第百三十話 会談Ⅰ
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ライとリエル、数人の騎士そして氷の巫女であるマリーが救助されたてから二日がたった。
マリーが暴走状態で氷柱を作った影響はまだ消えておらず辺りを白景色にしてしまっている。幸い侵食能力と氷柱を支えていた氷は解けてしまったので移動運搬については問題なくできそうだが、道中に凍ってしまったジュアン帝国軍の物資と食料について、完全に無事ということはなかった。
そうなってはジュアン帝国軍は戦争を続けることは不可能になる。それもそのはず、帝国の目標はここではないのだ。最終的目標は王都、でももうそこまでもつ食料も危ぶまれ国盾の砦と戦うなどできなかった。
暴走に対しての混乱は二日の間に落ち着かせ現在は国盾の砦は砦内で待機、ジュアン帝国は少し離れた場所に天幕を展開している。
ちなみに、天幕や食料、薬品など必要物資は国盾の砦が提供している。これは、キャサリンとフィルが指示しているものだが、要求したのはエミルである。兵士の中には数人敵であったものになぜ手を差し伸べるのかと反論があった。しかし、これをエミルは
「戦争と戦場は命の覚悟を持ったもの達が立つ場。しかしそれが終わりなおかつ、命を必要以上に奪うものは兵士や人にあらず。ただの人殺しとなる」
と言い反論した兵士たちを黙らせた。ただ、ここで終わらせては不満の火種になってしまう。彼らの戦友が殺されてしまったのかもしれない。相手に殺したものがいるかもしれないのは心穏やかではないだろう。
「ただ、全てを許せとはいっておらぬ。知っている者が相手に殺されたものもいるだろう。私も知り合いが死してしまったら冷静ではいられないかもしれない。でもだからといって、相手を殺してしまっては今度は殺してしまった相手の知り合いから恨まれる。だから許せとは言えない。恨むなとも言えないだろう。だが戦意を失ったものまで殺そうとするのは思いとどまってほしい。代わりに約束しよう。これから行われる会談で敵が槍を剣を持ち向かってくる意思あらば、容赦なく私自身も戦うことを」
王女であるエミルが宣言したことにより兵士たちは一応納得して後方に帰っていった。
後に近くにいたユレイヌの話では王族としての約束に危うい確約を混ぜたが、将来を見れば聡明であったと。
以上のことにより、二つの軍は不満不平はあったとしてもとりあえず争いまで発展していなかった。そして、その均衡が崩れるかどうかは両軍代表者による会談によって決まるのであった。
ーーーーーーーー砦、ジュアン帝国軍設営地中間部、待機室ーーーーーー
現在ここには二つの天幕と、もう少し先に大きな大天幕が用意されていた。
それぞれの用途は、ジュアン帝国軍の幕、国盾の砦の幕、そして会談用の幕だ。
国盾の砦の待機室では今数人がユレイヌが入れた紅茶を飲みつつ会話をしていた。
「ふむ、まだあやつは目を覚まさぬか……」
エミルが呟き俯きながら手に持つ紅茶のカップに目線を落とす。
「エスティアが時々状況を教えてくれるから大丈夫ではあるみたい。後、ライの護衛にはランとヴェトリアさんがついてくれてる」
ティアが説明すると補足するようにフィルが説明した。
「ちなみにここには宝玉を持つ人たちに集まってもらってますが、例外としてラッシュさんとサチさんには砦のほうで待機してもらってます」
「……うむ、そうだろうな。ラッシュは軍の統括、無いとは思うがジュアンから攻撃された場合の牽制として待機してもらわないといけないだろう。サチ殿は、所属国が違うからな」
「エミル王女様の言うとおりね。さすがにアスティールの騎士を会見の場に置くのはまずいわ。第三者の立会人がいたほうがいいけど、勝手にするのは場所が場所だけに無理でしょ」
