頼しているユレイヌさんだからこそ俺も頼りにしているから。これは完全な興味本位かな」
「興味本位……ですか。よく言います。ランに私のことを聞いたり、昔出会って間もない頃、フェレス王国ゲーム決定戦が終わった後警備隊に所属した時、色々と調べられたでしょ?」
「あれ、気がついていたんだ」
「もちろんでございます。私はエミル様にお仕えしているのです。不穏な動きはできるだけ排除しなければなりません。優秀な部下もおりますしね」
「ラン……だよなぁ。そっか、だから妙な感じがしてたんだ」
「あと、これも付け加えますとティア様も一応監視としてついていたのですよ?」
「え。本当に?」
「あの頃はライ様のことを知りませんでしたので、監視をつけるつもりだったのです。すると、ティア様が監視をするとおっしゃり警備隊のときほとんど二人で動いていたのではありませんか?」
「確かに」
「まあ、私の考えすぎだったと判ったのですがね」
苦笑しつつユレイヌは答える。
「……話を遠まわしにするってことはやっぱりまだ教えてくれない?」
「ライ様、以前言ったことがあると思いますがもう一度言わせて頂きます」
そこでユレイヌはこれ以上なく楽しそうな笑顔でウインクしながら
「女には秘密があったほうが魅力的なんですよ?」
それだけをいうのであった。
上手くはぐらかされたライだったが、必要に聞きすぎるのは失礼だと判断しその後は他愛もない話をして歩いていた。
すると前方に屋敷の一室なのか結構大きな扉が見えてきた。
「あれ、てっきり屋外でやるのかと思っていたけど屋内なんだ」
「外でやるには情勢的に合わないかと。戦争中だというのに貴族は豪遊していると外の住人に勘違いされたら面倒ですから。といっても豪遊ではなく些細な昼食会なんですけどね」
「まあ場所は関係ないからね。目的は歓迎会なんだし。ん、そうだエスティア出てこれる?」
「なにかしら」
突如姿を現すエスティア。
「気分転換に参加しない?」
「主に求められたら参加しないわけにはいかないわね」
「はは、頼むよ」
案外乗り気のエスティアと一緒に扉を開け部屋の中に入っていくライ達。
ただ
どうやって予測しただろう。この光景を。
「……は?」
「「「「「(お、)お帰りなさいませご主人様」」」」」
ライはもう一度
「はい?」
間抜けな声を出してしまった。
「えっと、ライさ……じゃなくてご、ご主人様こちらに、その、どうぞ」
前に出てきたマリーがライの手を取って誘導してくれる。用意されていたテーブルの奥に案内されそこに座る。ちなみに、なぜか男はライしかいない。ラッシュ、ダンデ、イプスにも声をかけただろうに。
「あの、さ。ラッシュ達は?」
すると問いにはティアが教えてくれる。
「ラッシュは腹痛、ダンデさんは二日酔い、イプスさんは放浪病らしいよ」
「いや、ラッシュさっき思いっきり訓練場に向かうの見たぞ!ダンデさんは……まあありそうだけど、最後のイプスに関しては病気なのか!」
「何を騒いでおる、細かいことを気にしおって」
「あれ、皆気にしないの?放浪病って珍しくないわけ?」
「ライー、私たちも二年間一緒に放浪したんだから変わらないと思うなの!」
「あ、えっと、ん?それでいいのかな?」
「いいとおもう」
エミル、レーシア、リエルがそれぞれ肯定してくる。
い、いいのかな。
内心そう思いつつ視線を改めて回りに向けてみるが
「……まあ三人のことは後で問い詰めるとして。これは、どういうこと?」
「どういうことってなんのことですかぁー?」
「ヴェトリア、いやこれのことだよ。これはマリーとここにはいないけどイプスの歓迎会だったよね?」
「そうよ、ライ君は何当たり前のことを言ってるの?」
「そうですよ、お兄ちゃん。まったく何も問題なんてありませんよ」
「キャサリン先生、それにフィル。俺は聞いたことないよ。まさか歓迎されるべき人間が『メイド服』を着て、歓迎するべき全員が同じ格好をしてるなんて」
「あの、似合っておりませんでしょうか?」
動揺しているライにお気に召さなかったのかと不安になったのか、マリーが眉をひそめつつ不安そうな目を上目遣いで向けてくる。
「あ、いや、とっても似合ってるぞ?こんな可愛いメイドさんが本当にいたら仕えてほしいぐらいだし!」
慌てていった言葉、何も考えずにいった言葉。
だけど言葉には影響力があり、責任があり、感情を動かす力がある。
「か、可愛いですか!?」
ザワッ
このとき部屋に衝撃が走る。それはもう爆弾を落としたように。
「あの、ライ様、私も似合っておりますでしょうか?この前お洒落をと仰っていたので着てみたのですが」
おずおずと何かに押されるように聞いてくるのはランだ。風影隊には指示をすでに出したらしく手配は準備済み。翌日でよくやると思いつつも、感心していた。ユレイヌが優秀な部下というだけある。
と、考えていたところでこれは暗に現実逃避し始めているのではないかと思い始めた。目の前で自信なさげにスカートの裾をぎゅっとつかんでいることから不安なのだろう。
ここでライにひどいことを言うという選択肢はなかった。
「うん、なんかこう新鮮なランの姿を見れて以外というかなんというか……似合ってると思うよ」
「本当ですか!」
「お、おう」
とそこで、ライはランが胸あたりにしているブローチに目が言った。それはとても黒く引き込まれるような黒い輝きを放っている。
「あ、ラン。これもう身に着けてくれてるんだ」
