第百一話 ヴェトリアの話 エミルの今
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二つの陣営による交流試合が終わったその日の夜、主だった幹部である女性陣と氷壁の砦メンバーで唯一女であるヴェトリアが現在陣中にある天幕の一つに待機していた。
何度か行われた女子会であり、戦場に数少ない女同士で交流を深めようという意味合いもある……と言えば聞こえはいいだろう。それに正確には女子会というわけではない。
理由はここに一人男が混じっているからだ。人数にしてみればエスティアを含めれば七人の少女たちの中に一人。
そして、その一人の男というのはもう言うまでもない。ライであった。
「……それは本当なことなの?」
レーシアが疑いの目を持ってライに確認するように質問してくる。現在の状況を言えば、突如試合が終わったとたんに、ライに抱きついたのをみた女性陣は二人の関係を追及。その後詳しく話を聴くために現在天幕に集合したということだ。
最初のうちはずっと疑いの眼差しを向けていた、途中でティアがランディル村でであったのだと説明し、ライが証言した言葉とヴェトリアが説明が一致しとりあえず説教は先ほど収束した。ライからすればもっと早く説明してくれたらとも思うが、ティアからの視線がまだ厳しいことから言い出せない。
まあそれも当然だと思う。なぜならその原因が隣にいるのだから。
「やっと私たちのことが認められましたねーライ様♪」
あれから何かを言ってはべたべたと引っ付いてくるヴェトリアが原因だということはライにも分かっていた。
「むー!またこの女の人くっ付いてるのー!」
レーシアが指摘すると、リエルが無言で動きヴェトリアとライを引き離そうとする。
ヴェトリアはしょうがなく離れると唇を出しながら愚痴を言った。
「もぅ。別にいいじゃないですかー」
「だ、だめです!ヴェトリアさん!今はそんなことよりも話し合いの場なのですから!」
フィルも反論しフィルの隣に座っているランも同調する。
「そうです、ヴェトリア様。今は話し合いの場でありそのような行動は慎んでいただきい」
「……もしかして嫉妬ですか?-?」
ヴェトリアに指摘されると、ランは急に顔を真っ赤にさせて反論する。
「そそそそそそ、そんなわけありません!ただ、私としては正論をといたまでであり、今この場でヴェトリア様の行動が進行を阻害しておりますというか」
「それにしてはお顔が真っ赤ですねー」
「これは、その、あ、熱いだけです!」
ライは一連の話を聴いていてどうしたものかと考えていると、ライの体をはさんでヴェトリアとは逆に座っているエスティアがクスクスと笑っていた。
「なんだかこの集まりも賑やかになったわね。というよりか、新たなライバルかもしれない人物が現れて焦り始めたのかしら?こんなに積極的にする子なんて今までいなかったものね」
「おいおい、ライバルって俺たちはもう仲間だろ?」
「ええそうね、仲間ね。でもある意味では敵同士かもしれないわよ?」
本当に愉快そうにクスクスと笑うエスティアであった。
その間も女子が言い合っていたのでライは埒が明かないと考え全員に提案する。
「ほらみんな、一応落ち着けって。ここではヴェトリアとの関係を話すってことで集まったけど他にも目的があるんだから」
ライが指摘すると、全員不満がありつつも大人しくなる。
ティアも少しだけ拗ねつつライに言う。
「でも、目的の半分はラッシュが戻ってこないと始められないでしょ」
「まぁ、そうなんだけどな。ただ、俺にもヴェトリアに聞きたいことがあるんだよ」
「なんですかー?」
「さっきはみんなにランディル村で出会ったことや、弁当をもらったとか一年前から氷壁の砦に所属しているとかは聞いた。けど、肝心な部分を教えてもらってない」
その言葉を聴いただけでヴェトリアはライが何を聞きたいのか分かったようだ。
「あー、やっぱりお聞かせしないといけませんよねー?」
「できれば、本当に話したくなければいいけど」
「……そうですね。これも予定通りといえばそうですから問題ないですね」
「予定通り?」
「はい、でもそれは順を追って説明します。まずはそうですねー私がライさんに助けてもらったといっていることが気になっているってことでいいですか?」
ライが言いたいことをずばり言い当てて驚くが頷く。
「ああ」
「ですよね。あの、ティアさんでしたっけ。あなたはなんとなく予想がついてると思うんですけど、実はランディル村でライさんを襲った刺客は私を狙ったものだったんですー」
「え?いや、でもそれはおかしくないか?」
それでは辻褄が合わないことを指摘する。