「さすがにキャサリン先生が言うようにサチさんは無理なので今は自由にしてもらってます」
フィルがそう締めくくり、一息つこうと紅茶を一口飲んで落ち着いていた。とここで話が一区切りついたのかと見たのか、レーシアが質問する。
「あの、フィル。聞きたいことがあるなの」
「どうしましたか?」
「私もいないとだめなの?」
レーシアとしては、ライのそばに居たいのが本音だったのだ。ただ、それはレーシアだけではなくリエルもだったようで頷きながら便乗してきた。
「私も、ライのそばに行きたい。それにフィルとライがした、約束でちゃんと私とも、起きたら有効か確認したい」
本心、本音を告げたリエルの言葉。嘘偽りは決して無い。そう、何も無い。
だからこそ、フィルはリエルの言葉を聴いて顔を引きつらせ、他の女性陣は聞き捨てならない言葉を聴き、視線がフィルに集中する。
最初に言葉を発したのはエミルであった。
「ほ、ほほーう。なんと、何かライとフィル、そなたは約束をしたのだと。はてさて、それはいったい何なのか、ああ、ちなみに言っておくと別に野暮なことを言いたいことではない。興味本位でもない。ただな?私の騎士であるライのことを聞くことは、決して筋が通ってないというわけではない。今ライ本人がいないことから、私が代わりに聞いても問題は無いと思うが、この間がどう思うユレイヌ」
「コホン、ええ確かにライ様の主人でもあるエミル様が騎士の事をよく知ろうとするのは何も間違っておりませんわ。それに、フィルさんがまさか他人に言えないようなことを約束するはずがありません、と私は信じておりますので、ねえ?ティアさん」
「うん、私も信じてるよー。だからフィルちゃんが包み隠さずライと何を約束したのか教えてほしいなー、幼馴染である私にも知る権利はあると思うなー」
「あ、あの、ティアさん私も一応幼馴染の分類に、そのぅ」
「ならなおさら幼馴染通し隠し事なんてことはしないよね?」
「うっ」
フィルは実感する。確実に包囲網を構築されていると。確かにフィルはライと約束をした。こちらから要求したことではないがそこまで言うなら決意は固いだろうと判断したから同意した。でも結果的に見れば自分だけ抜け駆けしたことにも見れる。
年頃の少女としては二人だけの約束は蜜のように甘く、うれしいものだが、同時に抜け駆けをしたという罪悪感もあった。まあ、今ではリエルが知っていることから二人だけではないのだが。
「フィル!私にもよく教えてほしいなの!」
「フィルちゃん、私はあなたの師匠にあたるわよね?すぐに教えてくれるわよね?」
リエルの言葉に先ほど質問した内容など覚えていないように問い詰めてくるレーシアとキャサリンに、ついにフィルは観念した。
「……はぁ、わかりました。全てお話します。ですが、まずは一つずつ話させてください。いいですか?」
その言葉に、とりあえずはと全員が頷く。
「ではまず、レーシアさんとリエルさん、ティアさんに来てもらったのは相手に対する牽制の意味合いがあるんです」
「牽制?」
「そうですティアさん。現状ジュアン帝国とは停戦状態にありますが数ではまだ多いんです。もしかしたらこのまま勝てるから攻めてしまえと思う確立はゼロではないんです。ですから、こちらから相手に戦っても勝てないと思わせればいいように集合してもらいました」
「でも数が少ないのは確かなんだし私とティア、リエル三人だけでジュアン帝国の兵数を上回るのは無理だと思うなの」
「確かにそうですね。でもよく考えてください。貴方達は氷の巫女と同じ力を持っている。お兄ちゃんからは力の譲渡で本来の力を使えないと聞いてますが、それを相手は知らないんです。ジュアン帝国が持っている切り札である氷の巫女は戦う意思が無い。さらに私たちには三人もいるとわかれば無茶なことをしようとはしないはずです」
一息おいて、フィルは続ける。