「あ、はい。ライ様に買っていただいた大切なものですので。家宝とすべきものですがユレイヌ様から使わなければもったいないとも仰られまして」
「当然です。宝石というものは保管しておくだけなど言葉通り宝の持ち腐れです。着飾ってこそ効果があるのです」
「それにはユレイヌさんに全面的に同意かな。ラン似合ってるよ」
「有難うございます!」
とっても嬉しいのか腰が90度以上曲がりお辞儀をしていた。
「ライ殿」
すると隣からサチが(もちろんメイド服だ)ライの名前を呼んでくる。
「私の格好も似合ってるだろうか」
「ええ。似合ってますよ。いつものイメージはきりっとしたものでしたけど、可愛らしい一面も好感触です」
「そ、そうですか。まあ、妾としては当然ですね!」
「あー。サチさんそれ前も言いましたけど認めては」
「なっ!ラ、ライ殿は私など眼中にないと、そうですよね、私のように無骨で可愛らしくない私など、ええ、ええ、周りには沢山の魅力的な女性が常におりますものね」
「ちょっと待って!さっき可愛いと言ったよね!」
「でも認めてはないと」
「えっと、まだ認めてはいないけど、その、そうだ!候補、候補でお願いできないかな!まだぜんぜん状況が落ち着いてないしこの先どうなるかもわからないから。ね?」
すると、完全撤回されなかったからかほっとしつつ、笑顔を取り戻したサチは
「う、うむ。それで構いません。では第一候補の妾として立候補しましょう!」
会場に旋律走る。ざわめきではなく、戦場のような張り詰めた空気が展開される!よもやメイド服を着ている少女たちしかいないのにひとつの獲物を取り合うような肉食獣の戦いのような、そのような空気が!
(って、肉食獣よりも全員まずい力もってるだろ!)
内心ツッコミを入れてしまうライ。けれどこの緊張した空気は
「貴方たち何をしているの。みっともない」
エスティアが緊張した空気を一瞬にして緩和してくれた。
空中に浮くエスティアは
「……エスティア、何でお前もメイド服なの?」
「あら、結構似合っていると思ったのだけれど違ったかしら?」
「いや、確かにこれ以上ないぐらいに似合ってるから逆に困ってるのもあるんだけど」
「最高の賛辞と受け取っておくわ。……よいしょっと。うん、この椅子はとても座り心地がいいわね」
「……」
「あら、どうしたのかしらご主人様?」
からかう様な響きを持ちつつ尋ねてくるエスティアにライは反論する。
「なあ、エスティア」
「何かしら」
「火に油を注ぐって言葉知ってるか?」
「ええ、知ってるわ」
「なら俺が言いたいことはわかるよな?」
「お風呂でも入りたいの?だめよ一緒なんて」
「違う!状況を混乱させるんじゃない!」
「混乱なんてさせてないわよ?これは歓迎会と同時にあなたの快気祝いでもあるんだから」
「それでどうしてお前が俺の上に椅子と称して座るんだよ」
「あら、お気に召さなかったかしら?女の子って案外柔らかいのよ?」
「!!!」
先ほどから考えないようにしていたのに、言われて、そして意識してしまっては感じられずにはいられない。確かに柔らかい、背中やお尻しか接触していないのに。あと、感触とともに黒い髪が頬をくすぐっていた。女の子ってこんな感じなんだな。
意識をエスティアに向けるのはよかった。よかったが……後はご想像通りの展開である。
「ほぅ、ライよ。おぬしよほど私たちのことが眼中にないと見える」
「だねー、どういうことなのかなライ?」
「お兄ちゃん……」
「(・・・・・・・)」
「あらあら。どういたしましょうか」
「ライ君ちょーっとやりすぎなんじゃないかなー」
「ライ様……」
「……羨ましいなの」
「あの、その、私も」
「二人とも!待っていただきたい。ここは妾候補の私が」
「ユレイヌ様、いかがいたしましょうか。ライ様を逃げられぬよう影を使いましょうか」
火に油、獅子身中の虫、四面楚歌、いやこの場合十二面楚歌というべきなんだろうか。とりあえず
「皆落ち着こう!」
ライを擁護するものはいなかった。
まあ
第三者から見れば嬉しい悲鳴にも聞こえただろうが。
こんにちは、今日は早めの更新になります。
さて、今回がとりあえずいちゃいちゃ回の一区切りでしょうか。
恋愛方面のテスト期間という感じだったんですがいかがでしたでしょうか?
またこの期間を設けるかもしれませんが……ライ達は渦中に巻き込まれますからね。いつになることやら。
あと12人ヒロイン!が一斉に出てきたのって初めてじゃないかな?と思う回でした。結構人数が多くて全員に喋らせるのが難しかったですがどうでしたか?無理があったかな……感想お待ちしております!
本編の話は一応このくらいで。
次に前話からお知らせしていることです。
一つの共有世界で著者がそれぞれの主人公を作りつくっていく物語。
それが本格稼動しそうです。
といっても五人それぞれの進行スピードはばらばらなんですけどね。とある人は三日に一度、一人は一週間に一度などといっております。私は……どうなんでしょう。こっちもありますし、三日に一度ペースはあまり崩したくないんですよね。メインはこちらでやりたいですし、同時進行になるんでしょうか。
ちなみに一応私も参加させていただいてプロローグと第一話はすでに作ってあります。第二話を製作中で少しだけためて出すつもりです。
ただ、まだほかの方が製作をしていないらしく(一人間違って先に出してしまいましたけどね!)ここには数話でたら紹介させていただくつもりです。
というわけで今回はこのへんで!次回お会いしましょう!




