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第146話:剥がれ落ちた聖光


クレーターの底、泥にまみれたアレクシスが、何ごともなかったかのようにゆっくりと立ち上がりました。


「……プロテインだと? どこまでも、吐き気のする筋肉ダルマだ」


その声から、先ほどまでの「神々しい響き」が消えていました。代わりにあるのは、臓腑を這うような湿り気を帯びた**「殺意」**。


「アレクシス……?」


ディエスが眉をひそめます。アレクシスの全身を包んでいた純白の光魔法が、すすが混じるようにどす黒く変色し、ボロボロと剥がれ落ちていきました。


高台でそれを見ていたミスティが、可笑しそうに目を細めます。 「あらあら、ついに脱いじゃうのね。あの『英雄ごっこ』の衣装ひかりを」


アレクシスは、世に絶望したあの日から、自分を「正義の象徴」として演出し続けてきました。


人々を導くために選んだのは、美しく輝く光魔法。しかし、彼の本質は、救われなかった過去の怨嗟に満ちた、もっとくらい場所にありました。


「……見せてやる。私が本当に得意とする、世界の『よど』そのものを」


アレクシスが指先を僅かに動かした瞬間、戦場全体の空気が一変しました。


「重力魔法・万魔の重圧グラン・プレッシャー


ドォォォォォンッ!!


ディエスの巨体が、目に見えない巨大な鉄槌に叩かれたかのように地面にめり込みました。


周囲の岩石は粉々に砕け、立っていた兵士たちも地面に這いつくばります。


光のような速度ではなく、逃れようのない「重みの理」が空間を支配しました。


「ぐ、おぉっ……!? なんだ、この重さは……!」


「……そして、不浄には不浄の死を与えよう」


アレクシスの足元から、紫黒色の霧が蛇のように這い出しました。 「毒魔法・壊死の吐息ディケイ・ブレス


それは触れるものすべてを腐食させ、細胞レベルで崩壊させる死の霧。


彼が最も得意とし、そして英雄の名を汚さぬよう封印し続けてきた、最も醜く、最も効率的な殺戮の魔法です。


「ディエス、貴様のような『不条理な活力』が、私の計算を狂わせる。筋肉など、腐り落ちて土に還るがいい」


アレクシスの瞳は、もはや救済者のそれではありません。 重力で動きを封じ、毒でじわじわと命を削る――。それこそが、彼が導き出した「秩序」の真の姿でした。


「ガ、ハッ……!!」


重力に押し潰され、毒の霧に包まれたディエスの肌が、黒く変色し始めます。


絶体絶命。しかし、泥の中に伏したディエスの口角が、僅かに上がりました。


「……へっ、やっと……見せやがったな、アレクシス。……お前の、本当の『ツラ』をよ……!」

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