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81話:事務官の鉄槌、エリートの絶望


「――ご苦労、バルカス少尉。後は我が『第一精鋭部隊』が引き継ぐ。貴様ら野良犬中隊は速やかに撤退せよ。この戦果は、我が部隊の『掃討作戦』の一環として記録される」


霧の晴れた墓地で、エリート魔導士は平然と言い放ちました。


彼らはディエスが命懸けで切り拓いた勝利を、そのまま自分たちの手柄として横取りしようというのです。


「な、何言ってるんですか! ディエス様が一人でリッチを倒したんですよ! 手を出さずに見ていただけじゃないですか!」


リナが激昂して抗議しますが、エリートたちは鼻で笑います。


「証拠はあるのか? 掃討後の現場にいたのは我らだ。下級中隊の報告など、我ら上級魔法隊の言葉一つでゴミ箱行きよ」


彼らの傲慢な嘲笑が響く中、ディエスは拳を握りしめましたが、その前にハンスが静かに一歩前へ出ました。


「……さて。こちらがディエス大尉の『正確な』功績報告書。そしてこちらが、貴方たちが任務の待機中に酒を酌み交わし、不適切に職務を放棄していた記録。さらに――過去三年の貴方たちの『不正な経理操作』の証拠です」


ハンスの声は、氷のように冷たく響きました。


「な……な、なんだと!? 貴様、一介の事務官の分際で、我ら公爵家派閥に楯突くというのか!」


顔を真っ赤にして叫ぶエリートたち。しかし、ハンスが提示した書類の詳細――裏金の流れ、昇進プロセスの改ざん、そして愛人への軍資金流用――を目にした瞬間、彼らの顔面は瞬時に蒼白へと変わりました。


「……どちらを上層部に見せるか、選ぶ権利を差し上げましょう。大尉の功績を“公式に”積む土台は、既に私が整えました。これ以上見苦しく足掻くのであれば、貴方たちの家門ごと、明日には王都の社交界から消えていただくことになりますが?」 


「ひ、ひぃっ……! わ、わかった、報告書は……書き直す! この件はすべて、バルカス大尉の独壇場だったと……!」


震え上がり、逃げるように去っていくエリートたち。


ディエスはそれを見て、口をあんぐりと開けていました。


「ガハハ……ハンス、お前、筋肉じゃねぇところでとんでもねぇパワー持ってんな。俺より怖ぇぞ」


「……事務を舐めないでください、大尉。筋肉を鍛えるのがあなたの仕事なら、その筋肉を正しく評価させるのが私の仕事です」


ハンスは冷徹に言い放ちましたが、その瞳にはディエスへの信頼が宿っていました。


しかし、この「正当な評価」とハンスの動きが、黒幕であるアレクシスをさらに刺激することになります。


アレクシスは、手駒が事務官一人に捻り潰された報告を受け、冷酷に次の手を打ちました。


それが、感情を奪われた「孤児の少年兵」という、ディエスにとって最も許しがたい刺客でした。

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