「ティアに教えてもらったけど、あの刺客はティアと一緒に来ていた兵士の中に紛れ込んでいたって、仮にヴェトリアを襲いにきたといっても、都合が良すぎないか?あのゲームは全領土でやられてたんだから、どこにいるかも分からないのに」
「いえ、実はある程度は予想はできてたんですよー?ライさんは占いって信じますか?」
「あまり信じないかな、といいたいけど参考にはさせてもう程度には信ているかな。昔読んだ本にも占いについては載っていたし」
「そうですかー。なら私がその占いを信じてランディル村に行ったというのも信じていただけますか?」
「信じたとして敵も占いを知っていたと」
「それはー、おそらく。ただどことまでは知っていなかったようですねー。すでに別の優勝候補者がいたのですが、私にはどうしても信じられなくて、最後に残ったランディル村に向かったんですー。敵も最後の村ということで刺客を送ったんでしょうー」
「刺客を送ったとしても、なぜ俺を襲ったんだろうな」
「優先順位ですよー。刺客の目的は私といいましたが本当の目的はライさん貴方です」
「……そこで俺がなぜ狙われたという原因が占いに出てくると」
「はいー、占いではライさんが大陸を救ってくださる英雄とでたんです。だから私は貴方をある人に会わせるために動いてたんですがー、まだあの時はライさんは私よりも弱かった。だから、王都にいき経験をつんだほうが良いと思ったんですー」
「そっか、うん。ならとりあえずヴェトリアがいたことには納得がいった。でも肝心のそれでどうして俺が助けたことになるんだ?別に命を狙われて撃退しただだし、ヴェトリアだったら三人ぐらい昼間に見た魔法を使えばかてるだろうに」
「それが、実は夜になると私の魔法は弱くなるんですー。私の太陽の鏡は名前の通り太陽がないと力を発揮しません。一応月は太陽の光を反射しているといわれているのでまったく使えなくなるということはないんですけどねー」
なんだか、ランが使っている愚者の影人と真逆の性質を持ってるんだな。
「それでですね、あの夜に私は昼間ライさんがゲームをしているときに広場に集まる一人として顔をだしたんです。全員参加のときに自分だけ出なかったら怪しまれますからねー。だけど、ライさんがゲームで将軍さんから王都に来るように言われて標的が替わったんですー。もしあそこでライさんが撃退してくれなかったら三人も相手にできませんでした、あのときの私は」
一度だけ言葉を切って、再び喋るヴェトリア。
「とそういうわけでライさんが私の恩人には変わりないのですー。それからライさんの活躍を聞いていくうちに惹かれて言ったんですけど……、っと、なんだか睨まれているのでここではもう言いませんねー。それで、ここまで長く説明してきましたがおそらく誰が占ったとか、なぜ私がライさんを探していたか気になりますよね?」
「それはもちろん」
「私が探していたのはあるお方に会うためと説明しましたが、その方はもし会えても連れて行くのがまだ早いと思ったら次の指示をしました。ジュアン帝国にある氷の壁として民を守る部隊に参加すること。一年後に大きな戦いが起こりそこで、再び出会えるだろうと。占い通り私は出会いましたライさんに。それはすべて、この戦いを終わらせてもらうため。そして、昔からの歴史を正しいものにするためと」
「むぅー、なんでそんなに勿体つけるなの!はっきりと言ってほしいなの!」
レーシアが遠まわしにいうヴェトリアに我慢ができなくて要望すると、「すみませんー」といって謝罪しながら告げた。
「私に占いを示してくださったのは東にある王国アスティール、そこで王女であられる イビア様からのお告げですー」
ヴェトリアの言葉を聞いて天幕の中は静かになった。まさか国の王女の名前が出てくるとは思わなかったからだ。
しかし、ヴェトリアは気にせずに話を進める。
「それで、もし会えたら私はライさんのお力になるようにおおせつかったんですー。その時はイビア様も手助けをしてくれるといってましたー。……この国の「王女様」も動いているようですし丁度いいのではないでしょうかー?」
王女が動いている、エミルが今どこにいるのかを分かっているような口調にライは思わず情報が漏れているのかと懸念をするが、先回りするようにヴェトリアが指摘する。
「あ、別に情報を収集していたわけではありませんよ?ただ、おそらくこの国の王女様がイビア様に会われるんじゃないかと言われてましたー。あと、賢人の王とも惹かれあうだろうと」
「賢人の王って誰のことなんだ?」
「それは分かりませんー」
本当に分からないようで困ったように表情を作っていた。
「おう、邪魔するぜ」
とそこで、天幕の中に入ってくる人物がいた。ラッシュだ。
