第86話:白銀の断罪、鋼鉄の反逆
「――消えろ、野蛮な筋肉ダルマめ」
アレクシスが指先を優雅に弾いた瞬間、目に見えぬほどの速度で圧縮された高密度の光弾が放たれました。
それは魔法というより、空間そのものを切り裂く断罪の光。
「ガハハ! 遅ぇんだよ!!」
ディエスは反応していました。
極限まで研ぎ澄まされた反射神経が、光の軌道を捉えます。右拳に渾身の筋圧を込め、正面から迎え撃つ!
「エア・ソリッド:破ッ!!」
ドォォォォォンッ! ディエスの拳から放たれた空気の塊が、アレクシスの光弾と正面衝突し、周囲の民家の窓ガラスを一瞬で粉砕する衝撃波を撒き散らしました。
「ほう……。私の魔法を『物理』で相殺したか。だが、それは私の出力の数パーセントに過ぎない」
アレクシスは眉ひとつ動かさず、今度は両手を広げました。
彼の背後に、白銀の魔力で形成された数十本の聖剣が浮かび上がります。
「お前の筋肉がどれほど硬かろうと、全方位からの『因果の貫通』には耐えられまい。聖剣・裁きの雨」
「まとめて叩き割ってやるぜぇぇッ!!」
ディエスは咆哮し、左右の拳を猛烈な速さで繰り出しました。 シュパパパパパッ!! と、大気を切り裂く真空の刃が乱舞し、降り注ぐ光の剣を次々と叩き落としていきます。
しかし、アレクシスの魔法は尽きることなく、さらに精度を増してディエスの肉体を追い詰めていきます。
一発一発が必殺の威力を秘めた光の雨。
ディエスの周囲の地面は抉れ、衝撃で全身の皮膚から血が滲み始めます。
「ガッ……はあ、はあ……! さすがラスボス様だ、いいプレッシャーじゃねぇか!」
「……死の間際まで筋肉のことか。理解に苦しむな」
アレクシスの瞳には、軽蔑すらなく、ただ害虫を駆除するかのような虚無がありました。
ディエスは、その瞳の奥にある「人間を部品としか見ていない冷酷さ」を肌で感じ、より一層拳に力を込めます。
「お前のその綺麗な顔……一度だけでも、この筋肉で歪ませてやるぜッ!!」
ディエスは傷だらけの肉体を震わせ、更なる高みへと踏み込みました。




