第百九話 光の宝玉の意思と新たなサチの試験
お楽しみください。
目の前にやってきたジュアン帝国軍を前にライ達はとりあえずこれからどうするのか、対策と方針を決定して、一段楽したところであった。
一段楽した後、主にティアたち幹部は指示を実行するためにそれぞれの天幕に戻り部下に指示を出し始めていた。
よって現在、会議が行われていた天幕の中に残っているのはアスティール王国の使者であり、光の宝玉保持者であるサチとライだけである。
全員がいなくなったことを確認してサチは話し始めた。
「それでライ軍師、一体何をしようというのか」
「はい、まず一つお願いをしたいことが。それとエスティアからなにやら話したいことがあるらしいのです」
「願いと話したいことですか」
「内容は半分は分かるんですけどね」
「ふむ、それでエスティアという方はどうしておられるので?」
「大丈夫、ここにいるわ」
そう良いながらエスティアは光とともに姿を現す。
「このようにエスティアもいるから大丈夫。ってことですぐに話しを進めさせてもらうね。一つ目のお願いの方なんだけど、サチが持っている光の宝玉を貸してほしいんだ」
「……光の宝玉を?」
「そう、サチにとってとても大切なものだとは理解しているし、本来切り札というべきものを貸せというのは図々しいかもしれないけど、今回の作戦で必要だと思うんだ」
「必要といわれても、確かにあなたは私より知らないことを知っているような気はするが、しかし」
「安心しなさい……って私が言ったとしても安心できるはずもないわよね。ならこれはどうかしら、サチ、あなたは宝玉を出さなくて良いわ。その代わりライに密着しなさい。そうすれば効率は悪いけど一部は譲渡できるはず」
「み、密着!?」
「……エスティア?」
二人の違う反応にエスティアは面白そうに笑いながら言ってくる。
「あら、何を驚いているの?私としてはとても合理的な方法をとったつもりなのだけど」
「合理的といってもいきなり密着しろって言われても困るだろ」
「んー、けど他といって打開策を思いつかないのよね。そうね、ならサチ。あなたに少し教えてあげる。いいえ、前言ったかもしれないけど知っていたほうがいいことを言うわね」
「知っていたほうがいいこと?」
「ええ、そうよ。先ほど私が現れるとこを見たから分かると思うけど、私は人間じゃないわ。私はライが持つ白帝の宝玉の守護者なの。ライもあなたと同じ宝玉を持っているってことね」
「その話がどういうつながりが?」
「詳しい話は省くけど、貴女が持っている宝玉、光帝の宝玉には私と同じような意識体がいるの。そして、今回その意識とコンタクトを取ってサチ、あなた自身の能力をもっと高めてしまおうかなと考えたわけよ」
ただし、とエスティアは続ける。
「ただし、それには危険も付きまとう。貴女と宝玉の意識がまだ意思疎通をできていないことから、貴女自身が意識体にどう思われているのか見当がつかないことね。最悪襲い掛かってくるかもしれない。だからこそ、ライは軍師として命令や要請という名前ではなく、お願いという形をとったの」
危険が伴うと聞いた瞬間一度だけ大きくのどがなる音がサチ自身聞こえた気がした。条件反射か、今まで相棒として使ってきた強大な魔法が下手したら自分自身に襲い掛かってくるといわれたからだ。
けれど
「……そうか。わかった。なら私は願いを聞くとしよう。いや、違うな。こちらから頼む。今まで良くしてくれた相棒なんだ。意思を持っているのなら正面から向かい合いたい」
「わかったわ。なら、早速ライと密着して頂戴。その後は私が光帝相手に語りかけるから」
「了解した。ではライ殿、申し訳ないが早速行動に移らせてもらうぞ」
そういってサチは一切の迷いもなく行動に移していた。ライのすぐ側にやってきて片手を伸ばす。以外にも大胆な行動についてライは動けずにいたが、数瞬後天幕内に響いたのは。
「……はぁ。サチ、貴女なにやってるの?」
エスティアによるため息であった。
「む?貴女に言われたように密着したのだが」
「密着という文字をどう解釈しているのか分からないけど、そんな裾をチョコンと握っている状態を密着しているって言うのなら、この世界はとても興味深い状態になっているでしょうね?」
「な、なに!?ではこれでも密着ではないというのか!」
「当たり前でしょ。密着って言うのはこういうことをするのよ……えい」
エスティアはサチの後ろに回るとそのまま背中を押すように突き出す。すると、押し出されたサチは当然前にいるライに体勢が崩れたまま動いてしまうわけで、はたまたライ自身もすぐに動けずいたため結果
「そうそう、それが密着っていうのよ?」
エスティアの行動により、二人は互いを抱きしめるように密着してしまうのであった。これには二人とも顔の温度が急上昇。すぐにでも手を離し離れようと行動をしようとしたが、そんなことエスティアはさせてくれなかった。
「ちなみに、このまま密着ができなかったら失敗していらない危険を持つ可能性もあるからそのつもりで」
何の危険があるとは言わなかったが、先ほど光帝の意思が反抗してくる可能性も示唆されたのだ。思わず、離れることはしなかった。
「「……」」
二人は硬直したように立っている。その様子を満足そうに見ているエスティアは、愉快そうに笑いながら二人の体に触れた。
「なら、これから私は意識を光帝の宝玉のほうに飛ばすわ。だからしばらくその状態でお願いね」
こちらが是とも返事を聞かないうちにすぐにエスティアは瞑想に入ってしまった。
そうすると、天幕で喋るものは誰もいなくなる。聞こえるのは天幕内にいる人の呼吸のみだろうか。
