第百三十三話 やり取りと少女達の日常へ
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ライが目覚めたことをフィルたち交渉組みが知ったのは、夜になってからだ。
最初はエミルに話がいき、伝えたランがそのまま陰に潜みつつティア達にも伝えるつもりだったのをエミルがとめさせた。いくら何でもないだろうが、ライに会うためと妥協されてはこの先に影響を及ぼしかねない。
後で責められるとも考えたが、エミル自身もそれでは『平等』ではないと感じ、ティア達も夜に会うことになった。
その間のことを色々と追記していくと、最初に騒ぎがあったのはライの護衛をしていた、四人の少女達。
特にこの中で一番のリアクションをしていたのはヴェトリアであった。元々感情豊かであるヴェトリア故か、泣いて泣いて一刻も泣き止むのにかかってしまったのだ。その間、光景を見守っていたのはサチだ。サチはここの部屋にいる人物では最年長になるためか、場を落ち着かせる立場に回りやんわりとヴェトリアをあやしている。
ライが倒れる原因の一端であるマリーはやはり責任を感じてか、ヴェトリアが落ち着いた後頭をこれでもかという感じで下げる。最終的にベッドの反発力がどれくらいなのかに挑戦しているのではないかと、思えるぐらいに。
だけどライにとっても、これは自分で決めたことであり負担に思っていないと伝えると感極まったように涙を目の端にためつつも、花の蕾が咲くように笑みを浮かべてくれた。
そして、最後にランだがこれがライにとって一番意外であった。
本来、ランは事務口調で任務関係に伝わること意外あまり会話をしていない。決して嫌っているというわけではない。しかし、ライ自身はどのくらいの距離を持てているのか自信がないのだ。だから、ランが無言で裾を掴み、言葉が無くとも視線で伝えてくれたおかげでそれほど心配してくれたのが痛いほど伝わって来る。
それに対して、ライもごめんと言いつつあまり動かない体を動かしランの頭に手を載せて謝罪する。すると、向けられていた視線はすぐに反らされ後ろを向くと、いつもの口調で「お、起きたことをお知らせしてきます!」といって、影に沈んでいってしまった。一瞬だけ耳が赤くなっていたからおそらく照れたのかなと思いつつ、そんな仕草に自然と笑みが浮かび胸の辺りが暖かくなる。
四人とそんなやり取りをした後、次にやってきた人物はラッシュだ。話を聞くと今ジュアン帝国と停戦協定に対する会議をしていると言われ、リエル達は後でやってくるということを伝えてくれた。
ただ、ラッシュと少しだけ話した後
「なあ、ライ。これからどうするんだ?」
「ああ、軍事指針ならまだ起きたばかりだからなんとも」
「いいや、ちげえよ。お前はこの後リエル達に対して何かしらの対策は持ってるのか?」
「え、なにその不穏な響き」
「あのな、確かに今回お前のお陰で敵の宝玉持ちは助かった。戦争にもひとまず勝利した。けどな、お前自分のことをあんまり考えていなかっただろ?」
「……ラッシュそのことを今ここで」
「だめだ、確かにそこにいるお嬢ちゃんが宝玉持ちだったんだろ?けれどこの話はそれでもおまえ自身に聞いてもらう必要がある。」
「……」
「エスティアから聞いたが、お前が生きて帰ることを目標としたのは聞いた。でもな、やっぱり俺にはどこか無理しようとするように見えるんだよ。そしてそのことは今いない奴らほど気がついている。この場を見る限りここは落ち着いたとしても、古い付き合いのあるあいつ等は一筋縄ではいかねえぞ?」
ラッシュの話を聞いて、ライは一度だけ考え込むがすぐに返事を返す。
「……確かに、ラッシュの言うこともそうなんだけどさ。おそらく今言われてもなるようになるしかないよ」
「おいおい、それは少し酷くないか?」
「勘違いしてほしくないけど、決して適当にあしらうとかじゃない。ただ、自分に非があればすべて受け入れるってことだよ。無理に押さえつける、口でごまかすほうが今に限ってはもっともしてはいけないって判ったから」
そういって、ヴァトリアやマリー、サチのほうに視線を向けるとラッシュは苦笑して頭を右手で掻きながら
「はっ、これは悪かったな。俺が心配しなくてもお前さんはしっかりと考えていたようだ。この分なら大丈夫か」
「心配をありがとう、ラッシュ」
「そう思うなら倒れないこった。気がついてるか?お前いつも大きな戦いがあったら高い確率で倒れてるんだ。そして、その分だけ心配をかけてることを考えろ」
