第百十四話 国たての砦連合 対 ジュアン帝国 連結 魔法の運用法
こんばんわ、お楽しみください。
戦いが始まって半刻(一時間)が過ぎようとしていた。その間の状況は、完全に国盾の砦側有利という状況だ。ジュアン帝国は第一陣が丸太による防壁に阻まれ、応援のために第二陣も送った、合計前線には九千人を投入してることになる。
そして、もうすぐ第三陣、三千人の兵力を投入するのだが、前線の芳しくない状況にイプスは頭を悩ましていた。
(どうすればいいんですかね)
イプスもこの一刻ただ、何もしなかったわけではない。第二陣を投入時、一部が敵の策らしきものに嵌って丸太が瓦解、死傷者をだしていたが、それでも数は八千は超えていた。よって、イプスが命令したのは敵正面に打つをやめた弓兵に氷の道を通る味方がいない場所に向けて乱射することを命じた。
これは偶然見えたことで気がついたこと、どうしてか門の前面を守る場所以外、後方に当たる兵士が倒れたように見えた。
最初は気のせいかと思っていた。しかし、それが一瞬の幻のように何回か見えるようになったのだ。
そこで、イプスは考えた。敵にはアスティールの騎士 サチがいる。海賊の逸話のように、幻覚を見せることができるはず。そう考えて、もしかしてここから見えないだけで敵は何かしらの策を仕掛けているのではないかと考えたのだ。
矢を温存したかったが贅沢は言っていられないと、実行させた結果、成果があったのか後方で倒れるように見えていた幻覚が見えなくなる。
ひとまず、一つの問題が片付いたと思いたい。でも、一番の問題が残っている。
「あそこにいる敵兵はどれだけの猛者なんですか……」
かれこれ半刻(一時間)、いくら丸太による防壁で一度に大量の敵を相手にしないでも良いと言ったとしても普通の兵士なら疲れ、緊張、集中力低下という理由で疲弊してもいいはず。
しかし、実際目の前では未だに落ちる気配はない。
イプスは膠着した状況を打開するために手を打つか、それとも力押しで状況を見るかを思案する。
打開策としては三つ、第三陣をすぐに投入させるか、砦内に待機させている騎兵を使うか、例のとある部隊を投入するか。
「イプス軍師、少しよろしいでしょうか」
思案している最中に、後ろから呼ぶ兵士がいた。
「どうしました?何か状況の変化でも?」
「いえ、特にはそういったことはないのですが、一つだけ気になったことがあるという部下がおりまして」
「なるほど、それで気になったこととは?」
「それが先ほどこちらに降った敵の矢が見たことがないものだというのです」
「敵の矢?最初放たれた敵の矢は鉄の鏃がついた普通のものだと思いましたが」
「はい、確かにそうです。しかし、この付近ではなく後方に飛んできた矢は奇妙だったのです。その矢はまるで木ではなく、土でできているような矢だったと」
「土ですって」
その話を聴いて、一つ思い出す。確か土を利用した矢の話を聴いたことがある。フェレス王国が内乱を起しているとき、とある伯爵家が保有した魔法で作った土矢。この矢は軽く、飛距離も従来の矢と比べても性能が遥かに良いというもの。
ただ欠点として、一定以上の魔法技術と魔法を持っていないと作れないため量産できないとされていた。
だが今回用意してきたということは、それを用意できるだけの魔法と魔法技術があるという証明だ。
イプスはもう一度戦場を見渡し、はっ!とする。
「すぐに答えてください。あなたの所属階級と、部隊の配置場所はどこでしょうか」
「は、はぁ、私は第三弓兵隊、千人隊長であります。ご命令どおり、後方部隊から前線援護の任を受けていたため左翼後方で指揮をとっておりました」
返事を聞いたイプスは頭の中で戦略図を展開、敵の行動を計算し始める。
(敵の弓矢はおそらく手前にはあの丸太のどこかにいる兵士が撃ったもの、それは問題ない。問題は、混ぜて撃たれた土矢のほう。いくら軽く飛距離があるといっても、射手は変わらない。ならば後方に配置されている場所に撃つことは可能か?)
さらに付け加えると
(敵の攻撃が消極的すぎる。一方的に攻撃できる土矢があるなら大量に撃って少しでも削ることを考えるはず、なのに撃たれたのは最初の一撃のみ、それからはまばらにしか攻撃をされていない。そして、何よりも相手はあそこを守って何をする気なのかがまったく分からない)
丸太を連結させてこちらを囲む。何度か壊そうとしてもできなかったことから何かしらの魔法が使われている。では、相手はなぜ丈夫な防御を強いてあそこを守る?
(考えろ、もしこちらだったらこの場合どうします?)
敵の不利な材料は数的不利だ。では相手は一番の目的としてこちらの兵力を大量に削ることが目的。
しかし、敵は何もしてこない。いや
(待てよ、もし敵は時期を伺っているとしたら?伺っている……見えない伏兵……土の魔法……土の魔法?)
