第十一話 第二戦目の開始 前編
長くなってしまったので前編後編で分けます。夜にはまたあげますのでよろしくお願いしますー。
ライは城下町でデートをした一日を除いて特に町に繰り出すこともせずにのんびりと過ごしていた。
課題が判明しており対策ができるのなら忙しかったかもしれないが今回は当日に言われるので、実質暇だった。
そんな日々を送ってついに当日。
ライはいつもより早く目を覚まし部屋でガントレットを磨いたり調整などをしていた。別に使わないかもしれないが何もしないよりかはマシだった。
コンコン
部屋の中でそのようなことをしていると、扉をノックする音が聞こえてくる。
「ライ様、案内の者が来ております。準備が整いましたらこちらにお越しください」
おそらくメイドの人が呼んでくれているらしい。ライはガントレットを腕につけると扉を開けて外に出る。
するとそこには呼んでくれたであろうメイドとティアが立っていた。
ティアが案内人なんだなと思っているとティアはこちらに話しかけてくる。
「ライ様、ジギル国王がお呼びです。案内をおおせつかりましたティアリスと申します。案内をいたしますのでご同行をお願いいたします」
「え?」
なんだかすごく他人行儀に受け答えをされてライは驚いていた。
「こちらにお越しください。皆様がお待ちしております」
そういってさっさと前を歩き出してしまうティア。
状況が飲み込めずとりあえず後ろについていく。
メイドさんが見えなくなり周りには二人しかいなくなったのを見計らってティアに話しかけた。
「ティア、一体どうしたんだ?他人行儀な話し方をして」
「何か問題でもありますか?」
「いや、問題があるってわけもないけど……」
「それでは問題はありませんね」
二人の間に気まずい空気が流れる。一体なんなんだよと思い頭をめぐらせると一つの可能性にたどり着いた。
「……もしかして、この前の城下町のこと怒っているとか?」
この言葉にティアはピクリと反応を見せる。どうやらまだ根に持っているらしい。
「あの時は謝っただろ?エミルたちが帰るのに二人だけで楽しむなんてなんだか違うような気がしたし」
「……」
それでも無言を突き通すティア。
「あーもう!ならどうしたら許してくれるんだよ!」
するとようやくティアから反応が返ってくる。
「この前のやり直し。二人きりでライのおごりで」
ティアは上目使いでチラチラとこちらの様子をうかがいながら返答を待っていた。
「そんなことでいいのか?」
こくりと頷く。
「分かった。なら今度いつ休みというか暇ができるかわからないけど俺の奢りで一緒に遊びにいくか」
そういうと先ほどの空気はどこへやら、いつもどおりの笑顔を振りまきライの腕をとってきた。
「言ったからね?約束したからね?絶対の絶対のぜーったいだよ?」
「ああ、絶対いこうな」
ティアは起源を直してくれたようだ。ライの前を鼻歌交じりで歩いていっていた。
「だけどその前に勝たないとここにいられないかもな」
「そうだね、でもライなら大丈夫だよ。信じてる」
疑いようもなく即答で返事を返してくるティアにライは苦笑する。そんな簡単に言ってくれてと。
「善処はするよ」
そんなことを言いながら二人は会話をしていたが王城を抜け、城下町を抜けて外壁にある門を抜けると会話はなくなった。
門を抜けた先にある光景を見て会話をすることができなくなったのだ。
ライたちが見た光景は平原に約千の兵士が二つに分かれて整列していた。武器は槍と剣しかなく弓や騎馬兵は姿がない。
兵士が整列している少し離れているところではすでに重要人物たちは揃っている。フェレス王国ジギル国王、王女エミル、対戦相手であるイウル伯だ。
ジギル国王はライ達が来たことを確認するとこちらに来るように目で促す。
指示に従いライは足を進めるが、そこで色々なことに気がつく。
城壁の上には民衆が、国王の周りには兵士たちが集まりこの試合を見学しに来たようだった。
ジギル国王のそばにやってくるとジギルは一度頷き、右手を上げながら声を張り上げた。
「みなのもの静粛に!」
周りは二人が揃ったことによりざわめきがおきていたが、たった一言で静寂に包まれる。
「ここに集まった諸君はこれからここで何をするか承知の上だろう。だがまだほとんど者が試合内容を知らないはず。よってこれから内容を説明しようと思う!」
するとジギル国王のそばに控えていた文官が巻物を持ってジギル国王に渡した。国王は巻物を受け取り呼んでいく。
「今回の内容は、候補者二人に実際に部隊を率いて模擬戦を行ってもらう。勝敗の有無は私と娘のエミルが判断する。また、判断基準としては指揮官が倒されたか部隊の兵数が圧倒的に不利だと判断した場合。兵士の脱落条件は武器を落とすか床に倒れるか、使用する武器は刃をつぶした武器だ!だが、刃をつぶしていても大怪我の可能性ある、兵士たちはそこを弁えて戦うのだ!以上が今回の決まりである!二人とも質問はないか?」
「ありません」「了解いたしました」
「うむ、では二人に命じる。二人は正々堂々と試合をするがよい!すばらしい試合を期待しておるぞ!」
