第百三十八話 孤児院と懐かしの風景
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「よし!準備はできたわね。二人とも準備はいい?」
「はい」
キャサリンの言葉に返事をするのはライ。
そして
「は、はい」
どこか遠慮がちなマリーであった。
「あらあら、なんだか緊張しているようねー。ほらライ君。ちゃんとエスコートしてあげないといけないじゃない」
「それは判ってる……けど」
「けどじゃない!がんばれ男の子!」
楽しそうに笑いながらキャサリンは確認を取らずに屋敷の前から歩きはじめる。でも、二人をおいていかないようにゆっくりと。
それを見て、ライは苦笑しつつ萎縮しているマリーに話しかけた。
「なら行こうか」
「は、はい!よろしくお願いします」
マリーは礼儀正しくお辞儀をして歩き出す。
(んーまだ緊張が解けていないようだなぁ。どういう暮らしをジュアン帝国でしてきたから戸惑ってるんだろうか。今日はどうにかして緊張をほぐさないとな)
そんなことをライは考えながら三人はゆっくりと町のほうに歩き始めるのだった。
ーーーーーーーーーマリーsideーーーーーーーーーーー
ライが色々と考えを巡らせている頃、マリーも何も考えていないというわけではない。それどころか今この町で一番頭を回転させている人物かもしれない。
マリーの内情とすれば
(ど、ど、ど、どうしよう!いきなり一緒に行くってことになったけどなにか変じゃないでしょうか!髪の毛はちゃんと手入れしたし、お風呂にも。お腹がならないように少しだけ食べたし飲み物も飲んだ。あと、それからそれから)
「――――リー?」
(でもどうすればいいのかな。助けてもらったときのお礼は言ったけどちゃんと伝わったんでしょうか。いや、伝わったはず。でもやっぱりいいとは言われたけど何か形になる物を渡したほうが)
「――――い」
(ああ、だけど何を?今からキャサリンさんからある所に行くといわれたから着いてきたけど、何か買うところあるのかな。いやいや、その前にジュリアール軍師に対して何を買えばいいのかな。周りの人は素敵な人が多いし十分高価なものはもらってるだろうし)
「おーい」
とここでようやくマリーは何かが聞こえた気がして顔を上げた。
「……!」
目の前にライの顔があった。
「きゃあ!」
「おわっ!」
驚きすぎて思わず声を上げてしまった。ライも突然で驚いた様子だ。
「ど、ど、ど、どうしたんですか!」
「あー、いや。何回よんでも返事がなかったからどうしたのかなと」
ここまでいわれて、マリーは考えすぎて声が聞こえていなかったことに気がつく。
「ごごごごごごめんなさい!別に無視をしていたわけではなくて!決して、ああ!」
「んー」
ライはマリーの顔を見て苦笑して何かを考えるそぶりを見せる。気分を害したと感じたマリー、もう混乱してこの場から走ろうとした……が実行には移されなかった。
「ほら、二人とも漫才なんてしてないで手伝って頂戴。これからこれを運ぶから。それともライ君はか弱い女性に重いものを持たせるつもりかな?」
そういわれて見える先には事前に頼んでいたのか、すでに袋に詰められた何かが数袋ある。
これにライは反応していた。
「か弱い女性ねー」
「あら、私ほどか弱い女性はいないと思うわよ?」
「……」
「ライ君ちょっとこっちにいらっしゃい?」
いつの間に近寄ったのだろう。ライの傍に現れたキャサリンはライの服を引っ張って連行。少しはなれたところで何かをいわれてギクリとしたと思ったら自分のところに戻ってきた。
「マリー、ナラコレカライコウカ」
ただ棒読みの喋り方になっていた。
「あの、大丈夫ですか?」
「ダイジョウブダ」
「キャサリンさん?」
「心配ないわよ?ちょっと魔法の言葉を唱えただけだからね」
「はぁ」
「それよりも、さすがにライ君だけでは無理だろうから私たちも持つわよ。マリーちゃんはこれをお願いね」
いわれてキャサリンから袋を渡される。
キャサリンも袋を持ち、残りはライが持つと
「じゃあ行きましょうか」
キャサリン主導のもと歩き始めた。
「うぅー、これはちょっと重いよキャサリン先生」
「がんばれ、男の子!」
「さっきも言われたけど、今は言葉の意味が軽すぎる!都合のいいように言ってませんか!」
「男の子!」
「削れっては言ってませんよ!」
「女の子?」
「そこまで変えるんですか!?」
マリーの前で漫才見たいなことをされて、思わず
「くすっ」
思わずマリーは笑ってしまった。
その反応に気がついて二人に見られるが
「クスクス、お二人とも漫才をしてるみたいですね」
