第百四十話 乙女包囲網 前編
オタノシミクダサイ
突然だが、話を聞いてほしい。
過去から今にかけてとある偉人の言葉がある。それは「過去を見続けるものに未来はない。過去を習い現状を見るものは停滞しかない。過去を習い未来を見るものだけが道を開く」と。
これは過去に囚われ続けている限り、新しいものを作れない。過去の知識を吸収して現状をよくする上辺だけのことをしても、その場限りのもの。過去を習い、未来も考えて動くことこそが進化することと同義ということを示している。
過去を習うとあるが、もちろん良例のことを示している。失敗は成功の元とは言うが、失敗が確定しているものを参考にして得られる考えは少ないだろう。
だから何を言いたいかというと、過去の悪い例はすぐに忘れていい例だけを胸に刻み将来を見据えて動かなければならないということだ。
だから
「だから、この辺で勘弁してもらえませんかね。お嬢様方」
長い長い知識を喋ったライは締めくくりにそういうと、周りからの反応は
「あら、どうしてそうなるのですか?それに元々話を聞いた限りではライ様の失態と思えますが」
「ほ、ほらユレイヌさん。さっきも言ったように過去の悪い例は考えないようにしてですね」
すると横にいる幼馴染の一人、ティアが反論してくる。
「ふーん、過去の悪い例は忘れるか。でもライ、それって自分の都合ばかり考えた自己中心的な意見だよね?」
「いや、そんなことは」
「その言葉を言った偉人の人にも一理はあると思うけど、今の状況で使うってのはどう見ても都合の悪いことに目をそむけてるようにしか見えないよ?」
責めるような言葉を放ちつつもティアはどうしてか、視線をまっすぐと向けてこない。それどころか視線をウロウロとさせて頬も少しだけ赤く上気させている。
「えっと、決して逃げている訳ではなくてね?ただ俺は偉人の言葉を借りて今回はその人の例に習うべきではないかとそう言いたいんだよ。ティア自身も動揺しているし、この先に進んで得するのは誰もいない。それこそ過去を見続けて今を見ていない。将来を見たらどうなるか想像がつくだろう?」
高い確率で俺の破滅が。
心の中で唱えるが言葉では言わない。今言ったら破滅が確定してしまうだろうから。
いくつも渋るライに対して今度は反対側にいるもう一人の幼馴染、エミルが反論する。
「ふむ、確かにライの言うことはもっともだ。偉人の言葉は大切にしなければならないな」
我が意をいたりというように、ライは擁護が来たと感じ推し進めようとする、が
「では私も偉人の言葉に習って速やかに目的地まで行こうとしようではないか。ほれ、さっさとするのだ」
「え、エミル?俺の話を聞いていた?」
「聞いていたぞ?」
「ならどうして向かう方向になるわけ?」
「……いつも頭の回転が速いおぬしはこっち方面になると弱くなるのだな。まあよい。お主がさっきいっていた言葉は過去を見続けて意味はない。将来を見据えろ、過去の失敗例より成功例が重要。そういいたかったのであろう?」
「ああ」
「だが、私は思うのだ。過去を見続けることは悪いことではない。そこで停滞することは悪しきものだが、現在、未来を考える前にはまず過去を見据えるもの。過去をじっくりと見続け現在で思考、行動をし、将来を見て予測する」
黙ってライは話を聞く。
「次に失敗例は確かに得るものは少ないが、それは利益という面から見ればだ。失敗例とは損失を少なくするための情報として成功例と同列の重要な情報だ。失敗は成功の元、それは失敗を繰り返し様々な観点から見て、改良していったものが成功なのだからな」
「……だけどさ、今回のことにそれを当てはめるのは」
「何を言っておる。最初にこの話を言い出したのはお主ではないか。そろそろ観念せい。……一応私も恥ずかしいのだぞ?ユレイヌがどうしてもというから行動を許したが」
「あら、エミル様。この話をしたとき顔を真っ赤にしてうろたえていたお方は誰でしょうか、そのときの下着は恥ずかしい物ではなかったかなどのしんぱ」
「あー!あー!あー!何を言うておる!昔の話ではないか!今はそんな話をする必要はない!」
過去の失敗例は成功のための必要な過程といっていただろうと、ユレイヌは指摘したかったがさすがに話が進まないと考えたのか口を閉じ、ライのほうに視線を向ける。
「ライ様、正直に申し上げますと話がお二方に伝わった時点で諦めていただくしかないかと。確かにライ様のお気持ちもお察しいたしますがお二人……いえ、私も含め三人が了承しているので問題ありません。それに元々今回は何でもライ様が願いを聞くという条件であり拒否権はありませんよ?」
「そうなんですけど!そうなんですけどね!でもなぜあえてここなんですか!」
言い合いをしているうちに到着したところを指差してライは反論した。最後の抵抗として
「今日までフィル達とは色々なところに行きましたよ!お菓子屋、本屋、果物市場にアクセサリーの露店、なぜか訓練場まで!」
「では問題ないのではないでしょうか」
「けど!」
そして、ライは店の名前を言った。
「何で俺がここについてこないといけないのさ!」
店の中を見てみるとそこには展示品なのかいくつかの商品が並んでいた。そこは別に可笑しいところはなく、日常品としても使われていることだろう。
ただ、それが女性が使うという前提条件が入り普通人の目につかない部分のものではあるが。
「下着専門店なんて俺が来る必要がどこにあるんですか!こんなものティア達で決めればいいじゃないですか!」
