第百三十二話 光の少女、そして目覚め
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エミル達が会談をしている頃、ライは今だ目を覚ましていなかった。そう、文字通り目を覚ましていないのだ。
意識も完全に覚醒しているわけではないが、深層意識では体を起こしている。
ライが体を起こし目の前を見れば、そこは何度か見た光景、各宝玉が埋め込まれている壁がある。今回マリーからの譲渡もしたため
「この光景を見慣れたことがいいことか、悪いことかと言えば悪いことなんだろうなぁ」
ここに来る事すなわち、ライが力を消耗しやってくるという方式が確立しているような気がするからだ。実際にそれほどのことをしなければ助からなかったから後悔はない。ティアやリエル達も力を使ったようだけど責めるつもりはない。
体を起こした後、少し伸びをしてから壁のほうに向かっていく。以前から壁に近寄ると勝手に開き奥に通してくれるのだ。扉の先にはエスティアがいる広間へと通じている。
そして今回も歩いていくと扉は開き中へと通してくれた。
「…………なにこれ」
だが、目の前に広がる光景は以前見た光景とは少し違っていたのだ。
神々しく、綺麗な印象があった広間が今では乱雑に散らかっている。散らかっていると言っても調度品が倒れていると言うわけではなく、砂が巻き起こり、何かが燃えたような後があったり、本が散らかっている程度で深刻そうには見えないが。
「あ、ああ。ライようやく意識が戻ったのね」
すると、ライの近くからエスティアの声がしてきた。そちらを見るとこれまた出会ってから見慣れた格好のエスティアがいた。ただ、いつもと違うとしたら表情が疲れきっているぐらいだろうか。
「あーうん。そうだけど、それよりもこの惨状はいったい何なのさ。もしかして……力の使いすぎで負担がかかったとか?」
「安心しなさい。そういうことではないから。もしあなたの言うことどおりだったら壁にヒビが入ったりもっと酷い事になっているわ」
「じゃあ何なんだよ」
「ちょっとお転婆な訪問者がいてね、そろそろ意識を取り戻すだろうからあなたに会いたいと言う子がいたのよ」
「え、ほかの人がここに来る事ができるわけ?」
「普通の人間ではできないでしょうね。緊急時でもやりたくない方法ね。今回の訪問者は光帝の宝玉の守護者って感じかしら」
「そうですよ、そうなんですよ、そうなんですー!」
「わぁ!」
突如隣から元気な声がして思わず驚いてしまうライ。声がしたほうを向いてみるとそこには女の子がいた。
白いぶかぶかの帽子を被り、服はエスティアと少し似ている白いドレス。各所にフリルがあり本来の用途は可愛いらしさを出そうと思ったのだろう。露出している肌もミルクのように白い色で触れば高級絨毯顔負けだろうなと想像はつく。髪は秋を想像させるブラウン色だ。ただ……
「何でお面?」
そうなのだ。隣にいる女の子は胸のふくらみがあることから女の子と判別できたものの顔を見ることはできない。流行とは思えないし完全に警戒されているからとも考えるが、すぐに女の子から否定された。
「あぁーじつわそこにいるエスティアとの約束で顔を見せることはできないんですー」
「そうなんだ」
「こら、嘘言わないで頂戴。最初からお面で顔を隠していたでしょ。確かにここに呼んだのは例外で認めたわけだけど、あまり変なことを言うと追い出すわよ」
「あーごめんですよー!本当はまだ見せることができないだけですー力の譲渡は完璧に行われていないので」
「え、そうなの?」
「そうですよー、私の所有者サチっちに今回力を示せと指示したのは知ってますよねー?よって、前条件としては完全に力を解放していなかったことになるので、この白帝の宝玉にも力を完全に譲渡していなかったですよー。まあ、だからこそライは光を使って大きなことはせず小さい範囲で隠れるように移動していたですよねー?」
「大体はあってるけど、でもそれが顔を見せることとどう繋がるのかな」