土の魔法、この単語で一度イプスは思考が止まる。本来土の魔法とは大地を利用した魔法だ。利用できるものとして岩、砂、土など大地に関するものなら何でもいい。
そこで、考えると相手は土矢を作るほどの魔法を持っている。そう、持っているはずなのだ。なのに、なぜわざわざ、丸太を利用して防壁を作ったのかわからない。地面から壁を作りそれこそ要塞を構築させれば良いではないか。
「……余裕がなかった?」
もしや魔法を使う余裕がなかった?他に魔法を使う目的があって丸太を代用したとしたら……!
「第三陣はすぐに出発してください!そして、そのまま第三陣は後退、第二陣と第一陣も総じて後退を。こちらの『道』を利用して下がってください!後方に控えている弓兵部隊は第一から第四まで前に出てきてできるだけ遠くに射撃を!残りは続けて乱射を継続。峡谷内にいる騎兵部隊にも通達、戦場を迂回し右翼に進撃敵部隊がいたら牽制、いなければ味方の撤退援護をするように騎兵が走ったら一時右翼の乱射は中止、左翼に射出を」
それとといいつつイプスは近くにいた特別な伝令を見て指示を出す。
「聞いたとおり例の部隊と騎兵を使います。ただもう一つ、マリ……氷の巫女の下に行きこのように伝えてください。氷の維持は連結を終了したら必要部だけを残して解除、空中に霧を出してほしいと。お願いできますか?」
二人の伝令ともう一人巫女に伝えに行く伝令は頷いた。
「では迅速にお願いします。少しでも遅れたらそれだけで被害が拡大しますので」
伝令はすぐに飛ぶように走っていった。
イプスは戦場を見つつ呟く。
「この考えが当たらなければいいのですが……」
後はただただ、事態の推移を見守るしかなかった。
ーーーーーー国盾の砦サイドーーーーーーーー
戦場の最前線、氷壁の砦とライは地獄絵図と化した場所で戦っていた。
丸太の門といえるべき場所で不退転により合計五十一人で防いでいるのだ。敵は何百倍である兵士を投入してきている。もし、丸太を魔法で補強していなければ左右から挟まれてやられているだろうが、だからといって半刻でもこの人数で守りきっているのは大戦果といえるだろう。
しかし、もちろん氷壁の砦とライは人間だ。人間ならば疲労は蓄積される。無傷でいられるはずもない。条件付で戦っているためライ自身も傷を負っていた。負っているといっても、肩を掠めた程度。予想外に血は出たが軽症だ。
他の面々はというと、ライより軽症のものは少ない。門が狭いことにより、二つの隊列を組ませているため、前が戦っていれば後ろは休めるのだ。でもそれはそろそろ限界を迎えようとしていた。まだ死者を出していなくても、一度崩れれば全滅だろう。
「ライ、敵の第三陣が動きたわ」
「やっときた!動き方はどう!」
「第一陣、第二陣と変わらず滑ってきているけどなにやら妙ね。がけ上でも動きがあったようだし、弓の射撃方向も少し変わってる?」
エスティアの情報を聞いてライは敵が 大規模な配置換えをしていることを予想する。こちらの伏兵部隊に気がついて手当たりしだい矢を放っていたのは知っていた。でも今回は、明確に動きがあったのだ。ということは
「敵はおそらくこっちの策に気がついたみたい」
「え?まさか、そんなことあるかしら?あなたの策は身内びいきをなしにしても良くできていると思うけど」
「気がついていないなら良いよ別に。でもこれ以上、伏兵を危険な目に合わせるわけには行かないよ。左右にいる伏兵に指示を出して。こちらに炎の柱が上がったら策を実行するように。策を実行したらすぐに後退、敵はおそらく峡谷内に兵を伏せいていると思うから長居は無用と。それと後方にいるリエルに伝えて。フィルに弓兵部隊を前進させ策に掛かった敵兵に矢を撃つように。種類は土矢を使用って」
「わかったわ。すぐに連絡するから、あなたももう少しがんばりなさい」
「もちろんそのつもりだ!」
正面を向いて後方に下がっていたライは声を張り上げる。
「全員聞いてくれ!もうすぐ策を実行しその後、後退する!あと少しだ!頑張ってくれ!炎の柱が出現したらすぐに行動開始、軽症のものは重傷者を後方に。それぐらいの時間は稼ぐから!」
ライはそういうと、再び前線に躍り出る。
「「「「「「う、うおおおおおおおおおお!」」」」」
ライの声に氷結の砦傭兵団も声を上げた。もうすぐ解放される。終わりの希望が見えたのだ。士気があがるのは当然であった。
そしてしばらくして、初手を取ったのはジュアン帝国であった。第三陣に丸太を滑らせて、今まで先に行っていた丸太に連結するようにつなげる。このことにより、氷の地面を利用して、二つの丸太による道を作り上げることができたのだ。
