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扉の魔法使い  作者: 黒金カズナ
第二部 後輩

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第八章 盗賊

「先輩、神様と知り合いなんですか?」


「たまたまな、助けたことがある」


籠を見ると、果物もキノコも土に踏み潰されて跡形もなかった。深く息をついた。


「……先輩の名字と、関係があるんですか?」


肩越しに振り返ると、アンが少し体を縮めた。


「……い、いや。もし訳ございません」


先に歩き出した。後ろからアンが小走りで追いかけてくる。


「これからどの王国を通り?」


「近くに王国はないですよ先輩。次は礁岩村くらいです。そこから湖を渡る船に乗れば早いです」


「渡るのに何日かかる?」


「一日ちょっとですね」


「じゃあ一泊して、朝出よう」


傾斜を登り、線路を渡ろうとした——


「どけえええ!!」


線路と同じ大きさのポータルを開き、第二出口を横へ。

魔法列車が飛び込み、轟音と共に通り過ぎた。

ポータルを閉じた瞬間、別の小さなポータルが突然開いた。矢が地面に突き刺さる。


「先輩、盗賊です」


「わかってる」


後ろへ跳んだ。


「植物よ、我々の存在を隠せ——ワイルドグロウス」


周囲に野草が勢いよく伸び、俺たちを包んだ。


「風よ、巡れ。何かあれば——」


呪文が終わる前に、正面に誰かが立っていた。

……速い。


「土よ、落ちろ」


前方の地面を叩いて陥没させた。影が上へ跳ぶ。

空から見えた——片目に細い縦瞳、もう片方の目は傷で潰れたチーター人間。


「アン、気をつけろ。これは只者じゃない」


アンの足元にポータルを開き、出口を百メートル後方へ。ナイフを引き抜き、チーターの爪を受け止めた。


本性解放……厄介な。


「フフ……魔法使い風情が、俺には勝てんよ」


蹴りが飛んできた。後方へ転がって回避する。


「土よ——」

「雷よ。」


「キャンセル」


土魔法が弾かれた。


「咆哮し、敵を追え。」


紫の魔法陣から雷が飛び出し、チーターを追いかけた。チーターが後退しながら躱し続ける——奴は一人じゃない。

頭上のポータルが右から開いた。ダガーが飛んでくる。


「……せこい真似を。」


普通の人間の男だった。


「火よ、小さな火球よ。」


赤い魔法陣から直径一メートルの火球が飛び出した。ポータルに入れ、第二出口を男の真後ろに展開した。


「うわあああああ!!」


火球が飲み込んだ。俺はポータルに飛び込み、燃えた男を草原へ押し込んだ。体が転がりながら草に火が移る。マナを炎に繋いだ。


「燃えろ」


アンが作った草魔法が燃料になり、炎の海が広がった。


「待——」


「よくも!」


視界がずれた。頬を殴られ、体が吹き飛ぶ。


「うっ——」


ナイフを引き、右の爪を受け止めた。左腕が振られる——跳び退いてポータルを開くが、チーターが横へ回り込んで下から抉り上げてくる。後ろへ跳んでポータルを足元に展開した。

逃げ切れなかった。チーターが被さってくる。腕を交差して受ける——鋭い痛みとしびれが一気に走った。


「よくも!よくも!!よくも!!!……」


声に泣きが混じっていた。


「バインド!」


チーターの体が止まった。見上げると、アンが荒い息で俺に手を向けていた。


「アン」


「先輩、大丈夫ですか?」


チーターを見ると——涙が流れていた。


「お前が……仲間を殺した」


「仲間が死んで泣く盗賊。皮肉だ」


体を引き抜き、腕を回して引っかき傷を確認した。焼けるような痛みと痒みが広がっていく。


「先輩の手……この人、どうしますか?」

「アン、血は平気か?」


「……苦手です」


「じゃあ目と耳を塞げ」


手をチーターの胸に当てた。チーターが首を振った。アンが俺の背中に隠れた。


「お願い、やめて……」


「雷よ」


「許し——」


「咆哮しろ」


ドォン。


顔に飛んできた血を拭った。目を閉じたままのアンを抱き上げ、そっと運んだ。アンが両手を耳から鼻と口へ移した。


「目を開けていい。ただし後ろは見るな」


アンが目を開けて、ふらふらと歩いた。


「ありがとうとごめんな、アン」


「大丈夫です先輩……盗賊でしたし」


体がどんどん傾いてくる。吐き気も増してきた。


「嘘つかなくていい、正直に言え」


「……すみません先輩。血の匂いが、無理です」


アンの右腕を俺の右肩に、左腕を左肩に回した。そのまま体を持ち上げ、背負った。


「先輩、迷惑かけてごめんなさい」


「気にするな。縛り魔法のおかげで助かった」


アンを背負ったまま礁岩村まで歩き、すぐに宿を取った。二部屋別々に借り、アンの部屋へ運ぶ。

顔が真っ白だった。体が小刻みに震えていた。

明日、熱が出ても不思議じゃない。

毛布を引いてアンの体に被せた。

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