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80話:死の王、散る


「お、おのれ……! この死のリッチたる我が、ただの肉体、ただの風圧に屈するなど……あり得んッ!!」


リッチが狂乱し、手にした黒い杖を高く掲げました。周囲のレイスたちが吸い寄せられ、巨大な「死の渦」となってディエスを飲み込もうと襲いかかります。


「ガハハ! 理屈じゃねぇんだよ! 俺の筋肉が『当たる』って言ってんだ、大人しく砕け散りやがれ!!」


ディエスは右腕を大きく引き、全身のバネを絞り込みました。足元の石畳が、その異常な踏み込みに耐えきれず粉々に砕け散ります。


「これでおしまいだ……! **『エア・ソリッド:ゴク』**ッ!!」


放たれた渾身の右ストレート。


圧縮された空気の壁が、発光するほどの衝撃波となって射出されました。


ドォォォォォォォンッ!!


直撃を受けたリッチは、叫び声を上げる暇すら与えられず、霊体もろとも分子レベルで霧散しました。


衝撃波はそのまま墓地の奥へと突き抜け、立ち込めていた不気味な霧を文字通り「消し飛ばし」、青白い月光を地上へと引き戻しました。


「……は、晴れた。霧が全部、なくなっちゃった……」


リナが呆然と空を見上げます。ディエスは、ひび割れた拳をゆっくりと開き、立ち昇る蒸気の中でニカッと笑いました。 


「ガハハ! 見たか! 筋肉の『気合』に、物理無効なんて理屈は通じねぇんだよ!」


「……すごい。……ディエス様、本当に風を掴んだ」 


エルザも静かに短剣を収めます。こうして、旧墓地の脅威はディエスの「物理を超克した一撃」によって完全に沈静化したかに見えました。


しかし、霧が晴れたその瞬間。


墓地の入り口から、まるでこの時を待っていたかのように、華美な甲冑に身を包んだ**「エリート魔導騎士団」**が隊列を組んで現れたのです。


「……何の用ですか、彼らは。もう敵はいませんが」


ハンスが眼鏡を押し上げ、不穏な気配を感じ取って呟きました。


ディエスたちの勝利を冷ややかな目で見つめる騎士たちの先頭には、公爵家の息がかかった高慢な魔導士が立っていました。

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