ジギル国王はそれだけを言うと後ろに下がり二人にライは左の部隊を、イウル伯は右の部隊を担当するように指示する。
部隊に向かってから開始時間までは約半刻(一時間)の時間がある。この間に指示を飛ばし陣形を構築するのだ。
ライはとりあえず目の前にいる兵士千人に挨拶をした。
「俺の名前はライだ!今回ゲームの優勝候補者としてこの部隊を指示させてもらう!平民である自分に指揮が務まるのかと思うものもいると思う。でも、今回は信じて指示に従ってほしい!よろしく頼む!」
そういうと兵士たちからは「「おう!」」という掛け声が返ってきた。
頼もしい返事を聞いて頷くとライは前の列にたっている兵士に話しかける。
「この部隊はどういった構成か教えてくれ。千人の中に部隊長などが存在するのか、武器はどのようなものかを」
「武器は今回槍と剣のみ、選任の兵士の中に部隊長は決められていない。ベテランの兵士はほとんどあっちだよ」
「ん?兵士の先発基準は平等だと思ったけが」
「先日あんたがイウル伯に勝っただろ?勝ったほうと負けたほうへ今回も平等に配置するとどうしてもイウル伯が不利だと貴族が言い出してな。こっちには騎士の称号を持っているのはいない。相手には一人はいたはず、しかもベテラン兵が多い」
ライはまたかと考える。どうやらそれほどまでに勝ちたいみたいだ。
「なあ、悪いことは言わないから今から棄権したらどうだ?こんな戦い勝ちは見えてる」
不安そうに言ってきた兵士にライは思わず笑ってしまった。
笑われたことに驚き次に兵士は怒気を孕む。
「どうして笑うんだよ!」
「だって、なんで勝負の前から負けるとか言ってるんだよ」
「実力差的にどうみても」
「なら実力差ですべての戦争が、部隊戦が決まると?」
「そうじゃないのか?」
「なら聞くが今みたいにお為たちが千人の兵士で構成された部隊だとしよう。そして、相手は百人の騎士。絶対に勝てないか?」
兵士は首を横に振る。
「だろ?じゃあ逆にお前たちが騎士だったとしよう。千人の相手に正面からただ突っ込んで勝てると思うか?」
ライは問いかけても返事はまったくない。反論ができないのだ。
「ここで騎士はどうやったら勝てるかを考えるはずだ。そして、その仕事は今回俺になる」
「あんたに勝つことができるのかよ」
別の最前列に並んでいた兵士が聞いてきた。
「戦いに絶対はない。だから絶対勝つとはいえない。でも、勝つ方法は考えている」
勝つとはいえないのに勝つ方法はあるという目の前の若い青年にいつしか、兵士たちは興味を満ち始めていた。
また別の兵士が聞いてくる。
「その勝つ方法ってなんなんだ?」
「説明をしてもいいけどその前にこの方法は色々と決めないといけないんだ。そうだな……最前列の兵士たちはこっちに来てくれないか?」
そういって横縦列に並んでいる最前列の兵士たちがライの近くまで来て話を聞く。
「ならまず作戦を説明する。それを後から皆に伝えてくれ。で、肝心の作戦だけど」
そういって、集めた兵士に最初に説明して後から後ろにいる兵士に説明していく。数人は最初に胡散臭そうにライのことを見ていたが話を聞くうちに、徐々に楽しくなり相手を倒せそうに思えてくる。
兵士たちに一通り説明した後ライは最後に全員に聞こえるような声で締めくくる。
「この戦いは全員の動きが肝心だ。相手がベテランの騎士がいようが関係ない。俺たちで見事格上の相手に勝とう!俺たちもやればできるということを見せてやろう!」
「「「おぉぉぉぉぉぉぉ!?」」」
歓声がライのほうから上がり周りのギャラリーからは何事かと視線を向ける。
その光景は対戦相手であるイウルにも見えていた。
「ふん、なんだか平民が悪あがきをしているようだな」
そういってイウルは見下してライを見ていた。
この戦いでは兵数と兵種も同じで兵をどうやって動かすかが肝心。
……と思っている奴は実は二流だろう。この戦いは確かに平等に見えるかもしれないが、兵とはそれぞれ個々で違う。一人ひとりの実力が違うのだ。
こちらが裏で手を回してあちらには雑兵をこちらにはベテランを多く配置していた。するといくら兵力と兵種が同じといっても実力差が違えば実力が上の陣営が勝利するのは当たり前だ。
あとはこちらは無難な陣形を立てて試合と同時に圧倒的な力で押しつぶせば問題ないとイウルは考えていた。
そして、イウルはその考えを実行に移し陣を構築し始める。
対してライも遅れながら陣を構築し始める。作戦の内容と確認で少し遅れていたのだ。
それから半刻後予定通り両陣営は構築し終わっていた。
それを見たジギル国王は声を張り上げる。
「両陣営準備は整ったようだな!ではこちらから銅鑼鐘で合図する。よいな!」
ライとイウル伯。どちらとも声を出すことはなかった。
声が出ずに反論は無いと判断した国王は手を上げる
「では第二試合目を開始する!合図を送るのだ!」
すると、銅鑼鐘はあたりに響き渡り開始の合図を告げた。
「さあ!戦争の始まりだ!」
「平民なんぞ捻り潰してしまえ!」
両陣営からは兵士たちの雄たけびが上がり、戦いの火蓋が落とされた。