「え、いや。そんなつもりは」
否定しようとしたライに向けてキャサリンは
「あらーお似合いに見えるかしら?それは面白いわね。ライ君なんなら夫婦漫才にでもなっちゃう?」
「な!?何を冗談いっているんですか!」
「別に思ったことを言ってるんだけど?」
「冗談も大概にしてくださいよ!」
「クスクス」
また漫才みたいなことをしているのを見てまたマリーは笑ってしまう。とここでようやく気がつく。いつの間にか緊張が解けて普通に話せていたことに。
それから少しだけ落ち着いてもう一度二人を見てみる。
まだ二人は言い合っていたが、昔から人の接触を断っていたマリーには新鮮に見えた。とても懐かしいと同時に新鮮な光景。
そして
「……」
この状況を再び見せてくれたライ・ジュリアール。
マリーの心には小さくも確かなライへの特別な思いがある。ライバルが多いことも、自分が遅く出会い不利なのもなんとなくわかる。だけど
(出会えなかったよりはマシだよね)
そう思いながら今はまだ、そのことを周りには悟らせないようにした。もう少しこの目の前の光景を見ていたいから。しかし、負けないという闘志を同時に燃やしながら。
ーーーーーーーーーライsideーーーーーーーーーー
荷物を持ってからしばらくいてるときにライはマリーを一度だけ見て、少しだけ安心していた。
最初は緊張で心配だったけど何があったのか、最初の緊張は嘘のように無くなり今は笑顔を浮かべていたから。
とそこで
「よし、着いたわね」
そうキャサリンに言われて目の前を見るとそこは、少し古い建物があった。建物の壁は歴史を感じさせ何度も修復した後が見受けられる。建物の裏には少し広い場所があるのか何人かの声が聞こえてきていた。
「どう?あなたにとっては懐かしい?」
キャサリンは問いかけてくるとライは答える。
「ええ、確かに雰囲気は懐かしいですね。そして、この袋の意味もわかりました。でもこんなことをいつもやって?」
「いいえ、ここにくるのは初めてよ。ただねぇ、やっぱり昔からこういうところを見ると放っておけないのよね。傲慢に聞こえるかもしれないけど、この子達がいるということはそれだけ私たち大人に力がないせいの裏返しだと思うから」
「それは」
しかし、ライはそこで言葉をとめる。仮にここでキャサリンのせいではないということは簡単だろう。でもキャサリンはそんな簡単な意味で言ったのではない。キャサリン自身の理念に関係する言葉のはずだ。だからライは
「……まだ遅くは無いから少しずつ変えていきましょう」
責めたり慰めることはせず、ただ単純に将来の解決案を示した。漠然で何の計画も無い一言。
だけどキャサリンにとっては
「……ええ!私たちはもう裏からではなくちゃんと表に立てるぐらいの力を持ったんだもの。昔みたいに無力な私たちではないんだから。よぉーし、なら手始めにここを攻め落としましょうか!」
「いや、攻め落とすって」
「行きましょう二人とも!」
そういってキャサリンは建物の中、エンリデンヌにある孤児院の一つへと入っていくのであった。
その後姿を見届け、マリーのほうを見るとマリー微笑を浮かべ頷いた。
それから二人もまた建物の中に入っていくのだった。
ーーーーーーーーーキャサリンsideーーーーーーーーーーーー
思わず二人を置いてけぼりにして中に入ったキャサリン。
でも、これはしょうがない事なのだ。なぜなら
(……あのライ君があんなことを言うようになるなんてねー。これは彼女たちの気持ちもわからないでもないかな)
簡単に言えば照れた。の一言に尽きる。自分の理念の話をして自分一人が何をしたって簡単に変わらなかったことも自覚し、聞かされたほうもほとんどがお前のせいじゃないと今まで言われてきた。
でもこれからのことを提示してくれる人はいなかった。
責任の否定をしてくれた人は親切心で言ってくれたのだろうが、それはキャサリンに言わせれば思考停止の分類に入る。極端に言えば距離を置く態度、よく言えば同情。お前のせいじゃないという人はキャサリンの気持ちを深く考えず、共有できず、その場で終わらせようとする。または私の心を軽くするだけのために言葉を並べる。
けど、ライは違った。意味を汲み考えを共有し自分と同じ視点に立ってくれたのだ。未来の提示。深く読めば可能性の示唆。ライ自身もできると確約できないから漠然とした提案だった。けれど、それはキャサリンという人物を真剣に考えてくれた結果。
(あぁーどうしようかしら。顔が少し赤いわね~、でもさすがに元教え子なのよね。んー禁断の愛かー。あ、だけどよく考えれば年は少しだけ離れてるけどまだ通用するかしら?)
