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第百三十六話 思い出の手料理

お楽しみください

 「さてと」


 そういって、ライは今日も朝食後用意された部屋で待機していた。今日で三日目、まだまだ約束は続くのだろう。正直まだ自分も全快していない。あと、問題である西の戦いの情報が入ってこないのだ。動きようがなかった。


 「……だからといってこんなことをしてていいのかなとも思うんだよなぁ」


 確かに戦争や揉め事は起きていないかもしれない。しかし、戦争というものはいきなりできるものではないのだ。必ず準備期間が必要になる。そして、キャサリン主導のもと必要物資の搬入や部隊編成などしないといけない。情報部隊にも伝達、各町への連絡も密に行わなければならないのだ。


 三日前からこうやって町の散策をしている女の子達、けれど彼女らも仕事は与えられている。現在仕事がないのはライだけだろう。それに少しした罪悪感がある。


 「……ああ、もう。見ていられないわね。もっとしゃんとしなさいな」


 すると突如頭上あたりから声がしてきた。


 「でもさ」


 「でももなにもないわ。貴方はね確実にこの先強大な壁にぶち当たるのよ?今までだって決して楽な戦いではなかった。にもかかわらず平常時も働けという人がいたら守護者として私が言ってあげるわ」


 エスティアの言葉に少し驚いてしまう。この白帝の守護者と名乗る少女は感情をむき出しにすることは珍しい。それだけ心配をさせているということだろう。


 「ありがとう、エスティア。まだ完全に納得はできないけど……戦いになったときに今の分まで頑張ればいいんだよな」


 「……まあ、そういうことでいいんじゃないかしら」


 少しだけエスティアの言葉に引っかかりを覚えるも、エスティアはすぐに姿を消す。その代わりに扉のほうから声がしてきた。


 「えっと、ライー!迎えにきたなのー!」


 扉をノックせずに外から呼んでいるのはレーシアだった。


 「わかった。今行くよ」


 そういって、ライは扉のほうに行くとそこにはいつもどおりに格好したレーシアがいた。ただ


 「ラ、ライ?どうしたなの?」


 ただ、いつもどおりと言っても今ではなく数ヶ月前のいつもどおりであった。


 「あ、いや。レーシアのその服装久しぶりに見たからさ」


 そうなのだ、今レーシアが来ている格好は緑を基調とした物。レーシアの出身自体が小さい村だからか使われている材料は上等なものではない。でも、上等ではなくてもレーシアが着ているからか高級かなど気になることはなく、逆に自然と似合いレーシアの為だけに作られたとすらも思えてしまう。風の妖精がいて人の姿をとればこのようになるのではないかと言うぐらいの格好だ。


 ただ、最近は戦闘が多かったためか防御面で不安があったので着る機会はなく長い間見ていなかった。


  「ず、ずっと見られるのはさすがに恥ずかしいなの」


 「わ、悪い。思わずな。でもやっぱりその格好似合ってる。レーシアらしくて」


  するとレーシアは花が咲いたような笑顔を向けて


 「ほ、本当なの!」


 「ああ」


 「嬉しいなの!」


 そのまま、ライに飛びついてきた。それをライは受け止める。褒めて喜んでくれたのはライとしても嬉しい。嬉しいが


 「レーシア、そろそろ行こうか。時間とかもあるからさ」


 やんわりと体を離れさせる。そうしなければこれからの時間を有用に使えられないと思ったからだ。


 少し残念そうにするレーシアだが、すぐに笑顔を取り戻し


 「なら早く行くなの!」


 そういって腕を引っ張ってくる。


 「あれ、でもどこに行くんだ?」

 

 「んーどこでもいいなの」


 「いや、これはそちらの要望を聞くってことだから行動指針を示してもらえないと」


 「うーん……あ!ならやってほしいことがあるの!こっちなの!」


 一度悩んだ様子だったがすぐに何かを思いついたのか再度引っ張ってくるレーシア。次はライも抵抗などせず引っ張られるままについていった。


 そして到着した場所は


 「本当にここでいいのか?」


 「いいなの!」


 外に出るわけではなく、到着した場所は厨房だった。中では朝食が終わったためかコックは休憩中で人は少ない。いるのは昼食のための仕込みをするための数名とメイドさんだけだ。


 「ライの料理を食べたいなの!」


 レーシアの要望はこれだ。


 「いや、でも俺の料理より厨房で作ってくれたほうがおいしいと思うけど」


 「ライのがいいなのー!それに、ライもさっき私に行動指針を示せって言ったなの!男に二言はないなの!……それともいやなの?」


 元気よく言ってきたと思ったら最後に不安そうな瞳で見上げてくるレーシア。


 その様子にライは苦笑しつつうなずく。


 「ああ、わかった。確かに男に二言はないよな。よしなら久しぶりに料理を作ってみようかな」


 そういうとライは厨房の中に入っていきコックに使わせてもらう交渉をしていた。



ーーーーーレーシアーーーーーーー


厨房にやってきて料理をやり始めたライを見て、レーシアは楽しそうに見ていた。


 (この光景もとっても久しぶりなの)


 そういうのも以前なら普通に見れた光景であった。ライと出会ってから約数ヶ月。西と南の町に頻繁に出現した海賊や山賊、盗賊を撃退しながら旅した数ヶ月。あのころならばこの光景は普通だった。正直ライの料理の腕は一流コックと比べれば適わないだろう。一般男性としては上手いだろうが、先ほどライが言ったとおりこの屋敷にいるコックも一流だろうから、味では負けているかもしれない。