このときライは必死に店に同行しなくていいように言葉を捜していた。感情論に訴え、どうにかあきらめてくれないかと。
ただ、ここでライは失策をする。
女性、あるいは少女達の目に怪しい光が灯る。今まで恥ずかしいと感じ頬を赤くしつつもどこかまだやはり、躊躇いがあった少女達。しかし
「……へぇ。こんなものねぇ」
突如ティアがライの左腕を組み(捕まえ)笑顔で言ってくる。
すると今度は反対側からエミルが
「ほぉう。なるほど、なるほど。お主は遠まわしに下着などわらわたちには似合わないから何を身に着けても意味はないと。努力のしようが無いと。そういうことか?」
「え、いやそこまでは言ってないけど」
後ろからメイド服を着たユレイヌがライの両肩に手を乗せ。
「ライ様。あなたは全女性を敵にまわしましたわ。本当は途中でほどほどにお助けするつもりではあったのですが……私にも女性として、女としてプライドというものがございます。意地でもご同行していただきます」
「いや、待って!なぜ!?俺はただ正論を言っただけで!」
「「「ライ(様)!」」」
「待ってくれ!う、うわぁ!」
抵抗むなしくライは三人の少女達に体を引っ張られ、押され下着専門店。女性用下着専門店の中へと連れ込まれたのであった。
ちなみに、周りの反応はというとライの人柄を知っていたからか暖かい微笑ましい視線で見送ったということだった。
完
「と、なればどれだけ良かったか。」
ライは呟いた。
あれがすべて嘘で何かの物語のように終わってくれれば良かったのにと。もしくは夢であればと。
正直居心地は最悪であった。何が最悪か、それは周りは女性の下着が展示され色とりどりのものが目に入ってくる。しかもお客はライ達だけではなく数人のお客さんがいる。さすがに外の人みたいに温かい目ではなく羞恥または、怪訝な表情をしていた。でも追い出されない、文句を言われないのはライが有名人であるからだ。
現在問題となる三人はどこにいるかというと、店の奥のほうにいる。
この店は少し変わっていて試着室が別室になっている。これは外から中が見えるということもあり、安心して着替えれないというのことが一点。もう一点は今回のようにライのような男性が来ることもあり、しかし着替えはほかの女性客もいるため別離したほうが、問題がおきにくいというのが一点だ。
(……今までここに来た男性は俺と同じ心境だったんだろうな)
【そうでしょうね、でも貴方と違うのは女性が一人と複数人ってところかしら?】
突如エスティアが話しかけてきた。ティア達がまだ時間がかかると考えたからだろうか。
「いきなりどうしたんだよ」
【いえ、なんだか暇そうだったから話し相手にでもなってあげようかと思って】
エスティアはどこか機嫌がよさそうに言う。そういえばエスティアが自分から心の中で話してくるのは珍しい。あったとしても必要な情報など意味があるときだった。
「話し相手ね……。あ、そうだ。なあわかるかわからないけど、今回なんでティア達に話しがばれたんだ?あの話を知ってるのはキャサリン先生とティア、エミルだけだっただろう?」
【ええそうね。ただ、貴方にとっての誤算は知らない話を聞かれるという危険を考えていなかったというところかしら?】
「誰かが盗み聞きした?」
【よく考えなさい。貴方は先日いきなり兵士が裏切って倒れたのよ?護衛を誰も連れずに野放しにすると思う?マリーがいたとしてもキャサリンは戦闘は苦手だし。護衛がいると考えても普通でしょ?そして、その護衛を派遣する人物と派遣した人物に何か気にかかることがあれば伝えろといえば……あとはわかるわね?】
そこでようやくライは悟る。おそらく派遣したのはユレイヌだ。そして報告したのはラン。ユレイヌのことだからランの報告をエミル達の前で話させた可能性もある。そうすれば今日のあいつ等の行動としぐさ、こんな思い切った行動も頷く事ができる。
【まあ、命をとられる危険は無いんだからがんばりなさいな。男の甲斐性の見せどころよ?】
「……選択を間違ったら命の危険がありそうだけど」
【なら選択を間違わなければいいわね。健闘を祈るわ。そんなことになることは無いと思うけど、行き過ぎたらそうね。影や光に頼るのもいいんじゃないかしら】
そういって、エスティアの声は聞こえなくなった。
「影と光?」
何かを揶揄した言葉に首を捻るが考えはすぐに呼ばれた声に思考をとめる。
「お待たせしました。奥は貸切にしておりますのでどうぞ中に。女性の方々がお待ちです。……がんばってください」
女性の定員さんが奥の部屋へと通そうとしてくれる。
正直どうしても行かないと行けないのだろうかと何度も自問自答してしまうが、さすがにここでとまるわけには行かないだろう。
「……わかりました」
ライはゆっくりと部屋へと続く通路を歩き、部屋へと向かうのであった。
こんばんわ!更新できました!
そして正直に言わせてください!
前編ということで書きましたが……私に下着話をすることができるんでしょうか。うごごごごごごご。
最近の小説では結構下着関係のお話もあることはあり、許容範囲内かもしれません。が、私にとってラッキー以外の話を書くのは初めてであり、どう表現をすればいいのか……書いてて悶絶する思いです!
といっても本当の下着に関するお話は次のお話なんですが結構ね!緊張するんですね!書いてて悶絶するんですよね!
でも、まあ頑張ります。ええ、頑張りますとも。これもいい経験だと思って。
なんだかあまりの悶絶にテンションがおかしくなってしまいましたが、今日はこのぐらいで。
ではまた次回お会いしましょう!