ライとしては、一刻も早く離れたい一心である。別にサチが嫌いというわけではない。女性という観点で見るならば、女性として美貌や体は百人に感想を聞いて百人が密着することを望むだろうというぐらいの、魅力はある。現にライは先ほどから、目の前に押し付けられている二つの柔らかい感触と、男では到底再現できない体の柔らかさを味わっているのだ。感謝こそすれ迷惑とは思わないだろう。
にもかかわらず、なぜ離れたいのか。
それは、自身の身の危険を感じてである。
正直いうとこの場面を誰かに見られたら、明日の太陽を拝めないような気がするのだ。もちろんこれは必要なことであり、やましいことがないとしてもである。例えばティアたちに関して言えばそんなことをしないだろうと思いたいが……
(前科があるからなぁ)
そう、フィルと再開した村で、何を勘違いしたのかフィルとライが駆け落ちをしたと思い込んで暴れに暴れたのだ。誤解は解けて、反省をしてくれたのは知っている。でも再発しないとは限らない。
(……好意を持ってくれていることは薄々知っているし、幸せなことだと思う)
自分の近くに集まってくれる女性たちは全員ではないにしろ、何かしらの好意を持ってくれているのは感じている。鈍いのではないかと自覚している自分でさえ、今までの状況を考えてみればね。
でも
(果たして自分は、自分を保っていられるんだろうか。皆と……それこそ物語のように最後は幸せな結果を導くことはできるのであろうか)
そう思う理由は宝玉を使用するごとに発生してきた欠点。記憶喪失、感情の高ぶり、意識の境界に対する意識の低さ。
これは宝玉の力を白帝の宝玉に譲渡していくごとに変わっていった。そしてその都度ライはある思いに囚われてきた。
(本当の自分はどこまで残っていられるのだろうか)
少しずつ変わっていく意識に、自分の人格というものがなくなっていくように思えたのだ。
「……ライ殿?」
考え事をしているときに意識を現実に戻してくれたのはサチであった。先ほどまでは真っ赤だったというのに今はこちらを心配するような表情で話しかけている。
「どうかしたのか?なにやら表情がとても真剣だったので」
どうやら自分で思ったより、深刻に考えていたようだ。
ライは首を横にふり返事を返す。
「いいや、別になんでもないですよ」
「本当だろうか?貴方が大丈夫なのならいいのだが」
「有難う。気遣ってくれて」
お礼をいうライを見てサチは少しだけ安心したようであった。
とその時。
「……二人とも、いいかしら?」
今まで無言で瞑想していたエスティアが目を開いて声を出す。ライとサチの視線が自分に向けられていることを確認したエスティアは状況を話した。
「今、私は呼びかけてみたんだけど少し意外な展開になったわ」
「意外な展開ってどういうこと?」
「私が最初に言った光帝の宝玉の中にいる意識が所有者に牙を剥くかもと言ったでしょ?でも本当は可能性は低いと思ってたのよ。理由は、今まで宝玉の力を仕えていたのが一点と意識体がある宝玉は所有者を認めた者にしか力の行使を認めないから」
「それで?」
「それで、サチに対してそろそろ面会したらといったらそれは少し待ってほしいといわれちゃったわ」
「ど、どうしてなのだ!」
自分とはまだ会いたくないといわれたサチは驚いてしまった。意識の有無に関らずサチにとって宝玉は相棒だったのだ。だというのに相棒にそういわれたのなら心配になってもしょうがないだろう。
「落ち着きなさいな。別に貴女を嫌いというわけではないそうよ。まあ当然ね。もし嫌いならそもそもあなたを所有者と認めないでしょうから」
「ならなぜ?」
「あの子から聞いたそのままのことを伝えるわね?【こんにちは、私の相棒さん。貴女が私のことを大切に扱っていることは十分承知しているし、エスティアからそろそろ意思疎通を図ったらといわれたの。でもね、私としては今回の貴女の過信による敗北をしたことを見て、少し疑念を抱いちゃったのよ。だから、まだ貴女とは会わないことにしたわ。そうね、私が貴女と会う条件としてはこれでどうかしら、今戦っている敵を貴女とそこにいる『真帝』様と力を合わせて乗り切ってみて。もちろん今までどおり私の力を使ってかまわない。けど、もし私が貴女と合わないと感じたら……】……その後は言わなくても分かるわね?」
それを聞いてサチは一度頷く。
「ああ、力を貸してくれなくなるってことだろう」
「ええ、だから今回は貴女の試験って感じね。なんだかとても難関といえる試験だけどまあライがいれば何とかなるでしょう。何せ英雄様なんですものね?」
「エスティア、お前は俺に緊張を与えて楽しむつもり?」
「さあ、何のことかしら?ただ私は当然のことを言ったまでよ?」
「どこが当然のことなんだよ……」
恨みがましくエスティアを見ているライをエスティアは愉快そうに笑いつつ、そろそろ指摘しないと自分の相棒であり主人であるライの身が危ないだろと感じ、指摘する。
「そうそう、そういえばさっきから言おうと思っていたことなのだけれど」
「「?」」
二人は首をかしげる。
「貴方たちいつまで抱き合っているの?天幕の入り口をみたらどう?」
そのまま指摘どおり二人は天幕の入り口を見ると
「……」
そこには銀髪をツインテールに結わえている、女の子。リエルがいた。
「「……」」
「……」
静寂が支配する空気。
スッ
そのまま一言も発さずにリエルは天幕から出て行った。その後、走っていったのがわかる。
「「……」」
二人は終始無言であった。サチは恥ずかしさから。ライはこれからの身に起こることに不安を感じて。
その後、リエル+αがやってきてひと悶着あるのだが……それはまた別のお話である。
こんばんわ、現在48時間起きつつ書いていて、本編内容が物足りないものになってしまったかもしれません。ご了承ください。
あとがきは今日はなしでお願いします。
次回にまたお会いしましょう。