「ラッシュか」
「おいおい、ラッシュかってそっけなく言うなんて酷いじゃねえかよ。お前の頼みで色々と動いてたのによ」
「ごめんごめん、ただまた間諜かと思ってさ天幕の前で入るのを躊躇してたみたいだから」
「……気を遣って区切りを待ってたんだよ。そんなことをばらすなよ」
「だからごめんって。それよりも頼んでいたことはどうだった?」
「ああ、ライが言ったとおり数人の間諜はいたみたいだ。指示通りジュアンとアスティール方面は捕まえなかったが、ドリアド王国の間諜はすべて捕らえた。今は別のところで一まとめにして尋問をしてる」
「情報はある?」
「一つ有用な情報はあったな。何でも今ドリアドではフェレス王国に侵攻しようと結構無茶な課税や兵を動員しているらしい。だから兵力や軍需物資は潤っている反面内乱が起きる可能性があると」
「へぇ、それは結構いい情報だ。他には?」
「特にねえよ。どうやら、もぐりこんだ奴らはまだ潜入して期間が短いらしく、ドリアド本国に連絡も取れなかったらしいからな、嘘をついていない限り情報はねえ」
「そっか」
ライのその一言で天幕に緊張が走る。主にティア、リエル、ラン、ラッシュ、フィルにだ。理由は以前間諜が潜りこんだ時に激怒したライに恐怖を覚えたから。またその間諜に対して同情はしないが、恐ろしい結末が待っているのではと考えたのだ。しかし
「なら、そのドリアドの間諜はそれぞれ別々の場所に監視付で拘束してくれ。その後、見張りの兵士に見せかけた人員を数名周りに配置、時間帯は深夜か昼夜に何回かに分けてわざとらしくなくこう喋るように言ってくれ。実はライ・ジュリアールは強大な魔法を使うのには大きなリスクがあり交流試合で消耗したようで、その場合は五日から十日ほど動けなくなると」
「ライ、あなた……」
静かに小さく咎めるようにいってくるエスティアだが、ライは話を続けた。
「あと、ジュアン帝国が攻めてくるという情報が入ったら総指揮官が体調が悪いため、本来の力が出せないと知り、兵士が不安がっているように見せかけるように。時期が来たら逃がしてドリアド王国に帰す」
「いいのかよ?折角捕まえたんだから数人返すだけでも」
「いいや、全員帰すんだ。じゃないと意味ないんだよ。三箇所に分けるのはわざとらしくならないため。複数の人物が離れた場所にいたにもかかわらず情報を共有できたとき、人は嘘でも信じたくなるものだからね。これがドリアド王国に伝われば後の戦いで有利になる」
「まあ、いいけどよ。うまくいくのかねぇ」
「いかなくても損はないし、上手くいけば儲けものだろ?」
「んーだな、なら後で指示を出しとくぜ」
「頼むよ」
そういって、話が一段落してライはエスティアに聞いてみる。
「そういえば例のアスティールの力はどこにいる?」
「……そうね、こちらが動き始めてから一定のところで止まっている様だわ。ヴェトリアが言うように占いという予言で、私たちが近寄ってくるというのが判っているのなら待っているんじゃないかしら」
「そっか」
「心配?」
「キャサリン先生もいるんだし、ユレイヌさんもいるから大丈夫だよ。遠風の書から今のとこ何も届いていないんだから順調なんでしょ」
「だと良いわね」
ライは頷くとおそらく遠く離れた地にいる、この国の王女であり先ほどヴェトリアがいった予言でアスティアールの王女イビアが会うであろう言われているエミル。
そのエミルは今どこなのだろうかとライは考えていた。
そして、そんなエミルは現在、東にある都市ルティに到着したところでありエスティアが言うアスティールにある宝玉の持ち主ともうすぐ邂逅することになるのであった。
こんばんわ、少し遅れてしまいまして申し訳ないです。
さて、今日は久しぶりに戦いがないお話でした。最近は部隊戦や個人戦などをしていたため、会話を書くことが楽しかったです。本当はヴェトリアが出てきたためにリエル、ティア、フィル、ランの誰かをピックアップして番外編を作ってもいいかなと考えてます。ちなみに誰かの話を見てみたいという要望があれば書きますと宣伝を!w
お話はようやく進むことになります。最近出てこなかったエミル王女様。タイトルである賢人軍師と聡明王女。今回賢人という言葉が出てきました。では聡明という名前はいつ出てくるんでしょうか。そして何をもって聡明といわれるのかです。乞うご期待!
最後に、週末はすごく忙しくなり徹夜が続きますが三日おきに更新しているときもし困難や何かがありましたら活動報告に記載しておきますのでよろしくお願いします。
では、そろそろ三十分になってしまうので後書きも程ほどに投降します。
また次の更新日でお会いしましょう。




