↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浜守物語ー破魔の系譜ー清磨編  作者: 末席にゃんこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/23

第二十一話 ある村の言い伝え(二)

行者は恐怖を覚えていた。

あれ程の妖気を放っている人間に、遭った事が無かった。

いや、あれ程強い妖気を、怪異でも放つものだろうか?

そんな事を考えながら、話を聞いた村へ向かった。

行者の心には、力になってやりたいという強い思いがある。

しかし、自分一人でそれを成す事が、どれ程の事なのかも想像がつく。

恐らく一人では無理であろう。

そして、もっと詳しくあの異常な村について、知る必要がある。

思案しながら村に着くと、話を聞いた女を探した。

女は直ぐに見つかり、見て来た事を話して聞かせた。

すると、周りから村の女達が集まって来て、話に加わった。

ここの女達は、ただ泣き寝入りしていた訳ではなく、これまであの村の事を調べていた。

それによると、村の裏山にある洞窟の中には大きな牢屋があり、その中に得体の知れない大きな生き物が入れられている事。

満月の夜になると、村人達が狂った様に交わり、その時は朧な大犬の姿が見えない事。

人ならざる美貌を持った女が現れるのは滅多になく、普段は洞窟の中に居る事。

ここ迄の話で考えられる事は、満月の夜なら村への侵入が可能なのではないかという事だった。

それに恐らく男達は、何かの薬の様なものを呑まされ、それによって正気を失い、あの村に留まっているのではないか。

もしかしたら、あの村に居た女達も、薬を呑まされているのかもしれない。

侵入するには、もう少し詳しく調べる必要があった。

そこで、次の満月の夜に、この村の数人の女達と共に、調べに向かう事になった。

主に調べる事は、満月の夜、あの尋常ならざる妖気を発していた女が何処で何をしているのか?

洞窟で牢に閉じ込められている生き物が、何故そうされているのか?

朧な大犬が何頭居て、満月の夜はどこで何をしているのか?

これらの事が掴めたなら、何か手立てが見つかるかも知れない。

行者には、札を使った業が幾つかあった。

一つは、『物見の札』を通して光景を見るという業だった。

物見の札に描かれた目が向いている方向の光景を、見る事が出来た。

又もう一つは、『退魔の札』を使って怪異を祓う事も出来た。

怪異に退魔の札を貼り、退魔の呪を唱え、怪異を異界へ送り返すのだった。

先ずは物見の札を貼り、それで様子を探る事にした。

手筈としてはこうだった。

次の満月の夜に、女数人が先に村へ侵入。

朧な大犬や、見張りが居ないか確認。

居なければ行者が入り、洞窟へ侵入。

洞窟内に物見の札を貼り撤収。

物見の札を通して、次の満月を過ぎる頃まで様子を見張る。

そして、次の満月の夜になった。

煌々と満月の明かりが辺りを照らす中、行者は女五人とその村に近付いた。

村に侵入するのは、拍子抜けする程容易だった。

それは、村の中に朧な大犬も見張りも居なかったからだった。

只々その村では、村人達が所かまわず交わっていた。

それは常軌を逸した光景だった。

男も女も異性を見れば、行為をしようと迫っていく。

行為が終われば、又相手を変え交わる。

それが延々と繰り返されていた。

行者達は、正気を失って獣の様に行為を続ける村人達に気付かれぬ様、物陰に隠れながら進んだ。

洞窟に近付くにつれて、村人たちの淫声は遠のいた。

洞窟の入口が見えた。

そこにあの朧な大犬が一頭、丸くなっていた。

その大犬の注意を引く為、二人の女が行者達と別れ、別の方向から大犬に近付いた。

ある程度の距離に来た所で、二人の女は小石を大犬に向かって投げた。

その小石は、大犬の身体をすり抜け、地面に落ちた。

だが、大犬は気付いた。

大犬は石が飛んできた方向を向き、じっと見据えた。

二人の女は、わざと気付かれる様に大きく身体を動かしながら逃げた。

大犬がそれに気付き、追い始めた。

二人の女は途中で二手に別れ、喘ぎ声のする方向へ走って行った。

それを大犬が追った。

女二人の役目は成功だった。

二人の女は、行為をしている村人達に紛れながら、なんとか村の外に出て行く事が出来た。

その間に、行者と三人の女は先に進んだ。

陰に隠れながら、洞窟の中の様子を見る事が出来た。

そこからは、あの人とは思えぬ女の姿は見られず、朧な大犬の姿も見えない。

奥の方に巨大な牢屋と、中に大きな薄桃色の生き物が入っているのが見えた。

四人は注意深く近付いた。

ここで気付かれたら、元も子もない。

朧な大犬も、女の姿も見られない。

余程これまで、侵入する者が居なかったのだろう。

三人の女は洞窟の入口で辺りを警戒し、行者は牢屋迄近付き、物見の札を牢の柱の目立たぬ場所から外に向けて一枚貼った。

牢屋の中に居る生き物は、よく見ると毛のない巨大な皴だらけの鼠の様だった。

行者はこの洞窟に漂う甘い芳香に眩暈を感じ、直ぐに鼻と口を布で覆った。

正気を失いかけながら、気付けの丸薬を取り出し、口に入れて嚙み砕いた。

口の中に雷が落ちた様な衝撃が走り、遠のきかけた意識が戻った。

危なかった。

そこから更に洞窟の奥へ進んだ。

奥は左に曲がっていて、先が見えなかった。

慎重に進んで行くと、少し開けた空間が現れ、遠くに朧な大犬が二頭丸くなって寝ているのが見えた。

大犬達は時折顔を上げて、異常が無ければ又休んだ。

そして、二頭に挟まれる様に、金色に輝く、人一人が入れるほどの大きさの繭の様なものが見えた。

その方向に向け、洞窟の壁面の目立たぬ所に物見の札を貼り、静かに戻った。

行者達は元の村へ、無事に戻る事が出来た。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。