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第93話:バーベキューの主賓は、地龍(アース・ドラゴン)


森を割り、地響きと共に姿を現したのは、全身を鋼鉄のごとき岩板で覆った巨大な魔獣――**地龍アース・ドラゴン**でした。


その巨体は馬車数台分を超え、鋭い牙からは開拓民を恐怖させてきた腐食性の涎が垂れています。


「……出た。この山の主。……お肉、いっぱい」


エルザが静かに武器を構えましたが、ディエスはその前に一歩踏み出し、自慢の広背筋を大きく広げました。


「待てエルザ。これは『バルカス開拓記念ミートホール』の最初の一皿だ。俺が直々に筋肉の旨味を叩き込んでやる!」


「ディエス様! 相手は地龍です、並の剣も魔法も通じない『歩く城塞』ですよ!」 リナが叫ぶ中、地龍が山をも震わせる咆哮を上げ、その巨体でディエスを押し潰さんと突進してきました。


「ガハハ! 正面衝突、大好物だぜ!!」


ディエスは逃げるどころか、丸太のような両腕を広げて迎え撃ちます。 ドォォォォォンッ!! 地龍の突進とディエスの肉体が正面から激突し、周囲の土が爆発したように跳ね上がりました。


「……止めた!? 生身の人間が、地龍の突進を……!?」 ハンスが眼鏡を押し上げ、驚愕の表情で数値を計算し始めます。


「おいトカゲ野郎、いい弾力じゃねぇか! だがな、俺の筋肉は今、アレクシスへの怒りと兄貴への感謝で最高のコンディションなんだよ。……これでも食らいやがれ! マッスル・パイルドライバー:魔境スペシャル!!」


ディエスは地龍の首を強引に抱え込むと、自らの体重と全身の筋力を一点に集中させ、その巨体を逆さまにして地面へと叩きつけました。


ズシャァァァァァァァンッ!!


衝撃で大地がV字に裂け、地龍の硬い岩板が木っ端微塵に砕け散ります。


白目を剥いて沈黙したヌシを見下ろし、ディエスは爽やかな汗を拭いました。


「よし! 最高の『肉』の出来上がりだ。リナ、出番だぜ!」


「……はぁ。もう驚き疲れました。分かりましたよ、とびきりの火力で焼き上げればいいんでしょう!?」


リナが諦めたように杖を掲げました。


彼女の炎は戦闘に使えるほどは大きくありませんが、種火としては十分でした。


「ハンス、これだけの肉があれば、近くの村で飢えてる奴らも釣れるだろ?」


「ええ、ディエス様。この魔境で『腹一杯のドラゴン肉』。これ以上の求人広告はありません。……さあ、リナさん、エルザ。まずはこの肉をエサに、労働力(筋肉予備軍)を釣り上げましょう」


黄金色に焼き上がるドラゴンの香りが、静まり返っていた魔境の空へと立ち昇っていきました。

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