「ああ」
「ならな、せいぜいがんばれよ」
そういって、手を振りながらラッシュは持ち場へと帰っていった。
ただ、このときライはラッシュにかっこよく?言ったにも関わらず、夜になりエミル達が部屋に訪れ、少したった時間帯になって自信を喪失し始めていた。
エミル達が入ってきたときに最初にエミル、レーシア、リエルが駆け寄ってきた。さすがに抱きつきはしなかったみたいだ。人が多かったからか、ライとしても恥ずかしいのでよかったような残念だったような。
次に、後ろからはキャサリン、フィル、エミル、ユレイヌがやってきた。ランは姿は見えないが影の中に待機しているのだろう。
「ライ君もう大丈夫なの?」
「何とか、そちらも指揮お疲れ様でした」
「あらあら、その言葉を聴けてよかったわ。後で楽しみが増えたわね」
キャサリンの言葉に首を傾げつつも、すぐにユレイヌが話しかけてくる。
「ライ様、どうやら体は動かないものの気分的にはよろしいようで」
「すみません、ご心配をおかけして」
「そう思うなら、次からはもっと自分のお体をご自愛くださいませ」
「……できるだけがんばります」
ユレイヌが満足したのか一歩だけ後ろに下がると次は、フィルが話しかけてくる。ただ、表情は怒っているような、安堵かわからない表情だ。
「……ごめん」
まず最初にライが謝るとフィルはそっぽ向いて頬を膨らませながら
「許しません。確かにお兄ちゃんは私との約束を守ってくれました。でも、やっぱりいつもいつも無理をしている姿を見て、許せなくなりました。まさか、倒れることが当たり前だと思っているのではないですか?」
「それは無いけど」
「いいえ、絶対にそう思ってるはずです。ですから、私が考えを正します。いいえ、強制で正させます。覚悟してくださいね!」
怒りながら後ろを向いてしまうフィル。その様子にどうするればいいのか判らず、困っていると最後にフィルが
「……それでも、ちゃんと生きて帰ってくれた所だけは嬉しいです。お帰りなさいお兄ちゃん」
それだけを言って、フィルは後ろに歩いていった。
その後からは、最後にエミルがやってくる。
「ほうほう、ライ。お主は幸せ者だのー。こんなにも見目麗しい少女や女性から心配されて。これを隣国が見れば、どこかの一国の後宮と思われても否定はできまい」
なぜか、エミルは心配したというのではなくそんなことを言ってくる。少し予想とは違う返答に、ライは驚くがなんとなく意地悪をしたくなり言い返す。
「確かにね、こんなに心配してくれる人が多いのはとても嬉しかったかな。俺にはもったいないけど。って、今思ったけどエミルの言うことどおりなら、後宮に、その、エミルも入ってることになるけどいいの?」
この言葉には今度は、エミルが驚く番であった。まさか、このような返しがやってくるとは思っていなかったようだ。しかも、ダメージ的にはエミルのほうが負ってしまっている。
エミルは、恥ずかしさを隠そうとしつつ
「ゴ、ゴホン!ま、まあ、話はそれぐらいにして本題に入ろうか」
「エミル様、お顔が真っ赤ですよ。それでは締まりません」
「う、うるさいユレイヌ!と、とにかくだ!これからのことを話すぞ!ライもいいな!」
エミルの言葉に依存は無いライは頷く。
一応、ここには敵国の所属であるマリーもいたが、ライとエミルなどの判断で同席が許されていた。ただ、エミル達にとっては半分は無害ということ、半分はある意味、敵になる確率が高いという意味で。
まず最初に説明されたのはジュアン帝国とのやり取りである。ジュアン帝国とは国盾の砦は友好関係を気づくのと帰国に関しての最低限の物資を提供することを約束したこと。ほかにはフェレス王国とは別に、国盾の砦を優遇してもらうこと。これから、有志によるものでジュアン帝国部隊に関する義勇軍を結成したことを伝えた。
この話にはライも納得する。義勇軍の話は少しだけ意外だったものの、これらの展開、ドリアド王国とことを考えるのなら有利には違いない。何と言っても、同盟国が裏切るとも取られ、ドリアドが義勇軍を壊滅させようものなら敵対関係が築かれるかもしれないのだ。
それと、ここでエミルはこれからのことも方針と決めていたようだ。
実はライが眠っていたとき間に合わないだろうと考えられていた援軍である、エンリデンヌのドール伯が到着していたのだ。