 でもレーシアはライの料理が食べたかった。あのときを思い出すように。


 今の生活に不満はない。周りにはたくさんの仲間もできた。最初はライをとられるのではないか、居場所がなくなってしまうのではないかと不安でもあった。けれど、実際に過ごしてみて共に戦って今では不安はなくなった。


 だけど


 (……けど、やっぱりあの頃もよかったなの)


 二人だけで旅した時の時間も掛け替えのない時間だった。そして、ライが作ってくれる料理は今でも味わえる思い出の味、思い出の料理なのだ。


 「よーしなら、何を作ろうかな」


 厨房を使う許可をもらったのか、食材を並べたライは腕まくりをしつつレーシアのほうを向いてきた。


 「レーシアは何を食べたい?」


 その問いに、正直ライが作ったものならば何でもいいと答えそうになるがライは困るだろうと思い


 「パンが食べたいなの!」


 「え?パン?」


 「そうなの!あの昔食べた色々はさんだパン!」


 レーシアは思いだしながら答える。


 そして、それで伝わったのかライは頷いた。


 「了解、なら久しぶりに作るか」


 するとライは今まで用意していた材料のいくつかを戻し、代わりに調味料や野菜、鶏肉を用意し始めて目の前で食べやすいように包丁で切り始めた。


 それをレーシアは楽しそうに眺める。


 そんな様子をライは時々こちらを見て苦笑しつつ、作ってくれていた。


 「さてと、材料はこれぐらいでいいかな」


 しばらくして、ライの目の前にはたくさんの切られた食材が並べられいてた。


 「なら、あの時ってことはこのまま俺が作ってもいいんだよな?」


 「あ、最初はそうしてほしいなの。でも途中から私もやるなの!」


 「そっか、なら最初は作るぞ」


 ライはスライスされたパンを手に取るとそこに鶏肉、野菜を乗せていきその上に様々な調味料で味を調えてもう一枚スライスされたパンを手にとって上に乗せた。


 誰がどうみてもサンドイッチだ。


 でもただのサンドイッチではない。


 思い出のサンドイッチだった。


 「どんどん作っていくぞ」


 「わかったなの!」


 後でと言いつつ、二つ目からは自分も参加した。一つ目を作るのを見ていたら自分も一緒に作りたいと思ったからだ。


 それから四半刻(三十分)目の前には大量のサンドイッチが並べられていた。二人では食べられないだろう。


 「あ、あはは。なんだか作りすぎたな」


 「そ、そうなの。でもが、頑張って食べれば大丈夫だと思う……なの」


 正直レーシアとしては無理だと思った。よく考えてほしい、男一人、女一人、食べ盛りの育ち盛りだったとしても、それを果たして約十人前を食べられるだろうか。はっきり言おう無理だ。


 戦争がおき食料の無駄は省かなければならないのに、ライと一緒に作っていくと言う行為が楽しくてやめる機会を見失っていた。反省しなければならないだろう。


 「うぅー」


 少しだけ反省していると頭の上に軽く何か乗せられる。なんだろうと視線を上げるとそれはライの手であった。


 「そう考え込むなって。確かに作りすぎたけどさ、これをみんなに配っていけば無駄にはならないよ。厨房のコックさんやメイドさんに渡せば軽食として食べてもらえるだろうし」

 

 落ち込んでいる自分を気遣って励ましてくれるライ。このことに自分の心は少し軽くなり、暖かいものが染み込んでいくように広がっていく。


 この暖かいものがなんなのか、レーシアは薄々気がついている。


 でも今は


 「ならライ!早速いくなの!そして私たちも食べるなの!」


 元気よくいって、私は皿を持ってティア達、メイドさん、コックの人に配っていった。



 実は最終的にティア達に持っていったときに流れで一緒に食べることになったけど、それはそれで楽しかった。ライのこの料理は思い出の料理、思い出の味。その思いは決して変わらない。でも、今は仲間にも味わってほしいとも思う。


 この先いつか、この日の思い出の味と思えるように、自分が感じている感情が少しでも伝わるように。


 と、そこで少しだけ思考をとめて


 (……でも、気持ちは全部伝わるのはまずいなの!ほかの人にもある意味負けられない戦いはあるなの!)


 心の中である戦いにおける闘志を燃やしつつ、穏やかな食事に穏やかな心で笑顔を浮かべるレーシアであった。

こんばんわ。そして、お久しぶりです!久しぶりの投稿になります。

リアルで結構忙しいことになっており更新が一週間とまってしまいました。申しわけない。ただ、活動報告でも書いていたようにまだまだ忙しい日々は続きますが、一段落したのは間違いないのでいつもどおりの更新速度に戻そうと思います。お楽しみに!

さて、では今回のお話ですが今回から一人ずつにしようかなと考えました。といいますもの、二人にするとどうしても量が多くなってしまい、無理やり終わらせてしまいそうになるからです。

すでに出た女の子達からは怒られそうですが……ごめん!

ちょくちょく出すかもしれないのでご勘弁を。

あ、でも実はこの先ある事情で二人を一気に出す場合もあります。話の展開的にです。

では今日はこの辺でまた次回お会いしましょう!

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