「力を解放させる方法は私が力を譲渡すると決めればいいんですよー、でも、サチっちの力を解放することはあなたがそのまま私の所有者ということになるんですね。だから、どういう人なのか見にきたんでうすけど、うん。合格ですよー」
「は、はぁ」
光帝の守護者である少女?はライの体をベタベタと触ってきて、最終的にもう一度うなずく。
「よし、これでいいですよー。エスティアー、私はそろそろ戻るですよー。サチっちとのことも気にしないといけないので、後は説明よろしくですよー」
何がいいのか、説明とは何なのか、というか結局お面ははずさないのか。
色々なことがわからずじまいだが、いいたいことだけを言ったらまばゆい光が少女を照らし、次の瞬間姿を消した。おそらく元の場所に帰ったのかと思われる。
「……いや、というか名前すらも言わずにさっさと帰るってどういうことだよ」
ため息をつきながら呟くと、隣にいるエスティアも一緒にため息をつく。
「はぁ、まったく本当にあの子は自分勝手というか自由奔放というか」
「初めて会ったときもあんな感じだったの?」
「うーん、実はわからないのよね」
「わからない?」
「あの子お面をつけていたでしょ?私が始めて会ったときもお面を着けていたのだけど、それだと相手の表情がわからないから、正確な感情がわからなかったの。それに……」
「それに?」
「……いいえ、なんでもないわ」
「え、それはないよ。そこまで言っておいて」
「あら、ごめんなさい。けど、あなたは今別のことを気にするべきだと思うわよ」
「完全に話をはぐらかされてるけど」
「まあ、あの子については追々分かっていくわよ。それよりも、ライ今の精神状態的にはどう?」
ライはエスティアが言いたいことをすぐに悟り目を閉じてみる。エスティアも様子を見るように口は挟まなかったが、しばらくして目を開けるライは先ほどと変わらない状態で返事を返す。
「……特には変化はない。っていいたいけど」
「けど?」
「何だろう、はっきりと言えないけどなんだか違和感があるんだ。こう、硬い雰囲気というか、んー表現しにくいけど」
「日常生活には支障をきたしそう?あと起きた後彼女たちに危害が加えられる危険性はある?」
「いや、それはないと思う。攻撃的な感情ではないと思うから」
エスティアはその言葉を聴いて考え込む。現在のライは光帝の宝玉による影響を受けて明るい考え方をしてしまう。なので今の返事も観測的希望になる可能性もあった。本来守るべきものはライ自身だけだとエスティアは考えている。ただ、そのライという人格は一人だけではなく周りにいる仲間のおかげで形成されているとも考えていたのだ。もしここで、ライが仲間を傷つけてしまったら精神に異常をきたす危険性もある。
ならば、自分も希望的観測でも信じる方向で。ただ、本当に危険になれば介入すればいいだろう。
「……そう、なら問題ないわね」
「ああ。……そうだ、そういえば表のことはどうなってる?何かわからないか」
「現実の世界のことね。時々話を聞いていたからわかる事ぐらいは話してあげるわよ」
そうして、エスティアは説明を始めた。あの後戦闘を停止、停戦したこと。現在お互いの代表が話し合いを持ち、これからのことを話し合っていること。それぞれが戦後処理と共に次の準備をしていること等々。
話を聞いていったライは頷きながら返事を返す。
「そっか。なら問題はなさそうだね」
「そうね、どうにか上手くやってくれるでしょう。だけどあなたにとっての問題は起きた後よ?」
「起きた後って、心配はさせてるだろうけど一日ぐらいで大げさな」
「ああ、そうだったわね。その説明が抜けていたわ。ライ、今あなたは一日といったけど、今はもう二日目よ。この調子だと三日目に突入しそうだけど」
「え、そんなに寝てるんだ」
「護衛にはラン、ヴェトリア、サチがいるけど、一日目は大変だったのよ?あまりに見ていられなかったから、私が大丈夫だと伝えていたけど」
「そっか、それは、その、ありがとう」
ライはとりあえずお礼を言う。エスティアの疲れたような表情を見れば、どの程度大変だったのかわかるのだ。
「でもそれなら早く目を覚まさないと」