「ですから三人について来てもらったんです。他にエミル王女には国の代表者として、軍の代表としてキャサリン先生、軍需方面関係では私がということで。……本音を言えば私もお兄ちゃんのそばにいたいんですけどね」
さびしそうに微笑むフィルを見てレーシアとリエルは何もいえなくなる。
周囲はこれ以上は駄々をこねてもしょうがないと考えそれ以上は追及しなかった。が
「……フィル、お主の話は納得した。では次にライとの約束のことを話してもらうか」
フィルは内心やっぱり忘れてくれなかったと思いつつ頷いた。それから、ライと後日何でも一つ聞いてくれるという約束をしたことを告げる。話を聞いた一同は。
「そうかそうか。そうであったか。なるほどなるほど」
「うふふ、まあ、ライ様ったら」
「へぇー、ライとフィルちゃんはそういう約束してたんだーへぇー」
全員がそれぞれ空恐ろしい反応をしていた。
「失礼します!ジュアン帝国の代表者が大天幕に、ヒィ!?」
不幸なるかな連絡に来た兵士。
その兵士が見た光景は不気味に笑う年若い少女や王女、女性の異様な光景だった。そんな光景で視線がいっせいにこちらに向いたのだから無理も無い。
軽く悲鳴を上げた兵士を見つつ、エミルは一度咳払いをしてから全員に告げる。
「ゴホン!さて、この件はまた後で本人を交えて話すことにしよう。それよりも相手はすでに天幕入りをしているようだ。早速行こうではないか。伝令の兵士よ、案内を頼む」
「は、はっ!了解しました!」
萎縮しながらも兵士は返事をして、先導し大天幕へと向かう。その後ろをエミルたちが追従するのであった。
ーーーーーーーー会談会場、 大天幕内部ーーーーーーー
しばらくして大天幕内部では、そうそうたる人員がそろっていた。
国盾の砦は王女を含み計6人、対してジュアン帝国もガドイ将軍、イプス、ほか軍幹部が四人の六人である。
二つの陣営が用意された椅子に座り、視線を合わせた後、最初にエミルから話し始めた。
「では、早速会談に入ろう。不詳ながら私が最初に発言をさせてもらう。私はフェレス王国王女のエミルだ。ただ断っておくが、私は今ここではフェレス王国の王女としてではなく、国盾の砦の一員としていることを明言しておく。よろしいか?」
「了解した。ただ名称はエミル王女とお呼びしたほうがいいだろうか」
「ああ、自由にしてもらってかまわない。と、その前にお互いの紹介をすることを失念しておったな。お互い紹介をしていこう」
それから互いの一人一人が自己紹介をしていく。時にティアとリエルが自己紹介をしたとき、ジュアン帝国陣営から少しだけ息を呑む空気が流れる。それだけに、赤い悪魔と銀色の死神の名前は恐れられているのだ。
互いに自己紹介が終わってからつい両軍のこの先の駆け引きとなる話が始まるのであった。
こんばんわ、遅くなってごめんなさい。
とりあえず、四千文字と少ないですが更新しておきます。ただ、これはこのまま書いていたら一万文字越してしまう可能性があったので二つに分けることにしました。現在の時刻は朝の3:48分ですが、書けるところまで書いてみます。上手くいけばもう一話予約投稿できるかもしれません。もし無理でも明後日までにはあげると思います。お楽しみに。
さて、今回のお話ですが前回のあとがきに書いたとおり戦後処理のお話ですね。主人公さんにはまだ眠ってもらっております。スポットライトが主人公ではないといことですね。
会談ということで駆け引きが起こるのですが……ジュアン帝国はどうやって不利を有利にするんでしょうか。今回の遠征は全兵力に近い数を投入したのです。それで、何も戦果を挙げられないとなるどころか、下手したら賠償金を請求されるかもしれないのです。ガドイ将軍とイプス、ほか四人は生きた心地はしないでしょうね。
と、今回はこの辺にします。また次回お会いしましょう。