比較するはティア達だ。
(って、これじゃあどこの恋する乙女よ。あーでも。うーん。どうしよう。これじゃあもうエミルちゃんやティアちゃんをからかうことはできないわねぇ)
けど、少しだけ心はわくわくしていた。それは将来自分の考えを汲み手伝って子供が幸せに暮らせる世界を考えて。
「あ、あのー」
とここで、キャサリンに話しかける相手がいて思考を中断視線を向ける。そこには修道女のような女性が伺うように話しかけてきた。
「こちらにどういった用件でしょうか?」
「あ、ああ。ごめんなさい、私は……そうね。通りすがりの運送屋さんかしら」
「は、はぁ」
「この孤児院に食料を寄付しにきたの」
「え!?で、でもどなたから?それにお金なんて渡せませんよ……」
キャサリンは少しした失敗を悟る。運送屋と聞いて普通に配達、そしてお金を配送賃として要求されると勘違いしたらしい。
苦笑しながらキャサリンは
「あー、大丈夫よ。別にお金以外の料金をもらうから」
「なにを」
「それはあの子達の笑顔かしら。そして、将来の可能性をつなぐ為の希望をね」
ここでようやく修道女は勘違いに気がつき、この女性が寄付者と気がついた。本当はまだ何かよからぬことを考えているのではないかと考え少しだけ警戒したが後ろにいた人物を見て、驚き、声を上げる。
「ジュリアール軍師閣下!?」
修道女はライの姿を見て驚き警戒を吹き飛ばす。
ただその呼ばれたライというと
「どうも、ただいきなりで申し訳ないけど荷物を厨房に置いていいですか?ちょっとさすがに疲れてきて」
「は、はい!?先輩!ちょっときてください!いえ、全員を集合させてください!それからそれから」
「ああー、そんなに物事を大きくしないでくれないかしら。今回は本当に隠れてやっていることだから。だから私たちは通りすがりの運送屋ってことでお願い」
「え、いや。でも」
「ね?」
そこまで言われて修道女は頷く。ただ、先輩と言われたもう一人の修道女にだけは事情を再び話し、了解をもらうことにはなった。
この後ライ達は厨房で料理をつくり、あるいは手伝いながら大量に作り孤児院にいた子供達に料理を振舞った。最近は戦争により物価が高くなり、それだけでなくてもこのような大量に並べられた料理に子供達は喜び、孤児院には明るい声が飛び交うのであった。
それを見てキャサリンはこの光景が国のどこにでも見れるようにがんばろうと再び意思を強くしつつ、もう一つ考えることがあったという。まだ決心はつかないが、がらにもなく参戦しようかなと考え始めていた。
(大人の魅力ってのを見せてあげましょうか。エミルちゃん、ティアちゃん達ぼやぼやしていたら取っていくわよ?)
そう内心考えているらしかった。
これは余談になるが、将来の話、国にある孤児院関係の施設には次のような噂が流れたという。
『とある時期、とある日にち、とある時間、いつかわからず、誰かもわからない。けれどその人はやってくる。沢山のお土産を持ってきて。でもやってくるのは楽しいところ、うれしい所。その人は笑い声に誘われてやってくる。だから皆笑顔でいよう。楽しくいよう。その人がお土産を持ってきてくれるかもしれないから』
この日から少しだけ孤児院の中から聞こえてくる声は暖かなものになったという話があったとか無かったとか。
最初にパソコンが壊れました。いえ、正確には原因不明の現象が起きてアップロードができない状態に。設定資料集があるのですがワードで書いておりまして、それを開こうとしたら強制フリーズ、シャットダウンコンボが起こります。
一応話からサルベージして補完はしようかと考えてました、通信状態も少しだけ悪くなっていて出せませんでした。
ですが、ご安心を。サルベージの必要は無くなり問題は解決できていま更新ができるように。
活動報告ができなかったは申し訳ありませんでした。
ただ、忙しいのは変わらないので後書きはこのぐらいで
また次回お会いしましょう。