戦争に参加できなかったと申し訳なさそうにしていたが、エミルがこれからエンリデンヌに部隊を駐留することを要請するとすぐに了承してくれたらしい。
よって、数日後にエンリデンヌに向かうことになるそうだ。
ただ、そのときにドリアドと王国軍がどうなったかの情報が知れればよかったが叶わなかった。ドール伯が言うには情報が混乱しており正確な情報がやってきていないらしい。さらに、ジュアン帝国のほうに力を入れていたために余裕が無かったという。
とまあ、そういう事情からライ達はエンリデンヌに向かうことが決定したのであった。
そこで
「……さてと、ねえエミル。そろそろいいよね?」
「ああ、伝えることは伝えた。なあ、リエルそなたも十分に伝えられたと思うであろう?」
「思う」
「フィル、そなたも異論はもちろん無かろう?」
「ここまできたらしょうがないです。……お兄ちゃんのばか」
フィルは最後に呟くように言ってくる。一体何が起きているのか。何の共通意識を持っているのかわからず、降参するようにライはエミルに聞いた。
「一体何なんだよ。はっきり言ってくれ」
「ほほう、なら言わせてもらおう。ライ。お主、フィルとなにやら面白い約束をしたらしいな?なにやら何でもひとつ聞くとか何とか」
ギクリと背中から冷たい汗を流しならが笑顔を引きつらせるライ。フィルとリエルには約束した思えはある。
「っていうか、どうしてエミル達が知ってるのさ!」
「なに、親切な少女が教えてくれてな。ただ、ライよ。私は、いやこの部屋にいるものは全員お主を心配し、戦場ではお主の援護をするために尽力した。そうすれば当然同じ褒章を平等に与えても問題は無いと思わないか?それとも、フィルとリエルには褒美を与えて、われわれには無しとでもいうか?のう?」
「うっ、そんなことは言わないけど……」
「なら問題ないな。なに、心配することは無い。今の情勢ではあまり時間は無い、そしてお主も病み上がりの身。無理なことはさせぬ。なに、ここ最近われらは働きづめであった。よって、兵士達にも休憩を与えなければならない。その間ライお主は我らに付き合ってもらおうと思ってな」
「ライ、いいよね?もちろん」
「私と、ライは約束した。だから、約束は守る」
「隠れて約束してたなんて許さないなの!不平等反対なのー!」
ティアとリエル、レーシアが追い討ちのように言ってくる。
そしてトドメとして
「ライ君、これで断るなんて男として最低よ?甲斐性を見せてあげなさいな」
「ライ様、まさか拒否はなされませんよね?」
「ライ、もちろん私も付き合ってもらうわよ。人間という分類ではないけど時には人として振舞って気分を味わうのもいいでしょう」
キャサリン、ユレイヌ、そしてまさかのエスティアまであちらについてしまう。
「エスティア、お前までなにやってるんだよ」
「あら、別にいいじゃない。私も時々そんな気分になるわよ。これまで見返りを求めてこなかったのだから少しぐらいの我侭ぐらいいいでしょ?」
ここまで言われて、沢山の期待と羨望のまなざしをしばらく受け、ライは観念したように頷く。
「判ったよ」
一言そういうと、周りは賑やかになり喜びの声が上がる。
そして同時に、ライと少女達は少しの間戦場から離れ、久しぶりとなる日常へと戻ることになる。それは普通なら何も感じなくても手に入るもの。でもここにいる者達にとっては、現状では望まなければ手に入らないもの。
その舞台はエンリデンヌ。
ちなみに、この後ラッシュが話を聞いて一言
「やっぱり、そんな感じになったか。まあがんばれよ」
そう呟いていたのであった。
こんばんわ、四日間開いてしまって申し訳ない。
何とか時間を作って更新できました。今とても忙しく頭の中で物語が出てこなくなるのではと怖い思いをしつつも、まだ大丈夫なようで安心しております。
さて、物語のほうでは最後のほうに書きましたが次からは戦略、戦争、などから離れ恋愛編とも言うのでしょうか、そちらのほうに挑戦と試験もかねて書いていこうかと思います。全員を一挙に登場させるか、それとも個別、集団に分けて登場させるかは考え中です。それは数日後の私に任せることにします。
ということで、今回はこの辺で。では次回お会いしましょう!
あ、それと三日間以内には更新するつもりですが過ぎた場合、過ぎそうな場合は活動報告のほうに書きますので確認お願いします。……とある友人よ!ちゃんと書いたからなー!
では次こそ次回会いましょうそれでは!




