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第148話:崩壊する理論、爆発する熱(バルカス)


「……認めない。こんな、理論の欠片もない肉の塊に、私の世界が……私の『正解』が汚されるなどッ!」


アレクシスの咆哮と共に、彼の周囲の空間がガラスが割れるようにひび割れました。 重力魔法と毒魔法を同時並列で極限まで圧縮し、一点に集中させる禁忌の複合魔術。


事象崩壊イベント・ホライゾンゼロ


アレクシスの手の中に、光さえも吸い込む漆黒の球体が出現しました。それに触れた物質は重力で原子レベルにまで潰され、毒によって存在の因果ごと腐り落ちる。まさに、アレクシスが抱える「絶望」そのものを形にしたような絶技。


「消えろ、ディエス! 貴様という不条理を、この世界から消去してやる!」


漆黒の球体が、ディエスを目掛けて放たれました。


「ガハハ! 最高の仕上げ(パンプアップ)が来たな!」


ディエスは逃げるどころか、全身の筋肉を限界まで膨張させました。


血管が浮き出し、皮膚が裂ける寸前の圧力。彼は、アレクシスが放った「絶望の弾丸」に向かって、ただ愚直に、真っ直ぐに右拳を引きました。


「ハンスが言ってたぜ。物理を極めりゃ、魔法オカルトにだって勝てるってな!」


ディエスの脳裏に、これまで開拓地で積み上げてきた日々の光景が浮かびます。 ドワーフたちと競い合って砕いた岩。リナやエルザと食い倒れた魔獣の宴。ハンスの小難しい講義。そして、マルコが届けてくれた最高級のプロテイン。


そのすべてが、今、右拳に集束する。


「バルカス流最終奥義・開拓万象砕ワールド・デモリッション!!」


放たれた拳は、もはや「パンチ」という概念を超えていました。 音速の壁を軽々と突き破り、断熱圧縮によって生じた灼熱の波動が、アレクシスの漆黒の重力球と正面から衝突しました。


バ、ギ、ギ、ギィィィィィンッ!!


世界が静止したかのような静寂の後、爆発したのは**「熱」**でした。 アレクシスの冷徹な重力を、ディエスの熱い筋肉が力任せに粉砕する。事象を崩壊させる魔法を、事象を「造り変える」拳が打ち破ったのです。


「な……っ!? 私の『正義』が……押し返されて……!?」


「アレクシス、正しさなんてのは、後から誰かが理屈でつけるもんだ。だがな、目の前で震えてるガキを救うのに、理屈なんて重てぇもんはいらねぇ。動くのは頭じゃねぇ、心根と……この足だ!」」


衝撃波がアレクシスの魔法障壁を粉々に砕き、その爆風が彼を天高くへと吹き飛ばしました。


「あ……ああ……」


宙を舞うアレクシスの視界に、夕闇に染まるバルカス領の広大な大地が映りました。 自分が「不浄」と呼んだその場所には、ディエスたちが切り拓いた美しい街道が伸び、そこには生命の力強い鼓動が満ち溢れていました。


ドォォォォォンッ!!


クレーターのさらに深くへ、アレクシスは静かに沈んでいきました。 魔力は完全に枯渇し、隠し持っていた毒も重力も、すべてがディエスの「熱」に焼き尽くされていました。


「ふふ、あーあ。アレクシス、完敗ね」


高台のミスティが、満足そうに扇子を閉じました。 「ねえ、ディエス。あの子、ちゃんと『解凍』できたかしら?」


ディエスは肩で息をしながら、クレーターの底で大の字に寝転ぶアレクシスのもとへ、ゆっくりと歩み寄りました。

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