第46話 炊事の煙が見えない
煙は毎日上がっている。
毎日上がる煙の中から危ない煙をどう見分けるか。
火元を早く見つけたかった。
屋敷なら、火の見の役を置き、煙を見張らせればよかった。町でも同じにしようとした。高い所に見張りを置いた。
見張りはすぐに困った。煙が多すぎた。
朝も、昼も、夕も、町じゅうから炊事の煙が上がる。湯屋の煙。鍛冶の煙。竈の煙。どれが危ない煙なのか見分けが、つかない。
しかも、見張りは眠った。
一日高い所で煙を見ていれば眠る。咎めたい、と斉昭が言った。役を怠けた。
山下は咎めるのをやめた。
人は、眠る。一人で一日中見張れる者はいない。眠る者を責めても眠りは止まらない。眠る前提で仕組みを作るしかない。
「見張りを二人にしろ」
一つでは足りなかった。見張りもまた。
「半刻で交代。二人のうち、必ず一人は起きている。それから煙の見分けだ」
理想は現代の三交代制だった。が、奇妙な顔をされたのでやめた。
炊事の煙は刻限がおおよそ決まっている。朝、昼、夕。その刻限と違う時に、違う場所から、違う色の煙が上がればそれが危ない煙だった。
毎日の煙を知っていれば異常な煙が見える。
「あること」を知っていれば、「ない方がよいもの」が、分かる。
煙はまだ完全には見分けられなかった。
だが見る目を二つにした。
眠ってももう一つの目が起きていた。