「ええ、そうしなさい。意識を休ませればそれだけ早く目を覚ますことはできるわ。……一応すぐにでも目を覚まさせて上げられるけど、その場合は絶対安静になるわ。一日はベッドで寝たきり。どうする?」
エスティアは二つの選択肢を与えた。完全な状態で目を覚ますか、不完全な完治で目を覚ますかだ。前者はすぐにでも行動ができるのだろう。ただ、後者の場合は一日たっても回復しない可能性があるのだろう。効率で考えればすぐに動けるように今は寝ていたほうがいい。
だがライは即答した。
「すぐに目を覚まそうと思う」
「あらいいの?私が無事だと伝えているからすぐに起きる必要はないのよ?」
「それでも、早く起きて状況は伝えられるだろ?」
「確かにそうだけど、少し意外。迷惑をかけないように起きないと思っていたのに」
「まあ、不完全のまま起きればそれだけ迷惑をかけるだろうけど人の心って早く解した方がいいでしょ?」
「ああ、そういうことね。納得したわ」
「理解が早くて助かるよ。なら早速頼むよ」
「しょうがないわね。私もフィルを含めたほかの子を安心させてあげたいし異論ないわ」
「……そこで、フィルを名指しするってよほどあの時の事がトラウマになってる?」
「……ほっときなさい。逆に聞くけどあなたはなんとも思わなかった訳?」
「……ごめんなさい」
「それでいいのよ。さあ、無駄話はやめて目を閉じる。私はあっちの騒ぎが静まってから姿を現すからそれまでは色々とがんばりなさい」
「ありがと、じゃあまたあっちで」
「ええ」
そういって、エスティアは意識を集中させるとライの姿は光の中に消えていく。数秒後にはエスティア一人になり、いつまでもライが消えた場所を見つめていた。
「がんばりなさい」
それは果たして少女たちのことを言ったのか、それとも別の何かのことを言ったのか。エスティアにしかわからなかった。でもその瞳は何かを思わせる色をしていたのだった。
とある砦内の一室。
現在この部屋では四人の少女がそれぞれの場所で立ったり、座ったりしていた。ちなみに、この部屋は本来王族であるエミルのために作られた部屋だ。砦には急造のために、二つの部屋しか作れなかった。一つは作戦会議室。もう一つはこの部屋だ。エミルが意識がないライを暗殺から守るためにとここに収容したのである。しかもこの部屋を四人もの護衛がいるのだ。守りはほぼ完璧であった。
それぞれの少女たちは様々な感情を含めたような表情をしている。あるものは地面を、壁を、自分の武器を、宝玉を見たり弄ったりしているが最終的には視線は一箇所に集まる。
ライが寝ているベッドだ。
部屋にいるのは、ラン、サチ、ヴェトリア、マリーがいた。ティア達はまだ会談から帰ってきておらず、護衛という形で部屋にいる。
あと、マリーは本来敵最大戦力になるがエミルが危険はないと判断し入室を許可していた。もちろんマリー自身も危害を加えるつもりは無くただただ、命の恩人を見つめるだけだ。
とそんな時、マリーの視線の先で何か一瞬変化があったような気がした。
眉が少しだけ動いたような気がしたのだ。驚き注意深く見ていると、いつの間にか周りにはほかの少女が集まっている。どうやらちょうど全員がライのほうを向いていたようだ。
しばらく四人の視線を受けているベッドの住人は、しばらくして再び眉を動かし、次には瞳をゆっくりと開けた。
ライが最初に見た光景は白い天井……ではなく、少女たちの顔だった。四人の視線が突き刺さることを感じつつ、ライは笑顔を浮かべる。
「えっと、ただいま?」
おずおずというライに対して、すぐに完成があがり、ヴェトリアはお腹辺りに抱きつき、ランも遠慮がちに手の辺りを握ってきており、マリーは様々な感情が入り乱れつつも、安堵と嬉しさが混じった笑顔を向け、サチは一番後ろでよかったと微笑んでいた。
ライ・ジュリアールは二日後の時を経てついに目覚めるのであった。
こんばんわ、投稿しておきます!
頭が回っていない状態で書きましたが、結構スムーズにかけました。ライがついに目覚めましたよ!まあ、実際は目を覚ましても色々とあるんですが、それはまた次のお話ですねー。
今日は少し忙しいのでこのくらいで。また次回お会いしましょう!