連結といっても、不安定で普通ならばできないだろうが、氷を丸太同士でつなげた為可能となった。
これによりイプスが指示した撤退行動を開始、いち早い行動により第二陣の二千は丸太の道に上ることはできた。
ここで、国盾の砦に動きが見られた。
最初に起こった現象に、イプスは自分の嫌な考えは当たっていることを確信した。
最前線である敵門付近で炎の柱が再び立ち上がると突如、丸太に阻まれ動けないでいたジュアン帝国兵士、右翼部隊の地面が無くなったのだ。十分な用意はできなかったのか、深さは人一人分の深さだろうか。しかし、その深さは鎧を着た兵士を倒れさせるには十分であり、また這い出るには難しい。しかも、広さが問題だった。ほぼ右半分を見ただけで二千ほどの兵士を地面に落としてしまったのだ。あれでは弓矢の的である。
そして敵も承知しているのであろう。すぐに敵右翼、正面から弓による攻撃が開始された。
対して左翼、こちらも実は異変が起きていた。なんと頭上に炎の塊が現れ兵士たちを襲っていた。
でもジュアン帝国にとってはこの攻撃は幸運が味方をする。イプスがマリーに指示して氷の地面を解いた分、氷の霧を発生させ炎の威力を軽減したのだ。しかも、もう一つ運が向いた理由がある。
それは、イプスが例の部隊と呼称してた部隊。イプスがライの部隊運用を参考に、イプス自身で氷の巫女を護衛、または特別戦術魔法部隊、氷兵隊を組織して左翼に投入したのだ。魔法を左翼にいると思われる敵兵に向けて放つようにと。
魔法攻撃とマリーの霧のおかげで国盾の砦は左翼におけて十分な戦火は挙げられなかった。
この時、国盾の砦は左翼にはティア率いる炎帝隊と兵士千が、右翼にはサチ、ラン、ラッシュ率いる兵士千五百が展開されていた。
ライ達の策を実施した後、ティアは効果を上げられなかったがすぐに後退を開始する。宝玉魔法を使い、敵から放たれる矢と氷魔法を炎で防ぎつつだ。
右翼ではラッシュ達が後退を開始した。本来こちらに五百の兵が多いのは敵の峡谷部分からこちらに来るのが容易なため、奇襲を受ける危険性があったからだ。そしてその予想は当たり、ラッシュ達は部隊を下げつつ、遠くに聞こえる敵側から近づいてくる蹄の音を聴いたのだった。
これには、ラッシュの土魔法、サチの光、ランの影魔法を駆使し幻覚を見せ障害物をおきながら後退したため被害はなかった。
両翼の部隊が後退したのを見計らって、ライも炎の壁を味方が撤退した後に解除、自身も後退した。最初の決戦は完全なライ達の勝利で終わる。
この戦いで被害を伝えると
国盾の砦 死傷者 五十
ジュアン帝国 死傷者 四千
このようになる。
この結果に後の歴史家は国盾の砦に対し奇跡の防衛線と名づけたという。
しかし、まだ戦争が終わるわけではない。ジュアン帝国は何倍もの兵力を持っており、後方にも本隊である一万以上の兵力が待機しているのだ。
決戦はまだまだ続くのであった。
[歩兵]▼[歩兵]▼ [歩兵]▼[歩兵]▼
[弓兵]▼[弓兵]▼ [弓兵]▼[弓兵]▼
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|[歩兵]▲ | |[歩兵]▲|
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[騎兵]▼ |[歩兵]▲ | |[歩兵]▲|
↓ [歩兵]▼× [歩兵]▲ ______
[土帝]▽ \____ [歩兵]▼× [歩兵]▲× ______/[炎帝隊]▽↓
↓ \____ ______/
\ /
[ライ]+[氷壁]▽↓
[フィル隊]△
▼: ジュアン帝国軍 部隊方向
△:国盾の砦
×:壊滅、敗走
+: 障害物 (岩や森、壁など)
|:氷の道
-:丸太の壁
↓ ↑ → ←:進行方向
\/¥:丸太の壁
こんばんわ、最初にお詫びを申し訳ない。活動報告のほうにも書きましたが、ワードが開かなく設定資料集が見れない状況と成っていて、結局修復はできませんでした。とりあえずはフリーソフトに移植する方法を取ろうかなと考えております。以前から話しているように、七作ほど温存しており、それぞれ十万文字を超えているので移植作業は結構大変なんですが……頑張っていこうと思います。
さて今回のお話はあまり言わないで次回なのですが、次は平原に下りた平面戦を考えております。後方の本隊も合流させて総力戦にしようと。
といっても、まだ草案の段階なのですけどね。
ではまた次回お会いいたしましょう。おやすみなさい。




